2016年 03月 18日
イタリア語手作りゲーム、子どもにも日本語学習にも
それで、物置きにある包装紙で衣装を作ってみたり、段ボール箱にちらしの商品を切り抜いて貼りつけて家を作ってみたりと、いろいろ工夫をしてみたのですが、そうやって思いついた遊びの中で、これはよかったなというものの一つが、こちらの姪たち手作りのカードゲームです。
10年近く経った今も、姪たちが喜んで遊ぶ、大切な思い出のゲームになるとは思いもよらず、その日、わたしはふと思いついて、物置きと化したガレージから、不要な段ボール箱を掘り出して、ハサミで切り分け、トランプのカードほどの大きさのカードをたくさん作りました。
そうして、確か、二つ下の妹娘はまだ保育園でアルファベットを習っている最中だったそのとき、姪たち二人に、「Aで始まる言葉には何がある?」と尋ねては答えさせました。そうして、わたしがあらかじめ青いペンで小さくAと記した4枚のカードに、姪たちが答えた、Aで始まるものの絵を、描くように言いました。カードに実際にかくその前から、姪たちの記憶力と想像力・創造力が羽ばたき始めます。
ミツバチ(ape)を描くのに、太陽や花、大地の絵も添えてあるのがかわいらしいです。ほかにも、姉娘の名であるアレッシア(Alessia)や飛行機(aereo)、オレンジ(arancia)など、イタリア語のaで始まる単語とその絵が並んでいます。ARANCIAがわたしの筆跡なのは、当時の姪たちには、まだどう書いていいかが分からなかったからではないかと思います。
同様に他の文字についても、絵と言葉を4枚のカードにかかせました。今ガレージで見つけた袋にはどういうわけかAは4枚ずつあるのですが、他のカードは3枚ずつしかありません。3か月ほど前に姪たちと久しぶりに遊んだときには、ほぼすべてのカードが4枚ずつあったので、どこに消えたのかなぞです。
Bとして姪たちが思いついたのは、泡(bolla)と踊り子(ballerina)と男の子(bambino)です。泡の絵をかこうとは、わたしの頭では決して思いつかなかったでしょう。子供の頭の柔軟さと発想の自由さを、改めて思います。
Cのカードには、(小さい)お肉(ciccicina)、サクランボ(ciliegia)、ウンブリアではトルコロと呼ばれるリンク状のケーキ、チャンベッラ(ciambella)が登場します。
右手の紙にわたしが大文字で、DONNA、CICCINAと書いているのは、Cのカード以降は、姪たちがそのときは書き方を知らなかった言葉も、カードには姪たち自身に直接書かせることにしたからだと思います。自らの手で書き写せば、すでに音声も意味も知っていた言葉のつづりが頭に入りやすいはずです。
Dのカードには、ドゥオーモ(duomo)、女性(donna)、固形ブイヨン(dado)が並んでいます。
ドゥオーモと聞いて、日本の皆さんが思い浮かべるのは、フィレンツェやミラノのドゥオーモではないかと思うのですが、姪の描いたドゥオーモは、そういう大聖堂やイタリアでよく見かける教会とは若干違う形をしています。
鐘楼の位置こそ違うものの、姪たちが住むトーディのドゥオーモを、どうだったかなと思い出しながら描いたら、こんなふうになったのではないかと、わたしは想像しています。こんなふうに角ばっていて、長い大きな階段が手前にあるドゥオーモは、あまり見かけないからでもあります。写真は4年前、中世の謝肉祭が催されたときに撮影したものです。(下記リンク参照)
Eのカードには、象(elefante)、ヘリコプター(elicottero)、草(erba)が描かれています。Eの文字カードの下にある紙に、わたしが象の絵と単語をかいているのは、姪たちがどうかいていいか分からないと言っていたからでしょう。
Fのカードには、イチゴ(fragola)、キノコ(fungo)、蝶(farfalla)が並んでいます。ここでもやはり、どうかいていいか分からないという姪たちのために、わたしがfragolaのつづりや、蝶の絵を、お手本としてかいています。
Gのカードに描かれているのは、キリン(giraffa)、猫(gatto)、ゴリラ(gorilla)です。猫の絵がひどく小さいので、一瞬どうしてかしらと考えたのですが、両脇に大きいキリンとゴリラが並んでいるので、カード内の絵にも、動物たちの実際の大きさの違いを反映させたのではないかと思いつきました。
