イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

離れ島でサバイバル、仏語で読む『神秘の島』

 昨年8月に読み始めたジュール・ヴェルヌの冒険小説、『L'île mystérieuse』を、今も寝しなを中心に、ぼちぼちと読み続けています。900ページ近くある小説の、ようやく621ページまでたどり着いたところです。題名は、「神秘の島」ですが、少なくともこれまで読んだ範囲では、物語の焦点は、島の神秘さよりも、文明からは遠く離れた小さな島で、5人の男たち、いえ、3人の男性と2人の少年が、いかに果敢に、懸命に、暮らしに必要なさまざまなものを、自らの力で探し出し、作り出していくかに、当てられている気がします。

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 物語は、1865年春、気球が暴風に翻弄され、5人がやがて、無人島らしき離れ島にたどり着くところから始まります。19世紀のこの頃には、船が見知らぬ島にたどり着き、そこで長い間生活した人が、のちに無事に帰国するということは、実際にあったようです。ただし、船で漂着した場合には、船内に、長期の船旅に備えて、食糧や道具、衣類など、生活に必要なものが蓄えられているはずで、生き延びるのが楽になります。小説を読み進めるうちに、作者が、主人公たちを船ではなく、あえて気球で島に到着させたのは、船の遭難ならばあるはずの食糧や道具がまったくない状態でも、男たちが自分たちの知識や知恵、勇気や活力を利用して、どれだけ満足に値する生活環境を整えていけるか、それを描きたかったからだろうと、思うようになりました。と言うのも、5人ときたら、食べられる野草や果物を見つけ、自分たちが作った簡単な弓矢で、動物を射止めるだけではなく、

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 レンガや陶器どころか、起爆剤や鉄、鋼鉄、ガラスまで、島にあるものを使って、自分たちで作ってしまうのです。何かに紛れ込んでいた小麦の粒を耕した畑にまいて、収穫を繰り返し、パンまで作れるほどの小麦が育つようになり、小麦を挽くために風車を作り、はてはちょっとした距離なら旅ができるだけの船まで建造してしまいます。

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 わたしが、フランス語の読解力をつけるために、この本を選んだのは、夫が少年時代に最も夢中になって読んだ本が、ジュール・ヴェルヌの作品で、中でも一番好きだったのが、この『神秘の島』だと聞いたからです。と言っても、夫が初めてこの作品を知ったのは、この古い漫画を通してです。

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 ただ、イタリア語では同じfumettoという言葉で表現しても、中の絵は、劇画的です。ここでは主人公たちが陶器を作っています。何も設備のない場所で、皆が次々にいろいろなものを作り出すことに、わたしが感嘆していると、夫は、「何もなかった昔にも、陶器はあって、博物館にもそういう陶器が展示してあるだろう。」と言います。それを聞いて、なるほどそうだと思いました。こうして半年以上も読み続けてる間には、イタリアの教養番組で、古代ローマですでに、レンガやセメント、ガラスなどを作っていた様子が放映されることもあり、読書中の本のおかげで、興味深く思いながら見ました。

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 わたしが、まずは『赤毛のアン』をテレビアニメで見て、それから本を読んだように、夫も、漫画で知った『神秘の島』を、後から本でも読んでいます。120ページまでで活字も大きく、少年向けに要約されているのですが、夫は、わたしが900ページ近くあるフランス語の原書を読み始めて初めて、自分がかつて読んだ本が、完全版ではなかったことを知りました。今は、いつかイタリア語の完全版を読んでみたいと言っています。

 夫の幼なじみかつ親友のフランコも、生まれて初めて読んだ本が、この『神秘の島』だったそうです。上の本の表紙で、槍を手にした少年は、動植物に詳しくて、薬用や食用の植物を見分け、島で皆が生き延びるのに大きく貢献します。植物や動物が大好きで、いろんな本を読んだり、ドキュメンタリーを見たりする夫は、自然に囲まれて育ったからだけではなく、この小説の影響も受けているのかなと思いました。フランコが、いろんな仕事や物作りに挑戦するのも、ひょっとしたら、遠い昔にこの小説を読んで、そうやって、何でも自分たちで作ったり、工夫したりすることを、当たり前ととらえているかもしれません。

 『八十日間世界一周』に比べると、いろいろな事件が起こるものの、気になって眠れずに何十ページも読むということはなく、それでも、5人の運命や展開を楽しみに、少しずつ読んでいます。今は、島に大きな危機が迫っているかもしれないという場面にさしかかったところです。

