イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

仏映画『優雅なハリネズミ』、春風運ぶ日本の紳士とイタリア語版・フランス語版・英語版予告編

 今夜テレビで不思議で悲しくも、楽しく美しい映画を見ました。イタリア語の題名、『Il Riccio』の意味は「ハリネズミ」です。人があまりにも苦しんだり殺されたりする映画は好きではないので、映画情報にdrammaticoとあるのを見て、最初は見るまいと思っていたのに見ることにしたのは、筋を読んで、とある日本人の登場が、主人公たちの人生に思いがけない転機をもたらすらしい上に、本や文学好きが話の展開に大きく関わるらしいと知って、興味を持ったからです。

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 最初の方は何だか饒舌、陰気で衒学的なきらいもあって、見続けるべきかどうか迷いながらも、日本人がどういう役割を果たすかが気になって、鑑賞しました。夫も、初めのうちは、これ見る価値があるかなあといぶかりながら、「数年前に原作、『L'eleganza del riccio』が、ベストセラーになったからね」と、見ていました。そうして気づいたら、日本人紳士の登場が本当は繊細なのに表面的に頑なな態度を取る女主人公、少女とマンションの管理人を務める女性の毎日にさわやかな風をもたらし、「起承」を受けて意外な「転」へと展開していく様子を、二人とも夢中になって見ていました。原作のフランス語の小説、『L'élégance du hérisson』は、日本でも数年前に『優雅なハリネズミ』という題で、翻訳が出版されています。

 イタリア語版の予告編へのリンクはこちらです。



 原作、フランス語版の予告編へのリンクは、こちらです。微妙に切り口や映画への関心の引き方が違うのが、興味深いです。



 少女の手が創り出す絵やデザインの美しさも、この映画を見る楽しみの一つで、それもこの二つの予告編からお分かりかと思います。

 一方こちらの英語版は、音声がフランス語で英語字幕がついているため、英語がお分かりの方にも楽しめるし、フランス語学習に役立てられるなと感じました。



 どの言語で見るにせよ、特に冒頭部では独白が長く、会話が分からないと筋を追うのが難しいと思いますので、中級以上の方、そして、原作の本を読んで、なんとかでも理解できる方におすすめします。

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Lago Trasimeno & Isola Polvese al tramonto, San Feliciano 3/10/2016

 映画を見終えて、デスクトップの電源を入れようと3度試みたのですが、またもや起きる気配がありませんので、映像へのリンクのみを付し、写真はスマートフォンで先週撮影したトラジメーノ湖の夕日を使っています。沈みゆく直前のいっときの輝き、それはこの映画に通じるものがあることですし。

*追記(10月7日9:43)
 昨晩から一晩電源プラグをコンセントから抜いておいて、今朝デスクトップ本体の黒箱の網状になった開口部のホコリがたまっていそうなところから、ダイソンの掃除機で、外からホコリを吸い込んだら、奇跡的に起動したので、予告映像を埋め込み、英語字幕つきフランス語音声の予告編も追加しました。

 主人公の少女が実は日本語を学校で学んでいるらしく、途中で上手に、日本人紳士と日本語で会話をする様子がほほえましかったです。管理人の女性が日本映画のビデオを持っていて、それを鑑賞する場面があったり、ラーメンやギョウザ、刺身などの日本料理が登場したりもしたので、そうとは知らなかったわたしには、うれしい驚きでした。 というわけで、8月にパリの日本料理店で食べたギョウザの写真も追加しておきます。

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Ieri sera abbiamo visto il film, "Il Riccio" alla tv.
Triste ma bello e molto carino, ci è piaciuto molto.
Nella foto "gyoza", ravioli di carne giapponesi,
perché ieri sera li mangiavano nel film.
Le conversazioni in giapponese, ramen, gyoza, sashimi,
un film di Ozu... nel film diversi elementi della cultura giapponese.
Ora vorrei leggere il romanzo, "L'élégance du hérisson"
su cui è basato il film.
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LINK
- Amazon.co.jp - 本、『優雅なハリネズミ』、ミュリエリ・バルベリ著
- Amazon.fr - Livre, "L'élégance du hérisson"
- Amazon.it - Libro, "L'Eleganza del Riccio", Muriel Barbery
- Amazon.it - Film DVD, "Il Riccio" (Lingua: Italiano, Francese / Sottotitoli: Italiano)
↑↑ DVDはイタリア語版も安い上、イタリア語で見られるほか、フランス語音声、イタリア語字幕つきで見られるので、買うならアマゾンイタリアでと思うのですが、小説はどういうわけか、現在アマゾンフランスでは8.7€なのにアマゾンイタリアでは21€となっているので、フランスから取り寄せて、まずは原作の小説を読んでみたいと考えています。Kindle版ならアマゾンイタリアでも8.49€となっていますが、わたしは本は手に持って、ページをめくりながら読むのが好きなのです。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by ayayay0003 at 2016-10-07 17:59
なおこさん、PCの調子が悪いのは、続いているようですね(^_^;)
ご無理されませんようにお願いします。

