イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

秋のラヴェルナ

 10月14日曜日は、夫と二人で、秋色に染まりつつあるラヴェルナを訪ねました。

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La Verna 14/10/2012

 ベッチャの駐車場に車を置き、ラヴェルナへの参詣路を上る途中で、左に曲がり、ペンナ山(Monte Penna)のそびえ立つ岩の下へと向かいます。

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 花の時期が終わろうとしているシクラメンが、落ち葉の間に、花を咲かせていました。

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 岩山のふもとを覆うブナの森を歩いて行くと、

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 緑の苔の間から、かわいらしいキノコが顔を出しています。

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 地表に見えるブナの根も、

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森のここかしこに積み重なった岩たちも、優しい緑に覆われています。

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 雨が降って、足元が滑りやすい山道を、長く伸びたブナの根に、助けられながら、登ります。

 正面の木の幹には、赤と白で示された、CAI(イタリア山岳クラブ)の道しるべがあります。時には、木に、時には岩に印されたこのCAIの道しるべを手がかりに歩きます。

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地図は、”Parco Nazionale delle Foreste Casentinesi, Monte Falterona e Campigna – Carta Escursionistica” (S.EL.CA.)から借用

 ラヴェルナを頂くペンナ山をめぐり歩く、代表的な散歩コースは二つあります。一つは、記事冒頭の写真で、岩壁の上に見えるラヴェルナの修道院から、さらに山を登り、ペンナ山の頂を通って、ラヴェルナに戻るコースで、上の地図に051と記された、CAIの51番コースです。もう一つは、この日わたしたちが歩いた、ベッチャ(Beccia)から出発して、ペンナ山の周囲を、岩壁の裾野を歩いて回り、ラヴェルナまで歩くコースです。(CAIトレッキングコース53-56-50)いずれのコースも、輪(anello)を描くような形に、山の周りを歩いて、出発地点に戻るコースなので、頂上を目指す51番周遊コースは、Anello Alto、岩壁の裾野を回るコースはAnello Basso della Verna(あるいはAnello Basso del Monte Penna)とも呼ばれています。(イタリア語で、altoは「高い」、bassoは「低い」を意味する形容詞です。)

 地図中に時々見える朝日のマークに似た赤い記号は、見晴らしのいい場所を示しています。この日、わたしたちが歩いた道は、茶色い矢印で示してあります。(昨年2月の記事に載せた地図を、コースが同じなので流用しています。)

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 岩壁の裾野を歩くコースでは、主に、聖なる森林(Foreste Sacre)の中を進むのですが、地図でもお分かりのように、1か所だけ、森を抜けて、見晴らしを楽しめる場所があります。

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 53番コースを、さらに歩いて行くと、道が二つに分かれます。ラヴェルナに行くには、一番上の案内にある、Croce della Callaへと向かう56番トレッキングコースを進みます。これまで歩いてきた53番コースをそのまま進むと、パンのおいしい村、リンボッキまで行ってしまいます。

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 再び、道は森の中に入ります。ブナに混じって、時折カエデの木もあります。きれいな落ち葉や

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キノコ、木々に気を取られながら歩いていたら、よく慣れたはずの道なのに、気がつくと、コースからはずれてしまっていました。と言っても、岩山の周囲を回るコースなので、岩壁から離れすぎないように気をつけながら歩いていたら、再び、赤と白の道しるべに出会うことができました。

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 ようやく折り返し地点までやって来ました。岩山の後ろをぐるりと回れば、後は、ほぼまっすぐに、ゆるやかに続く坂道を登るだけです。ここから、ラヴェルナまでは、50番トレッキングコースなのですが、道幅も広いので、もう迷う心配はありません。

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 自然の美しさを楽しみながら、ゆっくりゆっくりと歩き、途中で昼食にパニーノを食べたので、ようやくラヴェルナの修道院に到着したのは、ベッチャを出発してから、約2時間後のことでした。

