イタリア写真草子 ペルージャ在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

Canadaは男性名詞!

 フランス語を勉強していると、十分に学んだつもりのイタリア語で、おやという発見をすることが時々あります。

Canadaは男性名詞!_f0234936_19322957.jpg

 たとえば、カナダ。

 イタリア語では、国名を場所を表す前置詞と共に使うときは、

in Giappone (m.)    日本で、日本へ、日本に
in Francia (f.)    フランスで、フランスへ、フランスに

という具合に、国名が単数名詞であれば、それが男性名詞(nome maschile、ここではm.と省略)であろうと、女性名詞(nome femminile、f.と省略)であろうと、定冠詞が不要なので、前置詞in+国名という形で表します。

 イタリアのニュースで、カナダに言及することは、ごくまれですし、イタリア人と話していて、カナダが話題に上ることもめったにありません。

 そういうイタリアで、これでもかと言うくらい、「カナダ」が歌詞に登場する歌があって、リズムの楽しいこの歌が、わたしは大好きです。夫も、自分が幼い頃に、義母がよく歌っていたというこの歌が好きで、一時期は、そういう懐かしのメロディー集を、二人でしばしば聞いて、一緒に歌ったりしました。(次の映像で、歌が始まるのは15秒目からです。)



Casetta in Canadà

Aveva una casetta piccolina in Canada
con vasche, pesciolini e tanti fiori di lillà,
e tutte le ragazze che passavano di là
dicevano: "Che bella la casetta in Canada"!

Quando Martin vedete solo per la città
forse voi penserete dove girando va.
Solo, senza una meta. Solo... ma c'è un perché:

Aveva una casetta piccolina in Canada
con vasche, pesciolini e tanti fiori di lillà,
e tutte le ragazze che passavano di là
dicevano: "Che bella la casetta in Canada"!

Ma un giorno, per dispetto, Pinco Panco l'incendiò
e a piedi poveretto senza casa lui restò.
"Allora cosa fece?" - Voi tutti chiederete.
Ma questa è la sorpresa che in segreto vi dirò:

Lui fece un'altra casa piccolina in Canada
con vasche, pesciolini e tanti fiori di lillà,
e tutte le ragazze che passavano di là
dicevano: "Che bella la casetta in Canada"!

E tante e tante case lui rifece ma, però,
quel tale Pinco Panco tutte quante le incendiò.
Allora cosa fece?
Voi tutti lo sapete!

Lui fece un'altra casa piccolina in Canada
con vasche, pesciolini e tanti fiori di lillà,
e tutte le ragazze che passavano di là
dicevano: "Che bella la casetta in Canada"!
Dicevano: "Che bella la casetta in Canada"!

 でも、「カナダ」が何度も出てくるこの歌でさえ、毎回、in Canadàと、冠詞なしでカナダが歌われます。(Canadaは、アクセント記号をつけてCanadàと書かれることもあります。)

 そういう事情もあって、わたしは、イタリア語のCanadaという国名は、-aで終わることもあって、Francia、Germania、Inghilterra、Indiaなど、他の語末が-aの国名と同じように、女性名詞だと思い込んでいました。イタリア語でも、mano「手」や町の名前、ギリシャ語起源の名詞、tema、problema、dilemma、略語のradio、auto、motoなど、-aで終わる男性名詞はあるものの、国名にまで、そういう例外があるとは思いませんでした。

 イタリア語を勉強し始めてから13年、イタリアに暮らし始めて10年も経って、ようやく「イタリア語のCanadaが男性名詞だ」と知ったのは、ですから、フランス語を勉強し始めたおかげです。フランス語の入門書に、Canadaが男性名詞の国名として登場したので、「イタリア語と違って、フランス語では男性名詞なのか」と驚きつつ、念のために辞典で確認すると、なんとイタリア語でも、Canadaは男性名詞だったのです!

 イタリア語と違って、フランス語では、国名が単数名詞のときは、国名が男性名詞か女性名詞かによって、「~で、~へ」という言い方が異なります。

au Japon (m.)    日本で、日本へ、日本に
en France (f.)  フランスで、フランスへ、フランスに

 男性名詞であればau+国名、女性名詞であればen+国名となり、使用する前置詞も、定冠詞の有無も違います。さらに、フランスにとっては、カナダはかつてフランス領があった国でもあります。そういう理由で、フランス語の学習書では、入門書である『イタリア語のABC』と『新・リュミエール』の両方で、Canadaが男性名詞の例として取り上げられ数少ない国として、選ばれているのでしょう。

