イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

馬・犬が祝福受けに大行進、聖アントーニオの皿、アッシジ

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 白牛に引かれ、花に飾られた色鮮やかな荷車に立つ聖アントーニオの像に続いて、

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 アッシジ郊外にあるサンタ・マリーア・デッリ・アンジェリ教会(Basilica di Santa Maria degli Angeli)での厳粛なミサを終えた長(priore)たち36人が、

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そして、馬(cavallo)たちが、行進して行きます。

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 先頭を進むのは、修道士たちです。

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 昨日、1月17日は、3世紀のエジプトに生まれ、キリスト教の修道生活の創始者とされる聖人、聖アントーニオ(Sant’Antonio abate)を記念する日でした。「修道院長」を意味するabateという言葉と共に呼ぶのは、同名で、12、3世紀に生きたポルトガル出身の聖人、パドヴァの聖アントーニオと混同しないためです。エジプトの聖アントーニオは、動物の守護聖人とされているため、1月17日には、世界各地で、ペットや家畜など、動物の祝日が行われます。

 今日、1月18日日曜日、サンタ・マリーア・デッリ・アンジェリでは、聖アントーニオの皿(Piatto di Sant’Antonio)の祭りが行われ、多くの市民や動物が、教会や教会前の広場に集いました。

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 サンタ・マリーア・デッリ・アンジェリ地区では、かつてフィレンツェとローマの間を行き来する郵便馬車が往来し、馬が交代していたそうです。1860年後に疫病が蔓延し、馬たちが病に倒れたとき、心配した馬主たちは、聖アントーニオの記念日が近かったためもあり、ポルツィウンコラの修道士たちに、聖アントーニオを敬って、3日間祈りを捧げ、儀式を行うように頼みました。疫病が収まったため、その年の聖人の記念日は、感謝を込めて、盛大かつ厳粛に祝い、町の通りでの行進が行われました。貧しい人々に昼食が施され、その食事がPiatto di Sant’Antonio(訳すと、「聖アントーニオの皿、食事」)と呼ばれたそうです。

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 現在、サンタ・マリーア・デッリ・アンジェリでは、聖アントーニオの記念日後、最初の日曜日に、教会のミサで、長の交代儀式が行われます。長は任期が3年で、食事や祭りを準備する役を担います。祭りに参加する36人中、12人は新たに就任する長、12人は新たな長に役目を譲って役を降りる長、12人は今年もまだ続投をする長であり、ミサでは、去りゆく長から新しい長への、役の引き継ぎと皿の受け渡しが行われました。

 今では、貧しい人々に無料で提供される食事に加え、地区の多くのレストランでも、昼食や夕食で、このPiattoを味わうことができるそうです。今朝、ミサに向かう途中に立ち寄り、朝食を済ませたバールでも、今日はレストランでそういう特別な食事ができることを教えてもらったのですが、「食べるには予約が必要です。」とのことでした。

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 馬に続いて行進するのは、犬(cane)たちです。

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 教会の近くを歩いていたら、祝福を受けさせようと飼い主が連れてきた動物たちにたくさん出会いました。この写真の右端に写っているのは、犬ではなくて、オオカミだと夫と義弟が言います。写真の左奥に見えるのは、

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ロバ(asino、 somaro)たちです。

 この後も行列は、さらに道路へ出て行進を続けていたのですが、いつまで行進が続くか分からず、昼食に来客があったため、わたしたちは祝福は見届けずに、帰途につきました。お義母さんが来年は自分も行きたいとのことですので、来年は、行進に参加し、動物の祝福も見届けたあとで、サンタ・マリーア・デッリ・アンジェリ地区伝統のPiattoを食べることができるかもしれません。

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Festa del Piatto di Sant'Antonio - Santa Maria degli Angeli, Assisi 18/1/2015

- Messa, Processione dei Frati, Vacche, Cavalli, Priori, Cani... pure Asini e un Lupo!
- Dal sito della Città di Assisi:
A Santa Maria degli Angeli, via di transito dei postiglioni postali tra Firenze e Roma, vi era la stazione per il cambio dei cavalli. Dopo il 1860 scoppiò una grave epidemia, che colpì in modo particolare i cavalli di dette scuderie. I padroni preoccupati, si rivolsero fiduciosi a Sant’Antonio Abate, protettore delle bestie, pregando i religiosi della Porziuncola di fare un triduo in onore del Santo, di cui in quei giorni ricorreva la festa. Ottenuta la grazia con la fine del morbo e scongiurato il pericolo della morte dei cavalli, in ringraziamento al Santo fu celebrata con grande solennità quell’anno la sua festa, fu fatta la processione per le vie del paese e fu distribuito un pranzo ai poveri, che prese la denominazione di “Piatto di Sant’Antonio”.
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関連記事へのリンク / Link all'articolo correlato
- アッシジを歩く1 ~ポルツィウンコラ / Passeggiata ad Assisi1 – Porziuncola

