イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

撤廃! 80~200ユーロのイタリア滞在許可証発行料

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 滞在許可証(Permesso di Soggiorno)なしには、イタリアでの合法的な居住を認められずに困る外国人住民の弱みにつけ込んで、2011年の省令で定められた80~200ユーロという発行料金は、法外であって、外国人市民の権利行使の障害となっているという判断を、昨年9月に欧州連合司法裁判所が下したにも関わらず、政府は知らぬふりをして、発行料金を改めようとはしませんでした。

 そのため移民のためにと、IncaとCgilが発行料の廃止や不当に受け取った過剰な発行料金の移民への返還を求めて、法的手段に訴えてきたのですが、昨日、5月24日に、ラッツィオ州行政裁判所が、欧州連合司法裁判所の判断を受けて、2011年の法で定められた80~200ユーロの滞在許可証発行料金を撤廃するという判決を下しました。

 ただし、収入印紙(marca da bollo)用に16ユーロ、電子情報カード作成に30.46ユーロ、さらに、イタリア郵便局への手数料、30ユーロという費用は、移民が払うべき料金として残るとのことです。

(2017年6月9日、残念ながら、発行料が復活しました。料金はかつての半額となり、イタリア語での名称は変わっています。詳しくは記事末の追記をご覧ください。)

 問題は、この判決を受けて、政府が警察に変更を求め、警察が実際に然るべき料金のみを、外国人住民に知らせ、請求するようになるまでに、どれだけ日数がかかるかということです。上記の記事には、「現段階では、滞在許可証を申請・更新する人から、今回廃止となった80~200ユーロの法外な発行料金を、要求してはならない」ことが、判決で明らかとあるものの、

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Dal sito, http://www.poliziadistato.it

警察のサイトにはいまだに、発行・申請料金として、24日に撤廃が決まった発行料金が記載されています。
  
 不当に移民から受け取った法外な発行料金の返還についても、訴訟が続いているようですが、まずは、昨日の判決で決まった料金の廃止が、早く警察や郵便局に通達され、滞在許可証の申請・更新をする人が、80~200ユーロを払わずに済むのが当たり前となる日が、早く来ることを願っています。

*追記(2017年2月21日)
 2017年2月現在は、この違法とされる高額の発行料は撤廃となり、法的には、イタリアで滞在許可証を申請する際に支払いが必要なのは、収入印紙(marca da bollo)用に16ユーロ、電子情報カード作成に30.46ユーロ、さらに、イタリア郵便局への手数料、30ユーロの合計76.46ユーロのみとなっています。

 ただ、上記の昨年5月の判決のあと、9月にイタリア政府が財政困難のため発行料撤廃を求めて国務院に訴え、幸い10月に国務院がこの訴えを取り下げたという後日談があり、そのためにいまだに発行料を請求する郵便局や警察署があるかもしれません。詳しくは、以下の記事をご覧ください。

- 滞在許可証手数料70.46€のみで発行料撤廃~政府負け道理が通ったイタリア (13/12/2016)

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Abolita la tassa di 80-200 euro sul Permesso di soggiorno

- 2/9/2015 Corte di giustizia UE: 'sproporzionato', 'ostacolo
per i diritti dei cittadini stranieri', 'contrasto con le norme europee.'
- 24/5/2016 La sentenza del Tar del Lazio annulla gli articoli
riguardanti del DM 6 ottobre 2011, recanti "Contributo per il rilascio
ed il rinnovo del permesso di soggiorno"
.
Finalmente!
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LINK
- Polizia di Stato – Il rilascio del permesso di soggiorno
- StranieriInItalia.it – Stop alla tassa sul permesso di soggiorno, non si paga più (25/5/2016)
- Il sole 24 ore.com – Il Tar boccia il costo dei permessi di soggiorno: 80 euro sono troppi (25/5/2016)

*追記(2017年6月29日)
 理不尽なことに、2017年6月9日以降、この発行料が、イタリア語での名称は変更となったものの、かつての半額、滞在許可証の有効期間に応じて40・50・100ユーロではありますが、復活しました。申請を6月9日より前に終えている申請者についても、まだ発行を受けていない場合には、新たに定められた発行料を払わなければいけないことになっています。詳しくは、以下の記事をご覧ください。
- 非道理が通るイタリア、裁判で撤廃となった滞在許可証発行料が6月9日以降半額ながら復活 (28/6/2017)

