2012年 09月 27日
パンの祭典 セニガッリア2
たとえば、パン売り場のこの掲示には、イタリア語のpane「パン」の語幹やpaneという言葉を組み入れてできた言葉が説明されています。
パンの語源の説明にも、なるほどと思ったのですが、特にいいなと思ったのは、後半です。compagno「仲間」、 compagnia「つきあい」を意味するイタリア語は、もともとラテン語のcum panis「(同じ)パンで」という表現に由来していて、要するに、「仲間、同志」とは、語源的には、「同じパンを共有できる人」だというのです。
「パンを共有することで、仲間になって、つきあうことになり、一緒にいられるようになる。分かち合われたパンは、友情や保護、たとえ知らない者どうしでも知り合おうという気があることを意味する。パンを分け合うことは、相手を暖かく出迎え、何を必要としているかに気づくことでもある。」(「 」内は石井訳。意訳です。)
日本語でも、「同じ釜の飯を食った仲」と言いますが、イタリア語では、それが「パン」(pane)なのだなと改めて思いました。companatico「パンと一緒に食べるおかず」という単語には、pan(e)という単語が入っているのが、つづりからも意味の上からもわかりやすいのですが、compagno、compagniaでは、pan(e)がpagn(e)と姿が変わっているし、語彙も「パン」から離れているので、気がづきませんでした。
脱穀機やトラクターなど、パン作りには欠かせない小麦の耕作や収穫に必要な農機も、一昔前のものやつい最近のものなどが、いろいろと並んでいます。
パン教室も開かれていて、子供たちがプロに作り方を学んでいます。大人用の教室もあって、無料だし参加したいと、夫はずっと言っていたのですが、電話をしたときには、すでに予約が打ち切られていました。
パン祭りとは言っても、会場では、他にも、ハチミツ、オリーブオイル、チョコレート、ジャムなど、さまざまな店が並んでいます。夫は、のどが渇いたと言って、ビールを飲みに行きました。ビールもハチミツも、買ったあとで、他にも販売している店があることに気づきました。
油を加えなくても、塩と少しのワインを加えるだけで、あとは火にかけておけば、豚がおいしく料理できるという不思議ななべも販売されていました。豚の脂は取り除いて、オリーブオイルを使った方が体にいいのではないかと思ったので、購入しなかったのですが、豚を料理するなべが、豚の形をしていて、あいきょうがあります。
次から次へとパンが作られ、焼かれている様子も見ることができます。午後5時頃になると、かなり人が増えてきました。
午後5時半頃から、パンに関する講演を二つ聴きました。このジャーナリストからは、最近、イタリアの大手スーパーマーケットやバールで売られたり、学校や企業の食堂で使われたりするパンが、ローマニアからイタリアに運び込まれたものであることが多いという話がありました。ローマニアで作ったパンを冷凍して、大量にイタリアに運び込み、原材料も生産国も生産者も記載せず、そういう状態で、イタリアで店先や食卓に並んでいるというのです。ナポリ付近で、健康への被害が深刻と思われるような釜を使って焼いたパンが大量に作られ、それが学校の食堂で児童に配られていたという恐ろしいニュースも聞きました。
次の語り手は、ウルビーノの農家の方です。広くはない畑でも、年中、小麦を始めとしたさまざまな農作物を育て、自分たちが育てた麦からできた小麦粉で、パンも作って、売っているという方で、どんなふうに、どこで育てられたかが分かる食物を食べること、そして、農業、環境の大切さを、ご自身の経験も踏まえて、分かりやすく語ってくれました。
わたしも夫も、この語り手の生き方や農業にすっかり魅せられて、このあと、この方が家族と経営するLa Fattoria dei Cantoriのスタンドで、話に聞いていたパンなどをたくさん購入しました。
ペルージャからセニガッリアだけでも車で2時間半かかるので、朝夫に、セニガッリア周辺で宿を見つけようと言っていたのですが、安い宿が見つかりません。結局、リミニのフランコ宅に電話をし、午後8時から高速道路で90kmを北上し、途中、フランコ宅近くのピザ屋で4人分のピザを買って、午後9時過ぎに着いたフランコ宅で、皆で夕食にピザを食べることになりました。ひどく慌しい1日になりましたが、改築中の家についての懸案事項について、フランコにいろいろ相談もできて、結局はよかったかなと思いました。
以前Youtubeで見つけたビデオにイギリスのカリスマシェフがイタリアの給食はとても質が高いというのをイタリア(プーリア)の学校給食と比較して見せていました。それでもこんな問題があるのですね。イタリアは食が自慢できることなのに。子供たちにはちゃんとしたものを食べさせてあげたいです。未来のイタリアのために。
このイベント、パンの販売のみでなく講習や講演もたくさんあり、かなり充実したイベントだったのですね。行けなくて残念でした。是非来年は行ってみたいと思います。
それにしてもこの日お二人がランチに召し上がったパニーノ、値は張るものの本当においしそうです!私もなおこさんと同じくパンよりはご飯の方が好きですし、パニーノと言えばポルケッタなのですがなおこさんの仰る極上のパニーノ、イベントのみのお店ではないとのことですから是非食べに行ってみたいと思います!
