2015年 04月 30日
EXPOミラノ向けイタリア語講座

明日、5月1日から開催されるミラノ国際博覧会、果たして本当に明日から開催できるのだろうかと、イタリアではずいぶん危ぶまれていましたが、その準備の一端は、ペルージャでも思いがけない場所で、すでに7年前に始まっていました。

ペルージャ外国人大学では、なんと2008年9月にも、ミラノ万博に出展する各国の関係者を対象にした特別なイタリア語講座が開かれていたのです。当時もらった講座概要を記した案内を見ると、講座の初日にレベル判定・クラス分けのための試験が行われるとあります。わたしは幸い、教育実習のために、ベテランのビアンカ・セルヴァディーオ先生が担当するA2のクラスを授業参観することができました。

当時の授業参観記録には、講座参加者の国籍も記録してあります。
A2は、A1と違って、イタリア語の知識がゼロというわけではありませんが、まだまだ語彙や文法の知識や応用能力が不足していて、ただ自分のこと、身近なことについては、いろいろと間違えながらも、意思疎通を図ることができるというレベルです。

先生も、そういう参加者のレベルを予測し、講座の期間が3か月と短いこと、そして、ミラノ万博の準備に向けて、各国でイタリア語を使って働ける実践力をその短期間にできるだけつけるにはどうすればいいかと考えて、互いの自己紹介も兼ねた、こんな質問から授業を始めました。
Mi chiamo …. Come ti chiami?
わたしの名前は…です。あなたの名前は?
こんなふうに先生自身が自らについて説明したあとで問いかけるので、イタリア語で自分の名前をどう言ったらいいのか知らなかった人や自信のなかった人も、先生や他の参加者の言葉を聞くうちに、何を言っているのか、どう返事をすればいいのかが分かってくるようになります。質問はさらに続きます。
Io sono italiana, di Perugia. Tu, di dove sei?
わたしはイタリア人で、ペルージャの出身です。あなたはどこの出身ですか。

こんなふうに質問を続けながら、先生は、質問している項目を少しずつOHPで映し出していきました。そうやって、ひととおり全員との質疑応答を終えたあとで、今度は、では、こうして書き出された情報、nome(名前)やnazionalità(国籍)などを尋ねるには、どんなふうに質問をしますかと、問いを投げかけ、

参加者の答えを聞いて、黒板に、それぞれの項目に対応する質問文を書いていきます。そうして、まずは、参加者どうしが、こんなふうに互いに質問して答える時間を取ったあとで、
Voglio tutta informazione di te.
あなたについて、すべての情報が知りたいの
と、一人ひとりを順に指名するので、参加者全員が、上の項目すべてについて自己紹介をしました。皆の自己紹介が終わると、「Va bene. Bravi! Bravi, bravi, bravi!」と、よくできた旨をほめます。
メモを見ると、そこでちょうど1時間目の授業が終わり、休み時間になったようで、このあと2時間目からは、名前や年齢について、それぞれどんなふうに答えるか、主語が3人称単数の場合はどう言うかなどを、黒板に書いて、説明していきます。
どうして今頃、7年前の授業参観についてお話しするかと言うと、一つには、明日いよいよExpo Milanoが開催されるためなのですが、実は他にもう一つ理由があります。

今日、イタリア語の個人授業のあとで、現在、ペルージャ外国人大学のA1・A2講座でよく使われているという教科書を買いに行き、幸い今日は店が開いていて、ようやく本を購入することができました。よりよい授業ができるために教科書を買ったのではありますが、購入した理由の一つは、どちらもよくできた教科書に違いないという確信があったからです。と言うのも、上の2冊はどちらとも、わたしが合計すると数十時間授業参観をさせていただいた大ベテランで、すばらしい授業をされるイタリア語の先生、Marina Falcinelli先生とBianca Servadio先生が執筆者として名を連ねているからです。

右の教科書の下敷きになったであろう、こちらの『Qui Italia』は、2005年・2008年に教育実習をした際に、入門講座で使用されていたので当時購入していて、これがいい教科書だというのも知っていました。
左の『Io&l’italiano』の方は、ペルージャ外国人大学の外国人へのイタリア語・イタリア文化教育学士取得課程に通っていた頃、心理言語学(psicolinguistica)などを教わって、熱意にあふれ興味深い授業に感銘し、尊敬していたLidia Costamagna先生の名前が、著書の筆頭にあります。わたしがブログやイタリア語学習メルマガで、脳や記憶のしくみと外国語学習について書くとき、その多くはCostamagana先生の授業で教わったことです。