 一方、イタリア語の入門書では、比較的文法説明の詳しい『イタリア語のABC』にも、Canadaが-aで終わる男性名詞だという記述はありません。でも、中・上級向けの『現代イタリア文法』を見てみたら、ちゃんと、

 「国名・地方名は、-aで終わるものの大部分と、少数の-deで終わるものは女性名詞である。ただし、-àや-e,・-oで終わるものは男性名詞である。」

とあり、例として、「男性名詞: il Canadà」がちゃんと挙がっています。ただ、この文法書は、最初からくまなく勉強をするよりは、疑問があったときに参照するように作られていますし、わたしもそういうふうに使ってきたので、今まで気がつきませんでした。ちなみに、わたしの手持ちの伊伊辞典では、固有名詞は収録されていないので、Canadaという項はないのですが、たとえばcanadeseなどの項を見ると、語義の説明の中では、Canadàではなく、アクセント表記のないCanadaという語形を採用しています。ちなみにアクセント記号のないCanadaという表記である場合には、英語風に、Cànadaと最初のaに強勢アクセントを置いて発音します。

 知っているつもりで知らないこと、知ったつもりになっていることというのが、あるものです。もちろんイタリア語に限らず、英語や日本語でもそういうことは多々あるのですが、今回はフランス語を勉強しているおかげで得ることができた、イタリア語についての気づきについて書いてみました。

 リラの花の写真を選んだのは、ご紹介した歌の中に、リラの花が出てくるからです。歌の冒頭4行については、日本語訳を こちらの記事に載せていますので、興味があれば、参考にしてください。

********************************************************************************************************************************
'Canada' è un nome Maschile in italiano!

Non lo sapevo né lo immaginavo fino a qualche mese fa, anche se m piace molto la canzone, "La Casetta in Canadà". In italiano il nome di Paese singolare, sia maschile che femminile' è seguito dal...la preposizione, in.
Solo studiando il francese, ho scoperto che, come in francese' 'Canada' è un nome maschile anche in italiano. 'Canada' è uno dei pochi esempi dei nomi di Paesi maschili descritti nei due manuali di francese. E' forse perché una volta una parte del Canada era sotto la dominazione francese e perché in francese l'espressione cambia a seconda del genere del nome di Paese; en France (f.), au Canada (m.) ecc.
********************************************************************************************************************************

関連記事へのリンク / Link agli articoli correlati
リラの花咲く家 / Fiori di lillà
↑ この記事冒頭に、今回ご紹介したイタリア語の歌の最初の4行の日本語訳があります。
- イタリア語学習メルマガ 第8号(2) 「イタリア語学習におすすめの教材(入門者編)1」
- イタリア語学習メルマガ 第8号(3) 「イタリア語学習におすすめの教材(入門者編)2」

参照リンク / Riferimenti web
- Angolotesti Leonardo.it – Testo Casetta In Canadà
- Filastrocche.it – Casetta in Canadà

Articolo scritto da Naoko Ishii

↓ 記事がいいなと思ったら、ランキング応援のクリックをいただけると、うれしいです。
↓ Cliccate sulle icone dei 2 Blog Ranking, grazie :-)
にほんブログ村 海外生活ブログ イタリア情報へ  

Commented by ムームー at 2013-04-25 11:28
なおこさん
こんにちは。
言葉が判らない私でもこのメロディはいいですね、
軽快な映像も素敵ですわぁ♪
お二人で歌われてる様子を思い浮かべています~♪
いつもありがとうございます。
Commented by milletti_naoko at 2013-04-25 23:59
ムームーさん、こんにちは。ありがとうございます。聞いてくださったんですね! 映像は子供向けなので、楽しめるように作ってありますよね♪ こちらこそ、いつもありがとうございます。
Commented by chiko at 2013-04-28 09:11
なおこさん ボンジュール!
日本はゴールデンウィークに突入しました。
男性名詞、女性名詞
覚えるの大変ですよね。
なかなか頭に入りません

カナダは男性名詞。 メモメモ・・・^^
なおこさんは
どうやって 覚えておられるんですか??
Commented by milletti_naoko at 2013-04-29 06:45
Chikoさん、こんばんは。イタリア語とフランス語で、名詞の性が共通する場合が多いので、わたしはかなり助けられています。逆に伊仏で性の異なる単語に注意をしたり、定冠詞や文と一緒に頭に入れたりしています。

動詞や形容詞の形が、名詞の性や数に左右されない日本語が母語のわたしたちには、こういうことを覚えるのは特に難しいですよね。お互いに頑張りましょう!
by milletti_naoko | 2013-04-24 12:34 | Lingua Italiana | Comments(4)