イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia 日本語教師・通訳・翻訳家。元高校国語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより

英語はずかし間違い、初海外旅行の思い出

 初めての海外旅行では、カナダのプリンス・エドワード島を訪ねました。いっしょに行った先輩もわたしも、赤毛のアンが大好きだったので、作品の舞台であるプリンス・エドワードにぜひ行ってみたいと、憧れていたからです。前年まで同じ高校に勤めていた先輩とは、確かその年の春、二人とも別の高校へと転勤になったため、違う高校で働くことになったばかりだったと、ぼんやりと覚えています。ですから、このカナダ旅行は、転勤したばかりの1993年、あるいは1994年の夏のことで、いずれにしろ、今からもう20年以上も前のことです。

 旅行が決定してから、英語の再勉強を始めて、アルクのヒアリングマラソンを受講し、ワープロで英語の日記をつけたり、『大草原の小さな家』や『フルハウス』などの聞き取りやすいドラマを録画して、まずは英語で視聴し、次に日本語で見直して、最後にもう1度英語で聴き直して、聴解力を鍛えたりしました。同時に、最初は対訳と語注つきの小さな本から、毎日少しずつ英語の本を読むことも始めました。おかげで、旅行中には、英語で現地の人と話したり、英語で上映された『赤毛のアン』のミュージカルを、物語の筋を知っていたからでもあるのですが、シャーロットタウンの劇場で十分に楽しんだりすることができました。

 プリンス・エドワード島では、料理を頼むと、メニューに書かれていなくても、大量のフライドポテト、あるいはオーブンで丸ごと焼かれたジャガイモがいくつか、必ずついてきたので、びっくりし、量の多さにしばしば辟易したことを覚えています。牛乳もSやMサイズを頼んでも、びっくりするほど大きなコップに入った牛乳が運ばれてきたので、驚いたものです。

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 閑話休題。英語の力をつけたつもりだったのに、現地の人と何度もやりとりするうちに、自分で気がついて恥ずかしくなってしまった英語の間違いがあります。カナダでは、たとえば劇場などの座席で、すでに座っていたわたしたちの前を通る人が、Excuse meと断ることが多く、向こうからわたしにぶつかってしまった人は、I’m sorryと謝るので、とても礼儀正しいなと感じたのですが、問題は、そのたびにわたしが英語で返していた言葉です。

 皆さんなら、こんなふうに英語でこんなふうにちょっとしたわびを言われたら、どんなふうに返事をしますか。

 前述のように、当時はすでに英語の本やドラマを英語で楽しむ習慣もつけつつあったのではありますが、わたしの返事は、あきらかに日本語である母語の影響、母語の転移(transfer、transfert)を受けたもので、間違った英語表現で答えてしまっていました。

 最初は何も疑問に思わずに、同じ返事をし続けていたのですが、カナダの方が、さまざまな場面で「すみません」とていねいに声をかけてくれるので、わたしも真似してそう言うようにしたら、返ってくる返事が、皆一様に、No problemであるのに、ふと気づいたのです。そうしてそこで、初めて自分の間違いに気づいて、恥ずかしくなり、さらに、どうしてそんなふうに間違ってしまっていたのかも推測ができました。

 前を通ったり、ぶつかったりして、「すみません、迷惑をおかけしましたね。」と言われたときには、なるほど、No problem、「問題ではありません。たいしたことではありませんから、お気になさらずに。大丈夫ですよ。」と答えるのか。

 一方、それまでわたしが、どう返事をしていたかと言うと、なんとYou’re welcomeと言っていたのです。日本語では、「ありがとう」に対しても、「すみません」に対しても、「どういたしまして」と返事をします。中高時代からの英語教育を通して、「どういたしまして」=You are welcomeという単純公式で覚え込んでいたために、英語ではThank youに対しては、You’re welcomeと返事をしても、I’m sorryやExcuse meというわびに対しては、同じ言葉は使えないことに気づかず、つい頭の中で、「今はどういたしましてと言わなければいけないから、英語で言うと……」と、自分では意識しないながらも、気づかぬうちに日本語脳を介して、You’re welcomeと返事をしてしまっていたのでしょう。

