イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

フィンランド、イタリアと日本

 今夜は、フィンランド映画、『過去のない男』が、Rai5で放映されていました。見ていたら、ヘルシンキ行きの電車の食堂車で、給仕らしき人が主人公にとっくりを運び、「お酒をどうぞ。」(Il suo sake, signore.)と、酒をつぎ、主人公の前に、寿司の載った皿が置かれていたので、びっくりしました。バックミュージックには、なんと日本語の歌まで流れているではありませんか。

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Dal film, “L’uomo senza passato”

 映画のあとのテロップを見ていたら、日本語の歌が二つあり、その一つの題名が”Motto Wasabi”だったので、つい笑ってしまいました。




 この映画が公開されたのは2002年ということですが、その頃、もうこんなふうにフィンランドに日本料理が浸透していたのでしょうか、それとも、監督が日本の歌を採用することに決めたので、寿司と酒も登場させたのでしょうか。

 いずれにせよ、最近イタリア在住の日本の方が国境通過に際して大変な思いをされることの多かったフィンランドで、12年も前に、日本文化をさりげなく映画の中に取り込んでいることが、興味深かったし、うれしかったです。6月23日に、わたしにはフィンランド国境警備から、そしてその前後に、Onopyさんやとすかーなさんにはフィンエアーのイタリア支社、日本支社からそれぞれ連絡が届いたように、イタリアから日本に帰国する際については、6月、7月と月を違えて出発されたお二人が、どちらも何の問題もなく、ヘルシンキ空港で入国審査を通過したと聞き、ほっとしています。どなたかすでに、フィンエアーを利用して、6月18日以降、日本からイタリアに戻られた、EU市民家族用の紙の滞在証をお持ちの方がいらっしゃれば、今、イタリアへ戻ろうとしている方や、フィンエアーの航空券の航空券の購入を検討している方のためにも、日本出発やヘルシンキの入国審査における状況を、教えていただけると幸いです。

 極右が台頭すると、政策・メディアもその影響を受け、ひいては、外国人の排斥や外国人・外国文化への偏見・差別が助長されてしまうのかもしれません。自分の生まれ育った環境や国・文化のものさしだけを基準として世界を眺めるのではなく、異なる文化や国、生き方に対して、それが倫理に反するものでないのであれば、皆がもっと寛容に、大らかにお互いを受け入れ、理解していけるような世の中であればと、願っています。「料理は、イタリア料理が世界一おいしい。」と断言するイタリアの人の言葉に苦笑しながら、同じようなことを日本について言っていないか、考えていないかと、ふと我が身を省みることがあります。

 政治・経済やニュースが、つい国益の摩擦に焦点を置きがちで、外国に関しては報道に偏見が入る傾向があるその中で、寿司などの日本料理や、アニメや漫画、空手や合気道、生け花や折り紙などの日本文化、そして、実際に留学や旅行、暮らしの中で日本のわたしたちが、さまざまな土地の人と触れ合うことが、草の根の、そして真に大切な異文化理解・国際理解促進の鍵となっている。そんなふうに考えています。

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 そういう意味で、昨日と今日、二日間にわたってペルージャでも上映された日本映画、『テルマエ・ロマエ』やその原作の漫画も、そうした「ニュースやステレオタイプでは分からない日本」を知り、日本に興味を持ってもらえるいい機会であったのではないかと思います。昨晩は映画館で、すてきなお仕事をされている、ペルージャ在住の日本女性3人にお会いできてうれしかったです。夫や彼女たちのだんなさんをはじめ、大学で日本語を教えたかつての学生さんなど、見に来ていたイタリアの人も何人かいて、楽しんで見てくれた人が多かったようなので、うれしかったです。



Film Finlandese, "L'Uomo senza passato"

- lo guardavo ieri su Rai5 e ... sorpresa! Il protagonista mangia il sushi, beve il sake in un vagone ristorante del treno per Helsinki!! Sullo sfondo pure una canzone giapponese.

- Ora so che due signore giapponesi hanno volato con Finnair senza problemi con la loro carta di soggiorno cartacea. Meno male!

