イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

美しく日も長かりし夏の山

 今年初めて訪ねて、一目惚れして、いつかまたきっと戻りたいと思う場所の一つに、アブルッツォ州高原、Campo Imperatoreがあります。

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Campo Imperatore, Gran Sasso, Abruzzo 18/7/2014 20.33

 高原を囲む高峰には、7月だというのに白雪が残り、高原で草を食む牛たちは、日が暮れると、きちんと列になって移動します。

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 わたしたちが2泊した高原と同名のホテル、Hotel Campo Imperatoreは、高原のただ中、グラン・サッソの岩山のすぐ近くにあります。第二次世界大戦中、イタリア新政府によって、ムッソリーニが幽閉され、そうして、ドイツ軍が救出に成功したのが、このホテルだったということは、宿に入って初めて知りました。

 屋内や室内の設備に、不満を言う客もいましたが、こんなに眺めがすばらしい上に、ひどく不便な場所にありながら、おいしい夕食と朝食込みで、一人1泊55ユーロはお得でもあると、わたしは気に入りました。やや狭い室内が木で覆われ、壁に作りつけの棚がある様子は、船室のようでもあり、かつて生徒を引率して泊まった、集団宿泊訓練所を思わせるところもありました。

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Corno Grande (2912m) & Osservatorio Astronomico, Gran Sasso, Abruzzo
18/7/2014 20.34

 沈みゆく夕日の光で、コルノ・グランデが茜色に染まっています。

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Alba a Campo Imperatore 18/7/2014 6.02

 この日は、朝日が高峰の間から、顔を出す様子も、わたしたちの部屋から、眺めることができました。

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 一方、こちらの写真は、早朝だというのに、長い廊下を東の端まで歩き、窓を開けて撮影したものです。

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 山を登ると、一面が野の花に飾られ、山小屋では、高原や高峰のすばらしい眺めや、他の登山者とのおしゃべりを楽しむことができました。

 もうずいぶん前のことでしたが、平安時代の秋についての描写や和歌の導入として、授業中、イタリア人の大学生たちに、「どんなときに秋が来たと感じますか。」と問いかけたら、「夏が終わる悲しみを感じるとき」という答えが返ってきて、驚いたことがあります。今はその気持ちが、以前よりもずっとよく理解できるようになった気がします。同時に、こんなふうに日が短くなって、涼しくなるおかげで、紅葉も楽しめるし、夏に日照時間が長いのがうれしいのだと、思うのでありました。

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Alba & tramonto a Campo Imperatore (AQ), Abruzzo luglio 2014
Montagne maestose del Gran Sasso illuminate
dal sole rosseggiante alle 6 e alle 20.30.
La giornata era lunga, soggiornando all'Hotel Campo Imperatore
con i panorami meravigliosi, lo staff simpatico,
abbiamo fatto bellissime passeggiate.
Ci tornerò molto volentieri.
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関連記事へのリンク / Link agli articoli correlati
- アブルッツォ、グラン・サッソを訪ねて / Riassunto – Campo Imperatore, Navelli (AQ) & Orvinio (RI) (21/7/2014)
- おめでとう3回祝う誕生日 / Auguri! Cena all'Hotel Campo Imperatore (27/7/2014)
- 美しい古城は映画の舞台 / Rocca Calascio, un luogo magico (25/7/2014)
- さらば夏時間 / Ritorno dell’ora solare (26/10/2014)

参照リンク / Riferimenti web
- Parco Nazionale del Gran Sasso e Monti della Laga – L’Altopiano di Campo Imperatore
- Hotel / Rifugio Campo Imperatore - HOME
- Assergi Racconta – Alberghi aperti in quota, scongiurata la chiusura, affidata la gestione dell’albergo di Mussolini (27/10/2014)
- ウィキペディア日本語版 - グラン・サッソ襲撃

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by ayayay0003 at 2014-10-28 09:57
おはようございます^^
Hotel Campo Imperatoreからの眺め素晴らしいですね(*^^)v
前回の記事の時はムッソリーニが幽閉され、そうして、ドイツ軍が救出に成功したのが、このホテルだったということはなかったように思う?のでそのことを伺い感無量です♪そんな歴史の舞台であり高原の眺めも素晴らしく、そして食事も美味しいホテルなんて夢みたいですね~☆
何よりお部屋からこんなに素晴らしい朝やけ焼けや夕焼けお写真が撮れるなんてびっくりです~(*_*)そして夏の高原に咲くお花の美しいこと!
でもそこから秋があるからこそ夏は素晴らしいと思えるというところがなおこさんのいいところですよね(^-^)本当に共感いたします。
私も最近特に夏の終わり頃が好きで、特にちょっと肌寒くなってきた夏の終わりに趣を感じます。素敵な記事とお写真ありがとうございます♪
Commented by nikon_leica at 2014-10-28 10:46
壮大で優雅な光景に目を奪われました。
実際に見ると、感動も一入なのでしょうね。

