イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

同性パートナーも家族としてのイタリア滞在が可能に、移民とシビル・ユニオン法

 イタリアの新法、ddl Cirinnà(法の全文はこちら)によって、シビル・ユニオン(unione civile)のパートナーは法的に家族と認められ、異性間夫婦が有する権利の多くを、享受できるようになりました。

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Dal sito www.stranieriinitalia.it

 そのおかげで、法的手続きを経てシビル・ユニオンとなれば、非EU市民であっても、パートナーがイタリア人であれば、EU市民家族用の滞在証(Carta di soggiorno per familiare cittadino UE)、パートナーがイタリアに合法的に居住する非EU市民であれば、家族用滞在許可証(permesso di soggiorno per motivi familiari)を取得して、パートナーと共に、イタリアに暮らすことができるようになりました。

 イタリア人をシビル・パートナーとする非EU市民は、さらに、二人が共に暮らすのがイタリアであれば2年後、海外であれば3年後に、イタリア国籍(cittadinanza italiana)を申請できることになりました。

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Dal sito www.senato.it, ddl Cirinnà

 またオンライン関連記事を読むと、もしパートナーのうち一人がイタリアに居住していない場合でも、二人がすでに同性婚が可能な国で、結婚をしている場合には、イタリアに居住するパートナーが国内でシビル・ユニオンとなる手続きをすれば、海外に暮らすパートナーを家族として呼び寄せて、共に暮らすことも可能となったそうです。 

 こうして、他の欧州各国に後れを取っていたイタリアでも、ようやくゲイカップルの権利が認められるようになってきたのですが、過去に、同性カップルを家族として認めず、非EU市民のパートナーに家族用滞在許可証を発行しなかったイタリア政府は、つい最近、欧州人権裁判所(Corte europea dei diritti umani)から、家族としての権利を侵害したとして、有罪判決を下されました。

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Dal sito www.dirittiumanicampania.it

 パートナーのイタリア人男性の深刻な健康状態のため、ニュージーランド人男性も、それまで二人で暮らしていたニュージーランドから、パートナーと共にイタリアに移住し、初めは学生としての一時的な滞在許可証を得て暮らし、後に家族としての滞在許可証を求めたのですが、県庁が発行を拒否しました。二人は訴訟を起こしたのですが、イタリアの最終審では、同性のパートナーは家族と認められないとして、カップルの上告を退けたのです。結局二人は、オランダに移住し、ニュージーランド男性は、オランダで、家族としての5年間の滞在許可を得ることができました。

 欧州人権裁判所で、訴訟人側は、性的指向による差別を受け、家族としての滞在許可が認められなかったために、イタリアにカップルとして二人で共に暮らす可能性を断たれたと訴え、裁判所では、7人の判事中6人が、イタリア側による人権侵害があったと判断をして、イタリア政府に、約4万ユーロの損害賠償の支払いを命じました。

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Sexual Orientation Laws in the World – Recognition. June 2016
Dal sito ilga.org

 人権先進国に囲まれ、欧州連合の圧力もあるおかげで、イタリアでもようやく同性カップルが異性間夫婦に近い権利を手にすることができるようになりました。新法をきっかけに、差別と偏見も解消に向かっていくことを祈っています。

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- Con le unioni civili ora possibili i permessi di soggiorno & cittadinanza anche per i partner stranieri dello stesso sesso.

- La Corte Europea dei Diritti Umani condanna lo Stato Italiano, perché secondo la Corte Europea esso ha violato l'articolo 8 e l'articolo 14 della Convenzione europea dei diritti dell'uomo, negando il permesso di soggiorno al partner neozelandese.
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関連記事へのリンク / Link agli articoli correlati
- 同性カップルようやく法的承認、イタリア各地で相次ぐゲイカップル愛と喜びのシビル・ユニオン式 / Unioni civili – Viva l’amore, un altro passo verso l’uguaglianza (3/8/2016)
- 滞在許可証イタリア法外な発行料撤廃その後、EU市民家族用滞在証&ローマからパリに飛んでも入国審査
- EU市民家族用滞在証、イタリアの場合 / Carta di soggiorno per familiare di cittadino UE
- EU市民の家族とシェンゲン協定2 (22/6/2014)

参照リンク / Riferimenti web
Unioni Civili, Immigrati & Carta/Permesso di soggiorno, Cittadinanza
- Parlamento Italiano – Disegno di legge S. 14 - 17ª Legislatura (ddl Cirinnà). Testo
- Stranieriinitalia.it – Le unioni civili per gli immigrati? Anche permessi di soggiorno e cittadinanza (9/5/2016)
↑ 2020年10月現在では、リンク先が無効になっているため、リンクは削除しましたが、当時の記事の題名は残しておきます。
- Permessodisoggiorno.org – I tipi di permesso di soggiorno che si possono chiedere grazie alle unioni civili (26/6/2016)
- ADUC. Immigrazione. Diritti degli stranieri in Italia – Permesso di soggiorno extra UE: nuove unioni civili e convivenze di fatto. Cosa cambia? (7/6/2016)
- Gay.it – FAQ del Ddl Cirinnà: ecco le prime risposte alle vostre domande
Caso Taddeucci & MacCall vs. Italia; La Corte Eurpoea condanna lo Stato Italiano
- UCA. diritti umani Campania – Caso Taddeucci e MacCall contro Italia (2/7/2016)
- Gli Stranieri. News Stranieri e Immigrazione – Permesso di soggiorno di coppia omosessuale: la Corte Eurpoea condanna lo Stato Italiano (30/6/2016)
Riconoscimento dell'orientamento sessuale nel mondo
- ILGA – Sexual Orientation Laws in the World – Recognition. June 2016 (PDF)

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by London Caller at 2016-08-06 04:07 x
イタリアではなんか遅いです。
シビル・パートナーシップはイギリスではもう10年前のことですよね。

今、イングランドとウェールズ、、スコットランド。
同性結婚もう合法化されました。
でも北アイルランドはまだダメです。
やっぱりカトリック教会の影響が強いですね、北アイルランドは。
Commented by milletti_naoko at 2016-08-06 05:23
London Callerさん、本来政治的干渉があってはならないはずのイタリアで、カトリック教会や教徒による政治的干渉は非常に強く、ゲイの方たちの権利はもとより、まだまださまざまな点で、教会の圧力が強いばかりに実現されない権利や自由がいろいろあります。

ILGAの今年6月の世界における性的指向をめぐる法整備を示した地図を見て、日本やマレーシアはもとより、他のアジアやアフリカの国でも、法の整備や差別・偏見のない社会づくりに向かって進んでいくことを願うばかりです。
Commented at 2016-08-06 13:16
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by milletti_naoko at 2016-08-06 23:15
鍵コメントの方へ

少し前まで、農民の子供が学校に行ったり、女性が投票をしたりすることなど考えられなかったのが、少しずつ権利を勝ち取って、皆が平等に暮らせる社会に一歩ずつ、のんびりした歩みではありますが近づいている気がします。日本ではまだまだ皆と同じこと、枠からはみださないことが重んじられがちなので、同性愛の方に限らず、どんなに苦しんでいる人がいることでしょうか。偏見に満ちた発言がまだ多い中、一石を投ずることができればという思いを込めて書きました。
by milletti_naoko | 2016-08-05 17:30 | Sistemi & procedure | Comments(4)