- La cultura culinaria, i contatti di persone tra diversi Paesi, diversi aspetti della cultura aiutano a costruire il mondo, i Paesi pluriculturali aperti alle culture diverse da quella propria.

- In questo senso contribuisce anche la proiezione di un film giapponese come "Thermae Romae" in Italia. Nel film il protagonista viaggia nel tempo e nello spazio, dalla Roma antica al Giappone contemporaneo. La sua sorpresa, sfiducia iniziale nei confronti della cultura totalmente diversa si trasforma nel rispetto e nella comprensione attraverso i contatti personali e gli scambi culturali e questo riflette pur in modo esagerato e comico il cambiamento di chi incontra una cultura differente.

関連記事へのリンク
- フィンランド国境警備からの返事、紙でも大丈夫 (25/6/2014)

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by あんずミャミャ at 2014-07-23 14:58 x
海外で日本物を耳にしたり目にしたりすると
うれしいのでしょうね。

とはいえまだまだ海外での
日本のイメージは
寿司に侍なのでしょうね・・・
(本当に今も日本には侍がいると思っている人も・・・)
Commented by milletti_naoko at 2014-07-23 16:11
あんずミャミャさん、イタリアでもテレビの文化番組やニュースで日本が登場することが時々ある上、日本と取引・交流のある企業や役所もあり、日本を旅する人もいるので、意外と日本のことは知っている人が多いのですよ。日本語を勉強する人の中には、アニメや漫画の大ファンで、そういう作品を通じて、コタツや「先輩」など、日本独特のものや風習を知っていたりする人もいます。

異国に暮らしていると、やっぱり日本の方に出会えたり、日本のものが楽しめたりするのはうれしいです♪
Commented by ayayay0003 at 2014-07-23 19:32
なおこさん、こんばんは。
テルマエ・ロマエ観に行かれたのですね~
私もこの春に映画館で観てやっぱりこの映画は面白いし、日本とイタリアのかけ橋になっているような気がして嬉しかったです♪
以前は、イタリアというと海外旅行で行くだけの遠い異国という感じでしたが、なおこさんを始めイタリア在住のブロガーの方とお知り合いになってからはより身近にイタリアを感じるようになり、今まではあまり興味のなかった分野のことでも耳を傾けるように変わってきました(*^_^*)
フィンランドでも、寿司や日本酒が映画に登場しているなんてしかも10ねん以上も前に・・・。日本人としては嬉しいです。
日本人同士で良い時間を過ごされましたね~(*^_^*)
Commented by Miwa at 2014-07-23 21:15 x
お久ぶりです、ブログの投稿がなかった数日あらためて以前のなおこさんの記事にゆっくり目を通してました。ご主人と自然いっぱいのご旅行だったみたいでよかったですね!なおこさんの積み重ね、熱心さには本当に感心します。
以前ご紹介された「terra nostra」、私はどうやらこのお話の虜になってしまったみたいで、時間があれば次に次にと見たくなり、今22話まで進んでいます。解らない単語や表現は辞書で調べたり、後で主人に説明してもらったり楽しんで勉強できて本当に感謝しています。当時の文化や習慣もとても興味深いです。
私も小さい町に住んでいたのでイタリア語はずっと独学でした、主人とは文通という形で知り合ったので、こちらに実際住み始めていかに間違った発音をしていたかと気づく事が多いです。いつも年齢を理由になかなか頭に入らない事をいいわけしていましたが、この番組のおかげでちょっとスイッチがはいりました。
なおこさんがコメントしてくださる言葉ほんとに好きです。
Commented by milletti_naoko at 2014-07-23 23:37
アリスさん、こんにちは。皆さん、日本語版の方がおもしろかったとおっしゃるのですが、イタリア語版で初めて見たわたしも十分楽しめました。同伴してくれた夫も、楽しんでくれたようで、うれしかったです♪ 記事中、イタリア語では書いているのですが、古代ローマから現代日本への、時と距離を共に隔てた文化の邂逅でなくとも、現代のイタリアの人が日本を旅行しても出会うような異文化への驚きと、その後、交流を通して意識や態度が変わっていく様子が描かれていて、興味深かったです。日本のハイテクトイレへの驚きは、イタリア人の友人たちも、旅の思い出のびっくりの一つとして、自ら制作したドキュメンタリー映画で紹介していました。

