イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

悲しくてやがて楽しい生卵

 来週から始まる日本語講座の授業で、今年度は新しい教科書を使うことが突然決まったこともあって、教科書決定・注文や授業計画作成、打ち合わせなどで、妙に慌しい毎日を過ごしています。

 ウンブリア伝統のリングケーキ、トルコロを今日は作ろうと、朝から決めていたのですが、そういうときに限って、通訳の仕事の問い合わせが入り、明日早朝のイタリア語の個人授業の準備もあって、ケーキ作りに取りかかるのが遅くなりました。「生地をオーブンに入れた直後に、夕食のしたくを始めよう。明日はイタリア語の授業のあと、大学に日本語の授業についての話し合いに行って、帰りに食料品を買って」と、考えごとをしながら卵を割ったのはいいのですが、

悲しくてやがて楽しい生卵_f0234936_5441418.jpg

気づくと、何と言うことでしょう!

 わたしの手がすでに、卵の上に塩をふりかけてしまったあとでした。

 ~ 人間の脳と言うのは、疲れているときには、発する指令があいまい、いいかげんになり、そういうときには、そういうあいまいな指令を受けて、体が常識で考えるととんちんかんな行動をしたり、日頃し慣れている似た行動を行ったりするものだ ~

ということは、『La caffettiera del masochista』という本を約10年前に読んで以来、知っていました。この本では、こうした疲れた脳のあいまい指令について、ジョギングから帰宅した少女が脱いだTシャツを洗濯機に入れるつもりで便器に入れてしまったという例を挙げ、この場合、脳は疲れのために、「洗濯機に入れる」よう指示する代わりに、「丸い形をした白い穴の中に入れる」というあいまいな指令しか発さず、それでこういう結果になったのだと説明しています。わたしがイタリア語で旧版を読んだこの本は原語は英語で、日本語にも翻訳されています。日本語でも新版がまもなく発売されるそうですが、とてもおもしろい本ですから、興味のある方はぜひ読んでみてください。(下記リンク参照)

 閑話休題。ですから、慌しい料理中にうっかり塩と砂糖を間違えてはいけないと、ふだんから、塩と砂糖は素材も形も大きさも異なる容器に入れて、別々の場所に置いていたのです。それなのに、今日はうっかり間違えてしまったのです。

 せめては間違いをブログのネタにしようと考え、イタリアの友人や日本語を学習する生徒さんに楽しんでもらおうと、早口言葉の『なまむぎなまごめなまたまご』をうまく紹介するYouTubeの映像がないかと探してみました。そうすると、教材にはまったく使えそうにないのですが、早口言葉をテーマに笑いを追求した妙に楽しい映像を発見して、ついつい最後まで見てしまいました。うっかり塩を入れてしまったのも、もとはと言えば、何だか妙に焦ってどうしようという気持ちがあったからなのですが、この映像で笑えたおかげで、気持ちが少し楽になりました。興味があれば、皆さんもぜひご覧ください。(*追記: 2018年4月現在、リンク先の映像が視聴できないため、リンクは削除しましたが、文面はそのまま残してあります。)

 わたし自身は知らない人の名前も多く登場するのですが、それでも笑えてしまうのが不思議なところです。

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Stavo per fare un torcolo, dolce tipico umbro.
Le uova sono fresche, delle galline di casa.
"Domattina prima andrò ad insegnare l'italiano,
poi devo andare a parlare del programma del corso di giapponese..."
Così pensavo mentre sbattevo le uova e
quando mi sono accorta, avevo già aggiunto il sale sulle uova!!!
Meno male, in questi giorni le uova non mancano.
Quelle uova sono diventate frittata e mio marito mi ha aiutato a finire
la preparazione del torcolo.
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参考図書 / Riferimenti bibliografici
わたしはこの本を外国人大学の応用情報科学の授業の必読書としてイタリア語で読んだのですが
- amazon.it – “La caffettiera del masochista. Il design degli oggetti quotidiani”
原書は英語で、アマゾン日本でも手に入るようです。
- amazon.co.jp - The Design of Everyday Things: Revised and Expanded Edition
さらに日本語にも翻訳されていて、わたしが読んだ旧版については、アマゾンのサイトで多くの人の意見や感想を読むことができますが、
- amazon.co.jp - 誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)
英語版の感想を読むと、新版の方がさらに充実しておもしろいという人がいます。
- amazo.co.jp - 誰のためのデザイン? 増補・改訂版 ―認知科学者のデザイン原論

