2015年 09月 02日
聖母にこん棒

Originale – 1494, Giano dell’Umbria, Abbazia di S. Felice
残念ながら、わたしが見たのは本物ではありません。モンテファルコの中心広場に、モンテファルコおよび近隣の町の主な絵画の複製写真を展示した建物があって、

Originale – 1504, Montefalco, Pinacoteca comunale
こん棒をかざした聖母の絵は、別作品の複製写真もありました。いずれも題名に、Madonna del Soccorsoとあるので、ウィキペディアのイタリア語版で調べてみると、こんなふうに聖母が描かれているのは、何もモンテファルコ周辺だけではないようです。
題名も「救いの聖母」ですし、絵をよく見ると、こん棒を掲げて威嚇しているのは、人々を悪魔から守るためです。大きなマントの下に庇護し、手を取ってはいますが、それでも手を出すならば、こちらも反撃するしかない、何が何でも守る、そのためのこん棒なのでしょう。

モンテファルコには三度行ったことがあります。一度目は通訳の仕事で訪れ、二度目はブドウ畑の美しい紅葉を見に夫と訪ねて町も歩き、三度目は、ワイナリーでの写真講座に参加して、燃えるように赤いブドウの葉やワイン貯蔵・製造の様子を撮影し、おいしいワインを味わいました。次回はぜひ、この「救いの聖母」の絵がある教会と美術館も訪ねてみるつもりでいます。

こん棒を掲げた聖母などの複製写真が並ぶその奥には、本物の壁画があり、優しい瞳、しぐさをした聖母が描かれています。
謙虚で慈愛に満ちた聖母マリアも、悪魔の手から人々を守るためには、こん棒を振りかざすということでしょう。わたしたちも、大切なものを守るためには、時に立ち上がらなければいけませんし、私たち市民のためだとうそぶいて、自らの権益ばかりを求める悪魔にだまされないように、目を見開かなければいけません。

イタリア旅行情報サイト、JAPAN-ITALY Travel On-lineのメルマガ9月号の記事で、モンテファルコを紹介しようと、モンテファルコの写真やブログの記事を見直していたら、こん棒の聖母が目に入ったので、ブログの記事に書いてみました。JITRAのわたしの原稿はすでに提出しましたが、メルマガ発行は9月半ば以降になることと思います。発行の連絡が来たら、皆さんにもお知らせしますね。
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Anche la Madonna prende il bastone quando è necessario.
Per proteggere i valori, la dignità e i diritti delle persone,
a volte non basta osservare,
certo non con il bastone, bisogna agire ma senza violenza.
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関連記事へのリンク / Link agli articoli correlati
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- うまし美しワインの里モンテファルコ、JITRA連載第4回 / Bella Montefalco


今日の記事を見て、エ~~~と驚きましたが、読み進むうちに納得しました(笑)
「謙虚で慈愛に満ちた聖母マリアも、悪魔の手から人々を守るためには、こん棒を振りかざすということ」これは初めて知りましたので、ふむふむと嬉しくなりました(*^_^*)
そして、その後のなおこさんの行もふむふむと納得しました~(*^^)v
教会に行くと、やはりいろいろと勉強になりますね!クリスチャンではなくても、私もヨーロッパの教会を訪ねるのはいろんな意味で興味深いし大好きです♪
なおこさんのモンテファルコの写真、秋色のブドウ畑に魅せられたので、いつの日か秋に訪ねてみたいものです(^^♪
出張が重なり、移動中に記事を拝見することもあったのですが、
スマホでコメントが苦手で・・・
メルマガ100号目ご発行も、おめでとうございました!
こん棒のマリア像とは、驚きです!
でも、この絵を見ながら、
いろんなことを思いました。
さまざまな解釈ができそうな絵ですね。
最初私が思ったのは、
やはり、マリア様と言えば、
優しく穏やかな慈愛に満ちたイメージしかなかったため、
この絵に対する違和感は否めず・・・
そして、
今、日本で、「戦争を起こさないための自衛である」と、戦うことを正当化するかのような政府の動きもあるためだと思うのですが、
どんな理由があるにせよ、
こん棒のような暴力を連想するものをふりかざすような形で、
聖母までもが悪に対峙するしかない世の中になるのは、
やはり悲しいことだな、という思いが私にはわいてしまいました。。。
でもよくこの絵を見ていると、
悪魔のささやきに誘惑されそうな子供や女性(弱者のイメージ?)に対して、
誘惑に負ける弱い心を戒めているようにも見えます。
もしかして、
本当の優しさとはなにかを物語っている絵なのかな?
とも思えてきました。
実際のところはどうなのでしょうね。
この絵を飾っている意図、
これを見に訪れた人たちの感想なども知りたくなりました。
ぜひまた、
なおこさんが、
この「救いの聖母」の絵のある教会や美術館に行かれた際には、
実際にご覧になられたご感想をお聞かせくださいませ。
イタリア各地の教会や聖堂には、聖母マリアに祈って奇跡的に助かったとか、望みがかなったお礼に、信者たちが捧げた奉納物、ex votoがずらりと並んでいるところがあるのですが、そんなふうに、「聖母マリアにとりなしを頼めば救われる」という人々の思いや、教会の教えが、少し極端な形で、この絵に現れているのではないかという気が、わたしはします。ちなみに、ex votoに関心があれば、次の記事をご覧ください。どういう状況で聖母に救われたかを描いた絵もあって、興味深いです。http://cuoreverde.exblog.jp/14676846/
秋や冬のウンブリアも、ブドウ畑の紅葉をはじめ、新オイルの味見ができる搾油場めぐりや白・黒のトリュフ、サフランの市など、独特の楽しみがいろいろとあります。機会があればぜひ♪
わたしもこのマリア像にはびっくりしました。わたしも、この絵には、すずさんがおっしゃるように、誘惑への戒めも感じました。ただ、中世の教会の絵は、文字が読めない民に、分かりやすく神の教え、教会の教えを伝えようという意図で描かれたものが多く、上のアリスさんへのコメントにも書いたのですが、「聖母マリアに祈れば、苦境を救ってくださる」ということが、目で見て感じられるように描いたのではないかと感じています。これまでにも、聖母の大きなマントの下に、人々が守られている絵は見たことがあるのですが、この絵では、その「守ろう」とする聖母の意志を動作にも表して、民に伝わりやすいようにしてあるのではないか、と。悪に打ち勝つ聖母という点では、蛇を踏みつける聖母の絵も時々見かけるのですが、こん棒は、描かれた当時の信者に、「聖母が守ってくれるから、心から信じて祈りなさい。」と伝えるために描かれたのではないかしら、と。これはわたしの推測にすぎませんので、また、どこかで詳しい説明を見つけたら、お知らせしますね。

外装は質素なのに、中に入ると、美しいフレスコ画に満ちた教会が多いのが、印象に残りました。機会があれば、また、そういうフレスコ画もご紹介できたらと思います。