2013年 01月 25日
英伊仏ヒアリングマラソンと注意点
問題は、この35時間の約60パーセントを、家事をしながら、車を運転しながらなどのながら聞き、多聴が占めていることです。実際、1月7日までに達成した6時間半は、すべてこの「ながら聞き」でした。机に向かって勉強できなかった理由を挙げると、体調を崩していたこと、休み中に家事がたまったこと、日本語の授業の準備や通訳の仕事の交渉で忙しかったなどと、いろいろあるのですが、「これではいけない。」と、再び入門書を勉強し始めたのは、ようやく1月8日のことでした。
文法的に正しく、適切な発音で、外国語できちんとコミュニケーションが取れるようになるためには、聞くことも大切ですが、特に、初級の段階では、聞きっぱなしではだめで、きちんと内容を聞き取れているか確認することや、文法や書き言葉を通しての勉強が大切です。頭では分かっていながら、勉強内容がながら聞きばかりになりがちなとき、「外国上達の極意その3」の記事を書くために、「イタリア語がんばろうノート」に目を通していたら、
リスニング対策として、役に立ちそうなことを、いろんな本や教材から書き写して、まとめたページがあって、びっくりしました。自分の記憶になかったからです。
アルクの1000時間ヒアリングマラソンのコーチガイドを参考に、次のようにまとめてあります。
「中級 (めやす-英検2級程度。限定された範囲でコミュニケーションができる。)
・多聴と精聴のバランスをうまく取った学習プランを組む。
・映画やビデオ、二か国語放送など、教材以外のいろいろな英語に積極的に挑戦する一方で、すべてを聞きっぱなしにせず、トランスクリプションを見ながら、ていねいに聞き直したり、リピーティングを行ったりするなど、二段構えでヒアリングの訓練を重ねる。
・必ず守ること:どんな英語でも、最初の1回だけは、真剣勝負のつもりで何も見ずに最後まで聞く。
→ 自分の知識と語彙を手がかりに、類推力を働かせて、激流に立ち向かう → ヒアリングの上達。
・単語や熟語を一つでも多く身につける努力と、それが音声としてどう聞こえるかを念頭に置いた学習。
・テープの活用(上級はチェックテストを①の次にするところだけ違う、精聴に割くのは1日1時間くらい)
①インタビューを何度か何も見ずに通して聞き、概略をつかむ。(分からなければ、③を先にする)
②トランスクリプションを見ながら聞き直し、耳を慣らす。
③訳や注釈、紹介を参考に、こまめに未知の単語を辞書で調べ、内容を確認する。
④トランスクリプションを見ながら、発音やイントネーションもすべてまねるつもりで、テープのあとについて声を出して読む。
⑤もう一度何も見ずに聞き、チェックテストを解く。
→以上のような方法で、1日3時間のうち、1時間から1時間半ぐらいの時間を割いて聞く。余裕があれば、いろいろな人のインタビューで、リピーティング練習を試す。」
外国語教育研究者、クラッシェンが、五つの仮説の中で説いているように、「学習の効率が一番いい教材は、今現在の自分の力で理解できるものより、少しだけレベルの高いもの」です。レベルが高すぎると、難しくて、学習に時間がかかるわりに、自分の身につくもの(intake)が少なく、やる気が失せてしまいます。逆に、簡単すぎる教材では力が伸びず、やりがいがありません。ですから、まずは自分の力に合った学習教材を選ぶこと、音声素材を聞くことが大切なのですが、少し自分の力には余る教材でも、目で文章を追うことができて、その機会を増やしていけば、理解度が増していきます。フランス語と英語は、イタリア語と違って、文字表記と発音の乖離がはなはだしいので、特に入門から中級にかけては、聞き流し、聞きっ放しにするのではなく、耳から聞いた情報を目でも確認すると、以後は、聞くだけでも、理解できる情報が格段に増えてきます。
耳から聞くだけではだめだと、うすうす感じてはいたものの、このメモを読んで、ますます机上での学習の必要性を確信しました。おかげで、最近は、フランス語の入門書の学習がはかどっています。(と言っても、まだ去年6月に終えたところまでの復習をしているところです。)わたしがアルクの1000時間ヒアリングマラソンを受講したのは、1993年から1995年にかけての2年間なので、上のメモは、その当時のコーチガイドを参考にして、まとめたものです。わたし自身がバランスのある高い英語力を身につけることができたのは、このヒアリングマラソンのおかげです。この通信教育に感謝しているのは、「聞くだけで楽に力がつく」とは決して言わず、読書や英検対策の問題集など、さまざまな英語学習と並行して、どんなふうに自分の英語学習を組み立てていけばいいか、適切な指針を示してくれたからです。また、実用英検ばかりを目指して勉強すると、偏った英語力が身につきそうなところを、幅の広い学習教材を多く活用して、本当に使える真の英語力を鍛える方法を教えてくれた点では、植田一三氏の著書に、とても感謝しています。準1級・1級対策にわたしが利用して、みごと1度で合格を果たせた著書自体は、発行が1990年代で内容が古く、古本でしか手に入らないようですが今、英検準1級や1級を目指して勉強されている方には、新たに昨年発行された『英検準1級100時間大特訓』や『英検1級100時間大特訓』が、強い味方になってくれることと思います。
