イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

さらばラヴェルナ1

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 この十字架の立つ丘のはるか向こう、写真の左端に見える山は、ペンナ山。聖フランチェスコが聖痕を受けた聖地、ラヴェルナは、この山の上にあります。

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 晩年、ペンナ山(Monte Penna)を旅立った聖フランチェスコは、ここ、フォレスト山(Monte Foresto)の頂近くまで歩いて来て、

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一目ラヴェルナ(La Verna)を見ようと振りかえり、生前最後の別れのあいさつを贈ったと言われています。

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“Addio, monte di Dio, monte santo […] Dio Spirito Santo ti bendica! Restati in pace; che più non ci vedremo!” - Parole citate nella traduzione italiana della Vita Secunda del Celano, (Roma, 1880).

「さらば、神の山、聖なる山よ、(中略)神、聖霊の祝福が、聖なる山の上にありますように! いつまでも平和に満ちた場所でありますように。これが最後の別れだ!」 (わたしの意訳です)

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 聖人の聖地との別れを記念して、後にこの地建てられたのが、こちらの庵、Eremo della Casellaです。この庵の最古の記録は、1522年の文書に見え、18世紀の記述には、この庵が、聖フランチェスコ自らの望みで建てられたとさえ、あるそうです。

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 庵の中には、こんなふうに、聖人を偲びつつ、祈りを捧げられる場所もあれば、大きな暖炉やテーブルが並んでいて、大人数で食事ができる部屋もあります。

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 昨年秋にも訪ねたこの庵を(下記、最初のリンク参照)、5月5日土曜日に、別の場所から歩いて、再び訪ねました。この日は、うれしいことに、梨の木が、純白の美しい花をいっぱいに咲かせていました。そうして、その梨の木のはるか彼方に、この地から、聖フランチェスコが別れを惜しんだというペンナ山が、よく見えました。

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 聖人はペンナ山だけ見て、山の上にそびえるラヴェルナを心に偲んだと思うのですが、夫は、ペンナ山を見るだけでは満足できず、ラヴェルナの教会と修道院も一目見ようと、こうして高い高い木の上に登ったのでありました。

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Maggiociondolo & Chiesa di Fragaiolo 5/5/2012 17.45

 さて、この日、5月5日土曜日は、このフラガイオーロの教会に車を置き、午前11時半頃から歩き始めました。朝は辺り一体が薄暗い雲に覆われていたのですが、わたしたちがちょうど山頂の庵に着いた頃にどしゃぶりの雨が降り、夕方この出発地点に戻った頃には、こんなふうに青空が広がっていました。イタリア語ではmaggiociondolo(直訳は、「5月のペンダント」)と呼ばれるキングサリの花が、日の光の下で、いっそう美しく見えました。

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L’immagine presa dalla carta affissa nella bacheca vicino all’Eremo

 ミケランジェロの生家のあるカプレーゼ・ミケランジェロ(下記リンク参照)から出発するのが本来のコースなのですが、天気も悪いし、高低差もかなりあるので、わたしたちは途中地点のフラガイオーロ(Fragaiolo、 714m)から出発しました。

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 なだらかな道を少しずつ登っていくと、色とりどりの美しい花が、そこかしこに咲いていました。村の近くでたくさん見かけたのは、こちらのラン(orchidea)の花です。

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 白く小さいイチゴ(fragola)の花にも、時々出会いました。

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 庭や道沿いの土手を、タイム(timo)などの野の花で飾った家があって、すてきだなと思いました。

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 おとぎ話に出てくるような、こんな門構えの家もありました。坂を登るにつれて、家がまばらになり、

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栗の木(castagno)が姿を現し始めました。

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そうして、このみごとな古い栗の木たちに出会いたいというのも、今回の散歩の目的の一つでした。

⇒ 記事、「さらばラヴェルナ2」(リンクはこちら)につづく。
 Continua all'articolo, Passeggiata verso l'Eremo della Casella - parte 2"

関連記事へのリンク / Link per gli articoli correlati
- 奥山に枯れ葉踏みしめ / Verso l’Eremo della Casella in autunno (26/11/2011)
↑ 昨年秋、別の場所から庵を目指して散歩。途中、ラヴェルナがきれいに見える地点あり。
- ミケランジェロの生家を訪ねて / Casa natale di Michelangelo (9/10/2010)
- 聖金曜日のラヴェルナ / Venerdì Santo alla Verna (22/4/2011)
↑ ラヴェルナの修道院、教会、聖なる森、ペンナ山を写真で紹介。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by bianchi_saitoh at 2012-05-09 00:34 x
なおこさん、日本には歌にもありますが栗の木の幹の太さスゴイですね。栗でこんなに太いなんて見たこと無いです。
というより知りません!カナ?

イタリアではユベントスがリーグ優勝を決め年齢も近いA・デルピエロがJUVEラストシーズンと言われていた中での事なのでなおさら嬉しい出来事になりました。
Bに降格した時も移籍せずに支えたブッフォンやデルピエロなどのオジサン達のストーリーに感激です!

