2014年 06月 22日
EU市民の家族とシェンゲン協定1
読者の方が受け取られたメールには、フィンエアーが、「イタリアの滞在許可書の承認に関する問題については、国境警備のシェンゲン手引きのAnnex 22を訂正することで解決したと、フィンランド大使館移民局から確証を得ました」とイタリア語で書かれ、Annex 22の変更箇所(イタリアのEU市民用の滞在証の説明)を英語で記したものを引用してあります。個人あてのメールの内容ではあるのですが、より多くの人に関心があり、直接の利害がある上、本来は航空会社とフィンランド当局が、すぐにも公にし、わたしやとすかーなさんをはじめとして、この問題について苦情や質問を寄せている人に返事をするべきであるということを考えて、わたしの方で、日本語に訳してご紹介しました。フィンランド当局からの通達がフィンエアーおよび国境警備に行きわたって、移動の権利があり、必要な書類も所持されている方が、国籍は何であれ、二度とこれまでのような予期せぬ搭乗拒否やひどい対応に遭い、嫌な思いをされることのないよう願っています。
その一方、そういう通知が不徹底で行きわたらないことも十分に予想されるため、明日イタリアを発たれるこの鍵コメントの方のためにも、EU法で、わたしたちのシェンゲン協定加盟国内の移動に必要とされている書類は、「有効なパスポートと現在滞在している加盟国のEU市民家族用の滞在証だけ」であることや、かつ「滞在証が紙だという理由で無効扱いはできない」ことを記した箇所を、一応、ここに引用しておきます。こういう法律の引用の必要がないことを祈りつつ、また、万一の場合も、担当官が読んで再考し、あるいは本国に通達してくれて、状況の改善につながることを願いつつ。
(このあと、次の部分を書くまでの間に数時間経過しています。)
先ほど、肝心の法律を引用する前にと、フィンエアーからのメールに記載されていた「国境警備のシェンゲン手引きのAnnex 22」なるものを調べていたら、手引きやAnnex 22が見つかった上、手引き内には、国境警備が参考にすべき法律も列挙してありました。というわけで、今夜はもう遅いので、わたしが上述した法の関連箇所は、明日にでもこの関連法律一覧に目を通したあとでお知らせすることにして、今日は、とりあえずこの英語版の 『国境警備のための実践的手引書』の添付書類、Annex 22のうち、紙の滞在証が有効か無効化に関わる部分をご紹介し、この手引書および添付書類の関連リンクを、記事の最後に挙げておきます。
問題のAnnex 22は、シェンゲン協定加盟国が発行した滞在許可証(List of residence permits issued by member states)を、各国別に列挙したものです。うち31~32ページが、イタリアに、そして、うち「2. Residence permits in paper form」が、今回の一連のフィンエアー・フィンランド国境警備問題に関わる部分です。後者を引用すると、次のように書かれています。
Da “Annex 22, List of residence permits issued by member states
“ITALY
[…]
2. Residence permits in paper form
2.a Residence permits in paper form, issued in a new format in accordance with national legislation, valid for a maximum of three months, for one of the following reasons:
- Cure mediche (Medical treatment)
- Gara sportiva (Sporting event)
- Missione (Mission)
On 15 October 2013, Italy adopted a new residence permit in paper form to replace the one in use.
2.b The previous residence permit in paper form is still part of this Annex exclusively for cases of:
- Residence card with a permanent validity and issued before the entry into force of
Legislative Decree No 3 of 8 January 2007, in line with Directive 2003/109/EC and made equivalent by the Legislative Decree to the EC residence permit for long-term residents
- Residence card for family members of EU citizens who are the nationals of third countries, with a five-year or permanent validity (implementation of Directive 2004/38/EC)
- Carta d'identità M. A. E. (Identity card issued by the Ministry of Foreign Affairs) (see Annex 20)
- List of persons participating in a school trip within the European Union”
赤字で示したのが、紙製のEU市民用の滞在証(Carta di soggiorno per familiare di cittadino UE)について記した部分です。掲示板に引用された外務省の方の言葉だったかに、「この紙製の滞在証がAnnex 22にない」とあったように記憶していますが、こんなふうに、紙製の滞在証も、今回メールで読者の方に通知があった改訂以前にもすべて存在していたわけです。
読者の方がフィンエアーからメールを通して知ったAnnex 22の今回の改訂内容は、まだオンラインの文書には反映されていませんが、その紙の滞在証がどういう色をしていて、どの法に基づいて発行されたものかを、2種類の異なる紙製の滞在証について詳しく説明しています。(つづく)
Sulla questione dei casi d'imbarco negato e degli atteggiamenti autoritari nei confronti dei cittadini giapponesi coniugi di italiani da parte dei personali di Finnair e della Guardia di Frontiera Finlandese, una mia lettrice che partirà con Finnair domani ha ricevuto dalla campagnia aerea un'email che comunica: "abbiamo ricevuto conferma dall'ufficio immigrazione dell'ambasciata finlandese che i problemi relativi all'accettazione dei permessi di soggiorno italiani sono stati risolti con l'aggiornamento del documento Schengen Handbook's (Regulation-Manual) Annex 22" .
