イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

映画、『La fine è il mio inizio』

 空も草も木も、そうして、この自分も、すべてが、同じ大いなるものほんの一部であって、互いにつながりあっている。人の間、人と物とを隔てるものなど何もない。そのことを全身で直感することが、悟ることが自分にはできた。そうすれば、戦争や私益を求めることのおろかさ、無意味さがよく分かる。

 昨晩、テレビで映画、『La fine è il mio inizio』を見ました。ジャーナリストとして世界を駆け回り、共産主義革命に失望して、必要なのは自らの心の変革だと気づき、そのための教えを東洋に求めた父親が、死を目前にして、息子に自らの人生と、人生で学んだこと、死を迎えての思いを語る、そういう映画です。

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CAI 00 dal Passo Giovarello verso il Monte Bragalata 16/7/2010

 ですから、父親と母親が暮らす山の家からの青い山々の眺めや緑が美しいものの、映画の大半は父親の語りであり、大きな物語の展開や場面の移動があるわけではありません。けれども、冒頭に掲げた言葉のように、心に響き、熟考を迫られる言葉や教えが、あちこちに散りばめられていました。ただし、冒頭の言葉は、大体こういう趣旨のことが言われていたという大ざっぱな要約です。



 実在のイタリアのジャーナリスト、Tiziano Terzani(1938-2004)が、死を目前に息子の問いに答えながら語った内容が、その死後、2006年に本として出版されたのですが、この映画は、この本をもとに制作されたもので、Terzianiの息子自身も、脚本家の一人として、映画の制作に携わっています。

 「生きている間にしてみたいことはすべてしたから、悔いはない」、「まだ経験していないことと言えば、死ぬことくらいだけれど、これまで無数の人がこの世で経験していることだから、何も大げさなことではない。」

 地球に、宇宙に生きとし生けるものも、大地も海も、本当は大いなる一つのものであるのに、それが分からず、皆が己の利益ばかりを考えるから戦争などが起こるのだと、社会問題にしても、心の問題としても、生き方についても、考えさせらること、教わることの多い映画でした。いつか本をじっくり読んでみたいと思います。

映画、『La fine è il mio inizio』_f0234936_613612.jpg
 
 写真は、4年前の夏に、アッペンニーニ山脈の高峰を歩いたときのものです。映画の風景を見ていて、山並みがよく似ているような気がしました。(散歩の記事は、こちら

Il film, "La fine è il mio inizio" l'ho visto ieri sera alla tv.
Le parole di Terzani mi hanno fatto rifletter su molte cose.
I panorami delle montagne mi hanno ricordato una nostra passeggiata del 2010.

LINK
- amazo.it – “La fine è il mio inizio” (film DVD)
- amazon.it – “La fine è il mio inizio” (libro)

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by nagisamiyamoto at 2014-08-28 11:47
なおこさん、おはようございます。
私も一生一回なのだから、やりたいことは全てやり遂げたいと思っています。歳を重ねるにしたがって、この思いが不思議なんですけど大きくなっていくような気がします。どこまで攻めの方向で人生を歩めるかわかりませんが、去年より今年、今年より来年が楽しみな私です。
なおこさんは只今スペイン語、私は何をしよう?
Commented by ayayay0003 at 2014-08-28 15:32
なおこさん、こんにちは♪
良い映画を観られたようですね~(*>∀<*)
理屈では分かっていてもなかなか自分自身がそういう風には
生きられないものですよね~(^^;
でも、気持ちの上ではそういうものを持って生きていきたいと思います(*^^*)
いい映画に出会うと気持ちも引き締まりますよね!
素敵な山歩きのお写真も一緒にありがとうございます♪

Commented by とすかーな at 2014-08-28 18:16 x
この映画の父親のようにおおらかで、達観することができる日がいつか来るのだろうか?っていうくらい雑念、邪念が多い私です(笑)こういうのは、精神的にも経済的にも身体的にも余裕というか焦りがない時じゃないとできないんじゃないかなぁ~。
なおこさんは、スペイン語を始められて、その勤勉さに感服します。ほんとにすごい。その好奇心とエネルギーはどこから湧いてくるのですか?
Commented by milletti_naoko at 2014-08-28 18:30
なぎささん、こんにちは。悔いのないように生きていきたいものですね。「攻めの方向」! つい守りに入りがちな中で、やっぱり自分の人生を切り開き、思うように描いて生きていくことが大切でしょうね。わたしも、なぎささんに倣わなければ。

