2012年 08月 19日
アルプスの松の森
標高の高いアルプスの山は、冬は雪に覆われ、長い厳寒の時期が続くのですが、このアレヴェの森は、そうした厳しい環境に耐え、しかも樹齢の長い高山松(学名Pinus cembra、イタリア語pino cembro)の森なのです。アルプスで最も広大なこ高山松の森には、たとえば上の写真のように、樹齢600年を超える高山松も、多いそうで、ただし、本当に樹齢の長い木は、知っている人と森の奥に分け入らないと見つけるのが難しいということです。(下記リンク参照)
わたしたちがピエモンテのアルプスに滞在した8月初めには、朝は晴れ渡った空が、昼頃から霧や雲に覆われる日が続きました。この日、8月1日火曜日も、朝はいい天気で、下方に広がるカステッロ湖(Lago di Castello)が、宿の前から、きれいに見えました。
朝、9時40分過ぎに宿を出発し、まずは急な山道をひたすら登って、渓谷、Vallone dei Ducを目指しました。
この森には、ところどころに、おもしろい現代美術作品が置かれています。写真では、エリーアが、作品をテレビの枠に見立てて、自分の想像した自由なニュースを伝えています。
あちこちに、色とりどり、形もさまざまなナデシコ(garofanino) が、元気に花を咲かせています。
登っていくうちに、目にする木のほとんどが、高山松となり、道の傍らを、水が流れるようになりました。この辺りにはブルーベリーの茂みがあり、おいしく熟した実も多かったのですが、蚊もひどく多いので大変でした。
渓谷への途中にあるバニュール湖に到着したのは、出発してから約2時半後、午後11時10分過ぎのことでした。休憩も兼ねて、しばらく湖のまわりを散策します。湖畔の山小屋にレストランがあり、営業時間を尋ねると、午後1時までとのことです。そこで、目指す渓谷を午後1時半まで歩いてから、山を下り、このレストランで昼食を取ることにしました。
冒頭にも写真を載せた、樹齢600年以上の高山松は、この湖のほとりにありました。
渓谷、Vallone dei Ducはみごとな高山松に覆われています。登っていく途中で、木の洞から水が湧き出る、それは趣のある泉に出会いました。
ブルーベリー(mirtillo)の茂みがところどころにあるので、時々実を摘んでほおばりながら、山道を登っていきます。
この辺りに着いた頃、もう午後1時半に近かった上、
それまで山を覆っていた高山松に代わって、岩が目立つようになってきたため、しばらく休んでから、山を下り始めました。そうして山を下り始めた頃、渓谷の間に積み重なった石と岩の間から、夫がわたしたちに呼びかける声が聞こえてきました。夫は一人、行動を別にして、森の奥に分け入り、樹齢の長い高山松を探していたのです。「レストランには午後1時までに戻らないと思うので、自分のことは気にせず、先に食べてほしい。」と言っていたようだと、フランコが言います。
森の中には、高山松の特徴のある松ぼっくりが、あちこちに見つかりました。
山を下る途中で、高山松の巨木を取材しに来た新聞記者の一行に出会いました。ひとしきりしおしゃべりしてから、「この先、登って行ったら、やはり巨木を探して歩いているうちの夫に会われるかもしれませんね。」と言ったら、夫の名前を聞かれました。
さて、わたしたちは無事に午後1時前に、山小屋のレストランにすべり込み、昼食を取りました。おいしいと聞くポレンタはすでになく、パスタを頼んで食べていたら、そのうち夫も姿を現し、パスタの注文も、ちゃんと受けつけてもらえました。途中で、例の二人連れに出会ったとき、「ルイージ!」と呼ばれたので、一瞬、「あれ、どこかでこの二人に会ったことがあるっけ。」と慌てたそうです。
昼食後、宿へ戻るときには、来たときとは違う道を通り、写真の湖、セッコ湖を訪ねました。乾いた(secco)という何も関わらず、水をたたえ、蛙もいる静かな湖に 出会えたのがうれしくて、しばらく湖のほとりで寝そべって、休みました。だんだん雲が低くたれ込め、冷たい風が吹き始めた頃に、再び山を下り始め、ようやく宿にたどり着いたのは、午後5時半頃のことでした。