ただし、上の1級対策本で、読者の評価が極端に分かれているように、植田氏の著作も、ヒアリングマラソンも、その教材自体では完結せず、幅が広くかつ深い学習法を提案します。そのため、ヒアリングマラソンを聞き流すだけ、問題集を1冊終えるだけでは目指す力がつかず、あくまで多くの学習教材の一つと位置づけて、学習する必要があります。ヒアリングマラソンも、わたしは1年目は完走できましたが、2年目はできなかった記憶があります。この二つの教材は、根気を持って、努力をすれば、英語を上達させる力強い味方になってくれますが、これだけを何となく勉強したのでは、目標を達成させることは難しいはずです。ですから、マラソンを続ける忍耐力と度胸のある人だけに、おすすめします。
さて、リスニング対策メモに話を戻して、上級の場合については、次のようにまとめてあります。
「上級(めやす-英検準1級から1級程度。日常会話、および専門的な討論もある程度できる。)
・教材以外のナチュラルスピードの英語を多聴し、その内容を正確に把握することに努める。
・英字新聞や英文雑誌、ペーパーバックなどをたくさん読み、英語で獲得する情報量と語彙を増やす。
・微妙なニュアンスまで理解する練習。より多くの英語を聞く。あやふやな部分があれば、その確認作業は怠らない。
・映画を見た直後に原作本を読み、さらにもう一度映画を見るという学習法 → 表現を映像イメージと共に学習。機会あるごとに、それまでに学んだ語彙を自分で使ってみるようにする。」
日本では、2か国語放送の英米のドラマや映画も多く、映画館でも原語で、字幕つきで放映されることが多いので、英語を学習するには、使える教材がふんだんにあるのですが、イタリアでは、ごく一部の例外をのぞいて、映画館でもテレビでも、たいていの映画は、イタリア語に吹き替えられてしまいます。そのため、数年前に、低下しつつある英語力を何とかしようと思ったときには、英語の本を読んだり、インターネットの音声教材を利用したりもしたのですが、それだけでは不足だと考えて、はるばる日本から、『ENGLISH JOURNAL』(音声CDつき)の年間購読をしました。2010年1月当時、EJの年間購読16800円に、さらに海外発送手数料の10940円が加わり、合計27740の出費は痛かったのですが、通訳や翻訳で、日英・英日の仕事を請け負うこともあるので、自己投資だと思って、購読を決めました。
ただ、このときは、支払いを終えた直後に、「こんなに大金を払わなくても、同様の英語学習教材が、イタリアで安く手に入ること」を知り、後から「しまった!」と思いました。
こちら、イタリア語話者向けの英語学習誌、『SpeakUp』です。『English Journal』同様、約60分の音声CDつきで、政治・芸能界・スポーツ・文化など、さまざまな話題について聞くことができ、CDに収録されている内容は、雑誌で読むことができます。(詳しくは下記リンク参照)年間購読46ユーロで、自宅発送してくれるので、値段はずっとお得です。EJと違って、CDに収録されている英語の対訳はないのですが、読む上で鍵になるような言葉は、イタリア語の訳や説明が付されて、一覧にまとめてあります。それぞれの音声素材について、ヨーロッパ言語共通参照枠で言うと、どのレベルにあたるかを、A1、B2、C1などと明記してあります。
2010年は、こうして日伊の二つの英語学習誌を年間購読し、その音声CDを、しばしば聞いたり、英語の学習書を解いたり、本を読んだりして、低下しつつある英語力に歯止めをかけることができました。ただ、上の上級者向けのリスニング対策の助言に、「あやふやな部分があれば、その確認作業は怠らない」とあるのですが、確認作業をしたのは最初のうちだけで、途中からは、聞いただけて大体内容が分かるので、聞き流すだけになってしまいました。