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by ayayay0003 at 2015-04-09 09:23
なおこさん、おはようございます^^
新学期と書こうとして、気がつきました(・。・;
イタリアは、4月始まりじゃなかったですね!
でも教科書が変わるということは、新しい講座の始まりでしょうか?4月からなんて、日本みたいで嬉しいです☆
お忙しいけど、張り合いのある毎日で何よりです(*^_^*)

さて、塩と砂糖なんて、私もあわてたらしょつ中間違えてますよ~(・。・;
やっぱり、疲れてたりすると脳の働きでそうなるのですね!
そういう時は、まあ無理しないことでしょうか(笑)
今日の、動画を見て笑いました(^-^)
↑そういう余裕が日常生活には必要かな?と思える動画でした(^^♪
楽しかったです、ありがとうございます(*^_^*)
Commented by milletti_naoko at 2015-04-09 13:48
アリスさん、おはようございます。そうそう、イタリアでは学校や大学の進学年度が始まるのは秋なのですが、この軍の外国語学校の講座は、春に始まるので、何だか日本の学校のようですね。ありがとうございます。やっぱりいろいろと仕事があるのは、ありがたいことだと思います。教えるのは何よりも好きなことでもありますから。

アリスさんもよく砂糖と塩を間違えられるんですね! 和食では塩気のある料理でも砂糖を使うことが多いので起こりがちなのでしょうが、イタリアの場合は、食事のしたくではまず砂糖を使わないので、本来は起こりにくいはずなのです。夫が嫌がるので量は控えるものの、たとえばすきやきなどになると、どうしてもわたしも砂糖を少しは加えるのですけれど。

この動画楽しいですよね。何だかほっとした、楽しい気分にしてくれました。こちらこそ、ありがとうございます♪
Commented by Masami at 2015-04-09 17:32 x
なおこさん、こんにちは!

生卵からの脳のあいまい指令の話、とてもとても興味深く読ませていただきました!
疲れている時は、脳がいいかげんな指令を出すとのこと。
私も色々なことを考えながら行動している時に、時々ビックリするような行動を取って驚いた経験がありますが、
そういう訳だったと、妙に納得できて嬉しくなりました(笑)

早口言葉の動画、大笑いしました~!
私も日々時間に追われる毎日であまり余裕が無いのですが、心から笑うっていいですね。すっきりしました(笑)
なおこさんのお陰で何だか良い一日が過ごせそうです^^
ありがとうございます~!
Commented by milletti_naoko at 2015-04-09 20:55
まさみさん、こんにちは! どういたしまして。脳の話に興味を持っていただき、動画で笑っていただけたようで、わたしこそうれしいです。ちなみに、脳の指令は、忙しくていろんなことを考えているときにもあいまいになるようで、だからやっぱり、気が急いていても目の前の一つひとつのことを集中してやらないと、いけないなと反省しました。まさみさんでも、やっぱりそんなふうにとんちんかんなことをしてしまうことがあるんですね。わたしだけではないのだと、安心しました。

