イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

夏のトラジメーノ湖

 トラジメーノ湖湖畔から、湖の二つの島、ポルヴェーセ島とマッジョーレ島に行くためのフェリーは、ふだんは最終便が午後7時過ぎなのですが、真夏の観光客の多い時期だけは、夜間も運航されています。ただし、いつでも真夜中まで便があるわけではなく、期間が限定されている上に、運航は週末や祝祭日の前日に限られています。

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Lago Trasimeno, San Feliciano 11/8/2012 18.50

 夜の船便を利用して、夕日をポルヴェーセ島で見送ろうと、8月11日土曜日は、夕方に港のあるサン・フェリチャーノの村を訪ねました。

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 ウンブリア州では、もう長い間雨らしい雨が降らず、猛暑が続いていることもあって、各地で火災が頻発しています。新聞の地方版を読むと、同時期に多数の火事が野山を襲っていることが分かります。トーディに住む義弟の家族からは、町の近くで大規模な火災が発生し、数日間野山が燃え続けたと聞いていますし、わたしたちが、グッビオ付近を通りかかったときや、この日、湖に向かう途中にも、山のあちこちから、煙が立ち上るのを目にしました。数週間前にテッツィオ山に登ったときには、飛行機のプロペラの音が絶えず響いていました。2機のプロペラ機が、消火のために、トラジメーノ湖で水を汲んで、火事現場に向かっては、新たに水を汲みに湖へと向かうということを繰り返していたからです。

 この日、わたしたちが港でフェリーの出発を待つ間にも、こうして消火のために、湖で水を補給しては旅立ち、再び戻ってくるプロペラ機が、二つありました。

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 カモメたちは、観光客に煩わされない場所をうまく見つけて、思い思いにくつろいでいます。

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 駐車場から港へと、短い距離を歩くだけでも、湖の水位がひどく下がっているのが分かります。もう長い間雨が降らない上、消火作業のために、水が持ち運ばれるからです。

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 さて、ようやくフェリーが出発しました。船は、太陽が明るく照らし出す湖面を、進んで行きます。わたしたちがポルヴェーセ島(Isola Polvese)がとりわけ好きなのは、自然が豊かで、観光客の数も限られ、静かに散歩を楽しめるからです。

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 ところがこの日は、ダンス合宿らしきものがあって、港付近で、老若男女がにぎやかな音楽と共に、講師にならって、踊っていました。そこで、港から離れて、湖の周囲を歩くことにしました。夏の島の魅力の一つ、色とりどりに美しいキョウチクトウの並木が、夕日を浴びています。

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夕焼けに染まりゆく空の下、ちょこんと並んでいるマッジョーレ島(Isola Maggiore)ミノーレ島(Isola Minore)を見やると、この冬、27年ぶりに凍りついたトラジメーノ湖の上に、2島がやはり同じように仲よく並んでいた様子を思い出して、何だか感慨深くなりました。

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 急ぎ足で歩いて、まずは、こちらの展望台までたどり着きました。

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 そうして、その近くにあるこちらの石の椅子に座って、夕日が沈むのを見守ることにしました。

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 家を出る前に、天気予報サイトで、この日の日没は午後8時20分頃と確認していたのですが、それより早く薄暗くなったので、夫は、もう日が沈んだのかと、心配していました。暗くなったのは、太陽がしばらく雲の間に隠れていたからで、再び雲から顔を出した夕日は、空も湖も、きれいに染めていきました。

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 今日の日と、すばらしい眺めに感謝しながら、沈んでいく太陽を見送りました。

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 さて、次のフェリーが島を発つのは、日没後約20分の8時40分です。日没後30分ほどで、周囲が暗くなってしまうため、何とかこの便に乗ろうと、二人で、急いで港へと向かいました。

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 この日は行き当たりばったりに、人の多そうな場所を避けて、反時計回りに島の周囲を歩きました。地図もないので、どう港に戻れば早いのかが分からず、とりあえず反時計回りの散歩を続け、つまり来たときとは別の道を通って、港に向かいました。

 古城に近づくと、こちらのみごとなキョウチクトウの並木が見えました。ポルヴェーセ島には、花ざかりに美しいキョウチクトウの並木が二つあります。一つは、先にご紹介した、サッカー場近くにある並木。そうして、もう一つはこちら、古城へと向かう道の両側に続く並木です。数年前、花ざかりにこの道を通って感動したわたしたちは、次の年に、無残にも根元近くまで剪定され、花の咲かないキョウチクトウの並木を見て、なんとむごいことをしたのだろうと思いました。この日、その並木が、再びみごとな花を咲かせているのを見たときは、本当にうれしかったです。

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 古城まで来れば、港まではあと一息。フェリーの時刻には十分間に合います。ところが夫は、船が予定時刻より早く出ては大変と、ひとり駆け足で港に向かいました。

