イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

映画、『マフィアは夏にしか殺らない』

 昨晩は久しぶりにとてもいい映画を見ました。「マフィアはパレルモで常にすべての人々の人生に影響を与えてきた。とりわけ、ぼくの人生に。」という若い主人公のモノローグから、映画は始まります。組織犯罪者集団がいかに一般市民の人生に、集団に属する子供の未来に、そして社会全体にどんなに酷い影響を与えているかは、数年前に上映された『ゴモッラ』でも告発され、巧みに描かれていました。

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Dalla pagina facebook – La mafia uccide solo d’estate

この映画も同様に、マフィアがいかに一般市民の日々の暮らしや人生に関わっているか、その残酷さを、過去の主要な事件を織り込みながら物語を進めています。ただ、『ゴモッラ』とは違い、ユーモアやラブコメディの要素を多く取り込んで、映画の物語や場面を楽しめるように工夫してあります。

 幼い頃に恋をした少女に、大人になっても恋心を抱き続ける主人公、アルトゥーロの誕生や成長を軸に、その人生のさまざまな場面に、マフィアの残酷な殺人事件が、直接、あるいは間接にからんでくるという形で物語は展開します。マフィアに命を奪われるのは、幼い主人公に親切にしてくれた紳士だったり、恋した相手の雇用者だったりします。マフィアの団員が、主人公の横をすり抜けた直後に殺人に及ぶという場面もあります。どれだけ市民の社会生活にマフィアの犯罪が浸透しているのかを伝え、かつ、また、ジョヴァンニ・ファルコーネ、パオロ・ボルセッリーノなど、マフィアと闘って暗殺された裁判官たちを、育ちゆく主人公と接点のある大人として描き、映画の中で育ちつつある主人公にしては、「今」の出来事として、こうした殺人の場面が描かれるため、こうした過去のマフィアによる残虐な重大犯罪を、主人公だけではなく、見る者にも今現在の衝撃的な事件として突きつけ、過去の事件と風化させてはいけないということを、強く訴えかけてきます。

 題名は、まだ幼いアルトゥーロに、「マフィアは自分たちも殺すのか。」と聞かれて、父親が息子を安心させるために発した言葉から来ています。「今は冬だろう。マフィアが殺すのは夏だけだ。」ところが、現実にはマフィアは、狙いを定めれば、季節どころか、相手の命や道徳、場所にもお構いなしであることが、映画を通じて分かります。ちなみに、この父子のやりとりは、下の劇場予告の最後の方に登場します。


 近年マフィアなどの犯罪組織集団が、元来活動拠点であったシチリアなどの南の一地域ではなく、イタリア全土に、特に北イタリアに浸透していると言われています。映画の中には、「シチリアにはマフィアはいない」、「マフィアも犬と同じで、うるさがられるようなことをしなければ問題ない」といった言葉が出てきます。現在、イタリア北部でのマフィアの暗躍も明らかになったのですが、数か月前に、「北イタリアにはマフィアはいない」と断言した政治家がいて、臭いものにはふたをして、市民には情報を隠し、見ないふりをする政治家の風潮は、古今東西を問わず同じだなと、哀しく感じました。

 映画を通して、市民がマフィアと闘おう、撲滅しようと立ち上がり、声をそろえていく様子、マフィアの残酷さやマフィアと闘った人々について子供にも教えていこうという親子が描かれ、変わろう、変えようとしていく町や人々の姿に希望が見えます。機会があれば、ぜひご覧ください。

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Film, "La mafia uccide solo d'estate"

- Molto bello. Comico e romantico, pur dipingendo diversi crimini e omicidi brutali della mafia. Narrando attraverso gli occhi del bambino che cresce e ha conosciuto personalmente le vittime in qualche modo, ci racconta quanto onnipresente sia la mafia nella vita dei cittadini a Palermo (ormai non solo...) e descrive gli omicidi passati come quelli presenti, attuali, da non dimenticare mai. In fine il film ci dà speranza attraverso le grida dei cittadini e l'educazione del figlio da parte dei protagonisti.
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LINK
- amazon.co.jp - マフィアは夏にしか殺らない [DVD]
- amazon.it - film DVD, "La mafia uccide solo d'estate"
- facebook – La mafia uccide solo d’estate
- 『ゴモラ』 [DVD]

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by kazu at 2013-12-19 02:18 x
なおこさん、こんばんは。Gomorra、私も見ました。トトの物語は残酷で、いやそれ以外の物語も救いようのないお話で、見た後は気が重くなりましたが、あれが現実なのだと思うと、せめて、子供達だけでも何とか守れないものかと思いました。なおこさんが紹介して下さっている映画は、少し趣が違うようですが、日本でも公開されたら見てみたいと思います。

それにしても、マフィアは南にしか居ないと思っていたら大間違いのようですね。普通の生活が脅かされたらほんとに怖い。と、そういいながら、明日ナポリに向けて出発する私です。今、前泊で関空のホテルに居ますが、なおこさんのおられるイタリアに今年も行けると思ったら、なかなか寝付けないでいます。
Commented by アリス at 2013-12-19 11:56 x
なおこさん、やはりイタリアではマフィアの問題は、人々の生活と切り離せない問題なのですね!イタリアのマフィアものと言えば、「ゴッドファーザー」くらいしか知らないのですが、あの映画を観ても考えさせられますよね!日本だって、「やくざ」のことがあるので、同じですが、最近はめだたないところで、活動しているようで、なんだかその方が怖いような気がします。('_')
Commented by milletti_naoko at 2013-12-19 18:07
カズさん、マフィアやカモッラを告発するロベルト・サヴィアーノの姿勢も、彼の小説を映画化した『ゴモッラ』もすばらしいけれど、直視して、考えなければいけない現実を暴露したものとは知りつつ、やはり暴力的な場面が多く、見たあと暗い気持ちになりますよね。この映画は、そういう意味で、どこか『ライフ・イズ・ビューティフル』に通じるものがあり、ラブコメディーの要素を取り入れながら、話が進んでいきます。ただ、この映画では、主人公は最後に幸せをつかんでいるので、そういう意味でも、安心して、最後まで楽しんで見られるかという気がします。

かずさん、ナポリではくれぐれも注意してくださいね。ホテルの人に、訪ねていいところ、歩いては危険な区域など、しっかり教えてもらってください。せっかくいらっしゃるのですが、今回も、行かれるところは皆遠方なのでしょうか。今はもうイタリアでしょうか。よろしかったらメールで旅程をお知らせください。クリスマス前で少々ばたばたしてはいますが、もしかしたら何らかの形でお会いできる日があるかも。Buon viaggio!
Commented by milletti_naoko at 2013-12-19 18:14
アリスさん、マフィアの拠点であるシチリアは別として、今イタリア全土に浸透しつつあるマフィアの暗躍とは、殺傷事件ではなく、公共事業における不正競争入札や産業・政治との癒着などです。ただ、そういう形で、本来はきちんとした道路や学校が造られるはずのところに、マフィアがからんで、ずさんな建て方をして地震や大雨の際に被害が出たり、行政の資金の多くが政治家やマフィアの懐に入って、市民のために使われなかったり、そういう形で、市民の生活に深刻な影響を与えています。

存在しているのに暗躍している、それも怖いですね。この映画や『ゴモッラ』は、そうやって潜伏していて、表面では見えにくい犯罪組織集団の悪を暴きだし、根絶しようというところにあると思います。
by milletti_naoko | 2013-12-18 14:25 | Film, Libri & Musica | Trackback | Comments(4)