イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

パリの美術館で妙に安心

 4年前にパリのさまざまな美術館を急ぎ足で訪ねたとき、数多くの名画を我が目で見られてうれしかったのはもちろんのことなのですが、別の意味で、何だか不思議な安心感を覚えました。

パリの美術館で妙に安心_f0234936_52582.jpg
Concerto campestre

 このルーブル美術館で出会った絵に限らず、印象派の絵にしても、描かれた女性の体の線がふくよかで、おなかや太ももに、豊かに肉がついているものが多かったからです。

 ちなみに、イタリアでも、最近の映画では、腰も足もすらりとして、胸だけが比較的大きいヒロインが多いのですが、1960年代の映画を見ると、これはアメリカ映画にも当てはまる場合があると思いますが、ヒロインが、どっしりした背中に、しっかりしたおしりを持つ女性である場合が多くて、何だかほっとします。

 まだ日本に住んでいた頃、「30代に入ると、女性は下半身に肉がつくものなのよ。」と友人に言われて、特にイタリアに暮らし始めてからはそれを実感しています。テレビや映画で見かける、妙に腰や足の細い女性たちを見て、我が身を思ってため息をついたりもしていたので、こういうふくよかな体つき、どっしりした体格の女性が、かつてはヨーロッパでも美しいと考えられていたのだ、賞賛の目で見られたのだと思うと、ほっとしたのでありました。

 もちろん、健康のためにも食習慣には注意しなければいけませんが、美食・飽食をあおるような映像や広告を流しながら、共に、女性はやせてすらりとしているのが美しいかと思わせるような人材をテレビ・映画の世界で採用し、やれセルライト対策には、ダイエットにはと商品を宣伝し、健康番組で美容整形の安全や人気を語るマスコミには、うさんくさいものを感じます。

 日頃から食生活にも運動にも気をつけていて、それでも年を取ったら、年を経た分、体に肉がついて、顔にしわが刻まれるのは自然なことであって、それをまるでいけないことのように消費者に思わせて、人工的な対策商品を売り込むのはいかがなものか、と。わたし自身も、実はアンチエイジングのクリームを使ったりしていて、ではどこまで線を引くかということなのですが、顔や体に整形手術を施してまで、若々しく、あるいは細く胸が大きく魅力的な外見を保たなければいけないと思う人々が、そうして、その思いのままに、自らの体にメスを入れさせることを躊躇しない女性が、テレビや新聞で見聞きする数字を信じれば、恐ろしいくほどに大勢いるのです。

 平安時代には、髪が黒くつややか、豊かであればあるほど、そうして色白でお歯黒をしているのが美人と考えられていたのです。イタリアでさえ、数十年前には、理想とされる女性の体つきがまったく違っていたのです。流される映像や写真、世間の言うことに惑わされず、気をつけるべきことに気をつけていて、それでも顔にできるシミや刻まれるしわ、体のあちこちについてくるぜい肉については、そうして年を重ねているのであって、それもまた熟す美しさなのであると、皆がそんなふうに考えられるようであればと思うのでありました。

*********************************************************************************************
Una volta la pancetta sulla pancia e sulle cosce
era ammirata, il simbolo della femminilità.
Ora i mass media ci invogliano a mangiare e bere di più e male,
poi ci fanno sembrare vergognoso
un corpo con lineamenti femminili.
Ma noi mangeremo sano e meno,
saremo fiere dei segni del tempo lasciati sul nostro corpo.
Non ci lasceremo ingannare dall'idea
che per le donne dà eccessiva importanza alla bellezza esteriore.
Apprezziamo un autunno bello e maturo del nostro corpo.
*********************************************************************************************

関連記事へのリンク
- 健康は食が作る、薬草利用と共に生活改善
- 改築とアルノとモナリザと

Articolo scritto da Naoko Ishii

↓ 記事がいいなと思ったら、ランキング応援のクリックをいただけると、うれしいです。
↓ Cliccate sulle icone dei 2 Blog Ranking, grazie :-)
にほんブログ村 海外生活ブログ イタリア情報へ  

Commented by Makitalia at 2015-10-01 14:50 x
同感です!!!ふくよかな女性の絵の方が魅力的で、心も豊かに感じます。
夫も、整形やシリコンを入れて豊胸手術などなど嫌いです、タトゥなんかも。。。
と言っても、私もアンチエイジングの何かしらの商品に手を出してますが。ただ、皮膚ガンや飛蚊症防止の為に直射日光や紫外線に気をつける、リンパの流れや冷え防止の為にセルライトがこれ以上つかないように気をつける、などなど、これからも気にしていきたいと思います。
一番は、自分らしく年を重ねるごとですよね♪
では良い週末をお過ごしくださいませ!
Commented by ayayay0003 at 2015-10-01 16:17
時代が変われば美人という観念も変わってくるというのは、世の常であり、あまりあてにはならないということですね!
なので、健康を害してまでのダイエットや美容整形は必要ないということです。
体によいものを食べ、適度に体を動かす、そういうシンプルな生き方がなかなか出来ないというのが今の世のジレンマかもしれないですね。
絵画もまた昔の人の知恵という役割を担っているとしたら、結講凄いことですね。

マスコミなどの宣伝に踊らされない自分でありたいなとは思いますが、現実は厳しいですね(笑)
私もアンチエンジングのクリームは使ってますから(^。^)
Commented by milletti_naoko at 2015-10-03 01:31
まきさん、共感していただけてうれしいです。まきさんがお若くてスラリとしたスポーツウーマンであるだけに、なおさらのこと。わたしも健康のために紫外線や日光に気をつけることは大切だと思うのですが、イタリアで異常なほど多い整形手術や、女性だけはニュース番組でさえ外見で選ばれているような場合が多そうな状況を見て、これではいけないと感じています。

ありがとうございます。まきさんも、どうかよい週末を!
Commented by milletti_naoko at 2015-10-03 01:45
アリスさん、こんにちは。昔の文学作品や絵を通して、昔はどういう人が美男美女とみなされていたかとか、どういうものを食べていたのかとか、そういう慣習や文化も分かるのが興味深いです。昔の絵って、ふくよかな女性の肉体を描く筆致に、賞賛が感じられるのは、わたしの気のせいというか、願望かもしれないのですが……

わたしもクリームは使っているし、自分が本来持つ肌をできるだけ長くいい状態でとは思うのですが、イタリアのやたらに整形に走る風潮はいかがなものかと思うのです。
Commented by mitsugu-ts at 2015-10-03 04:39
もしかしたら以前にもご紹介したかもしれませんが、大御所女優Anna Magnaniさんがいいセリフを残してくれています。お化粧担当の人に向かって、「Lasciami tutte le rughe, non me ne togliere nemmeno una. C’ho messo una vita a farmele!」と仰ったそうです。

ちなみに男性はあんまり外見で判断されないと思われがちですが、「顔は男の履歴書だ」とか「男は背中で語れ」とか聞くと、どうすれば良いのかとプレッシャーに感じてしまいます!
Commented by milletti_naoko at 2015-10-03 07:54
みつぐさん、この言葉、よくフェイスブックでも見かけますよね。ぜひそんなふうに女性も男性も考えるようになってほしいものです。

この二つの場合、顔も背中も、けれども、単なる外見ではなくて、内面の現れとしての顔と背中だと思います。内面を磨けということではないでしょうか。
by milletti_naoko | 2015-09-30 22:02 | Altro | Comments(6)