2012年 11月 15日
テベレの満水とミルヴィオ橋
世界中の恋人たちが愛を誓って南京錠をかけることになり、
つい最近、ローマ市が、南京錠の撤去を行ったのですが、その是非をめぐっての論争がにぎやかでした。
わたしたちが、このミルヴィオ橋を渡ったのは、昨年10月21日です。リエーティからローマへの巡礼の最終日に、ミルヴィオ橋を渡り、以後は、サンタンジェロ城前にかかるサンタンジェロ橋まで、ずっとテベレ川に沿って歩き、目的地のサン・ピエートロ大聖堂に到達しました。
このときは、これだけ水位の低かったテベレ川も、トスカーナ・ウンブリアで続いた連日の雨で水かさが増して、昨日は、ミルヴィオ橋の橋げたのアーチの大半が、濁流の下になりました。
水位が頂点に達したのは昨日昼で、昨夜のニュースでは、「一時は、ミルヴィオ橋の橋げたのアーチが、すっかり水に覆われた。」と言っている人もいました。上のニュース映像にもありますが、特にローマの北部、またローマ市内でも、各地で、テベレ川およびテベレ川の支流の一つであるアニエーネ川の氾濫による洪水が起こり、一部の駅や道路、病院などが、封鎖されました。
昨日、ローマでテベレが満水に達するという警報は、一昨日から出ていたのですが、ローマ市側も住民も、ここまで被害が出るとは予測していなかったようです。ローマでの水害や今後の予測については、ウンブリア州の南、ラッツィオ州との州境近くにあるコルバーラダムの放水に言及している記事がいくつかありました。(写真は2年前に、トスカーナのソラーノ、ピティッリャーノに行く途中、たまたまこのダムの放水に立ち会ったので、撮影したものです。)
(Touring Club Italiano)
トーディとオルヴィエートの間に広がるダム湖、コルバーラ湖(Lago di Corbara)の、通常128mである水位が、連日ウンブリアに降り注いだ雨で138mに達し、この高さ10mの増量は、水の体積で言うと、7千万立方メートルに値するそうです。さらに、オルヴィエートの北を南東に向けて流れるパッリャ川(Fiume Paglia)も氾濫して、オルヴィエート郊外で洪水が起こり、甚大な被害が発生したのですが、この増水したパッリャ川も、ご覧のように、テベレ川に注ぎ込みます。
日本に住んでいた頃、教え子の多くが住む町に洪水が起こり、家庭訪問のときに、「床上1メートルまで浸水して、大変だったんですよ。」という話を、保護者から聞いたのですが、このときの洪水は、ダムの放流ミスによるものでした。この夏は、雨が降らなかったので、大切な水をできるだけ蓄えたいという気持ちは分かるのですが、雨の予報を見て、早めに少しずつ放流を始めることはできなかったのだろうかと思わずにいられません。
テベレの水源は、イタリア半島の中央を南北に貫くアッペンニーニ山脈の、エミリア・ロマーニャ州とトスカーナ州の境にあります。フマイオーロ山(Monte Fumaiolo)に発するテベレは、すぐに州境を渡って、南へと流れ、トスカーナからウンブリアへ、そしてラッツィオへと長いながい旅をします。ネーラ川(Fiume Nera)や、先のパッリャ川をはじめとして、テベレの支流の多くは、今回、大雨の続いたトスカーナ、ウンブリアにあります。
わたしたちが山歩きに出かけるときは、たいてい、ペルージャから、テベレ川に沿って走るE45 を北上し、車で、サンセポルクロから山に登ったり、あるいは、ピエーヴェ・サント・ステーファノからラヴェルナを目指したりして、トレッキングの出発地点に向かいます。このとき、いずれにしても、必ず目に入るのが、やはりテベレ川の水をせきとめるダム湖である、モンテドッリョ湖(Lago di Montedoglio)です。
このモンテドッリョ湖が、この夏はすっかり水位が下がっていて、かつては美しく大きかった湖が、浅く小さくなり、リミニの友人は、「ああ、この湖にもいい砂浜があると思ったら、水位が下がって、湖の底が見えているからなのね。」と言っていました。夫は、2年前にダムの堤防が決壊して以来、決壊を恐れて、水位を低く保っているのだろうと推測していました。それが、今日のニュースを読むと、雨が降らなかったために水位が下がっていたのであって、今回の豪雨で、ダムの水位が10メートル以上上がり、雨が降る前に比べて、水量が倍になったそうです。堤防が決壊したあと、定められた水位の上限が383-384mで、現在すでに水位が380mに達しているとのこと。
現在の天気予報では、ウンブリアでは週末、トスカーナのテベレが走る地域では、日曜日から週の初めにかけて、雨が降るということです。(48時間以上前の天気予報は、以後大幅に変わる可能性もあるそうですが。)この雨の後で、今回の豪雨では、満水に達していなかったモンテドッリョダムまで、コルバーラダムと同時に一気に放水をしたら、テベレの下流で、再び洪水になる可能性が高いのではないかと思います。テベレ川の水位が、水害が生じない程度まで下がったのを見届けてから、再び雨が降る前に、二つのダムが少しずつ放水をしておけば、このような事態が再度起こるのを防止することができるのではないかと、素人判断では思うのですが…… 記事を読む限り、モンテドッリョでは、ダムが再び決壊することばかり、ローマでは、コルバーラダムの放水ばかり心配していて、この二つのダムの同時の放水が、ウンブリアやラッツィオの下流域に及ぼしうる水害については、書いてある記事がまったくないので、素人の見当違いかもしれないものの、ひどく心配になっています。
今回の豪雨では、テベレの水がローマまで押し寄せ、洪水を起こす前から、ウンブリアのオルヴィエート周辺や、トスカーナのマレンマやグロッセート、カッラーラなど、多くの地域で洪水が生じ、自動車が濁流にさらわれたり、道路が陥没したりして、亡くなった人もいます。封鎖された道路や電車の運休もあり、産業・農業には甚大な被害が生じました。オルヴィエートに出勤するため、運転していた車が、あっという間に水の底になったという人もいれば、ローマ郊外を運転していて、水位が車の半分の高さまで達したので、車を置いて避難したという人もいます。また、昨年秋のチンクエ・テッレの土砂崩れは、まだ記憶に新しいことと思いますが、イタリアでは、ふだんからできるはずの整備や対策が行き届かないため、大した量の雨でなくとも、土砂崩れや洪水が起きかねない場所が、多くあります。今週は、ペルージャ市内でさえ、夫も何度か、土砂崩れが起きて、道幅の狭くなった道路を、通過しています。ニュースを見聞きすると、今回、ここまで被害が広がるとは、予想していなかったようで、住民も、「大丈夫だろう。」と被災地を車で通り、その車が洪水に襲われたりしています。今後の天気予報や、洪水・土砂崩れの情報には、十分ご注意ください。