 境内にある土産物屋の中にいたとき、急にどしゃぶりの雨が降り始めたのですが、幸い、雨は、屋内にいる間にやみました。

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 教会はミサの最中だったので、今回は訪ねず、再び雨が降る前にと、すぐにラヴェルナを出発しました。紅葉を愛でながら、坂道を下ります。石畳の道が、雨で濡れて滑りやすいので、途中の門から森に入り、しばらく地面の上を歩き、少しだけ遠回りして、ベッチャに戻りました。

 この日はペンナ山の岩山の裾野を行くAnello Bassoを歩いたのですが、10月21日日曜日には、頂上を目指すAnello Altoを散歩しました。近いうちに、このコースについても、ご紹介するつもりです。

関連記事へのリンク / Link per gli articoli correlati
- 雪のラヴェルナ1 / La Verna con la neve – parte1 (26/2/2011)
↑ 今回と同じ散歩コースを詳しく説明。クロッカスやマツユキソウに出会えました。
- ラヴェルナの秋 / Colori d’autunno alla Verna (17/10/2010)
↑ Chiusi della Vernaの観光案内所からラヴェルナまでの散歩。紅葉がみごと。
- 夏のラヴェルナ、ラベッチャから石畳の参詣路を通って修道院へ / La Verna in estate (10/7/2010)
↑ ラベッチャからラヴェルナまでの参詣路の進み方と地図。
- ラヴェルナ大冒険2 / La Verna al tramonto d’inverno (15/1/2011)
↑ 修道院の土産物屋店内の写真あり。薬草を使ったリキュールやクリーム、ラヴェルナのガイドやトレッキング用地図、カトリック教関係の置き物や書籍などを、販売しています。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by bianchi_saitoh at 2012-10-25 23:01 x
なおこさん、10日くらい前ですが紅葉の見ごろにはまだだったようですね。
やっぱり地形図を読みとらないと安全な山歩きはできませんね。
解説がないとイマイチです(笑)。
Commented by milletti_naoko at 2012-10-25 23:20
bianchi_saitohさん、今年はテッツィオ山でも、ラヴェルナ周辺でも、紅葉が遅れているようです。このコースでは、木の幹に印された赤と白のペンキが消えかけている場合や、どの方角に行けと指示しているか判断に迷う場合もあって、気がついたら、道に迷っていました。21日日曜日は、ラヴェルナが信者や観光客でいっぱいだったのですが、初めて歩く道としては、山道の解説と道しるべが不親切なので、途中で引き返す人を大勢見かけました。ラヴェルナ周辺の森林は、狩猟が禁じられているので、道に迷っても、猟犬や流れ弾にあう心配がないので、幸い、秋でも安心して歩くことができます。この日は、夫は瞑想にふけりながら、わたしは自然の美に足を止めながら、別々に散歩をして、ピアディーナ屋で落ち合って、一緒に昼食を食べました。
Commented by Mariko at 2012-10-26 00:26 x
なおこさん、こんにちは。ラヴェルナの情報、ありがとうございます。こんなトレッキングコースがあるんですね。情報が無くて知りませんでした。私は、10/10に行ったんですよ。ひとりでゆっくり歩いてみたいです。でも、ちょっと怖いかな?
Commented by milletti_naoko at 2012-10-26 03:29
まりこさん、こんばんは。どういたしまして。イタリアのトレッキングコースには、よく整備されているところもあるのですが、ラヴェルナ周辺のコースは、案内が今ひとつで、初めての人だと道に迷いそうなところもあります。聖地なので変な人はいないと思うし、一人で歩く外国人男性や女性もよく見かけます。はるか遠方から一人で歩いて来たという年配の男性や女性に会うことも、時々あります。ただ、安心して散歩できるためには、複数でいた方が、心強いかもしれません。でも、山道に慣れていて、地図が読めれば、大丈夫だと思います。
Commented by ムームー at 2012-10-26 11:08 x
なおこさん
こんにちは。
紅葉の山々の美しい景色に見とれながらシクラメンの可憐なお花も
愛でていいですね、道に迷う事もあるのですね。
色々なことを感じながら歩くのは素敵ねぇ。
こういうことを経験されておられると視野も広がりいいですわぁ~
若かったら見習いたい~
Commented by milletti_naoko at 2012-10-26 15:40
ムームーさんがお住まいの京都では、寺社に美しい庭園があって、よくそこで紅葉や桜の花を楽しまれていますよね。イタリアでは、一般に教会には、そういう自然を愛でられる庭が併設されていないのですが、自然の美しい中に建てられた修道院や教会が、各地に散りばめられています。聖母が民の前に現れたという場所だったり、自然が美しく瞑想や祈りにふさわしい地として選ばれた場所にあったりするこういう聖地の周囲の森は、自然の中を歩きながら、魂に触れるものも多くて、散歩をしながら、心が洗われる気がします。
Commented by Masami at 2012-10-26 17:05 x
お天気にも恵まれ気持ちの良い山歩きとなったのでしょうね~!
山に咲いているシクラメンは香りがとてもよいですよね!
この時期で花が終わってしまうのですね~。