左手にキリンの顔をわたしが描いたのは、姪たちに助けを求められてのことだと思うのですが、姪のかいたキリンの胴体の大きさが興味深いです。小さい姪たちが下からキリンを見上げたとき、はるか上方にある長い首よりも、まぢかに見えた胴体の大きさの方が印象に残ったのかもしれません。
Iのカードに並ぶのは、カバ(ippopotamo)、漏斗(imbuto)、火事(incendio)で、incendioやgiraffaも、つづりが難しかったようで、わたしが紙の裏に書いています。義家族宅でもうちでも、オリーブオイルや酢は自家製のものを、大きい容器から小さい容器に移し替えるので、何かと漏斗が活躍するため、姪たちはIと聞いて、すぐにimbutoを思い浮かべたのだと思います。
イタリア語の従来のアルファベットは21字なのですが、カード作りはAからIまでの8文字で終わっています。Iに続くJとKは、W・X・Y同様、本来イタリア語には存在しない文字で、外国の地名・人名・自動車のバックナンバーなど、使われる用途がごく限られています。さらに、すでに完成したカードだけでも、十分に遊んで楽しめるので、これ以降は作るのをやめてしまったのではないかと思います。
遊び方には主に2種類あります。かつてはどの文字も4枚ずつカードがあったので、すべてを裏返しにしてきれいに並べ、トランプの神経衰弱のように、一人ひとりが順に2枚ずつカードを表に返していって、2枚目に開いたカードの文字が1枚目と違えば、再びカードを裏返して並べ、開いたカードの文字が2枚とも同じであれば、2枚は開いた人のものとなり、文字の組み合わせが同じである限りは、同じ遊び手が続いてどんどんカードを裏返していくことができる、そんなふうにして遊びます。
もう一つの遊び方は、最初に、写真の左下に重ねてあるアルファベットの文字だけを書いた小さいカードを、遊び手が一人1枚ずつ裏返した山の中から取って、その後、絵を描いたカードを山にしてテーブルの中央に並べ、皆が順に1枚ずつ開いていって、文字カードと同じ文字が書かれたカードを最初に4枚集めた人が勝ち、というものです。
きわめて単純なゲームなのですが、絵や文字をかき始めても、何かこれをかくという目的がないと飽きる上、まだ字や言葉が書けない時期に、書くことや描くこと、そういう作業を通して学ぶことを、子供たちが楽しめる上に、後から遊ぶときにも、自分たちが自らの手でかいた絵と文字なので、その絵や言葉を見るという楽しみが、遊びと学びに加わって、姪たちは、作るときも、作ったカードで遊ぶときも、とても楽しそうでした。
高校生、中学生になった今でも、幼い頃に自分たちが作ったカードが懐かしく誇らしいのか、時々カードを物置きから引っ張り出してきては、いっしょに遊ぼうと誘ってくれて、遊ぶときには本当に楽しそうです。日本語・イタリア語を勉強中のお子さんがいる方や幼稚園や小学校で英語を教える方の参考になればと、ふと思いついて、懐かしいカードを掘り出して、記事を書いてみました。ところで、失われたカードたちは、どこに行ったのでしょう。大切な宝物なので、探し出さなければ。
*******************************************************************************************************
Sono i Giochi di Memoria che le nostre nipotine
hanno creato con noi circa 10 anni fa.
"Ditemi le parole che iniziano con A."
"Allora, dipingerete un'ape."
Si divertivano, imparavano anche mentre creavano le carte e
anche ora quando frequentano liceo e scuola media,
ogni tanto a loro viene la voglia di giocare con queste carte insiema a noi
e sorridono guardando le carte fatte a mano da loro stesse.
