2012年 04月 21日
指輪の行方

マルケの小さな村で、最初にホームステイした家は、経済的理由のためだけに、留学生を受け入れているという感じでした。朝食・夕食込みのホームステイだったのに、なぜか夕食は、わたし一人が食卓につき、ステイ先の老夫婦に「食べなさい」(Mangia!)と言われながら、それほどおいしくはない大量の食事を無理して食べることが多かったように覚えています。学校の友達から、ステイ先の一家が「家族のように接してくれる」という話を聞いて、うらやましかったこと、そして、かつてわたしと同じ家に滞在したことのある日本人女性から、「あの家はね」と言われて、「ああ、やはりこの家では留学生の扱いがひどいのだ」と悲しく思ったのも、記憶しています。

ウルバーニアの名誉のために言っておくと、村には、老若男女に関わらず、心の優しい人が大勢います。学校から家に帰るまでの短い距離の間に、いろんな人に話しかけられて、おしゃべりをしていたら、結局帰るのが遅くなったり、独り暮らしのおばあさんや老夫婦から食事に誘われて、そのまま残って夕食をいただいたりすることも、よくありました。
夕食をよそでいただいたのは、数か月後に、学校に頼んで、他の家での朝食だけのホームステイに変えてもらってからです。新しいホームステイ先の主人からは、わたしがよくお年寄りの家を訪ねたり、食事に誘われたりするので、「新手の高齢者訪問ボランティアかい」とからかわれました。自分より少し年上の女友達もできて、食事や休暇を彼女の家族と共にすることも多く、睡眠時間を除けば、ホームステイ先よりも、長く入り浸っていたような気がします。

閑話休題。留学を始めたばかりの頃の復活祭は覚えていないのに、なぜかその1年前に起こったはずの、復活祭関連のテレビニュースを、わたしはよく覚えているのです。1年経っても、珍しいニュースで、話題性があったので、繰り返し伝えられたのでしょうか。あまりにもよく見聞きしたので、最近でも、その事件のその後が、時々気になっていました。

それは次のニュースです。
(*追記: 2018年4月現在、以下にリンクを掲載していたオンライン記事は二つとも存在しないため、リンクは削除しましたが、かつて存在していた記事の題名とその記事があったサイト名は残しておきます。)
- Corriere della Sera – Anello di diamanti nell’uovo Ma lei non lo sa e lo cambia (15/4/2001)
イタリアでは、復活祭の贈り物になる大きなチョコレート卵の中に、びっくりプレゼントが隠れています。2001年4月、とある男性が、恋人に婚約指輪を贈るのに、この復活祭の卵の中に入れて、びっくりさせようと考えました。このとき、受け取った女性が、その卵を開けていれば、うれしい驚きの声を上げたことと思います。それが、彼女は、その卵に使われているチョコレートは、自分の好みに合わないからと、恋人が卵を買った店まで持っていって、他の卵と交換してしまったのです。高価なダイアモンドの指輪は見つからず、激しいケンカになって、男性が手をあげ、彼女は告発すると息巻いて…… (上の写真は、今年わたしが受け取った卵です。)
結局、その婚約指輪は見つかったのかしら、二人の恋の行方はと、復活祭が来るたびに、思い出しては気になっていました。今日思いついて、この指輪と恋人たちのその後を、インターネットで調べてみました。「指輪が見つかった」という記事は見当たらないので、結局指輪は、誰かが自分の手中に収めてしまったのではないかと思います。二人のその後については、上の記事の翌日に出た、次の記事に書かれていました。
- Quotidiano.net – italianews – Caccia all’uovo di Pasqua: un nuovo anello riporta la pace fra i fidanzati. Non hanno trovato ancora il simbolo milionario del loro amore, smarrito dentro un uovo pasquale del quale si sono perse le tracce. Dopo l’annuncio di querela la coppia di Perugia ha fatto pace e ha deciso di partire per una vacanza (16/4/2001)

記事を読んでみて、この恋人たちが、なんとペルージャに住んでいたことが分かりました。指輪の行方は分からないものの、結局、男性は新しい指輪を買って、今度は直接彼女に贈り、無事に仲直りをしたとのことです。
こちらでは、お金や貴重品が落ちているのを見つけると、「警察に届けよう」と思うより、「運がいい」と考えて懐にしまいこむ人も多いようです。そういうわけで、元の指輪は、幸運が舞い込んだと思う誰かのものに、なってしまったかもしれません。どうも指輪は見つからなかったようだけれども、二人が仲直りしてよかったと、10年以上も前に解決した事件の結末を、今さら知ってほっとしているわたしです。


まるで童話にでもなりそうなお話ですね。(=^0^=)/
結局、高価な指輪より、大きな大切なものを手に入れたことでしょう。(^^)/
ホームステイ先も色々あるのですねぇ~
でも素晴らしい生活をされて今につながるって不思議ですね。
ドイツに留学した友はドイツ人と結婚しています。
組み込まれたものを感じますわ~♪
指輪の話、仲直りされたのね、安心しますよね。
でも幸運と言ってないないするのもいいかもですね~
なおこさん、いつも優しい言葉をたくさん下さって
嬉しいです、ありがとうございます。
ムームーさん、こちらこそ、すてきな写真と記事、お優しい言葉をありがとございます!
2002年の4月からということは、ちょうど10年ということなんでしょうか。
日本も10年でずいぶん変わったようで、変わってないようで……震災などの天災を除けば、大きく変わったのは携帯電話ぐらいでしょうかね。
そういえば、チョコの玉子の中に小さなオモチャの入ってるお菓子って、昔、日本にもあった記憶があります。
こういうのって、シンプルなチョコレートなので美味しいんですよね。
それにしても、チョコの玉子に高価なダイヤモンドの指輪を入れるとは……まさかそれを交換されてしまうとは思いもよらなかったんでしょうけど、喧嘩したことも今は良い思い出なのでしょうか?仲直りできて良かったですね。
凸d(^ー^)pochi!
中に入っているおまけと言うと、わたしがすぐ思い出すのがグリコのものでせす。ミニおもちゃの入った小さなチョコ卵は、イタリアでは今でも売られていますよ。
思いがけない贈り物が幸せを呼ぶはずが、ちょっと一悶着あったのですが、めでたしめでたしで、何はともあれよかったと思います。
応援のポチをありがとうございます!

この恋人達、仲直りしたのですね。本当に良かったです♪♪
私はもう7.8年も前になるかと思うのですが、お財布を無くしたことがあって、当時はまだレストランで修業をしていた身で財布の中身に大した現金は入ってなかったのですが、無事にお財布が戻ってきたことを記憶しています。これは本当に運が良かったのですね!!(笑)
なおこさんの留学先はマルケだったのですね。
最初のホームステイ先はともかく(苦笑)、大事な思い出として残っているのですね~♪
財布が戻って来てよかったですね! うちの男たち(夫・義父・義弟)は、身分証明書がほぼすべて入った財布を置き忘れたり、盗まれたりして、二度と手元には戻ってきませんでした。軍人さん用の語学学校で教えたときさえ、お金が落ちているのを拾った将校さんは、「おお、これはラッキー! 今日のカフェはぼくがおごるよ。」と言うのが常だったので、びっくりしました。でも、わたしもバスに置き忘れた財布が、手元に戻ったことがあるんですよ。
このマルケの村には、今も家族ぐるみでつき合いのある大切な友だちがたくさんいます。ありがたいことです。