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by ayayay0003 at 2016-05-26 09:00
なおこさん、海外に移民として暮らすということは、大変なことですね!ここでは、イタリアの例ではありますが、日本だって国籍を持たず、配偶者も日本人ではない人たちは、あまりよくは知らないのですが、多分大変なことが多いのでしょうね!
そうすることで、移民を多くは受け入れません!という態度をとってるのだろうと想像出来ますが・・・
なかなか難しい問題ではありますね(・。・;
皆が暮らしやすい国であってほしいものです。
Commented by Bolognamica2 at 2016-05-26 14:30
なおこさん、おはようございます!
これは朗報ですよね!!!いち早く有益な情報をシェアして下さりありがとうございます!

家族用滞在許可証はそこまで高くないものの、それ以外のペルメッソに関しては毎回200e近い高額な料金が発生する事に疑問を感じていました。高い割に、すぐ発行されるわけではなく、待たされるのは変わりなかったし、、、

今までどれだけの移民が高額な料金を払ってきたのでしょうね、、、ほんとに、滞在許可証は絶対必要なものだけに、弱みにつけ込んで……という感じですよね。早く警察で新しい決まりが浸透する事を願います………^^;
Commented at 2016-05-26 18:35
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by London Caller at 2016-05-27 05:35 x
私はイギリスの永住権が持っていますが、国籍はまだマレーシア人ですよ。パスポートもマレーシアのです。マレーシア政府が二重国籍は認めないので、変えれば将来帰国したいとき問題が起きるでしょうね。^^;
マレーシアのパスポートはイギリスのや日本のと比べたら、たしかに弱いです。でも中国語で「知足常楽」の熟語があります。つまり、満足を知ったら、いつも楽しいです。あはは、これぞ亜Q精神なんですよ。
Commented by milletti_naoko at 2016-05-27 06:13
アリスさん、移民として暮らすのは、日本に住む外国の方にとっても、きっと大変でしょうね。まずは日本語の習得、そして法的にも何かと難しい問題が多いと聞いています。

一番弱い立場にある人が幸せに暮らせる国が、皆が幸せに暮らせる国なのだと読んだことがあります。本当に皆が暮らしやすい国に、日本もイタリアも、そうして世界の国々がなっていってほしいものです。
Commented by milletti_naoko at 2016-05-27 06:41
Bolognamicaさん、わたしはこの突然の値上がりの前からイタリアに住んでいたので、料金のあまりの高さに驚いていました。幸いわたしは家族用滞在証なので、手数料だけですみましたが、特に貧しい国から家族連れで移住して、合法的に働こうという移民に対しては途方もない金額です。

昨年高すぎるから改めるようにと、EU司法裁判所からイタリアに通告があったことは知っていたのですが、ベルルスコーニ時代に(ひょっとしたら今も)同様の判決や通達があっても、MediasetのCMが長すぎてEU法に違反しているなどの問題が放置され続けていたことを知っていたため、イタリアで実際に撤廃となる日が来るのか疑問で、記事にしていませんでした。

今日も裁判に関わった弁護士さんの、今すでにもう払う必要がないという言葉がオンライン新聞にあったものの、判決が出て以降も、郵便局で申請のためには支払いが必要と言われて、やむなく100ユーロ払ったという移民の言葉もそのすぐ前後に書かれていました。うやむやにせず、早急に判決が現場に反映されるようになりますように。
Commented by milletti_naoko at 2016-05-27 06:44
鍵コメントの方へ、できるだけ多くの方に知っていただきたい、そうすれば、日本の方に限らず、多くの移民の声で政府や警察、郵便局も動くようになるはずだと願いながら記事を書いたので、そうして共有してくださると、こちらこそ助かります。ありがとうございます。
Commented by milletti_naoko at 2016-05-27 06:47
London Callerさん、マレーシアもなんですね! わたしもイタリア国籍を取得する権利はあるのですが、日本では二重国籍が認められないため、イタリアの永住権(EU市民用の無期限の滞在証)でよしとしています。足るを知る、それが今ほど大切な時代はこれまでなかったのではないかと、痛切に感じています。
Commented by patata_lemondrop at 2016-05-28 19:02
なおこさん、こんにちは!
FBでなおこさんのこの記事をのシェアを拝見しました。私も過去、滞在許可証発行の際は200euro近い額を払いました。↑上で家族用滞在許可証とありましすが、私の場合は、移民局の間違いで請求されたということになるのでしょうか…複雑でいまいち分かっていない部分も多く^^;もう少し勉強しないといけないですね。