この動画おもしろいですよね。お笑いの動画を見ようと考えたことがこれまでなかったのですが、早口言葉の映像を探したおかげで、明るい落ち着いた気分になれました。早口言葉の意味や、音は似ていても意味がまったく違う言葉との差などをうまく笑いに利用しているのがいいですよね。
Commented by Navia at 2015-04-10 00:00 x
なおこさん、こんにちは!私もそれやってしまってます。結構頻度高いので、実は慢性的に疲れてるんですかね(笑
卵、色が濃くて美味しそう!塩味の卵はその後何に使われましたか?シンプルに卵焼きでもとても美味しそうですね!
春からはじまる日本語授業、そういえばこのあたりの市のレッスンは3月からはじまっていて、日本語もありました。
レッスンがんばってください!
Commented by nagisamiyamoto at 2015-04-10 00:06
なおこさん、こんばんは
なおこさんの塩と砂糖の間違えレベルなんて私の毎日には当たり前のようにでてきます。私の場合は疲れているのではなく、単なるおっちょこちょいなんですが。これがまた私のいけないところなのかも知れませんが、『ま、いっか』で終わってしまいます。最近はことにそれが酷くなり、『これぐらい人生にとっては大変なことでもあるまいし』と言う始末です。でもそう言う事で自分が落ち込まないように持って行っている自分なりの自己防衛なんだと堅く信じています。
動画、面白かったです。よく見つけてきましたね♪
Commented by milletti_naoko at 2015-04-10 01:28
Naviaさん、こんにちは! おお、Naviaさんもですか。砂糖と塩は同じ調味料だし、色も形状も似ていますので、どうしても間違えやすいんですよね。砂糖と塩には別の色・形の容器を使って、置く場所の間に距離を取ると、慌てていても間違えにくくなると思いますよ。

うちの鶏が産んだばかりの卵は、新鮮だし安心して食べられるしありがたいです。結局、卵は卵焼きとして、夕食のおかずになりました。市の主催で日本語も教えるなんていいですね。ありがとうございます♪ Naviaさんもどうかお元気でお過ごしくださいね。
Commented by milletti_naoko at 2015-04-10 01:34
なぎささん、こんにちは。なぎささんは、よく和風の料理を作って砂糖も使われていますから、塩と砂糖が近くにあって、間違いやすいという事情もあると思います。うちは夫が原則的に塩気のある料理に砂糖が入るのを嫌がるため、しょうが焼きにしても砂糖を使わず、塩はしょうゆや香辛料といっしょに、砂糖は紅茶やカモミールの近くにと、かなり離しておいてあるので、間違えることはまずないはずなんです。

なぎささんのように、いろんなお仕事をかけもちされて、しかもお宅でしっかり手をかけてお料理を作られると、そういう間違いが起こるのはありがちでしょうし、逆にそれで新たなおいしい味を発見されることもあることでしょう。そうそう、自分に大丈夫と言い聞かせること、大切だとわたしも思います。

この動画おもしろいですよね。早口言葉は、うまくできた映像があれば日本語の授業にも使えると思って、注意して探していたら、この動画に行き当たりました。笑いと元気をくれた動画に感謝しています。
Commented by patata at 2015-04-10 03:22 x
なおこさん、こんばんは!
私も砂糖と塩を間違えてしまうこと、良くあります!!パスタを茹でるお湯に塩を入れ忘れて、夫に注意されることも良くあります・・・
疲れているととんちんかんな行動を取ってしまうのですか・・・私の場合は恐らく、うっかりしすぎなのかな、と思うのですが・・(;_;) 
それにしても、なおこさんのお宅のにわとりさんから採れた卵が、ぷるんぷるんで、本当に美味しそうですね!!