LINK
- Amazon.co.jp - ジュール・ヴェルヌ作、大西徳明訳、『神秘の島〈第1部〉』 (偕成社文庫)
- Amazon.it - J. Verne, "L'île mystérieuse", Folio classique
- Amazon.fr - J. Verne, "L'île mystérieuse", Folio classique

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"L'île mystérieuse" di Jules Verne

- Sono arrivata alla pagina 621 e mi sembra che ora i cinque coraggiosi dell'Isola stiano per affrontare il pericolo più grave sin dal loro arrivo all'Isola Lincoln. Scoprirò che cosa succederà leggendo le restanti 248 pagine.
- Questi cinque sono capaci di fare tutto! Creano i mattoni, il ferro, l'acciaio e anche il vetro. Di recente hanno fatto pure il pane con il grano coltivato e raccolto da loro stessi.
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関連記事へのリンク
- ムッシュウ (26/8/2014)
↑ 仏語でのディクテーションの難しさと『L'île mystérieuse』の読書開始について。 
- フランス語で読む夏1 (2/8/2014)
↑ ジュール・ヴェルヌの『Le Tour de monde en quatre-vingts jours』(邦題は『八十日間世界一周』)を読んでの感想。今のところ、これまでフランス語で読んだ数少ない本の中で、一番夢中になって楽しみながら読んだのは、この本です。これから読もうとされる方の、読書の楽しみを妨げないように気をつけながら、書いています。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by ayayay0003 at 2014-03-07 22:49
なおこさん、ジュ―ル・ヴェルヌという名前知らないと思ってましたが、なおこさんがリンクを貼って下さっているアマゾンのサイトを見て、地底旅行というタイトルがあったので、前に夫がこの地底旅行という物語がおもしろかったというのは聞いたことがあるので、全く知らない作家でもないなぁと思いました。(^-^)
冒険ものは、結構おもしろいのでつい夢中になって読んでしまいますよね♪少しずつ読んでらっしゃるなおこさんは、なかなかだなぁ…と思います。私は、外国語で読むのは無理なので、日本語だとつい睡眠時間を削って読んでしまいそうです(笑)
Commented by milletti_naoko at 2014-03-08 00:14
アリスさんのだんなさまもですか! 赤毛のアンや足長おじさんを女の子が読むように、世界の少年たちにとっての名作文学、冒険小説の作家がジュール・ヴェルヌなんでしょうね。『神秘の島』の方は、男性の方が、我が身に置き換えたりして楽しめる要素が大きいかと思いますが、『八十日間世界一周』は、女性のわたしが大人になって読んでも、十分に楽しめました♪ 多くの名作文学が世界共通というのは、おもしろいですね。
Commented by suzu-clair at 2014-03-08 17:52
『八十日間世界一周』の作者の物語なのですね。
こうした優れた冒険物の物語を、子ども時代に読むことは、
情操教育や人格形成においても、とてもプラスになる、
といったことを聞いたことがあります。
・・・難しい理屈は抜きにしても(笑)、
とてもおもしろそうな物語ですね☆

『神秘の島』、イタリアでは、人気の物語なのでしょうか。
なおこさんが赤毛のアンを読まれたように、
いい物語は、
入り口が漫画やアニメであったとしても、
それをきっかけに物語を読む人が増えるのは、とてもいいことですよね。
日本では、最近の子供向けテレビアニメには、
そういう想像力や探究心を広げる文学がもとになっているものが少なくなっている気がして、
そこがちょっと残念です。。。

なおこさんのだんな様やご友人も、
この物語の影響が、今を作っていらっしゃる部分もきっとあるのでしょうね☆
Commented by milletti_naoko at 2014-03-09 01:45
すずさん、どこかで少年者と思い込んでいたきらいがあって、『八十日間世界一周』も『神秘の島』も、フランス語を勉強しなければ、読むことはなかったのではないかと思いますが、大人になった今でも、読んでおもしろいです。アンに夢中だった頃、わたしはシャーロック・ホームズも読みあさっていたので、少年向けと少女向けに分けてしまうのは、何だか子供たちの選択をせばめてしまうかもしれないなと思いました。そう言えば、いつだったか、姪に世界の名作文学を贈ったときに、アニメで知っているハイジを、特に喜んで読んでいました。創作アニメもいいけれど、世の名作を子供たちが知るきっかけになってくれる、そういうアニメ作品が、今後もあるといいのですが。
by milletti_naoko | 2014-03-07 13:21 | Film, Libri & Musica | Comments(4)