イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

語学検定と言語観、ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)

  配達のベルが二度鳴る月曜日

 と言っても、こわい話ではありません。月曜日のことです。

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 12時半に呼び鈴が鳴りました。先週木曜日に、アマゾンフランスに注文した、フランス語学力資格試験DELF B1の対策問題集2冊が届いたのです。『Réussir le DELF B1』は、世界各国のアマゾンにおける評価などを参考に選び、『abc DELF B1』の方は、フランス在住のlucien518さんのお勧めの言葉に、「なるほど!」と思って、注文しました。

 実用フランス語検定ではなく、DELFを受けようと考えたのは、単にイタリア在住であるからだけではありません。ペルージャとシエナの外国人大学で、外国人へのイタリア語教育を学ぶ中で、ヨーロッパ言語共通参照枠(授業ではQuadro ComuneとかFrameworkと略して呼ぶ先生が多かったです。)は、多くの教科で、かなりの時間を割いて学び、また、教わりました。日本の学校教育における『学習指導要領』に当たるような、欧州内での外国語学習・教育の共通の基準・指針を示すものであるだけに、大学の先生方も、「これから外国人にイタリア語を教えよう」とする立場にある学生は、この参照枠に掲げられた、外国語学習・教育の在り方や、各レベルの内容などを、十分に把握していなければならないと考えていたからでしょう。

 言語というものは、コミュニケーションをとるために使うものだ。だから、その外国語を文法・単語・発音……とばらばらに分解して、それぞれについて問うべきではない。そうではなくて、自分が今持ちうる力を総動員して、たとえば既存の一般社会に関する常識や前後の文脈なども利用して、そうして、ある状況で自分の意図がどれだけ伝えられるか、また、まとまりのある会話や文章を、どれだけ理解できるか、そういう外国語の運用能力、外国語を発信し、理解する能力がどれだけあるかをとらえよう。

 ペルージャ外国人大学で2年(3年の課程ですが、2年生に編入)、シエナ外国人大学の院で2年、さんざん「いかに言語共通参照枠および、その背後にある理想とすべき外国語教育・学習や言語観などがすばらしいか」を聞き続け、読み続けて、洗脳されたきらいはあるかもしれません。けれども、初任の高校や新採研修、初任者研修で、先輩の国語の先生方から、古文は文法を教えるものではなく、文法はあくまで、文学作品を理解し、鑑賞し、感動するための手立てにすぎないんだと教わって、自分でもそうあるべきだと感じていた、そのとらえ方に重なるものも多かったからか、「使う場面や会話を重視しながら、その中に出てくる語彙や文法なども押さえていく」という共通参照枠の考え方には、共感するものが多くありました。

 ですから、一とおりフランス語の入門書を終えたら、力を伸ばすためにフランス語の検定試験を受けたいと考えたとき、そこで受けようとする試験が、このFrameworkに基づいたDELFであるのは、わたしにとっては、とても自然なことなのです。たとえば医者には、自分が専門とする体の部分だけではなく、自分の体や健康、人間を総合して診てもらいたいように、外国語も、自分が持つ語彙や文法の知識をいかに運用し、いかに理解し、発信がしていけるか、そういうことに重点を置く試験でこそ、わたしが望むフランス語の力をつけていけると考えたからです。

 アマゾンイタリアでも、DELFの問題集は多数扱っているのですが、残念ながら、アマゾンイタリアで販売しているのは大半が高校用(per le scuole superiori)です。実は購入するとき、まずは使用者の評価が多いであろうアマゾンフランスで買う本を決めてから、アマゾンイタリアと値段を比べて購入しようと思っていたのに、アマゾンフランスのイタリアへの送料が8ユーロですむこともあり、結局、アマゾンイタリアと比べることなく、フランスのアマゾンに注文してしまいました。

 今になってアマゾンイタリアのサイトで確認すると、なんと『Abc DELF B1』もちゃんと売っている上に、大人用らしき『Réussir le DELF B1』もあるではありませんか。わたしが購入したものと比べると、出版は1か月遅い2010年10月で、出版社がドイツの会社であり、ISBNも異なるのですが、表紙のデザインはフランス版と変わらないので、ドイツの他の出版社が、フランスの版元から版権を買い取って出版している可能性が高いと思います。送料8ユーロ込みで、わたしがアマゾンフランスに払ったのは38.62ユーロ、一方、ドイツ版の問題集に疑問は残るものの、もしアマゾンイタリアで購入していたら、合計金額19ユーロ以上で送料が不要なので、33.90ユーロ。5ユーロほど余計に払ったことにはなりますが、フランス版でかつ、確実に自分のほしいものだと分かって購入したので、よしとすることにします。

