2013年 01月 06日
べファーナと冬の風
と言うわけで、クリスマスが終わるとすぐに、年末年始の装いに早変わりする日本とは違って、今日まではまだ、こんな楽しいフランス語のクリスマスソングを歌っても、大丈夫です。
Vive le vent, vive le vent, vive le vent d’hiver
風、ばんざい 風、ばんざい 冬の風、ばんざい
さすが北国、イタリアでは北部にあるアルプス山脈を、広大な国土の南に持つ国だけあって、「冬の風」を厭わずに、「ばんざい」とたたえています。
フランスは、母国語を外国語の浸透・侵略から守ろうという意識の強い国で、世界の言語でも、computerをcomputerと呼ばないのは、フランス語くらいだとは、もうずっと昔に聞いたことがあります。ordinateurと呼ぶのだと知ったのは、フランス語を勉強し始めた昨年のことですが、この歌を初めて聞いたときも、このフランスの、外国語に対する堅固な守りを感じました。ちなみに、よくフランスのすてきな歌や映画などを紹介してくれるエコールサンバ銀座校のブログの記事で、この歌を教えてもらいました。
英語の原詞では、歌の題名と同じとなっているリフレイン、jingle bellsは、日本語版では「ジングルベル」、イタリア語版でもjingle bellsのままです。それがフランス語版では、このサビ、および題名まで、歌の内容に即したフランス語に訳してあるのです。日本語でもイタリア語でも、「冬の風」という表現はあまり使わず、よく耳にするのは「北風」なのですが、まだフランス語を勉強し始めたばかりのわたしは、たぶんフランス語でもそうなのだけれども、4行目の(感嘆詞を除いた)行末、vertsと脚韻を踏ませるために、d’hiverという言葉を使っているのではないかと想像します。次の節に、Bonne Année grand-mère!(「おばあさん、新年おめでとう!」)とあるのも、最初のうちは、歌詞を見ながら歌を聴いて、「どうしておばあさんなのだろう」といぶかっていたのですが、ここでも、節の冒頭のVive le temps, vive le temps, vive le temps d’hiverの行末、d’hiverと韻を踏ませるためでしょう。
フランス語の甘い響きが、脚韻の醸し出すリズムと、陽気なメロディーに乗って、耳に心地よく、心が弾むような歌に仕上がっています。昨日は、だいぶ体調もよくなったので、この歌を聞きながら、ときに一緒に歌いながら、年末にできなかった大掃除をしました。
この歌では、クリスマスイブに、le vieux monsieur descend vers le village、おじいさん(つまりサンタクロースのことでしょう)が村に降りて来て、子供たちに贈り物をします。
一方、イタリアでは、最近でこそ、アメリカ文化を媒介に、「クリスマスイブに、サンタクロースが贈り物をしてくれる」と、子供たちに語り、また幼い子は信じるようになったものの、つい20年近く前までは、子供が冬になんらかの贈り物を受け取れた点は共通していても、土地によって、贈り主が、幼子イエスだったり、ベファーナだったり、聖ルチーアだったり、はたまた、聖ニコーラだったりしたようです。(下記リンク参照)
幼子イエスが、サンタクロースに取って代わられつつある今も、健在なのはベファーナ(Befana)で、名前の語源がEpifania(主顕節)と同じこのおばあさんは、今も、主顕節の前の晩には、世界中の子供たちの家を訪ね、いい子には、たくさんのお菓子を、悪い子には木炭を、靴下の中につめて、回って行くと言われています。
どうして、東方の三博士が幼子イエスに贈り物をしたと言われるこの日に、ベファーナが世界中の子供たちにお菓子を贈るのでしょうか? 諸説あるようですが、こういう説を下敷きに、数年前、夫が『ベファーナ物語』を書き上げて、子供たちの前で、友人と上演しています。クリスマスや主顕節の精神が、子供にも大人にも、心の奥に届くような、心温まるいい話ですので、ぜひ読んでみてください。
リンクはこちらです。
イタリア語原文
- LA VERA STORIA DELLA BEFANA
わたしが日本語に訳したもの
- 『ベファーナ物語』前編
- 『ベファーナ物語』後編
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Vive le vent, vive le vent, vive le vent d'hiver!
- Stasera a casa dei bambini buoni la Befana avranno portato i regali.
Mi piace questa versione francese di "Jingle Bells", i suoni delle parole suonano dolci alle orecchie e la canzone è altrettanto allegra :-)
- LA VERA STORIA DELLA BEFANA
↑ E’ una storiella bellissima e trasmette lo Spirito dell'Epifania. Leggete!
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関連記事へのリンク
- ベファーナが来る!
↑ 「ホウキに乗って、ベファーナが来る」という楽しいイタリア語の歌へのリンクあり。
- 贈り主いまむかし
冬の風、なんだかこの表現がぴったりしそうな気がします。
冬の風は冷たいですが、どこかぬくもりも感じるような…。
山の風も歩いて汗ばんだ頬に心地好く感じる時があります。
私もたくさんのお菓子をもらいたいです。(^^)/
夫が、わたしにもお菓子を買ってくれて、クリスマスツリーのどこかに隠してあるらしいことを言うのですが、見つけられませんでした。どこに隠したのかしら??? いくつになっても、甘いものを食べるのは、うれしいですよね♪
イタリアのクリスマスを知らずにいた私ですが、こうしてヨーロッパの中でも、お国が違えば、その意味や過ごし方が違うと言うことを初めて知りました。
我が家も昨日の朝、ベファーナが訪れたようでお手洗いに可愛らしい贈り物がちょこんと置いてありました(笑)年明け早々案の定風邪でダウン、毎年一回、必ず年明けなのです、ナターレ〜カウントダウン〜元旦までは持つのになぁ、不思議です(失笑)これからベファーナ物語、ゆっくり拝読させていただきます。今年もどうぞ宜しくお願いいたします!!
体調が随分よくなられたとは良かっですー♪
素敵な物語を読ませて頂きました。
ありがとうございます! すっかり元気になりました。今日は深い霧に覆われた中をフォリンニョまで運転して、初授業をすませてきました。イタリア語では母音の長短によって、言葉の意味が変わらないので、イタリア人の生徒の皆さんは、母音の長さを聞き分けるのが苦手です。「ビル」と「ビール」が同じに聞こえてしまうのです。母国語の影響って、おもしろいですね。