単に遠い、どこかで聞いたことのある国というのではなくて、ブログを読んだり、旅をして出会いを重ねたりすることを通じて、草の根の国際交流や理解が進んでいくのではないかと感じています。

わたしも、フィンランド映画に、そうして食堂車の食事とバックミュージックに日本の寿司やお酒、音楽が登場するとは思いもしなかったので、びっくりしました! うれしい驚きです。久しぶりに日本のお友だちに会えてうれしかったです♪
Commented by milletti_naoko at 2014-07-23 23:48
みわさん、お久しぶりです。投稿のなかった間まで、読んでくださってありがとうございます。『Terra Nostra』、とても興味を持っていただけたようでうれしいです。昔の作品は話し方もゆっくりで、場面からも内容が想像しやすい上(たとえば英語ですが『大草原の家』など)、この作品はポルトガル語からの吹き替えなので、イタリア語の俗語や方言色が少ないので、聞き取りもしやすいと思います。わたしも見たのは途中からで、第1話は記事にするに当たって初めて見たのですが、いろんな移民の状況が分かって、興味深いですよね。今回の旅行で初めて、アブルッツォ州からは、家族ごと、村ごと、カナダに移民として渡った人が多いと知って、びっくりしました。ベネト州から集団でブラジルに移住したという話は聞いていたのですが、数十年ぶりにカナダから戻ってイタリアを訪ねた、移民の方とお話もできました。当時の文化や習慣も興味深いですよね。(つづく)
Commented by milletti_naoko at 2014-07-23 23:48
みわさんへ(上からのつづきです)

わたしも見ながら、義父母が若いときはこんなふうに、村の人が互いに助け合いながら暮らしていたのだろうと想像していました。小さい村の村人全員が集まっておしゃべりをしたり、音楽に合わせて踊ったりしたのだという昔話を、二人から時々聞くことがあるので、なおさらのこと。

みわさんの心に火をつけるテレビドラマのご紹介ができたと知って、幸いです。文法や書き言葉を主として学習すると、どうしても実際の話し言葉との発音のずれというのがでてきますよね。お優しい、そして、うれしいコメントをありがとうございます。わたしも、さぼりっぱなしのフランス語を頑張らなければ!(最近、言うだけになっています。いけない、いけない。)
Commented by nagisamiyamoto at 2014-07-24 06:56
なおこさん、こんばんは
あははは!motto wasabiですかぁ。面白いですね。イタリアでフィンランドの映画を通して日本を観たなおこさんの驚きが想像できるお話でした。フィンランド出入国の件はまだ続いているのですね。心配の種はまだまだ尽きずに落ち着かないですね。

映画は楽しんだみたいですね。皆さんの服装を見るとやっぱりペルージャは寒いようです・・・
Commented by milletti_naoko at 2014-07-24 15:02
なぎささん、いい歌かもしれないのですが、歌の曲名に思わずびっくり、にんまりしてしまいました。『Wasabi』は日本も登場するフランス映画の題でもあって、この作品もイタリアで時々放映されますよね。外国の人の目に映る、描く日本は、「あれあれ、おやおや」と感じる場面もありますが、興味深いです。そう言えば、イタリアに留学し始めたばかりの頃、公開されたばかりのイタリア映画をいろいろ見ると、主人公たちが日本料理のレストランで食べている場面が時々あって、驚いたことがあります。それにしても、フィンランドの、しかも、電車の食堂車でというのには、びっくりしました。

ペルージャも昨日は日中暑いくらいだったのですが、月曜は雨も降ったため、夜は冷え込みました。他の方の服装と比べても、わたしが寒がりなのが分かりますね。
by milletti_naoko | 2014-07-22 23:59 | Film, Libri & Musica | Comments(9)