*追記(2012年11月16日)
昨日、夫から聞いて、最近、テベレ川の水をせきとめた人工湖、モンテドッリョ湖(下記リンク参照)とトラジメーノ湖を結ぶ水路ができたと知りました。それなら、万一モンテドッリョダムが満水になっても、テベレ川に放水する前に、水はまずトラジメーノ湖に向かうはずです。モンテドッリョ湖のあるトスカーナで大雨が続くときは、トラジメーノ湖でも雨が降る可能性が高いので、トラジメーノがどれだけの水を蓄えられるかは分かりませんが、トラジメーノは、モンテドッリョよりも、はるかに広大なので、もし水路がうまく機能すれば、トラジメーノの水位も上がり、水害の恐れも少ないと、安心しました。
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15/11/2012
Ora anche la diga di Montedoglio è quasi piena. Ascoltando e leggendo le notizie delle esondazioni del Tevere a Roma e ad Orte, mi preoccupa quanti danni gravi potrebbero essere causati se dopo probabili piogge fra qualche giorno in Toscana...e in Umbria venissero aperte insieme la diga di Montedoglio e quella di Corbara. Queste due dighe appartengono sì a due regioni diverse e non si trovano nella regione colpita dalle alluvioni del Tevere in questigiorni. Tuttavia, penso, se i personali delle due dighe collaborassero insieme e anticipassero l'apertura delle dighe e mandare moderata quantità di acqua preventivamente (naturalmente dopo il livello del Tevere sarà sufficientemente calato) anziché scaricare l'acqua con un grande impeto, in questo modo si potrebbero evitare o limitare i possibili dannni futuri a causa del maltempo. E spero che qualcuno responsabile ci pensi...
16/11/2012
Ho saputo che adesso ci sono allacci che collegano la diga di Montedoglio e il Trasimeno e ora sono meno preoccupata.
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関連記事へのリンク
- チンクエ・テッレを歩く3 愛の小道 (11/7/2010)
↑ ローマのミルヴィオ橋に、愛の南京錠を取りつけるブームの発端を紹介。
- ローマ到達 (21/10/2011)
↑ 6日の巡礼のあと、無事、サン・ピエートロ大聖堂に到達。
- tufoの里を訪ねて2 (4/12/2010)
↑ 人工湖、コルバーラ湖と、ダムの放水の写真あり。
- イタリア各地で洪水、土砂崩れの恐れ (12/11/2012)
参照リンク / Riferimenti web
- Il Messagero.it – Il Tevere esonda, acqua oltre i 13 metri. Fateenefratelli, allagato prontosoccorso (14/11/2012)
- la Repubblica Roma.it – Tevere, allerta per l’onda di piena. Paura per tre barconi alla deriva (14/11/2012)
- Valtiberina online – Il livello della diga di Montedoglio risalito di ben 10 metri a seguito delle ultime abbondanti piogge (15/11/2012)
- Umbria24 - Montedoglio allacciato al Trasimeno. Zurli: «Acqua a Castiglione entro l’anno. Ecco cosa cambierà» (18/5/2012)
あらら、やっぱり、撤去されてしまったんですね~南京錠。
まあ、景観的には南京錠がゴチャゴチャとかかってないほうが良いとは思うんですけど・・・・。
水の都ヴェネチアが水浸しになったニュースなど、日本でも流れていました。あちこちの川の水位も上がっていたようですね。
温暖化の影響でしょうか。
日本もイタリアも海に囲まれた国なので、こういう災害があると今後が心配になりますね。
凸d(^ー^)pochi
対応の遅れは単に楽天的なのかそれともも何かの利害関係からか。
とにかく大事にならないように雨雲に願うばかりですね。
ベネチアの場合は、雨による洪水ではなくて、大潮や低気圧、アフリカからの南の風、シロッコなど、さまざまな気象条件もからんでいて事情が複雑なのですが、今回は、イタリアの北部・中部でも、連日の大雨で、あちこちで洪水が起こりました。イタリアの秋と冬は雨の日が多いので、今後これ以上の被害が出ないようにと祈るばかりです。