イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

イタリア語VSフランス語

 人に何か聞かれて、知らないと答えるときに、ごくうちとけた会話で、親しい相手であれば、イタリア語では、"Non lo so.”という文の代わりに、たった一音節で表現することができます。"Boh”あるいは"Bo”。これは間投詞で、イタリア語ではhの文字は発音されないので、この二つは、つづりが違うだけで、発音はまったく同じです。

 イタリア語では、このbo(h)が、発音記号で表した発音も/bo(:)/で、発音と表記が一致しているので、聞き取りやすく書きやすいのですが、まったく同じ発音が、フランス語では、beauと書いて「美しい」という意味になったり、botと書いて「(手や足が)湾曲した」という意味になったりします。発音は/o/なのに、eauと母音を三つ並べたり、発音されないtを書いたり、こういう具合なので、つづりを見て、正しく発音するのも、音声では分かる単語を間違いなくつづるのも、フランス語では、イタリア語に比べて、かなり難しくなります。

イタリア語VSフランス語_f0234936_8145174.jpg

 最近、入門書の最初から、おさらいをしているのですが、そうすると、『新リュミエール フランス文法参考書』に、こんな例文が出てきました。

  C’est un animal.
  Ce sont des animaux.
  C’est une cigarette.
  Ce sont des cigarettes.

 復習なので、最初に勉強したときに比べると、表面を流していたこともあって、そのあと、次のような文にあたって、はっとしました。

  C’est une bouteille. Il y a de l’huile dans la bouteille.

 何にはっとしたかと言うと、イタリア語の癖で、最初の四つの文を、間違って解釈していたことに気づいたのです。

 イタリア語では、"C’è … / Ci sono …"という構文が、それぞれ、「(単数/複数の人・ものなど)がある」という意味なので、それぞれイタリア語風に、漠然と、「動物がいます。」、「タバコがあります。」と捉えて、そのまま読み流していたのですが、"Il y a …”が出てきて初めて、フランス語では、主語の単複に関わらず、この"Il y a …”で、「…がある」と表現することを、思い出しました。ではいったい、フランス語では、"C’est…”、”Ce sont…”はどういう意味かと、前のページをめくって、それぞれ、「これ(それ・あれ)は…だ」、「これら(それら・あれら)は…だ」だという意味だったと、思い出しました。例文は、「これ(ら)は動物です。」、「これ(ら)はタバコです。」という意味だったのです。イタリア語とフランス語で、形はよく似ているのに、意味が違うこういう表現には、気をつけなければと、つくづく思いました。

 イタリア語とフランス語で、似ているから助かるけれども、逆にイタリア語に引きずられて、間違いやすいものには、他にも単語のつづりや名詞の性があります。たとえば、上の例文でも、フランス語のanimal、cigarette、bouteille、huileは、イタリア語のanimale、sigaretta、bottiglia、olioに、つづりが似ていたり、共通部分があったりするので、単語を知らなくても、何となく意味が想像できますし、覚えるのも楽です。この四つの単語に関しては、bouteilleを除けば、英単語の知識にも、同じように助けられることでしょう。ただ、やたらつづりが似ていて、発音が同じだけに、フランス語ではcigaretteの語頭が、イタリア語とは違って(英語と同じで)、sではなくcだということに気をつけなければいけません。

 同様に、名詞の性についても、フランス語のanimal、cigarette、bouteilleとイタリア語のanimale、sigaretta、bottigliaについては、どちらも、最初の1語だけが男性名詞で、あと二つは女性名詞と、同じになっています。まだ勉強したてなのですが、基本的には、イタリア語とフランス語で、似たような単語は、性も同じ場合が多い気がするのに、時々、huile「油、オイル」のように、フランス語では女性名詞だけれど、イタリア語では、対する単語、olioが男性名詞だという場合もあるので、これは気をつけなければと思っています。

 今日は、最近、フランス語を勉強しながら、ふと思ったことを、自分の覚え書きも兼ねて、書いてみました。フランス語の例文に、「これは動物です。」とあることですし、11月21日の朝、庭のブドウ棚の上で、日なたぼっこをしていた、我が家の子猫の写真を載せてみました。子猫はこのあと、ブドウ棚の上を歩いて、忍者ごっこをしていました。

*追記(11月24日)
 今、今度からは間違えないぞと、正しい意味と共に、例文を読み返していて気づいたのですが、イタリア語に影響されて間違えたのは、わたしも悪いけれど、ひょっとしたら、この例文自体にも問題があると言えるかもしれません。動物もタバコも、たいていの動物や銘柄のものは、いちいち人に言われなくても、説明しなくても、動物やタバコだと分かりますよね。昔よく批判された中学校の英語の教科書の最初の一文、"This is a pen."と同じで、そんなことをわざわざ言う必要のある状況というのが、そもそも存在しない、しにくいような気がしたわたしです。

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Le somiglianze tra l'italiano e il francese mi aiutano spesso, ma a volte mi fanno sbagliare.

Per esempio, "C'est un animal." non vuol dire che c'è un animale, ma che questo è un animale. Poi l'olio è un nome maschile in italiano, ma la parola equivalente in francese, huile è femminile. Dopo qualche mese di abbandono, finalmente ho ripreso lo studio del francese, ma sto ripassando da capo e ci vuole tempo per arrivare fino a dove sono arrivata a giugno.
La foto? Questo è un animale, un nostro gattino ninja!
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Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented at 2012-11-26 09:52 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by milletti_naoko at 2012-11-27 00:13
鍵コメントの方、こんにちは。

お優しい言葉をありがとうございます。独学は、やる気と勉強の習慣を維持するのが難しいですよね。わたしもフランス語は相変わらず怠けがちで、のんびりペースで続けています。こうやってブログに書くのは、自分が間違いやすい点を頭に入れるためでもあり、人に言ったんだから勉強しなくちゃねと、自分にはっぱをかけるためでもあります。

わたしもイタリア語を勉強し始めたときは、独学だとペースが遅くて進まないので、結局は値段のとっても高い通信教育の締め切りを目安に、参考書で勉強しましたし、英語のときは、ヒアリングマラソンや実用英検の受験と、何か目標や外的な期限を設けることで、なんとか勉強を続けました。旅行前にと一気に入門書を1冊終えたポルトガル語とギリシャ語は、やっぱり旅行に行くという強い動機と締切があったので、勢いに乗って仕上げましたが(実はこれで大学院の勉強が後回しになって、卒業が1年遅れたのですが)、(つづく)
Commented by milletti_naoko at 2012-11-27 00:14
(上からの続きです)英語は、イタリアで、何度も文法のつめや精聴をと思いつつ、途中放棄しています。メルマガも発行が遅くなりがちで、ブログの記事を減らせば、メルマガも出せるし、フランス語も勉強できると思いつつ、つい記事を書くことを優先してしまいます。

イタリア語は、英語に比べて動詞の活用が複雑で、名詞や形容詞も、性や単複によって形が変わるので、文章を読むと、辞書には載っていない形が多いのですが、少し文法を勉強すれば、読めるようになっていくはずです。講座に通うと、授業もですが、勉強仲間もできて、それが勉強の励みにもなりますよね。やる気を再燃させるのに、記事を役立てていただけるなんて、うれしいです。お互いに頑張りましょう! 
by milletti_naoko | 2012-11-23 23:59 | Francia & francese | Comments(3)