2012年 10月 23日
ピサで毒キノコ中毒死
ピサ在住の40歳の女性が、先週水曜日に近所の山で、キノコ狩りをし、夕食にと調理して家族と共に食べました。キノコを食べた彼女とその両親は、当日の夜から強い腹痛と吐き気に襲われます。眠れぬ夜を過ごした翌日の早朝、訪ねた救急病院で、キノコによる食中毒と分かったものの、命を救うにはすでに肝臓移植しか手がなく、日曜の午後、ようやく移植可能な肝臓がピサに届いたときには、すでに女性は逝去していました。
その後、父親と母親は、肝臓移植を受けたものの、すでに体内に毒が回って、時遅く、相次いで亡くなります。キノコを採った女性の12歳の息子も、毒キノコを口にしたのですが、幸い食べた量が少なかったため、肝機能は悪化したものの、治療が可能で命に別状はないとのことです。
突然、命を失うことになった3人の不幸と家族を失った少年の心痛を思うと、言葉もないのですが、最近、わたし自身が、キノコ狩りにつき合って、それを記事にしたという経緯もあり、よく知らずにキノコを口にすると、そういう万一の悲劇も生じかねないということをお知らせしようと、今回は、この事件について、お伝えすることにしました。
キノコ狩りをする際には、わたしたちが、あまりよく知らないキノコを見たときでも、そうなのですが、自分たちよりキノコを知っている人に、食べられるかどうか、安全かどうかを尋ねがちです。実際、『La Nazione』の新聞記事によると、女性は、キノコが食べられるかどうかを疑問に思ったようで、何人かの知人に、そのキノコを見せて、食べても大丈夫かを尋ねたようです。結果として、彼女がキノコを料理したということは、記事には明記されていませんが、どの知人も、食べても問題がないと言ったのでしょう。
今回、3人の命を奪ったキノコは、学名、Amanita phalloides、和名をタマゴテングタケという、猛毒を持つキノコです。下記リンクの三つ目のA.M.I.N.T.のサイトには、3ページにわたって、さまざまな色や形の、このAmanita phalloidesの写真があるのですが、写真を見てもお分かりのように、色も形もさまざまです。最初に掲げたリンクの新聞記事では、毒キノコの写真を九つ載せているのですが、Amanitaにしても、新聞記事の写真のキノコにしても、食べられるキノコによく似ているものが、たくさんあります。
今回載せた写真のキノコは、すべて、わたしが、今月、山を散歩中に見つけたキノコたちです。1枚目と3枚目は、タマゴテングタケによく似ているので、写真を選び、残りの2枚は、種は違うけれども同じテングタケ(Amanita)属と思われるので、写真を載せました。写真から判断するに、2枚目はベニテングタケ(Amanita muscaria)、4枚目はテングタケ(Amanita pantherina)ではないかと思うのですが、確かな自信はありませんので、もし違うよという方がいらっしゃいましたら、教えていただけるとうれしいです。タマゴテングタケほどの毒性はないものの、この二つも毒キノコですので、見かけにだまされないように、ご用心ください。
*追記(10月24日)
東京都福祉保健局の「キノコ食中毒」のページ(下記リンク参照)にある、毒キノコによる食中毒防止法が、参考になります。以下9行は、このページからの引用です。
「毒キノコによる食中毒防止5か条
1.確実に鑑定された食用キノコ以外は絶対に食べない。
2.キノコ採りでは、有毒キノコが混入しないように注意する。
3.「言い伝え」は、信じない。
4.図鑑の写真や絵にあてはめて、勝手に鑑定しない。
5.食用のキノコでも、生の状態で食べたり、一度に大量に食べると食中毒になるものがある。
もし、体調に異常を感じたら、直ちに医療機関を受診して下さい。
食べたキノコが残っている場合は、持参して治療の参考にしてもらって下さい。」
LINK
- La Nazione – Pisa – Funghi velenosi, è morta anche la madre: le vittime sono tre