Mi auguro che i problemi siano stati veramente risolti e che la lettrice possa viaggiare senza problemi. Infine, spero che le autorità finlandesi rispondano alla mia email il più presto possibile per chiarire la questione a tutti.
Link riguardanti “Practical Handbook for Border Guards”
- ”Practical Handbook for Border Guards (Schengen Handbook) (pdf)
- ANP EU Monitor – Practical Handbook for Border Guards – State of play
関連記事へのリンク / Link agli articoli correlati
- EU市民の家族用滞在証 / Carta di soggiorno per famiriare di cittadino UE (27/6/2012)
- 紙の滞在証でも入国の権利あり / Risposta da Euro Direct circa la Validità della Carta di soggiorno per familiare di cittadino UE cartacea in altri Paesi Schengen (3/6/2014)
- フィンエアー問題中間報告 (14/6/2014)
- Appeal to Finnish Authorities (14/6/2014)
- それでもイタリアなワケ NEW! in トスカーナ - フィンランド大使館のお返事 (2014/6/13)
- EU市民の家族とシェンゲン協定2 / Familiari di cittadino UE e Accordi di Schengen 2 (23/6/2014)
-それでもイタリアなワケ NEW! in トスカーナ - フィンランド問題 最終報告 (2014/6/24)
- フィンランド国境警備からの返事、紙でも大丈夫 / Risposta - Tipi di carta e permesso di soggiorno cartacei accettati dalla Guardia di Frontiera Finlandese (25/6/2014)
今回の件は、なおこさんも勿論関係のある話で非常に真剣に考えていらっしゃることが他の方のブログからも強く感じました。ただ、こういうブログというコミュニティの中でそれぞれが悩んで、そういう方が結構いて、お互いで情報協力して解決に向かうところがとてもいいことだと思いました。
みなさんの行動力と情報力に感服!貴重な情報をありがとうございます。
なおこさんがいろいろと法律にのっとり、またこの問題で日本人がフィンエアーで搭乗拒否にあわないように調べられたおかげでたくさんのイタリア在住の日本人の方が助けられたと思います。まだまだ正式に通達されているかどうかわからないので、安全のために保険をかけておく必要(なおこさんが用意してくださった文書のコピー)があるとは思いますが・・・。
このように大変な問題を一個人の働きかけによってしか解決できないというところに外国で暮らすということの不便さを感じた私です。日本人である以上日本の国がどうにかしてくれたらいいのに・・・などとあまっちょろいことを思う私であります。
なおこさんは本当に素晴らしい方です。今回のことに同じ日本人として感謝致します、ありがとうございました(*^_^*)
もし明日出発される鍵コメさんがプリントアウトして持っていきたいということでしたら、メールを転送しますので、お知らせください。あ!ダメだ、もう出発していますね。。。
おっしゃる通り、現場まで情報がいきわたってない可能性もあるので、なおこさんの調べてくださったAnnex22などの部分も持って行ったほうがいいでしょうね。
私も今日中にブログに記事をアップしたいと思います。沢山の時間をかけて調べてくださってありがとうございます。
いえいえ、アリスさん。曲がったことは許せない性質ですし、自分にも関わる問題ですので、できるだけのことをしようと思っただけのことです。書こうと思いつつ書けていない手紙が多く、フランス語も掃除もさぼりがちでいけません。先週は日本語の講座が一段落したことですし、今週から少しずつ頑張ります!!
