2013年 05月 21日
瞳の煙と眼科救急診療、ペルージャ
土曜日に眼底検査(esame del fondo oculare)を受けて、眼科医からそう聞ききはしたのですが、発行された診断書には物騒な言葉が並んでいます。
それに、3月半ばには、ひどく大きい蜘蛛の巣のような模様は、初日に見えただけで、あとは時々小さいしみが、あちこちに見えるくらいだった(下記リンク参照)のに、今回は、先週金曜日の昼過ぎに見え始めた大きな蚊のようなしみが、だんだん大きくなって、土曜の朝には、水にたらした黒いインクがコップの中に広がっているような、黒い細い煙が風にたなびいているような模様になり、そのまま今日まで、大きさがほとんど変わらずにいます。意識して見ると、ごく小さい黒いつぶつぶもたくさん見え続けています。
金曜の夕方、明るい戸外で、しみの数が格段に増え、大きくもなっているのに気づき、不安になりました。3月に飛蚊症の診断をしてくれた眼科医が、「今後、しみの数や大きさが急に増えたり、光が見えたり、物がゆがんで見えたりしたら、眼科診療の予約を取るよりも、直接、救急診療を受けるように。」と言ってくれていました。
その日は帰宅が7時半頃と遅くなったこともあり、「ひょっとしたら、前回のように、目の中で何か動きがあって、一時的に大きい模様が見えるだけかもしれない。」と思って、一晩様子をみることにしました。
そうして、土曜の朝、前の晩に比べて、しみがさらに大きくなっていたので、救急外来(pronto soccorso)を訪ねることにしました。俗にシルヴェストリーニ(Silvestrini)と呼ばれる、ペルージャ郊外にある大型公立病院、Ospedale Santa Maria della Misericordiaに、24時間体制の救急外来があることは知っていて、わたし自身が、数年前に、隣人の犬にかまれて、手当てを受けたこともあります。ただ、わたしの目の症状が、飛蚊症に収まる範囲のものか、それとも網膜剥離が進行しつつあるのかは、眼科医から眼底検査を受けなければ、分かりません。それで、前日も当日も、インターネットで調べたのですが、結局、シルヴェストリーニ(下注参照)に、眼科専門の救急外来があるか否かさえ分からず、ですから、その診療時間も不明のままでした。
土曜日の午後9時頃に、シルヴェストリーニの巨大な総合病院の右手前に建つ救急外来(pronto soccorso)を訪ね、医師か看護士と思われる男性に症状を説明すると、総合病院の病棟内の眼科に行けば、そこで救急診療が受けられると教えてくれました。車を駐車していて、後からやって来た夫に、「何か指示する紙をもらった?」と聞かれ、「何ももらっていない。」と答えて、一緒にシルヴェストリーニ入り口に向かいました。受付で眼科の場所を聞き、廊下がしばしば斜めに交差する、巨大迷路のような病院内を歩き、ようやく目的地に近づくと、ここで初めて、「眼科の(Oculistico)緊急外来(Pronto Soccorso)」という案内が目に入りました。
受付(accetazione)で番号を受け取ってから、診療室の前に並ぶようにという掲示を見て、午前7時から開いているらしき受付の窓口に並びます。9時20分頃になって、わたしの番が来て、「20番診療室、(私の順番は)9番」という紙を受け取りました。待合室の電光掲示板を見ると、20番診療室では、まだ一人目の患者の診療中です。かなり待つことになるかと思ったら、幸い、10時20分には、「9」という数字が現れ、すぐに診療室に向かいました。
そうして、このとき診療室前にある掲示を見て、初めて、シルヴェストリーニの眼科救急診療が、日曜は休みで、月曜から土曜にかけて、午前8時から午後7時まで、診療を行っていることを知りました。こういう情報は、やはりここまで来る前の段階で入手できた方が便利なので、ここに記載しておきます。診療日・時間の下には、時間外や日曜日には、患者は、総合緊急外来(最初にわたしが訪ねたところ)を訪ねるようにと書いてあります。ともあれ、これを読んで、前日の夜に来なくてよかった、そうして、翌日の日曜日まで待たなくてよかったと思いました。
診療室に入って、症状を説明し、眼底検査を受けた際、医師の説明にも、手渡された診断書にも、「悪化(degenerazione)」や「網膜の出血(emmoragie retiniche)」という言葉があったので、「網膜はしっかり接着していて、剥離の恐れはない。」と、言われたものの、何だか心配な気持ちは残りました。飛蚊症なので、結局は、症状改善のために出せる薬はないけれども、気休めにと、硝子体を健常化するのに役立つかもしれないという栄養補助剤を処方してくれました。
さらに、半年後に再び検査を受けるように、もしこれまでとはしみの見え方や数が違ったり、視界がゆがんで見えたりした場合には、今回のように、救急診療を受けるか、あるいは、かかりつけ医に、緊急の診療を要するという通知書をもらって、すぐに眼底検査を受けるようにと言われました。実は3月には後者の手続きを踏んで、金曜にかかりつけ医の通知書をもらって、4日後の翌火曜日に、検査を受けました。今回、救急外来に行ったのは、金曜はわたしのかかりつけ医の診療時間が午前中であるため、かかりつけ医の通知書や予約さえ、翌月曜日まで待たなければいけなかったからでもあります。救急外来の眼科医は、さらに、かかりつけ医を通じて、数日内に眼科診療の予約が取れるようであれば、それで十分だけれども、予約が1週間後にしかできないと言われたら、今回のように、直接救急外来に来るといいと言いました。