ブナの木も見事だし、キノコの種類も凄いですね!!

>なおこさんの前回の記事「ピサで毒キノコ中毒死」
を読んで思い出し、私もサルモネラ食中毒の記事を書き、
ブログ内でなおこさんの記事をリンクさせていただきました!
どうぞよろしくお願いしますね♪
Commented by milletti_naoko at 2012-10-26 18:48
まさみさん、こんにちは。去年に比べて、今年はシクラメンは早いのに、紅葉は遅いような気がします。枯葉の中から顔を出すかわいらしいピンクの花が、もう見られなくなるかと思うと残念です。ラヴェルナのブナの森は、苔といい岩の並びといい木の並びといい、歩いていると日本庭園のようだと思える美しい風景によく出会います。

リンクをありがとうございます。結局は、イタリアでも日本でも、危険を知らず無用心なために、キノコ中毒が後を絶たないのだと思いますので、少しでも多くの人に毒キノコの危険を知っていただけたらと思っています。

記事を拝読しました。まさみさん、産後でまだサラちゃんが幼かったこともあって、本当に大変だし、おつらかったことと思います。サルモネラ食中毒もやはり注意すれば防げるのですよね。自分とそして大切な家族の健康と命を守るためには、いろいろと情報にもアンテナを張り、注意する必要がありますね。
Commented by ぷー at 2012-10-27 04:47 x
なおこさん、ご無沙汰しています!
こちら、イタリアの山々も段々と綺麗に色づいてきていますね。
以前のコメントでも書きましたが、私はイタリアに来てから植物に興味を持ち始めたので、こちらの山で野生のシクラメンを初めてみたときには、「これってこんな山の中に咲くの?!」とビックリした覚えがあります(無知が過ぎて恥ずかしいけど告白〜)。それに野生のシクラメンって香りが高いんですよね。それにも驚きでした。
Commented by milletti_naoko at 2012-10-27 05:03
ぷーさん、こんばんは♪ イタリアも野山の秋はきれいですね。植物や山歩きに興味を持ち始めたのは、わたしもイタリアに来てから、と言うより、夫とつき合いだしてからです。自生のランやシクラメン、イタリアは日本と違って、土壌がアルカリ性の場合が多いから、山に生えるのかなという気もしますが、それにしても、イタリアにもツクシが生えると知ったときにはびっくりしました。皆さん、香りについておっしゃるのですが、シクラメンについては、恥ずかしながら香りを特に意識したことがありません。うちの夫や友人たちは、ジャスミンとかバラとか、特に香りが強い花や香草が好きなので、シクラメンの香りをかいでいるのを見たことがないからでしょうか。
by milletti_naoko | 2012-10-25 12:30 | Toscana | Comments(10)