フランス映画は、面白いものが多いですね(^-^)
でも上映場所が限られていてなかなか見ることは出来ないから
レンタルで見ることが多いですね。
優雅なハリネズミですか?
レンタルショップにあったら見てみたいです(*^^*)
Commented by poirier_AAA at 2016-10-07 20:11
なおこさん、こんにちは。

「優雅なハリネズミ」、わたしは原作を読んでから映画を見ました。小説のペダンティックなことと言ったら、映画の出だしの比ではありませんでしたよ(笑)。日本語訳でどんな感じを受けるかはわかりませんが、フランス語で読むと、もう鼻に付くこと、鼻に付くこと。。。ただ、読んでいるうちにその大仰な書き方が面白くなってくることも確かですが。

映画はそのいやらしいほどの衒学的なところを取り払って、軽やかにわかりやすくなっていたと思います。映画は映画として好きで、何回か観ました。普段の生活では見ることのないブルジョワのアパート暮らしを見るのも楽しかったし、音楽や少女パロマの描く絵も良かったです。あのカクロウを演じた俳優さんはフランス語を話せない人なんだそうです。この映画のために特訓してここまで言えるようになったと、どこかで読みました。
Commented by mokochan at 2016-10-07 22:42 x
なおこさんBuonasera!
「優雅なハリネズミ」昨年観ました。確かフランス語関連のブログを読んで知りました。インターネット上で観ることができたのですが、全くわからないフランス語で観て、それから日本語訳を読み、その後何度か観ました。何がそんなに気にいったのでしょうか?日本語での小説はなんだかよくわからなかった部分が多く、それでも映画は好きだったのです。
衝撃的なラストに唖然として、ちょっと落ち込みました。
コメントを書かれている方が仰っているように、カクロウを演じた方はフランス語が話せない方で、わあーー演技の為にすごいなーーと思ったのでした。
この映画のことが記事になって、なんとなく嬉しいです。
Commented by milletti_naoko at 2016-10-08 06:48
アリスさん、秋の空もデスクトップも調子が変わりやすい今日この頃です。いつもお優しいお心遣いをありがとうございます。イタリアは隣国であるおかげで、フランス映画を見る機会が、家でも映画館でも多いのがありがたいです。

今のところ映画はまだ日本では公開されていないようです。日本文化がいろいろ紹介されていますし、いつか公開される日が来ますように。
Commented by milletti_naoko at 2016-10-08 06:59
梨の木さんは、先に原作を読まれたんですね! なるほど小説がそうだから、映画の出だしもこうなったんですね。少女ながら、言っていることが太宰治や芥川龍之介の死の前の作品のような、あるいは世相観・人生観だな、使う語彙が妙に…と思いながら見ていました。少女の視点で書かれた文章なのに、妙に語彙が難しいと言えば、内容はかなり違いますが、Harper Leeの『To kill the mockingbird』もそうでした。少女が背伸びをして大人のように語ろうとするから、そういう不自然に大仰な語彙が多い語り口になるのでしょうか。

カクロウさんを演じた俳優さん、なんとゼロからそんなに話せるようになられたんですか! 今日の昼、洗濯物を干すとき、テレビをつけたら、なんとまた『優雅なハリネズミ』が放映中で、終わりの部分だけでしたが、今回はフランス語音声で聞いてみました。フランス語での聴き取りはやっぱり難しいので、まじめに再勉強しなくては。

少女の大仰な書き方と言えば、赤毛のアンが少女の頃の小説に使っていた言葉にも、そういうところがあったような……

フランス語や英語で大仰な言葉は、たいていラテン語やギリシア語が基盤で、そうするとイタリア語に相応する語彙がある可能性が大きいので、かえって読みやすいかもしれません。また読んでみて、感想をお知らせしますね。注文する前に、まだ読みかけの本が何冊もあるのではありますが。
Commented by milletti_naoko at 2016-10-08 07:03
mokochanさんは、すでに映画をご覧になったんですね!! 物語が主に言葉、独白や会話だけを中心に進む場面が多いのですが、確かに管理人さんの変身や、少女が創り出すかわいらしくすてきな作品の数々など、目で見て楽しめる場面もありますよね。わたしも最後の場面にはびっくりしました。ただ、いつ何があるか予期できないのが人生で、その前に幸せを体験できてよかったとも感じています。カクロウさんを演じた俳優さん、すばらしいですね。映画で演じる役柄も、とてもすてきだと思います♪
by milletti_naoko | 2016-10-06 23:59 | Film, Libri & Musica | Comments(6)