- citynews Today – Funghi velenosi a cena: intera famiglia sterminata
- A.M.I.N.T. Associazione Micologica e botanica – Amanita phalloides
- Wikipedia日本語版 - タマゴテングダケ
* 東京都福祉保健局 - 食品衛生の窓 - キノコ食中毒
↑ キノコ食中毒の概要、キノコの見分け方のウソ、毒キノコによる食中毒防止法、主な毒キノコの毒成分と症状など、有益な情報が多い上、主な毒キノコの写真つき解説へのリンクもあります。
* Ministero della Salute - I Funghi: Guida alla Prevenzione delle Intossicazioni
↑ 同様の有益な情報がイタリア語で提供されています。(PDF)
- 厚生労働省 - 毒キノコによる食中毒に注意しましょう
3人の方を死に追いやったタマゴテングタケは、物凄い猛毒を持つキノコなのですね!毒キノコが危ないことは認識していましたが、そこまでとは思いませんでした。肝に銘じようと思います。
食べられるキノコかそうでないかの識別は時にはプロの方でも難しいのでしょうか?いずれにしても、1人残された12歳の男の子を思うとあまりにも胸が痛みます。貴重な記事をありがとうございました!
自然の、秋の味を楽しもうと山に出かけたであろう女性とその家族の悲劇が本当に痛ましいのですが、自然には危険もつきもので、二度とこうした悲劇が繰り返されないようにと思って、記事にしてみました。キノコをよく知っていた知人に聞いて確かめたというのも、その知人が判断を誤ったというのも、起こりがちだと思うので、なおさらのこと。
ポルチーニでも生を多めに食べると胃に違和感があるくらいで、元来きのこは胃や肝臓に負担のかかる食べ物。
他の一目でわからないきのこは、よほどの確信がなければ食べないほうが賢明だと思います。。。
シイタケ、シメジ、マイタケ、マツタケと、秋はキノコ類の美味しい季節ですね♪
キノコ類は大好きなのですが、山で取って食べたことはまだありません。
見るからに毒々しいものもあれば、食べられそうに見えるキノコもあるんですね。
アウトドアに慣れた人と一緒に山に行ったりしても、気をつけなきゃいけませんね。
凸ポチ!
大自然の中で育まれたキノコは味が濃くて美味しいのでしょうね! でも、すぐに食用かどうか見分けることの出来ないキノコは絶対に食べない、迷ったら食べないで下さいね!
キノコ狩りも楽しいでしょうが、新居の敷地の一角で椎茸を栽培されたら如何でしょう?(椎茸菌が手に入らないかしら)
しいたけ、いいですよね。うちの夫も、うちで栽培したらと言っていたのですが、まずはイタリアで可能かどうか、調べるところから始めなくては……
確かに何人もの人から「大丈夫食べれる」と言われると食べれる疑問が確証に変わって食べてしまう気がします。
そういえば昔からきのこには素人は触れるなと言われて育ってきたので野性のきのこを見ると全て毒キノコに見えてしまって怖いんです。
だからきのこを狩れる人が勇気があるなって思っていたのですが。
きのこ狩りをするときはこういう危険性も考えてちゃんとした知識や知識を持った人と山に入らないといけませんね。
貴重なニュースありがとうございます。
毒キノコは本当に怖いですね。↑の日本の毒キノコは、もし私が読んだニュースと同一事件なら、鑑定を間違えたものを道の駅か何かで売ってしまったのだという記憶があります。
ヨーロッパで意外に多いのは、直輸入の漢方薬のキノコで肝臓をやられるパターンです。
あと、キノコではありませんが、日常生活の中で身近なものと言えば、夾竹桃が大人でも死ぬくらいの猛毒を持っています。
またゆっくりお邪魔致します。
日本の毒キノコの話、鑑定を間違えるようなことが二度とありませんように。イタリアでは、救急車で運び込まれるようなキノコ中毒の例があとをたたないようで、気になります。気をつけたいものです。