イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

聖フランチェスコとCantico delle Creature

 長い途中休憩をはさみながら、約1年かけて、ようやく聖フランチェスコの伝記を読み終えました。

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 伝記と言うと、人物の生涯を、主なできごとを縦軸に語っていくものが多いと思います。この本ももちろんそうなのですが、単に史実や聖フランチェスコの人生を語るのではなく、聖人の心、思いに焦点を当てて、深く掘り下げているので、魂の軌跡を描き、読みながら聖人と共に一喜一憂し、聖フランチェスコの魂に触れることができたような気がします。修道会の規則を、教皇に提出するまでに、ここまで深い対立が一部修道士たちと、聖フランチェスコたちの間にあったこと、また、聖フランチェスコが、修道会内部の対立に、ここまで苦しんだこと、映画ではそういう場面を見たことがあったのですが、亀裂が、そして、心の傷が、ここまで深いとは想像もしていませんでした。そういう心の痛みを経験し、苦さを味わったあとだからこそ、それでも、そうした修道士たちを愛そう、愛せない自分ではいけないと苦しみ、いつまでも謙虚さを忘れない聖人が、身近に、またすばらしく感じられました。

 聖フランチェスコ作の『Cantico delle Creature』は、ペルージャ外国人大学の、イタリア文学の授業では、珠玉の名詩として、イタリア語の歴史の授業では、俗ラテン語が発展・変容し、生まれようとしていたイタリア語の最も古い文学作品の一つとして学びました。それが、この伝記を読んで初めて、これが音楽を伴って歌われた歌であったこと、そして、聖フランチェスコにとって大切な愛しいものであることが分かりました。聖人は、仲間の修道士に呼びかけて、何度もこの歌を、しばしば伴奏と共に歌い、死の間際まで、この歌を自分も歌い、修道士たちにも、そばで歌い続けるように頼んでいます。この本を読んで、この歌に込められた神への畏敬と自然への賛歌、親しみの思いを、改めて感じました。

 YouTubeで、この詩を歌っている映像を見つけましたので、ご覧ください。映像の中では、表記を現代風に改めている上、省略された言葉がありますが、詩の原文は、ラテン語や当時ウンブリアで話されていた方言の影響を色濃く受けています。



Laudes creaturarum (o Cantico di Frate Sole)      Francesco d’Assisi

Altissimu, onnipotente, bon Signore,
tue so’ le laude, la gloria e l’honore et onne benedictione.

Ad te solo, Altissimo, se konfano,
et nullu homo ène dignu te mentovare.

Laudato sie, mi’ Signore, cum tucte le tue creature,
spetialmente messor lo frate sole.
lo qual è iorno. et allumini noi per lui.
Et ellu è bellu e radiante cum grande splendore:
de te, Altissimo, porta significatione.

Laudato si’, mi’ Signore, per sora luna e le stelle:
in celu l’ài formate clarite et pretiose et belle.

Laudato si’, mi’ Signore, per frate vento
et per aere et nubilo et sereno et onne tempo,
per lo quale a le tue creature dài sustentamento.

Laudato si’, mi’ Signore, per sor’acqua,
la quale è multo utile et humile et pretiosa et casta.

Laudato si’, mi’ Signore, per frate focu,
per lo quale ennallumini la nocte:
ed ello è bello et iocundo et robustoso et forte.

Laudato si’, mi’ Signore, per sora nostra matre terra,
la quale ne sustenta et governa,
et produce diversi fructi con coloriti flori et herba.

Laudato si’, mi’ Signore, per quelli ke perdonano per lo tuo amore
et sostengo infirmitate et tribulatione.

Beati quelli ke ‘l sosterrano in pace.
ka da te, Altissimo, sirano incoronati.

Laudato si’, mi’ Signore, per sora nostra morte corporale,
da la quale nullu homo vivnte pò skappare:
guai a•cquelli ke morrano ne le peccata mortali;
beati quelli ke trovarà ne le tue sanctissime voluntati,
ka la morte secunda no ‘l farrà male.

Laudate e benedicete mi’ Signore et rengratiate
e serviateli cum grande humilitate.