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 船が港を出発したのは、8時45分のことでした。夕焼けの中、少しずつ遠ざかるポルヴェーセ島を見やりながら、サン・フェリチャーノの港に向かいました。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by くみこ at 2012-08-22 23:15 x
つい1カ月前に訪れたばかりなのに懐かしいです~。
そうそう、この花満開でした♪
しかし、本当に暑いですね~。
うちは日陰がある午前中に公園、4時までは家にこもり
4時から庭で見にプールという毎日で、
なんだか私も子供も飽きてきてますが、
それ以外にどうしようもありません~泣
Commented by milletti_naoko at 2012-08-22 23:40
くみこさん、こんにちは。こう暑い日ばかりが続くと、冷房のない家の中では、室温がどんどん上がっていって、大変ですよね。わたしもせめて扇風機だけは買いたいと最近心底思うのですが、もう秋が近いというニュースも…… 庭のミニプール、楽しそうです。うちは何だかんだで暑い最中も外に出る必要に迫られて、夫の車にはエアコンがないので、車内でも帰ってからもぐったりです。アイロンがけも掃除も料理も、夏はつらいことと言ったら。ただでさえ暑い屋内が余計に暑くなる上に、動くので暑くなるという…… 早く去れ去れ、この猛暑。残暑お見舞い申し上げます。何とかお互いにあと少し、この暑さを乗り切りましょう!
Commented by koba at 2012-08-23 08:03 x
瀬戸内でもそろそろ秋の気配を感じるようになりました。稲田が黄色く色づいたのもあります。吹く風も、空ももう秋です。なぜか暑さだけが残っています。
二人で夕陽を見に行く!今日の日に感謝する。うらやましい限りです。
夏は夜。秋は夕暮。蛍も虫の音も無くても。イタリアの自然を感じたくて読ませていただいています。
Commented by ムームー at 2012-08-23 10:51 x
なおこさん
美しい眺めですねぇ~
夕暮れから陽が沈むのは遅いのですね。
こちらは日暮れが早くなってきました、朝晩は涼しく
なりもう少しの辛抱だと思っています、涼しくなれ~♪
こちらに咲く夾竹桃は美しく景色に馴染んでいますね。
美しい景色を見せて貰えて嬉しいですわぁ~
Commented by fusello at 2012-08-23 14:35
はじめまして♪
美しい夕焼け、日没ですね!
数年前、マッジョーレ島にあるレース博物館を見学するためにトラジメーノ湖を訪れました。秋だったゆえか、入館者も少なくゆっくり鑑賞することが出来ました。
島のご婦人たちは窓際で、かぎ針を動かしレースを編み、軒先で作品を販売しておりました。(一石二鳥?) 
そうそう、慌て者の私は、トラジメーノとトラメッジィーノをいつも間違えて笑われております。
また覗かせていただきます♪
Commented by milletti_naoko at 2012-08-23 15:55
kobaさん、おはようございます。瀬戸内海の穏やかな青い海と稲の穂がなつかしいです。ペルージャでは相変わらず最高気温が35度から40度というひどく暑い日が続いていて、冷房のない家では早朝・夜間に涼しい空気を取り入れて、窓を閉め切っても、室温が夕方には30度を超えるようになりました。早くこちらにも秋の気配が感じられるようになりますように。
Commented by milletti_naoko at 2012-08-23 16:04
ムームーさん、時々夫と山に登って、夕日を見送ってから下山するのですが、30分以内に急いで降りないと、山は特に木々も茂っているために、足元が暗くなって大変です。この日の日没は8時16分頃でしたが、これでもペルージャでは、夏至の頃に比べると、かなり日が短くなりました。ちなみにイタリアの夏の日没が日本と比べるとかなり遅く感じられるのは、夏時間を採用しているからでもあります。

京都も日中はまだ暑いんですね。そちらもこちらも、どうかもう少し涼しくなってくれますように。キョウチクトウ、たそがれの中で撮影したので、色とりどりの花の美しさが分かりにくいのですが、本当にきれいなんですよ。
Commented by milletti_naoko at 2012-08-23 16:21
fuselloさん、はじめまして。レース博物館は、わたしもかなり昔に訪ねたことがあります。イタリアの各地を訪ねて、レース編みを学んでいらっしゃるんですね。夏は観光客の多いマッジョーレ島も、確かに春や秋には、通りを歩くと、長年島で暮らし続けるご婦人たちの姿が、目立つようになりますよね。

以前にも、湖の記事を書いたとき、fuselloさんと同じように名前を間違えてしまうという方がいました。日本語では[zi](Trasimenoのsi)と [dzi](tramezzinoのzi)に発音の弁別機能がないので、よけいに混同しやすいのでしょうね。
by milletti_naoko | 2012-08-22 15:53 | Umbria | Comments(8)