イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

ムッシュウ

 去年途中まで終えていた入門書、『Francese. Corso completo』を再び手に取り、さて今度はどう勉強しようかと考えました。第1課から勉強し直すにしても、以前のように、会話文や対訳のイタリア語をすべて書き移す必要はなさそうです。

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 思いついて、各課の導入会話を、音声CDで聴いて、ノートに書き取り、きちんと聞き取りと書き取りができているかを確認するという形で勉強することにしました。

 第1課の会話では、イタリアはミラノ出身のロッシ氏が、パリのホテルにチェックインをするのですが、意外ときちんと聞き取りができ、つづりもあまり間違わずに書けていたので、うれしかったです。

 間違えた箇所については、たとえば、次の会話で、本来は、

  Voyons. Oui, voilà votre réservation. Malheureusement nous n’avons plus de chambre à un lit, on vous a réservé une chambre à deux lits avec salle de bains, naturellement.

としなければいけないところを、Malheureusementのhを落とし、n’avons plus de chambreのdeをuneとし、à deux litsの-sを落とし、salleをsaleと、ここでも語間のlを一つ落としてしまっていました。heureux(幸せな)、heureusement(幸せにも)の語頭のhなら、たぶん忘れずに書いたと思うのですが、その対義語なので語頭にmal-がついて、それぞれmalheureux(不幸な)、malheureusement(残念ながら)になると言うのに、このときは、音に注意を払いすぎて、発音されないhを忘れてしまいました。à deux litsも、lit(ベッド)の発音しない語尾の-tは覚えていたのですが、ここではベッドが二つ(deux)だから複数形で-sがいることをすっかり失念していました。

 Nous n’avons plus de chambreについては、もちろんune chambreと聞こえたわけではないのですが、「わたしの耳には聞き取れなくてもたぶんこう言っているのだろう」と思って書いてみました。この間違いのおかげで、否定文では、直接目的語となる名詞の前の不定冠詞(un, une, des)はdeに変わるということを思い出しました。

 会話がとても長いので、間違いは他にもいくつかあるのですが、自分で一番ショックだったのが、英語のMr.、イタリア語のSignoreにあたる「~氏」という敬称を正しく書けなかったことです。去年の5月に単語が書けるかどうか確認したときには正しく書けていたのが、今、フランス語の発音や書き方に自信がついたあとでは、ムッシュウをmonsieurと書くべきところを、恥ずかしながら、間違ってしまいました。

 フランス語を勉強し始めたばかりの頃は、どの単語も、つづりをしっかり覚えようと躍起になっていたのですが、今は、フランス語の発音とつづりの関係が大体頭に入ったために、かえって一語一語のつづりの確認がおろそかになっていたのでしょう。旅行をしているわけではないので、発音することこそないものの、この単語は、これまで読んだ本の中にも、今読んでいる本の中にも、何度も何度もでてきているのです。にも関わらず、いざ書いてみると書けないことにあ然とし、書き取りをしてみてよかったと思いました。唯一救いなのは、monsieurは、フランス語の数少ない例外的な発音の一つだということです。

 『フランス語ハンドブック』のp.432~p.433には、こうした「例外的な発音の基本語100語」の一覧があって、参考になります。本を読みながら、どういう発音かなと気になっていた単語も、中にいくつかあります。aspect やrespectの-ctやsculptureのp、condamnerのmが発音されないとは思いもしなかったので、驚きました。

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 『異邦人』は結末が悲しいと分かってから、一気に読み終え、気分直しにと、読み終えたその日、8月16日には、もう次の本を読み始めました。今回注文していたジュール・ヴェルヌの本は2冊あったのですが(下記リンク参照)、『L'île mystérieuse』を読むことにしたのは、つい最近、気球に乗ったばかりなので、気球が表紙のこの本に誘われているような気がしたからです。『八十日間世界一周』は、校訂や注・解説が詳細で、一応それをすべて読んだところ、確か「ジュール・ヴェルヌの編集者は、ハッピー・エンドでないと承知しなかった」といったことが書かれていたため、ジュール・ヴェルヌの本なら、悲しい終わり方はしないだろうという思いもありました。『悲しみよこんにちは』は題からして悲しい内容かもしれないので、一度ヴェルヌの作品を読んで、気を取り直したあとで読むことにしました。

 イタリアでは最近天気が崩れ、気温も下がって、涼しくなりました。家の外で風がうなりを上げていたとき、この本の中でも暴風が吹き荒れて、気球に乗った5人が悪戦苦闘していました。昨晩はちょうど、気球と乗客が、題名にもなっている「神秘の島」にたどり着いて、探検を始めたところまで読みました。続きが楽しみです。

 9月は英語の通訳の仕事が、確実な依頼の他にも、いくつか打診があります。どれもあまり専門的・高度な内容ではないということなので、必要はないとは思うものの、せっかくなので機会をとらえて英語もブラッシュアップするべく、読んだり聴いたりする時間を取り入れていきたいと思っています。