そして、大学生の答えが、また素敵ですね。
タイには四季がありませんので、こういう事が言える国も良いなぁと最近思います。
Commented by ムームー at 2014-10-28 19:17 x
なおこさん
こんばんは。
幽閉されていた歴史上のホテルに泊まるのも
不思議なことですね。
窓から見える素晴らしい景色にみとれます。
どこにでもお花が咲いてて素敵~
夕陽も朝日も見れるのも嬉しいですね。
生徒さんたちの言葉も素敵です~♪
いつもありがとうございます。
Commented by milletti_naoko at 2014-10-28 19:34
アリスさん、こんにちは。ホテルからの眺めも、近くの山頂からの眺めもそれはすばらしくて、感動しました。カンポ・インペラトーレについては、そうして、アブルッツォ旅行で訪ねた他の魅力的な場所についても、いつか詳しい記事にしたいと思いつつ、もう3か月が過ぎてしまい、ムッソリーニの件についても書かずじまいでした。標高2000メートルで高峰や岩の絶壁に囲まれ、これなら脱出は不可能だろうと、この地への幽閉を決めたのだと思います。歴史の授業で、ムッソリーニ救出劇については聞いていたのですが、まさかこの地、このホテルとは思いもしませんでした。

夏の終わり、秋にも趣がありますよね。こちらこそ、いつもお優しく、うれしいコメントをありがとうございます♪
Commented by milletti_naoko at 2014-10-28 19:43
Nicon Leicaさん、標高2千メートルもの高い山の間に、20キロメートル近くも続く広大な高原があって、牛たちが草を食む様子も、山を登って見える風景もすばらしく、わたしも本当に感動しました。壮大、雄大とは、まさにこういう眺めを言うのだなと感じました。イタリアの人は暑い太陽や夏をことさらに愛するのだということを、この学生の言葉で実感しました。タイには四季がないんですね! 恥ずかしながら考えたことがありませんが、確かに赤道のすぐ近くですものね。いつも暖かく緑の豊かな国にも四季のある国にも、それぞれのよさがありますよね。コメントをありがとうございます♪
Commented by milletti_naoko at 2014-10-28 19:50
ムームーさん、こんにちは。京都にお住まいのムームーさんのコメントに「幽閉」と見て、大宰府に流された菅原道真や、さまざまな理由で幽閉されたり島流しに遭ったりした帝や文人を思い起こしました。幽閉という名前がそぐわないほど、本当に壮大な風景が目前に広がる、美しい場所です。標高も高く、高峰に囲まれていて、ここなら逃げられまいと、考えて選んだ場所のようです。

砂利道を登って山頂に近づくと、色とりどりのたくさんの花たちが見えてきたので、うれしくなりました。山頂の山小屋には、毎年8月には日本人女性も住み込みで応援に来ると聞きました。こちらこそ、いつもありがとうございます♪
Commented by nagisamiyamoto at 2014-10-29 08:08
なおこさん、こんばんは
いつも私の知らない世界を紹介して頂いて楽しく読ませてもらっています。私もホテルの設備と食事のどちらかを選ばないといけないとしたら、後者を取りますね。大げさにいうと旅は食が良ければ全て良し!逆は最悪ですから。
そこに美しい眺めがあれば最高ですね。天気も良くってなおこさんはお楽しみになったのではないでしょうか?
私がよく行くシエナやサンジミの遠く美しい自然の風景を眺めると、『なおこさん的には、あの辺にいるのかなぁ~』なんて思ってしまいます。

車の時計は変更されましたか(笑)
Commented by milletti_naoko at 2014-10-29 08:46
なぎささん、こんばんは。出会った頃から夫が山、特に自然が豊かな山が好きなおかげで、イタリア各地の山を訪ね歩くことが多く、いつのまにかわたしも、山歩きが好きになっていました。なぎささんも知らないのに、わたしが知っている世界があるというのは不思議ですが、わたしたちも、この旅の初日にラッツィオで泊った宿の主人に、「グランサッソ、アブルッツォならここがいい」と勧めてもらわなければ、訪ねなかったかもしれません。そういう意味で、出会いや縁というのも、おもしろいですよね。このホテルに着く前、はるかに下方のリフトの出発点の町には宿が多かったのですが、人の多すぎるところは夫は苦手で、「この地図に、ホテルがあると書いてある」という夫の言葉を頼りに、その2、30年前には存在したホテルが今もありますように、営業していますようにと願いながら、緑だけが果てしなく続く高原を車で登り、ようやくホテルが見えたので、わたしたちとしては、泊まれただけでも恩の字という気持ちでした。レストランの窓からも、部屋の窓からも、そしてホテルの四方にも、こんなにすばらしい風景が広がるホテルが他にあるかしらという気がするくらい、風景の壮大さと美しさに感動しました。

シエナやサン・ジミニャーノのように、中世の町並みが残る美しい町に、雄大な自然、イタリアは本当にいろんな魅力がありますよね。シエナ近くの山では、アミアータ山の辺りを歩いたことがあります。トスカーナにも美しい山がたくさんありますよね。
by milletti_naoko | 2014-10-27 23:59 | Abruzzo | Comments(8)