- Citato da “Testi nella storia. La letteratura italiana dalle origini al Novecento 1 – Dalle origini al Quattrocento” (Mondadori)

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Finalmente ho finito di leggere "Nostro fratello di Assisi"

Libro bellissimo che ci riporta fino alla profondità del cuore e delle emozioni di San Francesco in diversi avvenimenti della sua vita.
Molto interessante perché possiamo sapere quanto fossero importanti al santo i luoghi come Santa Maria degli Angeli, la Verna, S. Damiano ecc.
All'Università per Stranieri ho imparato l'importanza del Cantico delle Creature come poesia e anche come una delle prime opere letterarie scritte nella lingua volgare. Tuttavia non sapevo che fosse cantato spesso sia dal santo stesso che dai compagni frati con l'accompagnamento della musica e che San Francesco lo amasse così tanto da cantare e voler ascoltare anche nei suoi ultimi giorni e nell'ultimo momento.
Ho trovato un filmato bellissimo che canta il "Cantico delle Creature"! Ascoltatelo, se potete.
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関連記事へのリンク / Link agli articoli correlati
- 灰の水曜日と四旬節中の肉断ち / Quaresima e il libro, "Nostro frate di Assisi"
- 第24号「アッシジの聖フランチェスコと歌・映画『Fratello sole, sorella luna』」

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by ムームー at 2013-02-02 11:06 x
なおこさん
こんにちは。
優しい旋律にのせられた素晴らしいものですね。
意味がわかっていない私にも優しく心地よく
聞いています。
いつもありがとうございます。
今から私の分のお弁当を持って歩いて行けるので
病院へ行って来ます~♪
そこかしこに春を感じながら~♪
Commented by クロちゃん at 2013-02-02 11:48 x
なおこさん、こんにちは♪
YouTubeの映像も拝見しました。
大きな愛がいっぱい、平和の祈りがいっぱい、そんな印象を受けました。
西洋の歴史にも興味を持ちます。(^^)/
Commented by milletti_naoko at 2013-02-02 15:28
ムームーさん、おはようございます。聞いてくださって、ありがとうございます。この歌の中で、聖フランチェスコは、生きとし生けるもの、太陽、月、星、風、水、火、そして、大地、死を兄弟、姉妹と呼び、歌には、わたしたちの生を支え、そうして、豊かにしてくれるこうしたものたちへの親愛の情や感謝、さらに、すべてを生み出した神に対する讃美・畏敬・感嘆の思いがあふれています。

毎日通われる道や風景が、少しずつ春へと変化してくのを感じられるのが、すてきですね。お弁当を作られて、運ばれる、その間にも、愛がたくさんあって、すてきです。
Commented by milletti_naoko at 2013-02-02 15:31
クロちゃん、おはようございます♪ 聞いてくださってありがとうございます。まさに大きな愛や平和の祈りがいっぱい、そういう歌です。若く回心する前の聖フランチェスコは、生地、アッシジが隣町のペルージャとの戦争に敗れ、牢に囚われたり、十字軍遠征に参加しようと勇んだり…… 時は、そういう時代でした。ウンブリアの、イタリアの町を歩くと、そうしたさまざまな時代の忘れ形見があって、興味深いです。
Commented by fumieve at 2013-02-02 16:12
naokoさん、おはようございます。私ももっとイタリア語で本を読みたいと思いながら、なかなか読めなくて・・・。ついつい日本語に走ってしまいます。
聖フランチェスコは、やはりペルージャにいると身近ですよね。なんだかなつかしいような気分です。

ところで、リンクさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?
Commented by milletti_naoko at 2013-02-02 23:55
fumieveさん、こんにちは。わたしは、言語に関わらず、最近読書量が落ちているので、これではいけないと思っています。年末に、あと10ページほどを残すところまで読んだのに、慌しかったのと、聖フランチェスコの死の場面だと分かっていたので、先送りにしてしまいました。わたしはもう今から20年以上も前に、アッシジで見た幻のミュージカルで、聖フランチェスコの人生を知り、夫になった人の両親はは、やっぱりウンブリアの人だからでしょうか、聖人をことに敬愛し、結婚式まで聖フランチェスコの記念日に挙げ、子供すべての2番目の名前を「フランチェスコ」にしています。動植物や時に孤独を愛する夫も、聖人には魅かれるところが多く、おかげで関連の聖地にはしばしば足を運んでいます。自然の美しい散歩にうってつけのところでもあるからです。冬は国立公園で狩猟がないので、安心して歩けますし……