ヒアリングマラソンの音声教材の効力を知ったわたしは、日本でイタリア語を勉強していたときにも、EJに対応するようなイタリア語音声雑誌を見つけて、購読しました。この『Acquerello italiano』です。これまでご紹介した雑誌と同様、イタリアの政治や映画、音楽、料理など、さまざまな話題について、音声が収録されていて、収録音声を書き写してある上に、英語による語彙の説明や対訳もついていました。残念ながら、数年前から、この雑誌を発行していた会社の経営が立ち行かなくなり、料金を支払って購読したのに、雑誌が届かないと訴える人が相次いだようです。
値段は張りますが、2か月に1度発行されるこの雑誌は、EJや『SpeakUp』同様、何度聞いても飽きない興味深い話題を選んであり、何度も聞きました。ただ、この雑誌も、大体意味が分かるからと、最後には、聞き流すだけで、文字を追っての「確認作業」を怠るようになってしまいました。これまでご紹介したような雑誌は、会話やインタビュー、歌、そして、さまざまな話題についての音声教材を提供してくれる上、その質が高いので、留学をしたり、現地に住んだりしなくても、さまざまな状況・話題の外国語に触れることができ、また、その外国語のリズムを上手につかみ、母国語のアクセントなしに話せるように、助けてくれます。
そうして、今年1月からは、このフランス発フランス語の音声学習雑誌、『bien-dire』を購読しています。上でご紹介した『SpeakUp』に似て、雑誌はカラーで、約1時間のCDに収録されている音声は、会話のボーナス・トラックを除いて、すべて雑誌に書き起こされています。それぞれの音声素材について、ヨーロッパ言語共通参照枠で言うと、どのレベルにあたるかも、明記してあります。対訳はありませんが、語彙を一覧にまとめて、英語で意味を記してあります。
柔道のチャンピオンや、バレンタイン・デーにまつわる数々のジョーク、モン・サン・ミッシェルに、フランスで進みつつある同性結婚の法制化、道や時間の尋ね方と、質問をきっかけに親しくなる方法やしつこい誘いの断り方など、興味深い話題がたくさんです。クリスマス休暇中に太ってしまい、ジムに通ってダイエットに通う女性を主人公にしたショートドラマもあります。去年の12月24日に年間購読の申し込みをして、2013年1・2月号が届いたのは、1月15日。相変わらずながら聞きが中心で、本文を目で追いながら聞いたのは1度だけで、歯医者の待合室で、この雑誌を読みながら待った以外には、「音声を目で確認すること」ができていません。
まだまだ、フランス語では、初級から中級を目指しているわたしは、初めて音声CDを聞くときに、目で文字を追いながら聞きました。イタリア語とフランス語の語彙や文構造が似ているおかげで、それでも大体の意味は(勘違いしているところはあろうとしても)分かるものが多いのがありがたいのですが、まだフランス語学習のスタート地点に近い今は、上の中級者向けリスニング対策のメモのうち、特に、「テープの活用法」を、CDの活用にあたって心がけ、これまでのように、聞き流しで終わってしまわないように努力するつもりです。同時に、できるだけ早いうちに、手持ちのフランス語の入門書数冊を、終えたいと思っています。そのあとで、フランス語での読書も、学習に取り込んでいきたいと考えています。
最近、フランス語学習に役立つサイトを、新しくいろいろと発見したため、先日、記事にしたフランス語お役立ちリンク集に、昨日追加しました。ラルースの仏仏・仏伊・伊仏辞典は、発音が聞けたり、イタリア語に該当するフランス語の表現がすぐ分かって便利なので、ほぼ毎日活用しています。ただ、紙世代で育ったわたしは、ふだん使っているのはすべて紙の辞書ですし、オンラインにいい教材が多くあるのは知りつつ、やはり手軽に読めて、持ち運びして好きなところで聞ける音声学習雑誌や、入門書、その音声CDを、今は学習の中心に据えています。まずは、こうした手持ちの学習教材で、初級を卒業して、そのあとで、オンライン学習サイトの教材にも、挑戦してみたいと思っています。
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Dal 1993 ogni tanto usufruisco la rivista con CD per apprendere diverse lingue straniere: "English Journal" e "SpeakUp" per studiare l'inglese, "Acquerello Italiano" per l'italiano e ora "Bien-Dire" per imparare il francese. Mi piace molto quet'ultima, parla del campione di judo francese, Mont Saint-Michel, barzellette su San Valentino ecc.