イタリアは本来学校教育や食文化の質は高いはずなのですが、マフィアなどの関与で、こんなふうに自分が暴利を貪るために、皆の健康を犠牲にする例も多々あるようで、残念です。以前、買ったまま読んでいない本の一つに、環境汚染・粗悪な食品の流通を扱った『Così ci uccidono』があります。消費者が危機意識を持ち、行政に呼びかけていくこと、本当に体にいいものを選ぶことが、まずはわたしたちにできることかなと思います。
鮭のマリネのパニーノ、本当においしかったんですよ! あとでパン祭りのサイトを見ると、店は、賞をたくさん受賞しているシェフのものだそうです。Pesaroにもおいしい日本料理店があると以前から聞いていますし、海の近くなので、やはり魚も新鮮で食べる人の舌も肥えているのだと思います。いつかぜひお会いして、一緒に食べたり散歩をしたりしましょうね♪
とても興味深い話です。私は、手作りが高じて、パンを焼き始めて25年になります。酵母も自然酵母にして10年。週に二回の楽しみに。こんなお祭りに是非行ってみたいと思います。楽しい話題、ありがと~ございます。
ナポリでのパンの話、こないだTVでやってましたよね?(Blue Notteをやってた人の新しい番組・・・ですよね?)私ももう背筋がぞくぞくしました。前にREPORTでもホールトマト缶詰のトマトの話題があり、改めてまだまだ闇商売は根付いていることを認識されられました。
自分も特に子供を持つようになって、大型スーパーで売られている食品や
できあいのソースなどに疑問を持つようになりました。
原産はどこなのか?ちゃんとした農家なのか?
添加物は・・・?
最近はわが町で地元の農家の方だけの市がたつようになったりGASに参加したりと、
大型スーパーで購入する安さと便利さからまだまだ完全脱却はできませんが
少しづつ変えていきたいと思っています。
パン教室には参加できませんでしたが、夫はピザ職人の方から、おいしいピザ作りのコツを教わってうれしそうでした。
『Report』や『Le storie』などの番組で、イタリアの環境汚染や食品公害について知るたび、恐い思いをします。わたしもどこでできた商品で添加物についても気にしながら買い物をするのですが、たとえば健康にいいと聞いて食べている玄米に、「有害な物質が蓄積しやすい」と聞いたり、イタリアの米の生産地として有名なパダーナ平原が、イタリアで最も水が汚染されている地域だと聞いたり(後者は確か昔『Anno Zero』で見たような)…… 生姜も体にいいと言うので、よく食べるのですが、以前は南米や東南アジア産の生姜をスーパーでよく見かけたのに、最近見つかるのは皆中国産です。もし土壌が汚染されていたら、いくら生姜が健康によくても、結局は……? いろんな情報にアンテナを張って、安全な食生活を送れるように心がけたいものです。