卒業論文では、日本語とイタリア語を音声・語彙・形態・文章構造などさまざまな観点から対比し、日本人学習者にありがちな学習態度や既存の知識・学習法なども踏まえて、イタリア語のどういう点が日本人学習者には難しく、間違えやすいかを論じたのですが、コスタマンニャ先生には、その卒業論文の指導をしていただき、特に、音声面での日本語・イタリア語の比較、音声面でありがちな間違いについては、さまざまな参考図書を教えていただき、役に立つ助言もたくさんいただきました。
そういう経緯もあって、もちろん生徒さんのためによりよい授業を準備したいというのが一番の理由ではありますが、財布に決して優しくはない2冊を迷わずに、購入しました。このどちらの本づくりにも関わったサルヴァディーオのExpoミラノ向けの授業を参観したっけと、本を見ながら思い出したというのが、今回この記事を書いた二つ目の理由です。
ちなみに、2008年には、わたしは、シエナ外国人大学で、外国語としてのイタリア語教育を学ぶ大学院課程を専攻中だったのですが、卒業までに、シエナ外国人大学のイタリア語講座で50時間、外部のイタリア語を教える機関で30時間、イタリア語の教育実習を行う必要がありました。ところが、通っていたシエナ外国人大学では、ちょうどその頃、イタリア語の先生たちが「教育実習生拒否ストライキ」を行っていて、教育実習ができなかったのです。幸い、その頃は、わたし自身がイタリア語・イタリア文化講座に通った経験もあるペルージャ外国人大学の学士取得課程で、日本語と日本文学の授業を担当していました。それに、すでに卒業していた同大学の学士取得課程ですでに授業参観を(確か20時間)した経験があったので、ペルーじゃ外国人大学で、授業参観をさせてもらえることになりました。さらに、ペルージャの中心街にある私立の学校、Comitato Linguisticoでも授業参観をさせてもらって、何とか無事、シエナでの卒業に必要な80時間の授業参観を終えることができました。こんなふうに、イタリア語教育について学んだり、授業を参観したり、そうしてかつて日本の高校で長いこと国語を教えたりしたことも、きっと今のわたし、そうしてわたしの日本語の授業を支えてくれている大切な経験だと信じています。
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Nel lontano 2008 all'Università per Stranieri di Perugia
già c'erano i corsi di italiano rivolti agli operatori dell'Expo Milano 2015.
Come tirocinio ho avuto occasione di osservare il corso di Livello A2. Molto interessante, venivano dai Paesi diversi (Egitto, Tanzania, Tunisia, Mali) e avevano occupazioni diverse (guida turistica, insegnante, coordinatore di mostre estere del museo ecc.)...
Come tirocinante e insegnante ho imparato molto dalle lezioni della prof.ssa Servadio.
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LINK
- Amazon.it - Io e l'italiano. Corso di lingua italiana per principianti assoluti. Con CD Audio
- QUI ITALIA.IT. Corso di lingua italiana per stranieri. Livello elementare. Con DVD
↑ 約1か月前、使用中の教科書を聞いて、真っ先にアマゾンイタリアで調べたときには、どちらの教科書もアマゾンには見当たらなかったので、2度本屋に足を運んで今日ようやく購入したのに、今見るとアマゾンに在庫があって、しかもわたしが買った値段より合計5ユーロ安いという…… 昨日、『まるごと初級1A2』が、朝学校で生徒さんとアマゾンイタリアのサイトで確認したときにはなかったのに、午後は在庫が安い値段であったのに気づいていたのに、ずっと買うつもりでいたこの教科書についてはうっかり再確認を怠っていました。やれやれ。


ミラノ国際博覧会があるのさへ知らなかったです。
ミラノ万博に出展する各国の関係者を対象にした特別なイタリア語講座が開かれたりするのですね(@_@)
言葉が出来ないと、こういう催しは何かと不便ですから当然と言えば当然かもしれないですね!
「講座の初日にレベル判定・クラス分けのための試験が行われる」というのは語学学習の場合はこうすることにより、効率よく教えるのですね!
なおこさんが、外国語としてのイタリア語教育を学ぶ大学院課程も苦労されて取得されてるから、選ばれる教科書もまた素晴らしいものだろうとちょっと想像がつきました(^^♪
生徒さん、良い先生を持たれたと羨ましく思います♪
ありがとうございます。穴を掘って入らなければ! でも、この2冊は、実際に生徒さんが外国人大学の授業で使われているものなんですよ。家庭教師的な個人授業をするには、やっぱり教科書も持っておかなければと、継続して授業をすることになったので考えていました。