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関連記事へのリンク
- フランス語1000時間
- 外国上達の極意その3
- イタリアで英語学習 (雑誌、『SpeakUp』について)
- フランス語学習お役立ちリンク集
またイタリア語に関してはやっぱりどうしても読書に偏っているのですが、今は友人の勧めで「ACCIAIO」という本を読んでいますが、内容がとても濃くはまっています。本当は本を読むだけでは総合的なイタリア語力アップにつながらないのでしょうがね・・。なおこさんは私のようなタイプには他にどんな学習方法を勧められますか?
Acquerello italianoは私もイタリア語の貴重なリスニング学習教材として今も使用しています。もともとはイタ検対策のために1年半定期購読していたものなのですが、Naokoさんの上の写真を拝見すると、Anno XII,No.1前後は私も持っているので、講読時期も同じ時期みたいです^^
今はネットでラジオも聞けるしpodcastもありますけれど、トランスクリプション付きとなるとAquerelloになってしまうんですよね。
そしてこちらの記事を拝見して気付いたことは、私は④の音読をしていないということ。音読自体はかなりしているのですけれど、リスニング教材とは別のものでしていたのです。でも、同じ教材ですれば、リスニングでの理解力もあがりますし、語彙の記憶定着率もあがりますよね。さっそく試してみようと思います。いつも色々な情報提供をありがとうございます☆お互い頑張りましょうね。
わたしも、読書をしなければと言いつつ、今年になってから遠ざかっているので、頑張ります!
④もですが、わたしは最近では、英語もイタリア語も、上級は精読の手続きはかなり免除されているとは言え、すっかり「確認、分からない言葉や間違って聞き取っている可能性があるのに、そのチェック」を怠っていました。フランス語は、まだまだ中級に足がかかり始めたところなので、英伊のように聞き流したのでは講読や多聴のかいがなく、③④⑤が絶対に必要だ、よししなければいけないぞと感じながら、効果的な学習法を書経して、言わば自分に言い聞かせるというか、あるべき姿をたたき込むつもりで書いてみました。リスニング教材で音読をするのは、発音やリズム、イントネーションをつかむ上でも、語彙や表現をものにするためでも、とても大切なことだと思います。お互いに頑張りましょう!
お忙しい中、アドバイスをありがとうございます!
確かに精聴・精読はもう長い間していませんので(苦笑)、これを機会に気になる記事などをきちんと読んでみたいと思います!本の場合は内多少分からない単語や言い回しがあっても先に進むと内容が理解できたりしますが、記事の場合は一文一文の重要度が高いですものね。いつも大切な気付きをありがとうございます!頑張ってみますね~♪
日本では仕事の勤務時間も長くなりがちで、時間を見つけにくいでしょうし、
自分の意思で学習を継続するのも難しいですよね。わたしも近年は、フランス語の
勉強を時々再開しては長い間放り出すということが続いています。
そう言えば、英語圏で出ているイタリア語の教材には、当時はまだカセットテープでしたが、
教科書の音声教材で、質問のあとに、学習者が返事をするための間が空いているものもありました。
以前は品詞ごとにと文法にこだわっていたのですが、今は、会話を軸に置いた教材で、関連の
語彙や文法を学んでいくのが最良ではないかと思っています。ただ、日本では会話を主に持って
くると文法説明が簡潔になりがちなので、文法を説明する入門書も一冊持っておいて、会話
中心の教科書の文法説明で分かりにくかったところの確認も含めて、該当の文法事項を
勉強するのがいいかな、と。