 長くなったので、続きはまた次回に。

Examens DELF, DALF
- Ciep. Centre international d’études pédagogiques – DILF, DELF, DALF
- Bonjour de France – Exercices FLE – Préparation DELF

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by lucien518 at 2013-04-21 01:34
NHKの講座も昨年からレベル表示にこの参照枠を用いていますよね。ドイツに行った時に大手のHeuber社がAlter ego(だったかと思います。教科書です)を売っていたので(表紙も中身もそのまま)やはり買い取って売っているのだと思いました。ドイツは結構、語学本が充実していて(英語なども)びっくりしました。フランス語の本の朗読テープもここで買いました。abcを使った感想などもそのうちお聞かせください。
Commented by milletti_naoko at 2013-04-21 02:38
Lucien518さん、日本でも、参照枠がかなり参考にされているようですね。数年前の『月刊日本語』に、国際交流基金も、参照枠を参考にして、日本語教育スタンダードを示し、日本語能力試験を改定しようとしているとあるのを読んだときの驚きを覚えています。欧米では1960年代、70年代から進められ、発達している外国語教育・学習研究の成果が、日本にもようやく浸透するようになったのだな、と。

そうすると、ドイツではそんなふうに、フランス語学習書の版権を買い取って、ドイツで印刷し、販売してしまうということがあるんですね。Abcに取りかかれるのは、まだまだ先だと思いますが、感想もそのうち書いてみるつもりです。『フランス語のABC』などには、まだ通貨単位が「フラン」になっている例もあるし、やはりニュースは新鮮な素材でないといけないなと思うので、lucien518さんのお言葉になるほどと思いました。ありがたいご助言をどうもありがとうございました♪
Commented at 2013-04-22 18:04 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by milletti_naoko at 2013-04-22 18:56
鍵コメントの方へ

お言葉とお気持ちはありがたいのですが、この文面だけではそちらの意図が分からず、何か具体的に用がおありであれば、連絡は、特に必要を感じない私からではなく、そちらからするのが道義だと思います。連絡先は、ブログ表紙の右手のリンク先にあります。
Commented by oliva16 at 2013-04-22 22:11
着々と勉強を進めておられますね。私はやっぱりイタリア語、時制でひっかかったまま……。活用を頭から反復練習する気力がないので、読書を通してその都度必要なことを勉強、と思っていたはずが、読書にも集中できず。やっぱり原書を読むのって難しいですね、当たり前ですが。
Commented by milletti_naoko at 2013-04-23 07:27
Olivaさん、こんばんは。活用を頭から反復練習するよりは、重点的に苦手な時制を扱った練習問題を解いたり、そういう時制が頻出するような新聞記事や小説を読んだりした方が効果的だと思います。文法を必死でただただ暗記しても、頭から抜けるのも早いし、他の時制と混同しやすいので、かえっていろいろな用例をじっくり時間をかけて、自分の中に、耳から目から、あるいは手で書き移して蓄えていくと、すっと必要な時制が身についていくと思います。原書は、特にイタリアの文学作品は、近代のものだと雅語が多く、現代のものだと作品によって、俗語や方言、専門用語が混じっていて、読みにくいかもしれません。本はあまり文法の勉強をしようとは考えず、おもしろそうなもの、興味のありそうなものから読んだ方が、続けて読めますよね。わたしも、興味深い社会問題を扱っているからと思って買った本を今読んでいるのですが、内容が重いので、読書が足踏みしています。
Commented by *yoko* at 2013-05-07 10:53 x
なおこさん、こんにちは~ ^^
わたしもテストを受けるなら、DELF、B1から受けようと思っていたので、なおこさんが購入された本、わたしも探してみようと思います。
Commented by milletti_naoko at 2013-05-13 16:13
*yoko*さん、おはようございます♪ 実際に使った方からの推薦ですし、内容の新聞記事やニュースが新しいと勉強の励みになりそうです。まずは入門書を終えないといけないのですが、昨日までの巡礼の旅中は、フランス語はいっさい勉強できなかったので、頑張らなければ!
by milletti_naoko | 2013-04-20 01:09 | Francia & francese | Comments(8)