話は変わるのですが、なおこさんに御報告が!
プリーダ試験、無事B2レベル合格することができました!4月末に、落とした読解だけを再受験(結果が一年有効)した結果が届いたのです。
しかし、私はやはり読解が苦手なようで、合格最低点が30点満点中18点で私は19点でした、トホホですね^^; 運が良かったともいえるかもしれないですね^^;
確かB2を受け始めた約2年時から、今まで何度も、なおこさんには、励ましていただき、勉強方法を色々アドバイスしていただきました。本当にありがとうございました。なおこさんにぜひこの結果を一番に伝えたくって!!!
C1を目指したい!という漠然とした夢はあるものの、B2とC1にはかなり大きな差がありますよね>< 
B2を取る大変さを感じ、改めてなおこさんのイタリア語力のレベルの高さが分かりますし、尊敬です。私にはB2ですら、かなりの難易度の高さです^^;
これからも精進します。
これからもよろしくお願いします(^ ^)
Commented by mitsugu-ts at 2016-05-29 22:59
こんにちは!朗報ありがとうございます。僕も値上げ前から住んでいたので、初めて郵便局でこの値段を言われた時はびっくりしたものでした。「まぁ最近は何でも料金が値上がりしてるしな・・・」とすぐにあきらめたんですが、法的な根拠のない不当な値段だったとは!油断も隙もないとはこの事ですね。
Commented by milletti_naoko at 2016-05-29 23:42
Patataさん、こんにちは。Patataさんが支払われたのがいつ頃か分からないのですが、わたしが結婚した2007年に、イタリアでもEU法を受けて、EU市民の家族については、滞在許可証(Permesso di soggiorno)ではなくEU市民家族用の滞在証(Carta di Soggiorno per familiare cittadino UE)を申請し、最初の申請時に発行されるものは5年間有効で、5年後の申請時にまだ夫婦として同じ住居にEU圏内で暮らしていれば、無期限の滞在証が取得できるようになりました。このときの法律に、EU法・イタリアの法のいずれでも、EU市民家族用の滞在証の申請費用は無料とするが、Carta d'identitàと同程度の手数料は取ってもよいというようなことが書かれているはずです。法が適用され始めたのは2007年4月からのようですから、もしPatataさんのご結婚がそれ以降である場合には、移民局がEU市民ではなく、EU圏外の移民の家族用の滞在許可証に必要な書類や費用を間違って要求した可能性があります。詳しくは、次の記事をご覧ください。
・Carta di soggiorno per familiare cittadino UE
http://cuoreverde.exblog.jp/17703068/

 せっかくEU市民の家族には、滞在許可証ではなく、家族との同居・移動が権利とみなす法ができても、それが末端まできちんと伝わらずに、あちこちで本来受けられるべき権利が受けられない例があるようで、困ったものです。

B2合格されたんですね! おめでとうございます。基準ぎりぎりであっても、合格したら、それはもう合格に値するだけ力がついているということですから、自分をほめてあげてくださいね♪ C1に向けては、イタリア語で読む機会や量を増やしていくことがまず大切だと思います。よかったですね♪ こちらこそこれからもよろしくお願いします。いつかお会いできるといいな。
Commented by milletti_naoko at 2016-05-30 00:24
みつぐさん、イタリアが作った省令に基づいての請求ですから、法的根拠はあったのですが、不法滞在の移民などを強制送還したりするのに必要な費用を、イタリアで合法的に仕事を得て働く移民に支払わせようという意図が見える、請求金額が不当に高い金額であったため、EU司法裁判所からNOが出て、ようやくイタリアの裁判所でも、基準となった法を無効としたということなんです。
by milletti_naoko | 2016-05-25 23:59 | Sistemi & procedure | Comments(12)