イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

映画、『Le ricette della signora Toku』~邦題『あん』、イタリア公開中

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 昨晩、ペルージャの映画館で見て、感動しました。夫も、映画館で出くわした知人も、やはり感銘を受けたようです。

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 イタリア語での題名を訳すと、「徳さんの料理法」となるでしょうか。そもそも、「あん」という食べ物自体が、イタリアではほとんど知られていません。それに、イタリア語版の予告編は、原語である日本語版の予告編に比べて、徳江さんが自然や小豆を、愛や尊重、感動の心で遇することに重点を置いています。そのために、こういう題名となったのでしょう。


 美しく咲きほこる桜の花。徳江さんが、小豆や砂糖のような食材が敬い慈しむべき人であるかのように大切にしている様子。イタリア語版では、日本語版の予告編にはない、こういった場面の映像が取り上げられています。

 この映画をイタリアで上映しようとした人は、映画のこういう風景ややりとりに、日本独特の繊細な感受性や心を、見て取ったのでしょう。


 一方、日本語の予告編では、日本の映画が訴える、今も差別に苦しむ人の思いや、人生・社会の在り方への問いかけに、焦点が当てられています。映画を見ながら、イタリアの人も、わたし同様、徳江さんに対する差別に、店長たちと共に悲しみ、憤っていたことと思います。

 まだ見ていない方のために、具体的な内容への言及はここまでにしておきます。心を打つ、とてもいい映画です。花ざかりの桜並木の美しさと共に、極めて個人的なことですが、中学生の頃、東京の西武新宿線沿線に住んでいたので、なつかしい黄色い電車が走るのが見られて、うれしかったです。

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Campanile della Basilica di San Pietro, Perugia 29/12/2015

 ペルージャでは、鐘楼のとんがり屋根が目印のサン・ピエートロ教会の近くの、Cinema Zenithで、来年1月4日まで、12月31日を除いて、毎日午後6時から上映されています。冒頭の写真は、映画館のポスターを撮影したものです。あまりにも縦に長いので、映画の題名は割愛しました。

 思いついて、英語版の予告編を見ると、日本語音声・英語字幕つきで、これも差別問題への言及はなく、選ばれた場面はイタリア語版と共通する部分は多いものの、まったく同じではありません。


 字幕以外の場面で映る言葉はフランス語なので、フランスでの一般公開前に使われた予告編でしょうか。日本語では何と言っていたのかも分かって、興味深かったです。

 原作の小説もよさそうなので、買って読んでみて、いつか映画といっしょに、日本語の授業の教材として使ってみたいと考えています。

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Film giapponese, "Le ricette della signora Toku"

Bellissimo e toccante, andate a vederlo!
al Cinema Zenith Perugia 1-4 gennaio 2016, ore 18:00
Nell'articolo troverete tre trailer: uno in italiano, due in giapponese
di cui uno è sottotitolato in inglese.
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LINK
- 映画『あん』オフィシャルサイト - 原作
- amazon.co.jp - ドリアン助川著『あん』(映画の原作)
- amazon.co.jp - 映画、『あん』 DVD スタンダード・エディション
- amazon.it - "Le Ricette della Signora Toku

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by butanekoex at 2015-12-31 07:25
この映画は、日本では樹木希林さんが親子で競演されると言うことで話題になりました。
内容も興味があり、見たいと思いつつ、他の映画と同様そのまま忘れてしまっていました。

予告編、上映される国によって内容も、取り上げる部分も違うのですね。
それも初めて知ったことです。
日本で作られると、作者や監督の本意とキャストに注目され、映画発信者側の内容になるのですね。
外国では、見る側の受け取り方で描かれるとは。
これもおもしろいことです。
残念なことに、私は日本語しかわかりませんが。
(日本語もあやしいかも^^;;)

なおこさん、今日は大晦日ですね。
すてきなブログの交流をありがとうございました。
来年も、どうぞよろしくお願いいたします。
Commented by milletti_naoko at 2015-12-31 08:38
butanekoexさん、そうだったんですね! 樹木希林さんは昔郷ひろみさんといっしょに歌っていたという遠い記憶がありました。検索してみて『林檎殺人事件』という題名が分かり、聞いてみると、歌詞は覚えていませんが、メロディーには聞き覚えがあります。なんてなつかしい!
https://www.youtube.com/watch?v=GT7Yeb7TyLo

イタリア映画の場合は、日本で放映される日本映画同様、映画発信者側の内容になるのですが、イタリアで上映される日本映画の場合は、作者や監督、キャストも知られていない場合が多いので、そういう中でも観客がぜひ見たいと思う気持ちになるように、予告編を制作しているのでしょう。イタリア語版では桜の映像、英語版では小豆からあんが作られている様子にかなり焦点が当てられているという印象があります。イタリア語学習の教材に使えたらと思って、宮崎映画のイタリア語版の予告編を見ることがあるのですが、宮﨑駿氏の映画の場合は、氏の映画がいかに世界や日本で人気や賞を得たかということばかりを話して、映像は流すものの、映画の物語の内容や筋にまったく触れないものばかりで残念です。

butanekoexさん、こちらこそうれしい交流をありがとうございます。新年もどうかよろしくお願い申し上げます。
by milletti_naoko | 2015-12-30 22:31 | Film, Libri & Musica | Comments(2)