*******************************************************************************************************
関連記事へのリンク / Link agli articoli correlati
- 中世の謝肉祭、トーディ / Carnevale Medievale, Todi (20/2/2012)
- 食後は歌とScarabeo / Scarabeo con le nipotine (30/11/2010)
- クリスマスの1日 / Scarabeo Hello Kitty (25/12/2010)
- トランプで日本語学習 / Carte da gioco per insegnare i numeri e le ore in giapponese (26/2/2013)
- 外国語、数字も時刻も難しい / Numeri – Giapponese VS Italiano (13/5/2014)
- 世界の中心、フォリンニョ? ~ 言語名、その国の人の言い方を練習するための日本語のカード (29/1/2013)
参照リンク / Riferimenti web
- Scarabeo イタリア語版スクラブル、単語を並べて特典を競うゲーム
- Scarabeo Hello Kitty イタリア語版スクラブル、ハロー・キティ版
- Mattel Y9596 - Mattel Games Scrabble
今頃は、大仕事を終えての開放感につかっていらっしゃるでしょうか。
お疲れ様でした^^
そして、またまたほっこりとさせていただきました。
姪っ子ちゃんたちとのカードゲーム、素晴らしいことだと思いました。
買うものではなく、物置のダンボールを利用し
子供たちが、考えながら楽しく遊び、
そして、何年も経ってから、大事な宝物として手元にあるなんて
本当にすてきなことです。
このような遊びと教育を通して、
なおこさんと姪っ子ちゃんたちとの絆も深まっていったのでしょう。
それにしても、子供たちの発想は、大人にはないもので
とても興味深いです。
この自由な感覚をいつまでも持ち続けて欲しいですね(^^)
大人になると、これはこう描くものという固定観念がすべて頭にあって、自分で自由に描けないのだなと、幼かった姪がのびのびと自由に描いた絵を久しぶりに見て、改めて感じました。絵に限らず、物のとらえ方や見方、感じ方も、そうやっていつの間にか縛られてきているのでしょね。わたしも姪たちにいつまでのあの頃のような自由な感覚を持ち続けてほしいなと思いました♪
姪っ子さん達が一生懸命、また楽しんでカード作りに携わっていた様子が目に浮かぶようです。絵も、とっても可愛らしいですね♪
子供のおもちゃは時と共に捨てられてしまうものが多いですが、なおこさんとご主人様、姪っ子さんの思い出が詰まったこのゲームは、きっといつまでも皆の宝物として残るのでしょうね!
まだもう少し娘と一緒に遊べる今、彼女との過ごし方を考えさせられるいいきっかけにもなりました^^
発想豊かなときの絵って大人になってから見直すと熱いものがこみ上げてくるくらいジンときますね。
可愛いですね、そしてとても有意義な教育方法だと思います。
楽しんで学べることって大切ですね。
大人だけれど多分精神年齢が低い私でも絵とセットだとイタリア単語も覚えるのが早くなりそうな気がします。
自分で描いてみようかしら^^;
ゴリラはゴリラなんだ。。。
手作りの想い出のカードいいですね(^^♪
いつまでも、懐かしんで遊べるというのはやはり自分の手作りだからでしょうか?