ゴールデンウィークが終わった日本ですが竜巻で大変な事になりました。
私も近くのつくばみらい市にゴルフ観戦に行っていて雷雨にあいましたが試合の終わったあとで数名の観客だったのでクラブハウスの軒先に非難させてもらいました。
そしたら数分で1cm前後の雹が降ってきて目の前の芝生が一面白くなってしまいました。明日も注意が必要らしく大変な5月になってます。
Commented by クロちゃん at 2012-05-09 06:43 x
なおこさん、おはようございます。♪
そうか!w(゚o゚)w
あらためて発見です。(*^^)v
遠くを見るのに木登りの方法がありましたね~。
子供の頃は良く木登りしましたが、今はすっかり忘れていました。
私も今度真似してみましょう。o(*^▽^*)o~♪
今でも登れるか心配もありますが…。(^^)/
Commented by milletti_naoko at 2012-05-09 15:45
bianchi_saitohさん、大きいみごとな栗の木がたくさんありました。昔むかしは、栗が大切な生計の糧かつ食糧だったようで、イタリア中部には、みごとな古い栗の木がたくさん生えた栗林があちこちにあるんですよ。ここでは、今も栗を育てて収穫しているため、林がきちんと手入れされていました。

おお、日本でもこうしてイタリアのサッカーリーグを、手に汗握ってご覧になっていたんですね。優勝、おめでとうございます!

そんなひどい竜巻や雹が日本を襲うとは、本当に大変な事態になりましたね。どうか外出時は十分にお気をつけて。こちらでも時々雹は降って、主に農作物に害を及ぼしますが、そんなに大きい雹は、身体にも危険ですね。
Commented by milletti_naoko at 2012-05-09 15:51
クロちゃん、おはようございます♪ そうなんです! ラヴェルナのある部分がちょうど木に隠れていて見えないと分かったとたん、夫ときたら歩き始めたので、何をするのかと思ったら、高い丈夫な木を見つけて、登り始めたのでありました。夫の場合、木登りが好きなので、ふだんから、単に木に登りたいからという理由で登ることも、時々あります。夫は平気でするする登っていくのですが、下で見ているわたしの方が、無事に地上に戻ってくるまで心配です。クロちゃんも、登られる際には十分に安全に気をつけてくださいね。『徒然草』で「高名の木登り」が言っているように、「下りるときに油断せずに、地面に降りるまで気をつけること」が大切だと思います。
Commented by かや at 2012-05-09 21:18 x
こんばんは☆
丘の十字架?と青空とか、山の風景も良いですね♪
花も綺麗で、良いお散歩になったみたいですね。

竜巻と言えば、被害が出たのは、うちの栃木県や隣りの茨城県です。
ちょっと竜巻の起こった場所が違っていたら、こちらも大変なことになっていたんだなと……ニュースで見てゾッとしました。
地震にしても津波にしても、天災は、対岸の火事ではないですね。心の準備・知識も必要だなと思いました。

凸d(^ー^)pochi!
Commented by ぷー at 2012-05-09 21:22 x
うわ〜おっ、ルイジさん、すごい高いところまで登るんですね!
しかも足をかけている枝が、結構細く見えるんですけど…。以外と丈夫なものですね、木って。
私も子供の頃は木登り好きだったけど、いつの頃からか高いところが苦手になってしまったので、今は無理です。登りたいけど…。

花々の写真、いつも素晴らしいですね。
最近カメラ持参でのお出かけが中々出来ていないので(雨降りも続いたし)、羨ましい限りです!
Commented by milletti_naoko at 2012-05-09 22:32
かやさん、こんにちは。ここでは聖フランチェスコゆかりの地だということもあって十字架が立っているのですが、イタリアでは山の頂上などに大きな十字架が立っていることが、よくあるんですよ。天災人災が相次いで心配ですね。茨木は栃木のお隣ですよね。どうか予報に注意してくださいね。応援のポチをありがとうございます。
Commented by milletti_naoko at 2012-05-09 22:36
ぷーさん、下から見上げてもずいぶん高くに登っているのが分かったんですが、今写真で見ると、本当に高いところまで登っていますよね。わたしも「その木細いけど大丈夫なの?」と聞いたのですが、「がっしりしていて丈夫だよ。」という返事が返ってきました。確かに、はるかに下から見上げるので、太い枝も細く見えたのでしょう。わたしも高いところは苦手なのですが、夫は岩の上でも、「危ないのではないか」と思うところまで、ひょいひょい歩いていくことがよくあるので、見ていていつもはらはらします。

ありがとうございます。朝はひどく天気が悪かったのですが、一雨降ってからきれいに晴れて、いい写真が撮れました♪ 
Commented by ムームー at 2012-05-10 09:59 x
なおこさんおはようございます。
気持ちが良い季節になりましたねぇ~
うっ、高い木に上られたのですか、見晴らしはいいですが、とっても
身軽ですねぇ~
お花が咲き素敵な門があるお家など楽しむものが多くあって
出向いた価値がありますね。
いつも素敵なお出かけにうっとりします~
Commented by milletti_naoko at 2012-05-10 14:55
ムームーさん、おはようございます。野の花がきれいで、散歩の楽しみの多い季節になりました。夫も高いところからはまた、きっと違った景色が楽しめたことと思います。
山の上には、まだ桜が咲いているところもあったんですよ!
by milletti_naoko | 2012-05-08 12:59 | Toscana | Comments(10)