サンティアーゴへの10日ほどの巡礼は、英語とイタリア語でもなんとかなるのでしょうが、言葉が分かると、ちょうど近視のわたしが眼鏡でものがよく見えるように、より分かることも増えるし、自立して、地元の方との交流もできるのではないかと思います。ギリシャではギリシャ語をかじったおかげで、おばあさんに道を訪ねることもできたし、感激したアテネのホテルのお姉さんにことさらに親切にしてもらえました。もともと国語を教えていたこともあって、言葉を学び話すなら、きちんとした言葉で話したいという思いもあるんです。あと3週間、頑張ります! なぎささんの新たな抱負をおうかがいするのも楽しみです。
Commented by milletti_naoko at 2014-08-28 18:34
アリスさん、独特な人生を深く生きた父親が、息子に語るその凝縮された人生の語りを、映画を通して、わたしも聴くことができてうれしかったです。主人公の世界や物事の見方や切り口に、はっとすることが多かったです。こちらこそ、コメントをありがとうございます♪ どこまでもどこまでも、アッペンニーニの高峰が連なり、重なって見える美しい場所で、いつかまた行ってみたいと思っています。まだ実っていませんでしたが、この山もブルーベリーの茂みでいっぱいでした。
Commented by milletti_naoko at 2014-08-28 18:46
とすかーなさん、人生でいろいろなことを経験し、自分が癌と知って、退職後すぐにイタリアを経って、確かヒマラヤに向かった父親は、そうやって、そのときそのときにしっかり人生と向き合って生きてきたので、こういう達観というか悟りに達することができたのだと思います。悟りに到達したという人にも、何人にも出会って話を聞いたそうですが、話してみると、本当に「悟れた」人はまずいなかったと言っています。そういう到着しがたい境地を垣間見て、穏やかに死を迎えようとしている人の、いわゆる人生の授業を聴くことができて、興味深かったです。

巡礼は、一人ひとりが自分のペースで歩くので、道を尋ねるにも、水が飲めるかどうか尋ねるのも、自分自身で対応することができないと難しいでしょうし、せっかく行くのだからこれを機にという思いもあって、スペイン語の勉強を始めました。あと1か月しかないときに入門書を1冊終えるというのは、期限が迫り目的も明白なおかげで、意外と達成がしやすいゴールで、ポルトガル語とギリシャ語では達成できたので、スペイン語でも頑張ります! 1か月で学んだことは、記憶から離れてしまう速度も速いのではありますが。
Commented by Miwa at 2014-08-28 21:10 x
なおこさん、こんにちは。
目標あってのスペイン語の勉強、楽しんでされておられる事と思います。私は先日から近所に住む日本人の友達の8歳になる娘さんに読み書き中心の日本語のレッスンを始めたところなんですが、教師の経験など無い私にとって楽しくもあり、人に伝えることの難しさも同時に感じています。彼女に教える事で私もとても勉強になる事もあり、自分もイタリア語頑張らなくては!と気合いが入ります。
この映画の主人公であるジャーナリスト、以前出版されたいくつかの本、主人が読んでいてたまに内容話てきかせてくれるのですぐにわかりました。日本で暮らしていた時の日本の状況や印象から、色々な事を知ったとよく言っています。まだterra nostraに夢中な私は、映画があるのは知っていたけど今は自然と寝る前の数時間はパソコンと向き合っています。又、機会があればこの映画みてみたいとおもいます。
悔いなく一生を終える事を目標にすれば、おのずと力が湧きますね・・・・・
シロちゃんの赤ちゃん、とってもとっても可愛いですね~、しばらく写真じーっと見つめてしまいました。また写真アップしてくださいね!
Commented by suzu-clair at 2014-08-28 21:39
なおこさんの映画レビューには、
いつも私も見てみたいなと思わせていただいています。
今回の映画も、とてもよい映画のようですね☆

主人公の伝えたいテーマ、
ものすごく共感できる気がして、とても心惹かれます。
大いなる自然の世界を知ると、
生き方そのもの、世界の見え方そのものも、
変わっていきますよね。
答えはいつも、宇宙の中のひとつの生命体である自分の中にあったのだ、とわかると、
余計なことにとらわれて生きることがなくなる気がします。
この映画は、そんなことをテーマにしているのかな、
などと思い、とても見てみたくなりました。

とはいえ、
私は、「生きている間にしたいことはすべてやった」
とはまだまだ言えない、
道の途中・・・(笑)。

私も原作本を読んでみたいです。
素敵な映画のご紹介、ありがとうございました☆
Commented by milletti_naoko at 2014-08-28 22:03
みわさん、巡礼中、朝出発するのが遅くなると、日が暮れそうなのにまだ目的地の宿から遠くて、急ぎ足で歩かなければいけないように、このスペイン語も、だらだら勉強していると、最後に出発前に時間のないときに慌てることになると思いつつ、のんびり勉強を進めていて、昨日ようやく第2課を終えたところです。教えながら教わること、教えるために学ぶこと、というのが多いですよね。お友だちのお嬢さんも楽しんで学習をしていることでしょう。

このTerzaniの本を、だんなさまが数冊読まれているんですね! 有名な人らしくて、うちの夫は、著作そのものを読んだことはないものの、いろいろな本の題名とそのあらすじや内容は知っていて、映画を見る前に教えてくれました。本もよさそうなので、わたしもぜひ、読んでみたいと思っています。

『Terra Nostra』も、かなり話が進んだことでしょうね。イタリア人移民がブラジルで言葉を学ぶのに苦労したであろうことが、映画からはすべてイタリア語に吹き替えられていて分かりにくいのですが、スペイン語を学びながら、そうして夫たちがポルトガルで言葉で苦労していたことを思い出しながら、想像できます。
Commented by milletti_naoko at 2014-08-28 22:19
すずさん、東洋の思想や文化に魅かれた西洋の人の言葉だからか、共感できるところも多く、波乱に富んだ人生から学んだことを、映画を通して教わることができて、ありがたいなと思いました。まねることはできなくとも、そういう見方や考え方ができるのだという驚きと発見がいくつもありました。

日本で共感される方も多いと思うので、本も映画も、いつか日本語版ができますように。
by milletti_naoko | 2014-08-27 23:14 | Film, Libri & Musica | Comments(10)