ひとつの遊び方(前者)は、トランプでやっていた神経衰弱という遊びに似ていて興味深いです♪
日本でもイタリアでも同じような遊びがあるのは嬉しいですね(^_-)-☆
残りのカードが出てくるといいですね(^-^)
一つは義母のおかげでもあります。実は義母、夫たち息子3人のものは、幼い頃学校の宿題で書いていた日記から絵まで、皆大切に取っていて、先日夫が、こんな絵などもう捨ててしまおうと言っていたその絵を、今はわたしがこっそり大切に取っていたりします。断捨離とはほど遠い状況ですが、こんなふうに成長の記録や思い出にもなる、今でも遊べる手作りゲームが大切に取ってあるのがありがたいです。
サラちゃん、大きくなりましたね♪ 生き生きと働き、いつもそばにいてくれるまさみさんから、いろんなことを感じ、学んでくれてもいるのではないでしょうか。
わたしも幼い頃はいろはがるた、中学生以降は百人一首と、かるたが大好きでした。絵といっしょ、できるだけ多くの感覚(視覚・聴覚・触覚などなど)と共に学ぶと、記憶が定着しやすいというのは、心理言語学などの研究で明らかになっているので、 paradiso-norinaさんもぜひ! ローズマリーにシクラメンなど、木や花などの植物をたくさん描けば、お庭の植物事典、覚え書きとしても使えそうですね♪
今回ご紹介したカードをガレージの山の中から探し出すのもなかなか大変でしたので、また時間のあるときに、残りを探してみるつもりです。ただ、つい2、3か月前には4枚ずつそろっていたものが1枚ずつ欠けているので、ひょっとしたら姪たちが同じようなものをまた幼いいとこと作るために、参考として1枚ずつ抜いたのかなと想像してもみたり…… どうか出てきますように♪
先日コメントを頂いて手作りカードの事を知った時は目から鱗・・的な感じで、驚きとなるほど!と思ったのですが、こうして詳細を記事にして下さって、すごく具体的で分かりやすいですし是非とも日本語教育・イタリア語のアルファベット学習で活かせそうなので試してみます!
姪っ子さん達が10年も経った今でもこうして昔の遊びを覚えていてくれて、大事な思い出になっているってすごいことだと思います。
なおこさんが姪っ子さんの事を思って、色々工夫してくれたりアイデアを盛り込んだ遊びを考えてくれてたのがとっても嬉しかったんでしょうね~買って与えるオモチャとは違って、こうして自分達で考えて、それが学びに繋がるってすごいですよね~ちょっと日頃の自分の子供への関わりを反省してしまいましたけど(笑)、こうやってがっつり子供達と向き合って遊べる時間も永遠ではないし、今を大事にしていきたいと思いました。
大きくなったらTVやらゲームやらスマホやら・・・きっとそういうのに流れて行きそうですものね^^
どんなカード遊びが出来るかな?日本語が少しでも伸びてくれることを祈って・・・子供達の反応も楽しみです!
姪っ子さんたちのかわいいらしい手作りカード、私も昔わが子に作ってあげた記憶がよみがえってきました。でも、今ではもうそのカードもないと思うので、10年たっても存在しているそのカード、naokoさんのように大切にとっておけばよかったのと記事を読んで思いました。
イタリア語の単語を見て思ったのが、踊り子はballerinaっていうんですね。あと昔、bambinoという子供服のがあったと思うのですがそこからきているのでしょうか。イタリア語をよくみるとなんとなく英語と似ている単語もありキノコfungoとかキリンgiraffeやゴリラgorilla、カバippopotamoなど似ていますね。こうしてカードにして遊ぶと覚えも早くていいですね。大切な思い出を教えていただいてありがとうございました。
いろいろ遊びましたが、体を動かして遊ぶほかには、自分で何かを考えたり作ったりというのが、姪たち一番楽しそうでした。何でも大切に取っておいてくれるお義母さんに感謝しつつ、本当に素朴なリサイクルのカードを、姪たちが時々うれしそうに思い出して、楽しそうに遊んでくれるのが、わたしもうれしいです。
お子さんがまだまだお母さんといっしょに過ごしたいという今の時期に、ぜひ♪
ballerinaはどうも日本語のバレリーナという言葉もイタリア語から来ていることに、今調べて初めて気づきました。イタリア語では「踊る」を意味する動詞がballareから派生した名詞で、クラシックバレエに限らず、踊り、ダンスを仕事にする人、あるいは踊るのがうまい人・好きな人を、男性ならballerino、女性ならballerinaと呼ぶんです。bambinoという子供服! イタリア語から名前を取ったのだと思います。伊伊辞典で調べると、fungoはイタリア語の母体となるラテン語に由来し、gorillaはギリシャ語から、giraffaはアラビア語からの外来語で、ippopotamoはギリシャ語の単語をもとにできたラテン語に由来しているそうです。学術語でギリシャ語・ラテン語起源の言葉が、イタリア語や英語に多いのは知っていたのですが、動植物の名前にもそういうものがいろいろあるんですね。おもしろいです。
こちらこそ、興味を持って読んでくださって、ありがとうございます♪