 You’re welcome、「ぶつかってくれて、こちらこそありがたい」、「前を通ってくれてうれしいです」なんて、なんとちぐはぐな、とんでもない返事をし続けていたのだろうと、気づいてから恥ずかしくなりましたが、カナダ旅行のおかげで、自分が無意識に長い間英語でわびられたらこう返事をするものだろうと思い込んでいたことに、気づくことができました。

 以前にブログ記事で、母語の発音が、学習中の外国語に影響を与える例を、いろいろとご紹介したことがありますが、こんなふうに、母語の影響、転移は、発音のみならず、文法や語彙、会話表現など、言語のあらゆる側面にわたって起こります。

 ちなみに、「すみません」と言えば、日本人が外国語を話すときに起こりがちな、文化的慣習から来る母語転移の一つに、感謝の言葉を言うべきときに、「すみません」を意味する言葉を使ってしまうというものがあります。日本語では、謝意を表すのに、相手にかけた負担を思って、「すみません」と言うことがあるからなのですが、外国語で、感謝のつもりでわびを言っても、相手にお礼の気持ちが伝わりませんので、気をつけましょう。

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Il mio errore in inglese durante il mio primo viaggio all'estero
era un errore di transfer, dovuto all'influenza della lingua materna, giapponese.
Nei primi giorni ogni volta che i canadesi mi dicevano 'Excuse me', 'I'm sorry', rispondevo in modo sbagliato dicendo 'You're welcome'.
Non è che fossi contenta quando qualcuno si scontrava con me, ma era perché in lingua giapponese si usa la medesima espressione, DOOITASHIMASHITE per rispondere sia a 'grazie' che a 'scusi'. Solo dopo aver notato che invece tutti rispondevano 'No problem' al mio 'excuse me', mi sono accorta del mio errore.
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Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by butanekoex at 2016-08-02 07:40
いつも丁寧ななおこさんならではの 若いころの間違いですね。
きちんと英語を勉強して、はじめての海外旅行で実践してみての失敗、
これこそ 今後の教訓につながり、今のなおこさんがある ということですね。
素晴らしいです。
英語の出来ない私は、海外旅行はお決まりのツアーと、
多少英語の出来る主人を頼る、という自主性のない形になってしまいます。
それはそれで楽しいのですが、自分で話せたらいいのにと感じる瞬間は、幾度と無く出てきますし。
今からは、海外に行く機会もあるかどうかわからず、
さらに勉強をする気力もない私には、なおこさんの熱心な探究心に頭が下がるばかりです(^^)
Commented by ayayay0003 at 2016-08-02 07:43
なおこさん、私は今でもその手の間違いの繰り返しで恥ずかしいです^^;
母語の習慣というのはなかなか抜けられないものですね!
日本語では、何でも取り敢えず「すみません!」と言っておけばあらゆる場面で収まりがつくという言葉なのでついつい使用してしまいます(笑)
家の夫は、一口英会話なるものを聞いていて、いろいろな場面で使える簡単な英語独特のセリフを覚えています!
例えば、エレベーターに乗る時外国人の女性なんかがいたら「After you」と言って「Thank you」と言われたら「My pleasure」という会話を楽しんでいます。
知らないと絶対言えない言葉ってこのように習慣の違いから来るものが多いので、イタリア語でもそういうのはたくさんあるのでしょうね???といつも思います。
ちょっとしたことでも言えると嬉しいし、相手もきもちがいいし、勉強するのって楽しいかも?と思える場面です♪
Commented by milletti_naoko at 2016-08-02 17:06
butanekoさん、思うにわたしは昔から、言葉や言語、そうして言葉を通していろんな人と意思疎通を図ることが好きなのだと思います。butanekoさんが長時間釣竿を片手にわくわくしながら釣りを楽しまれるのと同じで、外国語の学習も、日本語や日本文化が対比によって見えてきたり、それで原語で映画や本、音楽を楽しめるようになったり、その国の人と交流ができたりして、楽しい面も多くて、今では、さぼり癖がつくと「勉強しなければ」になってしまいますが、今では、英語・イタリア語については仕事道具でもありますが、外国語学習はわたしの趣味の一つになっています。自分が新しい外国語の勉強をすると、日本語やイタリア語を教えるときに、生徒さんの気持ちや難しさ、どうすれば学習を楽しめるかも分かりやすいので、そういう意味では、趣味と仕事が重なって一石二鳥、いえ、旅行でも役立って一石三鳥と言えるかもしれません。