リンクはどうぞご自由に。ありがとうございます。わたしもリンクをいただきますね。昨晩、『Les Misérables』を見に行きました。本当によかったですよ!役者たちの歌声を英語で聞くことができ、イタリア語字幕もありました。
Commented by kazu at 2013-02-03 16:29 x
なおこさん、こんにちは。自伝を読み終えられたのですね。昨年、フランチェスコのお話を読み始めたとお聞きしていたので、失礼ながら私までついに!という気持ちになりました。映画を見ただけでもフランチェスコの懊悩に推測が及びましたが、長編の自伝なら更に奥深いところまで描かれているのでしょうね。宗教に限らず、何でも団体になればほんとに意見は分かれ分裂するものなので、なおこさんのように深い読み取りをされる読者ならこうした場面でも聖人への思いや又読了の感想は感銘深いことと思います。音楽も聴かせて頂きましたが、アッシジのあちこちの景色が思い浮かんで、もう一度訪ねたくなりました。
Commented by milletti_naoko at 2013-02-03 16:55
かずさん、おはようございます。映画の中には確かに分裂や暗い面を強調しているものもありますよね。ベートーベンではありませんが、闇、苦悩をつきぬけて聖フランチェスコが至った愛、慈悲、神や自然の賛歌がすばらしいなと思いました。喜びや愛もまた、わたしたちにも、聖人の思いや視点がそのまま伝わるかのように書かれていて、本当に、本自体の心や時代背景への洞察や描写が深い、細かいのです。去年のクリスマスには、義父母への贈り物の一つにしたのですが、義母の方が先に読み終えてしまいました……

ぜひまたアッシジにいらしてくださいね。そのときは、ぜひペルージャにもお寄りください!トラジメーノ湖のマッジョーレ島にも、聖フランチェスコの足跡があるんですよ。
Commented by chieko at 2016-11-17 12:57 x
初めまして。聖フランチェスコの言葉を探していたところ,
こちらのブログに辿り着きました。須賀敦子さんという作家の方がアッシジのエピソードの中で、サンダミアーノ修道院の修道士がつぶやくフランチェスコの詩の原語を知りたいと思っています。彼が残した言葉をまとめた本などはあるのでしょうか?唐突に質問してしまい申し訳ございません。もし何かご存知でしたら教えていただけると幸いです。どうぞよろしくお願いします。
Commented by milletti_naoko at 2016-11-19 07:50
chiekoさん、そういう本はアッシジなど聖フランチェスコゆかりの地の書店では数多く見かけますが、編者によって選ぶ言葉や数がかなり違ってくる上、その言葉がどういうものか分からないので、この本とお勧めするのは難しいです。有名な言葉であれば、その言葉のイタリア語訳とparole di San Francescoをキーワードに検索すれば、その方が見つけやすい気がします。
Commented by chieko at 2016-11-20 18:18 x
返信ありがとうございました。
色々検索はしてみたのですが、全く駄目でした。本の中のエピソードなので一般的に知られている訳ではないのだと思います。
お手数おかけして申し訳ございませんでした。
Commented by milletti_naoko at 2016-11-20 19:23
chiekoさん、須賀敦子さんが耳にされるほど、修道士の方がつぶやいたほどには知られていた言葉なのだと思います。聖フランチェスコの言葉をまとめた本は多く、薄いものから分厚いものまでいろいろありますが、どの本に載っているかは実際に手に取って探されるのが、一番早いかもしれません。
Commented by chieko at 2016-11-20 19:39 x
たびたびありがとうございました。
宗教的な言葉は見つかるのですが、本の中では、雨が降ってきた時に金魚?に向かって「雨だよ、たくさんあたってお楽しみ」と言った(歌った)というのです。
イタリアでは雨は神様からの贈り物という意味合いがあるというので、きっとそう言う意味なのだと思います。
by milletti_naoko | 2013-02-02 00:46 | Film, Libri & Musica | Comments(13)