土曜は幸い、9時頃に救急外来を訪ね、診療を受けたあと、11時には25ユーロの診療費の支払いを済ませて、病院を後にすることができました。
ただ、検査後も安心しきることはできず、薄黒い煙のような、つぶつぶのようなしみが、いつまでも視界に残り、診断の「悪化」、「網膜出血」という言葉が気になって、夫が言うように、私立の眼科医院を訪ねた方がいいかしらと、週末は不安が残りました。
しみは残るけれど、不安がなくなったのは、月曜の朝、友人でもあるかかりつけ医が、診断書を見て、「心配することは何もないよ。言葉は大げさだけれど、ほら、要するに、いわゆる飛蚊症の具体的説明でしかないんだから。」と、言ってくれたからです。
それから、診療所近くの薬局で、土曜に処方された栄養補助剤(integratore alimentare)を購入し、昨日から1日1錠を、水に溶かして飲んでいます。前回処方された栄養補助剤が、硝子体を構成する要素であるコラーゲンなどをそのまま含んでいたのに対し、今回、処方された薬は、ビタミンBや朝鮮人参など、体内でのコラーゲンの生成を促進する成分を含んでいるようです。
冒頭に掲げたようなしみが、右目の視界にあって、しかもそれが瞳の動きに伴って、ぐるぐると回る上に、白いコンピュータ画面や本、明るい戸外の風景を前にすると目立つこともあって、しばらくコンピュータから遠ざかり、パソコンに向かうときは、インターネットで、飛蚊症や網膜剥離の情報を調べ続けていました。
この気になるしみが、どうか少なく、小さくなってくれますようにと祈りつつ、もし小さくならなくても、両目で見るときには、汚れたガラスを通して見るように、視界に汚れがあることを、受け容れて、気にしないようにしなければと思っています。幸い、右目を閉じれば、左目では、曇りのない状態で見ることができます。
人生であるいろんなことも、だれかの思いやりない言動も、くよくよしても仕方ないから、気にしないように。そういう訓練が、少しかげりのある右目の視界を通して、できるのはありがたいことかもしれません。
「瞳の煙」という題は、飛蚊症とはまったく関係がないのですが、大好きな次の歌も、念頭に置きながらつけました。
下注 シルヴェストリーニ
わたしの義家族や知人は、皆、この病院をこう呼びますが、本来は、昔同地に建っていた病院の名前のようです。ちなみに、ペルージャのバスターミナルがある広場は、現在ではPiazza Partigianiという名前なのですが、義父母はいまだにPiazza d’Armiと古い名前で呼ぶことも多く、ペルージャ外国人大学のガッレンガ学舎の面する広場、Piazza Fortebraccioに至っては、夫も昔の名前、Piazza Grimanaで呼んでいます。
関連記事へのリンク
- 飛蚊症、mosche volanti
どうぞお大事に。はやくよくなるといいですね。
診て貰われて良かったですねぇ。
私もこの間空を見てる時に今までと違う網目模様が
出てきましたの。
パソコン画面にも出る日もありますが、気になる時と
何ともないときがあります。
栄養補助剤っていいですねぇ~
お大事になさってくださいね。
私も気をつけますわ~
いつもありがとうございます。
ありがとうございます。急に見え方が変わって、実は網膜剥離が起こっていたという場合も、まれにですがあるようですので、ムームーさんも、どうかお気をつけてくださいね。
でも、心配しすぎていけないと自分で自分に言い聞かせています。
なお子さんもきっと同じ気持ちでしょうが、経過を見守りつつ、いつでも
受診できるように準備しておくと良いと思います。それにしても、こんな時は、そばにいて下さるご主人様や、お父様、お母様の存在はとても大きいですね。お幸せですね。
どうぞ、お大事になさって下さいね。
お優しいコメントをありがとうございます。けいこさんもどうかお大事に。
起きている間中見えるので、なんていうんでしょう、イライラというか気になるというか、慣れるまで結構ストレスになると思うんですけど、ためすぎないようにしてくださいね。
目はあっという間に悪くなるので、変だと思ったらすぐ来てと眼科医に言われたことがあります。今回すぐに見てもらえて良かったですね。
飛蚊症の症状のうちか網膜剥離かが自分では判断できず、症状が他の人には見えないので、「救急診療に行きたいけれど、何でもないかも。」という気持ちがあるので、家族に対しても病院に対しても、救急診療を受けるのに気が引けたので、とすかーなさんにそう言っていただけると、ありがたいです。
こういう時はやっぱり目休めるのが一番なんですよね。でも、目を休めるって意外と難しくないですか?PCやTVというのは生活の一部になっていて、はっとすると凝視していたり、お料理中も結局集中して見ていたり。幸いなおこさんは、緑の中を歩くことが多いので目にはよさそうですね。でも、無理しないで、がんばって目を休めながら直してください!
ちょうど今月末までに仕上げなければいけない翻訳の仕事があって、この件は聞きなれない法律や専門用語、固有名詞などが多く、オンラインで調べなければならないことが多いので、少し目には負担が大きいのですが、これを機会に、パソコンに向かい合う時間を意識的に減らせたらと思っています。必要な場合はいいのですが、不必要に、他にしたいことやするべきことがあるときに、だらだらと過ごしてしまうことが多いなという反省もありまして。
お優しい言葉をありがとうございます。Naviaさんも、どうかお体を大切に。こんなふうに天気が変わりやすく、いつまでも冬のような寒さが去らない今日この頃ですから、なおさらのこと。