参照リンク / Riferimenti web
- Città di Assisi – Feste e Tradizioni – Piatto di Sant’Antonio
- Associazione Priori del Piatto di Sant'Antonio d'Abate - Storia e culto

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by ayayay0003 at 2015-01-19 22:23
なおこさん、こんばんは^^
動物の守護聖人とは初めて知りました(^^♪
それで、動物もいっしょに行進してたのですね☆
狼にはびっくりしましたが・・・(笑)
聖アントーニオの皿(Piatto di Sant’Antonio)の祭り
なぜ皿の祭り?とすぐ思いましたが、読んでいくうちになるほどと思いました。
日本のお祭りなんかでもやはり疫病が流行った時の神様への祈りのようなものから始まったといわれるものがたくさんあるみたいです。そういう文化は洋の東西を問わず行われているのだな・・・と興味深いです♪
Commented by milletti_naoko at 2015-01-20 00:18
アリスさん、こんにちは。こちらでは、今日はどの聖人の記念日だとか、だから同じ名前を持つ人にお祝いの電話をしなければとか(これは最近意識する人が中部イタリアでは少ないようです)、町や地区、通りにも聖人の名前が多かったりと、いろんな聖人が文化に浸透しています。教会に時々豚さんが足元にいる像があって、なぜか訪ねたら、動物を守護するSant'Antonio Abateの像だからと聞いたことは何度かあったのですが、サンタ・マリーア・デッリ・アンジェリに、こういう特別な伝統行事があるとは知らなかったのでびっくりしました。そうそう、狼にはわたしもびっくりしたのですが、よい子にしているようでした。Piattoは日本でもprimo piatto、secondo piattoという言葉は聞かれたことがあると思うのですが、イタリア語では「皿」という意味でも「料理」という意味でもよく使われるため、祭りがこういう名称なのでしょう。貧しい人々にふるまう「料理」も、長から長へと受け継がれる「皿」も、イタリア語では同じpiattoだからです。

日本でも昔から、疫病を鎮めるため、豊作を祈るために儀式が行われてきましたが、そういった慣習が今も祭りとして各地に残っているのは、古今東西を問わず共通するところがあって、おっしゃるように、興味深いですね♪
Commented by kazu at 2015-01-20 22:51 x
なおこさん、こんな行事がアッシジであるのですね。動物も愛したというフランチェスコを思えば、この地元で行われるのは納得もするお祭りですが、こんなにも大きなイベントだなんてもう驚きました。特に訪ねたことのある場所だけに想像もついて、楽しくなります。どの生き物も神様のご加護が得られて、一見しただけでも、犬や猫たちに優しい人たちが居る、さすがイタリアだと感心もしています。もう逝ってしまいましたが、ワンコを連れてイタリアへ旅行する計画も立てていたので、参加は叶わないにしても、事前に知っていれば、日にちを合わせてアッシジを訪ねていたかも知れません。

そうそう、スマホなら画像を大きくできるので、よく見てみましたが、あの犬は、オオカミ犬だろうと思います。イタリアなので、ルーポイタリアーノ(そのままですよね)とも呼ばれますが、オオカミ犬として公式に認められているのは、二犬種のみで、堂々とした体躯から、もしかしたら、その一種のチェコスロバキアンかも知れません。ご近所にも同犬種のオオカミ犬がいるのですが、よく訓練もされているし、ほんとに大人しい、いい犬です。沢山いる犬たちの中で、ご主人さまたち、よくこの犬種を言い当てられましたね。さすがだと思いました。
Commented by milletti_naoko at 2015-01-21 02:36
かずさん、動物を守護するこの聖アントーニオの記念日を盛大に祝う地域は、ウンブリアにも、そうしてイタリアにも他にも多いようで、ペルージャにもこの日、動物を祝福する教会があったようです。夫も言っていましたが、今と違って昔は、特に農村では、牛や馬は畑を耕したり移動したりするための大切な手段であり、冬の大切な栄養源でもあったっため、こうやって祝う風習が、今でも各地に残っているのだと思います。ただ、サンタ・マリーア・デッリ・アンジェリでのこのお祭りは、19世紀にご利益があったお礼も兼ねているため、特に盛大に地域や教会がいっしょに祝っているようで、ミサにはアッシジの市長も参加していました。わたしたちも、いつもここのミサに行くわけではなく、駐車場に空きがないときなど、よそに行くこともあるため、このお祭りがこんなふうに祝われるとは今回初めて知りました。それはお義母さんもいっしょで、次回はぜひ見てみたいとのことです。

オオカミ犬ですか! 実は最近は、イノシシと豚、オオカミと犬の間に生まれた雑種が増えてしまい、あいのこは、イノシシやオオカミに比べて、数が増えるのが非常に増えるため、被害も増えて困っていると聞いています。こんなふうに飼われている分には、しつけができるいい犬ということで安心ですが、最近はなんと、改築中の家のあるテッツィオ山で、以前はいなかったオオカミあるいはオオカミ犬を見かけた人もいるそうです。
by milletti_naoko | 2015-01-18 22:42 | Feste & eventi | Comments(4)