日本語の講座や翻訳のお仕事などお忙しいとのこと、頑張ってください!最近、寒かったり、暖かかったりと、気温の変化も激しいので、体調にはくれぐれもご留意くださいね^^
Commented by milletti_naoko at 2015-04-10 06:25
Patataさん、こんばんは! ああ、Patataさんもなんですね。砂糖と塩ってよく似ていますよね。うちの場合は、黒砂糖を使うので、間違いにくいはずなのに...そうそう、パスタのお湯に塩を入れ忘れること、わたしもよくあります。パスタを準備するときって、特に同時にいろんな作業をしないといけないので大変ですものね。わたしに多くていけないのは、ゆでたパスタをお湯から取り出したあと、パスタの鍋を置いてあるコンロの火を消し忘れること。パスタ鍋は火力が強い奥のコンロで使い、手前のコンロではつけ合わせの野菜やパスタの具などを準備しているため、パスタ鍋の下のガスの火が見えないということもあるのですが、あまりにしばしばでいけないと思います。さらに多いうっかりで、これはいけないと反省しつつ繰り返しているのは、ハーブティーを入れようとお湯を沸かす準備をしたのに、途中で忘れてしまい、気づいたらお湯が沸騰してないくらいならまだいいのですが、まれには、水分がもう残らずに鍋が焦げ始めていたことも!! 危ないですよね。深く深く反省しています。こういう火の消し忘れやお湯を沸かしたままの放置は、いけないのにしてしまうのですが、ケーキを作ろうとしていて、卵に砂糖の代わりに塩を入れてしまったのは、たぶん生まれて初めてではないかと思うので、自分でもあらあらと、何だか脱力感があったのです。そうすると、人によっていろいろ間違えてしやすいことや、うっかりしやすいことというのがいろいろ違うということですよね。興味深いです。新鮮な卵はおいしいし、自家製で安心なのでありがたいです。鶏が卵をほとんど産まない冬の間は、店で卵を買っていたので、卵を割ると、なおさらその新鮮さが感じられます。

お優しいお心遣いをありがとうございます。本当に変な天気ですよね。Patataさんもどうかお体を大切にお過ごしくださいね。
Commented by patata at 2015-04-10 07:50 x
なおこさん、
やかん事件、実は私も全く同じことをしているんです!
一度、夫が不在の時に、やかんを火にかけていたことを忘れて、はっとして戻った時には、時すでに遅しで、やかんが丸焦げ、キッチン中 煙がもくもくで、あと一歩で火事になっていたところでした・・・
夫にはこの事件以降から、私はうっかりしすぎで、本当に危なっかしくて心配になるくらい、と言われています(;_;) なおこさんも旦那様から、そんな風に言われていますか?

なおこさんが書かれている通り、やかん事件は命に関わる問題でもあり、本当に危ないですよね。。。
私も丸焦げになったやかんを見て茫然として、とても反省しました。。。
お互い命に関わるようなうっかりには、くれぐれも気を付けないといけませんよね。。
ただ、なおこさんも私と全く同じような経験をされていて、本当に驚きました!!
Commented by milletti_naoko at 2015-04-10 16:01
Patataさん、それは大変でしたね!! だんなさまのいないときに、お一人でしかも台所に煙が充満するなんて... 何事もなくて、本当によかった。

わたしの場合も、パスタ鍋のコンロの火を止めないことは夫に言われて気づくことが多いものの、鍋はとりあえず焦がしかけるところまでで、そこまで焦がしたことはないのですが、玄米を鍋で炊いている途中、1時間近くかかるものだから、途中でちょっと何か他の場所で別の用事をするつもりで、戻ってきたら鍋底のごはんも鍋の底も真っ黒になりかけということが2度ほど一人のときにありました。まずは火を使っている間は火元を離れないことが鉄則なのでしょうが、どうしても離れる場合は、キッチンタイマーをだいたいこのくらいで沸くだろうという時間にセットしておかなければいけないなと、今書きながら感じました。ほうろうのやかんを水分がなくなっても火にかけ続けて、表面がぽろぽろ崩れかけたということもあって、このときもこれではいけないとひどく反省しました。お互いに何事もなかったのはよかったのですが、危険である上、ガス代は高くなるし、鍋にカルキがさらにつくし、家の湿度がさらに高くなるし、負の要素ばかりが多いので、これからは、時間を惜しんで他の部屋に行ったりせずに、台所の細かいところまでの掃除を徹底するなど、とにかく目的が達成できるまでは火のそばにいようと、改めて思いました。今さらなんですけれども…… お互いに本当に気をつけましょう。
by milletti_naoko | 2015-04-08 22:47 | Altro | Comments(12)