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"Francese completo" - questo manuale è talmente difficile per i principianti che l'anno scorso ne ho studiato solo qualche unità. Ma ora che ho finito due manuali in giapponese, lo stesso manuale sembra meno difficile. Per studiare le unità che avevo già studiato, ho deciso di fare il dettato ascoltando i dialoghi del CD. Ieri, il dettato dell'unità 1; sono riuscita a capire e scrivere bene, ma ... non ho potuto scrivere 'MONSIEUR' correttamente, nonostante io abbia letto questa parola parecchie volte nei libri!! Ora non dimenticherò più come si scrive MONSIEUR!!!
Appena finito "L'étranger", ho cominciato a leggere "L'île mystérieuse" di Jules Verne. Nei giorni scorsi c'è stata una tempesta sia fuori della casa nostra sia nel romanzo che sto leggendo. Ora i passeggeri sono finalmente atterrati sull'isola. Finora è molto interessante come speravo.
A settembre devo lavorare come interprete inglese-giapponese. So I have to brush up my English instead of studying only French.
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関連記事へのリンク
- フランス語で読む夏2
- 『L’étranger』
- おおシャンゼリゼ
↑ イタリア人向け入門書、『Francese Corso Completo』について説明あり。

LINK
- Amazon.it - J. Verne, "L'île mystérieuse", Folio classique
- Amazon.fr - J. Verne, "L'île mystérieuse", Folio classique

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by ぷー at 2013-08-27 04:53 x
なおこさん、こんばんは。
以前にこちらへのコメントで書いたと思うのですけど、私もイタリア語コースに再挑戦しました。9月からも通うつもりではいます。一応最上級クラスに入れてもらえたんだけど、「え、それはナンですか?」てな感じで、自分でもビックリする程文法を疎かにしたままやってきていることが発覚。アップアップしていました。また新聞雑誌なんかは読んでいても、小説はたまにしか…だったので、この機会にと、ここ数ヶ月以前よりもイタリア語で小説を読むようにしています(前も読んでいましたが、もうちょっとペース上げました)。イタリア語が専門ではないですが、「あ〜、この言い回し、ステキ〜♡」なんて私なりに思えるようにもなり、それだけでも成果はあったかな〜、と自己満足の日々です。
Commented by milletti_naoko at 2013-08-27 15:54
ぷーさん、おはようございます。おお、それはすばらしい! イタリア語コースの最上級は、暮らしていたり母語がイタリア語の姉妹言語だったりで、生活にほぼ不自由はないけれど、文法や語彙のつめがほしい生徒さんと、外国でイタリア語の文法や作文・読解などをみっちり勉強したけれども、思うように話せなくてもどかしい生徒さんなど、同じレベルとはいっても経歴や個々の力(話す力、語彙力、文法の知識などなど)がさまざまの場合が多くて、おもしろく学ぶことも多い一方で、ぷーさんにとっては当たり前の会話における独特の表現などの説明もあることかと思います。

イタリアに暮らしながら、学校に通わずにイタリア語をコミュニケーションなどの中から習得する移民について、そのイタリア語の発達を観察・分析している研究がいろいろあるのですが、たとえば接続法や条件法をきちんと理解して使えるようになるのは、そういう移民のわずか一部だそうです。(つづく)
Commented by milletti_naoko at 2013-08-27 15:55
ぷーさんへ(上からの続きです)

イタリアの生活や暮らしのイタリア語のベテランのぷーさんのおかげで、他の生徒さんも目からうろこなのではないかと思います。イタリアでは新聞はかなり独特な言い回しや表現を使うことが多いので、小説にも作風や雅語、詩的表現と言うのはありますが、会話も挿入されているはずですし、より広いイタリア語に触れられるのではないかと思います。

ぷーさんはイタリア語、わたしはフランス語、お互いに頑張りましょう! あ、英語も少しずつ再特訓をしていかなければ。
Commented by poirier_AAA at 2013-08-27 22:18
ジュール・ヴェルヌといえば、ずいぶん前にフランス語のクラスで「80日間世界一周」を読んだだけです。担当の男の先生がファンだったのか、ものすごく細かくて丁寧に話を追う授業だったことだけは良く覚えています。この「神秘の島」も相当面白そうですね(あらすじを読みました)。わたしもいつか読んでみましょう。

ヴェルヌを読んだ後なら、サガンの文章ははるかにすっきりとしているので読み易いと思います。わくわく楽しいという話ではないのが玉にキズ(?)ですけれど、わたしは逆に言葉を削った書き方にフランス語らしさを強く感じます。

パリはぐっと秋らしくなりました。否が応でも新学期に向けて気持ちが高まりますね。わたしも心機一転、フランス語を頑張ります。
Commented by milletti_naoko at 2013-08-28 00:46
poirier_AAAさんはフランス語の授業で、『80日間世界一周』を読まれたんですね! 先生の物語への愛情が感じられる授業というのはいいですね。内容が内容だけに、乗り物に乗るときなど移動に関する表現や、日時・天候を表す表現も多いし、会話も多いので、授業で取り上げやすいポイントも多いですよね。

『神秘の島』は私が買ったのは完全版なので、約900ページと長いのですが、長い間楽しむことができそうです。ヴェルヌファンの夫が中で一番好きな1冊(夫はそうと知らずに簡約版で読んだそうです)ということなので、期待しています。poirier_AAAさんも機会があれば、手に取ってみてくださいね。途中から『L'étranger』のように、話がさらに暗転することのないよう願いながら読んでいます。

さすが生活の中でフランス語に触れられているだけに、文体の違いにもとても敏感でいらっしゃいますね。わたしも早く、フランス語でも、そういう感覚が磨けるようになれたらと思います。

イタリアも最近は天気が崩れやすく、かなり気温が下がりました。秋と言えば、学問の秋でもありますよね。本当に、お互いにフランス語の勉強を頑張りましょう!
by milletti_naoko | 2013-08-26 17:55 | Francia & francese | Comments(5)