ありがとうございます。わたしも経験者にまじって一生懸命釣りをして楽しまれるbutanekoさんが、すてきだなと思いながら、記事を拝読しています。
Commented by milletti_naoko at 2016-08-02 17:22
アリスさん、確かに日本語では「すみません」は便利な言葉で、いろんな場をうまく収めてくれますよね。「すみません」のいろんな用法をイタリアの人に使えますよと紹介したら、おもしろいかなと今思いつきました。いいヒントをありがとうございます! 同じこの「すみません」も、イタリア語では感謝ならGrazie、呼び止めるならSenta、謝るならScusiとやはり対応する言葉が、いろいろ違っておもしろいです。だんなさんの一口英会話の学習と、それをさっと応用する姿勢、すてきですね! すてきな紳士ぶりを英語を通して発揮されているような。

遠い昔のこの間違いは、日本語での慣習が影響しているという点でおもしろいなと思って、記事にしてみました。きっかけは、昨日、個人授業で試験勉強を手伝っていたら、生徒さんが10:20を「ぢゅじにじゅう」と書いたことです。イタリア語では「le dieci e venti」で、英語でもそうですが、時刻を言うのに「分」を指す言葉は使わないので、母語の影響で「分」が欠けていて、イタリア語では母音の長短が意味の弁別機能を持たず、よってイタリアの人には母音の長短の区別の聞き取りと記憶がむずかしいので、「じゅうじ」の「う」が欠けているのも、やはり母語からの転移です。最初はそのことを書こうと思ったのですが、似た記事はすでに多く書いているので、そう言えばわたしも、こんな間違いを何度も繰り返したっけと思い出しながら書いてみました。
Commented by London Caller at 2016-08-03 07:09 x
>英語ではThank youに対しては、You’re welcomeと返事を

スコットランドの大学で
ドイツから来た友だちに「Thank you」と言ったら、
「Please」を返しました!
私はよくわかりませんでした。
ある日、いい友だちのドイツ人のAさんに聞いて、ああ〜それは実はドイツ人の「習慣」なのでした。
ドイツ語のDanke (thank you) ーーー> Bitte (please)!

外国人にとって、日本語の「どうも」ときどきもわかりにくいですね。^^;

>ヘンリー8世とカトリック教会の対立については、つい最近、歴史番組で

THE TUDORSというドラマを見たことがありますか?
Commented by milletti_naoko at 2016-08-03 07:34
London Callerさん、おもしろいですね。わたしがドイツ語を習ったのは大学生時代で遠い昔ですが、確かにドイツ語では、人に「どうぞ」と言うときも、お礼の返事としても、同じBitteという言葉を使うので、ドイツの人にもそういう母語転移による、よく似た間違いがあるんですね。

日本語の「どうも」もいろんな場面で使われて、「どうもありがとうございます」なのか「どうもすみません」なのか、分かりにくい場面、確かにありそうです。

そのドラマは見たことがありませんが、わたしが見た歴史番組で、何かのドラマか映画の場面をしばしば引用していたので、ひょっとしたらそのドラマからだったかもしれません。
by milletti_naoko | 2016-08-01 23:59 | ImparareL2 | Trackback | Comments(6)