ご提案をありがとうございます。鍵コメさんも日本への帰国には問題ないかもしれないのですが、ひょっとしたら日本からの出発に際して、空港の係員に連絡が徹底していない可能性がないとは言い切れないので助かります。もし鍵コメさんからメール転送の依頼があれば、また改めてお願いいたしますね。
どういたしまして。今後は、理不尽な搭乗拒否やひどい扱いで、もう日本の方が苦しまれることがないように祈っています。カンポさんやとすかーなさん、まゆみさんをはじめ、掲示板に情報を載せてくださった方々など、皆が情報を発信・共有してくださって、ある意味連携して、多方面からフィンランドやフィンエアーに呼びかけることができた、そのおかげだと思います。非があるのがフィンランドだと教えてくれたEurope Directにも感謝しています。
ここまで徹底的に調べてくださり、実際にアクションを起こしていただいてありがとうございました!今回の里帰りに関して私はフィンエアーを避けるという手段をとってしまい、結局問題から逃げてしまってましたので・・。
これで、ヘルシンキを経由する沢山の日本人の方が助けられると思います。再度お礼申し上げます!
今日あと数時間で中国東方航空で日本出発です。この便は別の意味で大変ですが・・・。(笑)
中国東方航空での移動も、本当に別の意味で大変そうですね。どうか無事に日本に帰国をすることができますように。カンポさんの映画情報に、いつもいろいろ教えていただいていて、こちらでのテルマエ・ロマエの上映を楽しみにしています♪ ブログやブログ村というのは、何だかイタリア在住日本人情報交換回覧板みたいなところがあって、おもしろいし、役に立つこともあって便利ですね。せっかくの日本で過ごす日々、どうか十分に楽しんでくださいね。Buon viaggio!
フィンエアーの件、無事解決の方向に進んでいるのですね、本当に良かったです(私は何もしてないわけですが・・・)お忙しい中で確認を続けられていたなおこさん・・・心からありがとうございました!
私もなおこさんのように、将来は情報を共有できるような立場になれれば良いのですが!
今回、私はなおこさんのお人柄に改めて惹かれました♡
実はこのイタリア語の先生も、少し前から日本の在留カードには偽変造防止のためのICチップが搭載されたといって、顔写真の付いたプラスチックのカードを見せてくれました。このカードを携帯していないと分かれば罰金が5万円科せられるのだそうです。今日の授業は、半分この話題でしたが、外国の方達が異境の地に住むのは日本もイタリアもご苦労があるのだとつくづく思い知った次第です。
わたしも搭乗拒否を受けて、旅程の変更や新たな航空券の購入を余儀なくされた方は、賠償を請求する権利があると思います。今回改訂されたシェンゲン手引きのAnnex 22や国境警備のメールに記された、承認される紙製のイタリア発行の書類を見ると、結局はいつ発行されたどんな形式のものでもいいように思えるのですが(近いうちに記事にします)、ひょっとしたらそれに当てはまらない紙の許可書・滞在証もあるかもしれません。でも、いずれにせよEU市民家族として移動の権利はあるはずで、EU法には万一書類に不備があっても、出入国にあたっては他の資格を証明する書類で代用できないか模索し、ビザの取得を助けることと書かれているように思います。(つづく)
フィンランド側は、英語表記がpermit of stayなので、Carta di soggiornoがresidence cardに該当するとは思いつかず、それならば一されたプラスチック製のものではないといけないと考え、それで「紙製ではいけない」と伊大使館にも通知し、大使館もそういうものと思い込んだのではないかと思います。本当は「EU市民家族用の滞在証」(residence card of EU citizen)なのに、英語でのそういう表記が一切ないために、一般の「滞在許可書」と混同され、紙製はいけないということになり、この誤解が空港や入国審査における詰問や搭乗拒否につながったのではないかと。Europe Directの自らを非とする判断を知って、ようやくその誤解に気づいたのではないかと思いますが、それにしてもイタリア大使館も、法を読み返せば打つ手はあることに気づけたはずなのに、頼りないですね。フィンランドもイタリアも、どちらも自分が正しいと思い、これだけ問題が起こっているのに、互いに連絡を取らなかったことも、困ったものです。