イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

パリで真っ青!

 さて、2週間のパリの滞在中、一度気分がとても暗くなって、どうしようと、顔から血の気が引いたことがあります。その日、6月7日木曜日に、フランス語学校の授業が終わったとき、わたしは、今日こそパリの街をきちんと観光しようと、勇み立っていました。ステイ先を目指して歩いていたわたしは、ひどく寒い上に、雨足が強くなってきたので、温かいものが食べたくなりました。和食が恋しいものの、おいしい人気の日本料理店まで足を運んでいては、観光する時間がなくなってしまいます。

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 そこで、店名からして、韓国人経営と思われるうどん屋が目に入ったとき、味には期待しないものの、店内に入って、

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こちらのうどんと天ぷらのセットを注文しました。うどんは、つゆに塩気が欠ける上に、なぜか酸味がしたのですが、天ぷらはカラッと揚がっていて、おいしかったです。うどんだけが、酸味が気になって食が進まず、悩んだ挙句に、マナー違反ではありますが、天つゆの残りが入ったお椀に、うどんを入れて、ざるそばのような食べ方をしてしまいました。天つゆはおいしかったのです。

 さて、わたしが青くなったのは、会計の際に、クレジットカード決済を頼んだときのことです。

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 と言うのも、「なかなか決済ができない」と同僚に不平を言っていたように見える給仕の女性が、しばらく試みた挙句に、非常に恐い顔をして、「カードでは払えません」と言い、この2枚の紙をわたしに突きつけたからです。

 とりあえず、14ユーロを現金で支払ったわたしは、この紙をよく見て、びっくりしました。2単語とも、フランス語としては知らなかったのですが、ぱっとイタリア語のabbondante debito(意味は「多額の借金」)という言葉が頭に浮かびました。文字の上に書かれた、「危険」を呼びかけるようなこの記号も追いうちをかけ、わたしは、「だれかが違法にわたしの口座からすべての預金を引き下ろした上に、さらに多額の借金をしたため、もうクレジットカードが使えないのだ。」と推測しました。

 かつて日本で公立高校の教員として、12年間働いてためた預金は、今もわたしの大事な資金源になっています。イタリアで教員や通訳として働いてためたお金の大半は、昨年新車を購入した際に使ってしまったこともあり、今回の留学の授業料や滞在費を始め、日頃の食料品・日用品の購入や自動車税や自動車保険の支払いにも、皆クレジットカードを通じて、日本の預金から支払っていました。不安定な仕事しかない身の上では、この日本の預金のおかげで、わたし自身が仕事にあぶれているときでも、夫に頼らず、無理に就職する必要に迫られず、何とか自立を保てているのです。それが一切なくなってしまった、という思いに襲われる共に、パリであと10日間、200ユーロあまりで暮らしていけるだろうかと不安になりました。

 イタリアを発つ前の数日は慌しくて、預けているお金を下ろしそびれてしまったのです。足りなくなったら、クレジットカードでキャッシングすればいいと思っていたのですが、カードが使えなくては、これ以上の現金を手にすることはできません。

 寒空の下を雨に打たれてステイ先に戻り、暗澹とした気持ちでいたわたしに、一家の主婦カトリンが、「調子はどう?」と尋ねました。「体調はいいけれど、とても大変な事態になって、心配しているんです。」と事情を告げると、ゆっくり話を聞いたあとで、「大丈夫。まったく心配はいらないわ。」と言ってくれました。

 ABANDON DEBITは、カードや連携した口座に問題があるとか多額の借金があるとか言うことではなく、回線が通じないなどの外的な理由で、「一時的にカード決済ができない」という意味だ、と言うのです。abandonは「放棄、断念」、debitには「借金」の意味もありますが、この場合は「カードによる決済」という意味だとか。イタリア語なら、transazione non eseguitaと言うところを、フランス語ではこう表現するようです。経済を教える先生でもあるカトリンにそう言ってもらって、ひとまず安心したものの、「多額の借金はないかもしれないけれど、カードが使える状態かどうかは分からない」と、一抹の不安を抱えたまま、パリの街歩きに出かけました。

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 その後、地下鉄駅の自動販売機で、10枚セットの切符を買ったとき、クレジットカードを使うことができたので、そのときになって、ようやくわたしの曇っていた気持ちも晴れました。

 ただ、初めて地下鉄を利用しようと、切符を自動改札機に切符を通したとき、金属バーの向こうにある扉が開かないので、「入れた向きが悪かったのかな」と思って、別の方向から通しても、やはり扉が開きません。通りがかりの女性に尋ねると、「あら、あなた、この切符はすでに使われて刻印されているから、それで通れないのよ。」と言います。「今買ったばっかりで、未使用の切符だったのに。」と思いながら、もう1枚の切符を通しても、まだ扉は開きません。ただ、そのとき、他の乗客を見ると、切符を改札機に通したあと、金属バーを押して先に進み、向こうの扉は、手で押して開いているではありませんか。ペルージャのミニメトロでは、改札機に切符を入れると、扉が自動的に開くので、扉を手動で開ける必要があるとは思いもよらず、入れ方が悪いのだと思い込んで、切符を1枚無駄にしてしまいました。

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 そのあとは、無事、凱旋門とアレクサンドル3世橋を訪ね、パリの街の散歩を楽しむことができました。そうです、以前に記事でご紹介した、すてきな散歩(記事はこちら)の前には、こんな衝撃を受けたり、失敗をしたりしていたのです。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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by milletti_naoko | 2012-06-24 21:41 | Francia & francese