2015年 07月 10日
グラン・サッソ、高山の花とムッソリーニ脱出劇

Gran Sasso, Abruzzo 14/6/2015
標高約1800mと山の高みにあるため、高原に向けて山を登るうちに、真夏の暑さはどこへやら、肌寒いほどの気温になりました。けれどもそのおかげで、高原では今も、自生の蘭がきれいに咲いています。

高い山だからこそ出会えるめずらしい花も多く、

グラン・サッソの雄大な尖峰を間近に眺め、

思いがけず雪の上を歩いたりもしました。
この美しい高原は、標高が高く、さらにアッペンニーニ山脈で最も高い山に取り囲まれているために、1943年のファシスト政権崩壊後に逮捕されたムッソリーニが幽閉された場所でもあります。この写真の奥に見えるレンガ色の建物が、ムッソリーニが幽閉されていたホテルであり、

わたしたちが去年も今年も泊まった宿です。ムッソリーニがヒトラーの送ったドイツ軍によって、脱出不可能と思われていた高山から脱出したことは、ペルージャ外国人大学のイタリア史の授業で12年前に教わって、漠然と覚えていましたが、その舞台となった高原とホテルがここにあることは、昨年泊まったときに初めて知りました。

今年は、泊まった初日が土曜日だったからか、夕食時にホテルから客に、「ムッソリーニが囚われていた部屋を見たければ、食後に案内しますのでどうぞ。」という呼びかけがあり、それで、他の宿泊客といっしょに、その部屋を見に行きました。亜麻布の毛布も家具も、ムッソリーニが当時利用したものだそうです。
独裁者であったムッソリーニをいまだに敬愛する人がいることは知っていましたが、案内してくれた若い青年が、ムッソリーニをDuce(統帥)と呼ぶことや、ホテルの入り口にムッソリーニのカレンダーが置かれていることが気になりました。ベルルスコーニと懇意にしているRaiの番組の司会者、ブルーノ・ヴェスパが、ホテルに願い出てこの部屋に泊まったと聞いて、やれやれと思ったのですが、今インターネットで調べると、なんとブルーノ・ヴェスパは、本人は否定するものの、ムッソリーニの息子だという説があるのだそうです。

ドイツ軍は、音の静かなグライダー(aliante)を、ムッソリーニ救出に利用したのだと、ホテルの若者がその様子を詳しく説明してくれました。この救出作戦は、その名をOperazione Querciaと言います。この作戦を語る映像は、YouTube上にいくつかあるのですが、背景に流れるのがファシズムの歌だったり、ファシスト政権によって制作されたものだったりするため、リンクを直接貼るのは控えます。この作戦に際して命を落とした人やその家族にインタビューをする映像もあるのですが、そういう映像には、作戦実行の詳細はありません。
今回のムッソリーニの部屋訪問で聞いたalianteという言葉は、若者の話からエンジンを搭載しないため音をほとんど立てない飛行機らしいと分かったものの、これまで聞いたことがない、未知の言葉だと思っていたら、

Università per Stranieri di Perugia, 2002
2002年に、外国人大学の歴史の授業で、この脱出劇を学んだときにも聞いていたようで、ノートにきちんと書いてあります。ただ、このときも、先生の説明でどういう飛行機かが分かったので、辞書は引かず、今回このブログの記事を書くにあたって、初めて伊和辞典を調べて、日本語では「グライダー、滑空機」と言うのだと分かりました。
昨日、この古いノートを引っ張り出して、先生の描いた絵が、うまく状況をとらえていたなと感心しました。この授業中にも、ムッソリーニ救出作戦の詳細を教わっていたようです。

戦争のない平和な暮らしが、戦禍に苦しむ国に訪れますように、そうして、現在平和を享受する国では、今後も保たれていきますように。
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Campo Imperatore, Vette Maestose
ornate dai Fiori variopinti, orchidee, genzianelle, papaveri...
Di giorno una passeggiata tra i fiori e panorami meravigliosi,
di notte la visita della camera dove era imprigionato Mussolini!
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関連記事へのリンク / Link agli articoli correlati
- アブルッツォ、グラン・サッソを訪ねて / Viaggio in Abruzzo 2014 (7/2014)
- 美しい高原、カンポ・インペラトーレ / Alba & tramonto a Campo Imperatore (7/2014)
参照リンク / Riferimenti web
- L’Huffington Post – Bruno Vespa dorme nell’hotel prigione di Benito Mussolini. Il tweet da Campo Imperatore (12/7/2013)
- 世界史の窓 – ムッソリーニ


グラン・サッソの高峰に囲まれた広大な高原、カンポ・インペラトーレ(Campo Imperatore)、昨年も紹介していただいた記憶はありますが、お花はまた違う気がします(^^♪
1800m級を歩いて上るというのが素晴らしいですね♪
私は、北イタリア旅行の時に、登山列車で上って、ほんの少しくらいしか歩いたことがないので、普段から鍛えておくというのは素敵なこと!と思います。
ツアーだとバスでも1800mくらいまで登れる場所だと連れて行ってくれるので、ほんと場所によりますが、きれいな高山植物を見た時には感動したのを思い出しました(^。^)
リンドウのお写真を見て思い出し、とても嬉しい気持ちになりました、ありがとうございます(^-^)
そして、「ムッソリーニが囚われていた部屋」のお写真まで見ることができて大変興味深く拝見しました!
やはり歴史の舞台になった場所は、こうして保存しておいてくれるといいですね。
独裁者であったから、少複雑ではありますが、こうして保存することにより、間違いを繰り返さない教訓にするという考えもあるとは思うのであります。
興味深い記事をありがとうございました。
雄大な山の景色に癒されました。
青いお花、
なんの花なのでしょう。
とても鮮やかな色ですね。
朝顔のつぼみのような形にも見えますが、
このような花が広がる風景は素敵でしょうね☆
ムッソリーニが囚われていたというお部屋は、
快適そうですね!
やはり、
日本で教科書で習うのとは違う、
国民感情というか、
一部の人の中で根付く思想が、
今でもそちらにはあるのでしょうか。
本当に、私も、
世界の平和を願ってやみません。
ツアーでもピレネーやアルプスなど高い山を国境を超えて移動するときは、そんな高さまで、バスで走るときがあるんですね。わたしも南仏へドライブした時、こんなに標高の高いところにまで車で来られるとはとびっくりした覚えがあります。アリスさんもリンドウをご覧になったんですね! こちらこそ、アリスさんが喜んでくださったと分かってうれしいです。ありがとうございます。
歴史の授業で遠い昔に学んだ脱出劇の舞台を、まさか登山のために訪ねることになるとは思わず驚きました。歴史を振り返り、二度と過ちを繰り返さないことは大切ですよね。説明してくれた若者が、ムッソリーニに好意的な印象を持っていたようであるのが気になったのですが、思いがけず部屋を見られて、興味深かったです。
ムッソリーニは歴史の授業では悪人として教えられているのですが、一部には残念ながらムッソリーニを慕う人がまだいるようです。部屋は寝室は素朴ですが、書斎には高原が見晴らせる小さい窓もあり、特にトイレが浴槽もあって、造りがりっぱでした。
また野生のランも優しい色に惹かれます。
良いこと教わりました、次回夫が無理難題を提したらDuceと呼ぶことにします(笑)
あらあら、だんなさま、時々お転婆シニアさんでも難しいような無理難題をおっしゃることがあるんですね!