2012年 07月 26日
緑と英語と演劇と

この町に生まれ育った友人からは、その依頼者である団体は、報酬が低い上に、約束していた報酬を受け取れなかった町の人を多く知っているから、引き受けたなら、せめて契約書を受け取ってからと、この仕事の話が決まりかけた頃に聞きました。報酬は確かに、拘束される時間も考えると、ふだんイタリア語の通訳をするときの半分かそれ以下なのですが、英語の通訳が専門ではないので、イタリア語ほど完成度の高い通訳は提供できないし、日本の劇作家の方から、あるいは仕事を通じて学ぶことも多いだろうからと引き受けた話でした。ただ、それで、イタリアにある悪い風潮を助長する、つまり、若者に仕事がないのを悪用して、低い賃金で働かせる企業を増やす、そういうことには加担したくないし、自分自身も、そのわずかな報酬でさえもらえずに働くのは不本意だということで、仕事前に契約書を送付するように頼みました。
結局、いろんな意味で情にほだされて、契約書のないまま、つまり、本当に支払いがあるのかどうか、約束どおり受け取れるのかが分からぬまま、昨日の昼、現場に到着し、昨夕から通訳を務めています。日本の劇作家の方からも、他の講師やそうして生徒の皆からも学ぶことが多いし、そういう大切な、国際的な学びの場で大切なメッセージの橋渡しができること、これまではあまり縁のなかった世界に触れることができて、仕事自体はとても興味深く、いろんな意味で、すてきな人たちと知り合うことができることを、うれしく思うと共に、イタリア語ほどは、うまく伝えられず、言葉が出てこなくて、もどかしい思いをすることがあります。
場所も、自然に囲まれた美しい場所で、写真は、わたしが滞在している部屋の他の女の生徒さんたちとの共同のトイレの窓から見える景色です。団体名を明記しないのは、結局は、この報酬がもらえるのかもらえないのか、まだ確信が持てないからで、受け取れなくても、すばらしい経験をすることができたとは、最終的に感じるだろうとは思うものの、どうか受け取れますように、悪いうわさは間違いでありますようにと思うのでありました。


>若者に仕事がないのを悪用して、低い賃金で働かせる企業を増やす、そういうことには加担したくない
これ、心から同感です。私は自分の分野でそういうことが余りに多かったので、よくわかっているつもりです。それでもこちらに来た当初の1998〜2002年あたりはまだマシだったんですけどね…。夫のまたいとこ(22歳)はホテルマン育成学校で、特にドルチェ部門で学業優秀で卒業したのですが、職無し。やっと見つけたジェラテリアに2日だけアルバイトにいったら、そのたった2日だけのお給料さえ知らんぷりで払ってもらえないそうです。
義弟もコンメルチャリスタとして働いていた最初の事務所では、月にたったの500ユーロでした。旧式ラウレアと国家資格を持っているにも関わらず…です。しかも交通費の支給が無いどころか、事務所のお使いで乗車するトラム・バス代すら自腹を切っていました。私は、イタリア人の人としての寛容なところを知っているつもりだし、佳いところがたくさんあると信じていますが、

私個人の話では、受けた仕事の支払いが余りにも遅く、その上、最初にかわした契約には無かったことを言い出され、ノラリクラリと支払いを遅くされたので、相手を持ち上げつつ(「あなたの仕事も大変よね」など。逆切れするタイプだったので大変でした)、しかしこちらも払ってもらわないと困るので(というよりハラワタ煮えくり返ってましたが!)、大いなる皮肉を混ぜたメールを書き(これは夫に手伝ってもらいました。一人で書くとどうしても怒りが全面に出て脅迫めいた文章になってしまうので…)…して、やっと報酬を受けることが出来ました。まあ、これは稀なケースでしたが。支払い請求のメールまで気を遣って文章作成なんて、全くナンセンスでした。
こんなに美しい景色を見てのお仕事素敵ですね、噂が
本当にならないように願います。
人の噂っていい加減なこともありますね、自分で関わって確かめるしかないときもあるのでしょうかぁ。
素晴らしい経験がそのまま素敵な思い出になりますように~
素敵な考えのなおこさん~
こちらほど、暑くないのでしょうか、お体お気をつけくださいませね。
企業やお役所に比べて、芸術家が、そうして日伊以外からの依頼は、そういう傾向があるのかもしれませんね。ただでさえ報酬が低いのに、家に帰るのが難しいからと、その場に残ると、結局その日本の方にも周りの人にも、食事中や本来は自由なはずの時間まで結局かなり長く拘束されて、食事もろくに食べられずに、訳してばかりというはめにもなって、単に脳が疲れたという以外にも(イタリア語の商談や交渉、接待の方が、内容も訳すのもずっと負担が少ない……)、怒涛の3日間だったので、せめて最初の約束の最低限の報酬だけは払ってくれますようにと祈っています。
わたしも、教育費削減のために、外国人大学での日本語の授業が減って、昨年度は授業を担当できませんでしたし、同じ時間数の授業を教えていても、翌年から急に報酬がぐんと下がったりしました。教師も、通訳・翻訳と、いろんな別の仕事をかけもちしないとなりたたないのであって、芸術活動が大変だからと言って、その大変さを同じ弱い立場の人に押しつけるのは、おかしいと思います。
受ける人が安心して仕事を受けられるような環境や条件を、依頼者に整えておいてほしいものです。
すぐ近くに住む友人に会えるいいチャンスかと思ったら、お互いすれ違いで会う機会がもてなかったのですが、また明日、土曜日には再び通訳をしに戻るので、晩にでも久しぶりに会えたらいいなと楽しみにしています。昨日から再び暑さが戻りつつあり、今日は本当に暑くなりました。ありがとうございます。ムームーさんも、お体を大切に。