イタリア写真草子 ペルージャ在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

国境も世代も超えるドラえもん

 今日から教える、新しい生徒さんの息子さんが、日本のアニメはどれも知っていて大好きだという話になり、その例として、「頭の上に何か取りつけて空を飛ぶアニメも……」という説明がありました。わたしが暮らすのはイタリアで、この生徒さんも息子さんもイタリア人です。

 さっと頭にひらめいて、「ひょっとしたら、このアニメではありませんか。」と、

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ホワイトボードにさっと描いたら、「そうそう、それです。本物そっくりですね。」と、ほめてくれました。「え」を赤い丸で囲んでいるのは、ひらがなの「う」と「え」を、初めのうち混同していたからです。

 今から約40年も前の話ですが、当時小学生だったわたしや弟が、時々親に買ってもらっていた『小学四年生』、『小学一年生』などの雑誌に、ドラえもんの漫画が連載されていて、わたしも弟も楽しみにしていたように覚えています。幼い頃、夏休みには、毎年、母方の祖母が叔父と共に暮らす兵庫県の家に、母と弟・妹といっしょに、長い間滞在したのですが、ある年弟が、確か伯父が1巻からずらりとそろえていた『ドラえもん』の漫画を見つけて大喜びし、二人で夢中で読んだ、そんな記憶があります。弟自身がドラえもんの漫画をそろえ始めたのは、中学生だった頃でしょうか。

 わたしたちはドラえもんに、長い間そんなふうに漫画を通して親しんでいたため、アニメーション化はうれしかったのですが、ドラえもんの声を初めて聞いたとき、びっくりしました。わたしが漫画を読んで想像していた声とは、まったく違う声だったからです。そういうことは、小説の映画化やドラマ化でもあって、初めてシャーロック・ホームズのドラマをNHKで見たときも、わたしが本を読んで想像していたホームズとは、容貌も雰囲気もまったく違うので、驚きました。こんなふうに驚くたびに、本を読むとき、どれだけわたしたちが、文章や表現から自分なりに、主人公の風姿や町や自然の描写を、自分の経験や知識から、自分なりに想像して作り上げているかということを思うのです。

 閑話休題。ドラえもんに人気があることは、イタリアでもしばしばアニメが放映されることから知っていましたし、ドラえもんは、教科書の『みんなの日本語』にも取り上げられています。今日の授業で、生徒さんの息子さんがドラえもんのファンと知り、わたしたちの叔父の世代もドラえもんが好きだったことを思い、ドラえもんには、世代も国境も超える魅力があるのだとつくづく思いました。ドラえもんと言うと、わたしがすぐ思い浮かべるのは、「夏休みが終わるのに、宿題に手をつけてない」と、ドラえもんに泣きつくのび太の姿です。しなければいけないことを、ついついぎりぎりまで先延ばしにしてしまう。そういうことは、国を問わず、往々にしてあることなのでしょう。そういうとき、だれか助けてくれる人がいればと願う気持ちは万国共通で、でも、そういう小手先の他人・文明の利器に頼った手段では、結局本当の解決にはならないという教えは、世界のどんな国の子供にも役に立つことでしょう。けれど、役に立つとか教えがあるとか、そんなこととは関係なく、はらはらしながら読んで楽しめる。それがドラえもんのいいところかと思います。

 アニメも日本が誇る大切な文化です。こういうさまざまな文化的側面も、これからの授業でいろいろ紹介していけたらと思っています。いまだにのび太君と同様、締め切りが近づいて慌てることがわたしも少なくないので、ドラえもんから学んだことも、きちんと生活と人生に生かしていくべく頑張ります。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by ayayay0003 at 2017-03-21 09:30
なおこさん、どらえもんがイタリアでもそんなに人気があるとは知らなかったです~(^-^)
確かに、どらえもんのアニメは、どこか教訓めいたものがあるなあ~と感じていましたよ(^^♪
宿題に追われた子供時代しかり、今は仕事の期限でもしかり、どらえもんに泣きつくのびた君にどこか安心している自分がいます!大変なのは、自分だけじゃない!という(笑)
なおこさんの絵は、とてもスラスラと描いたとは思えない程似ていていつも感心するばかりです(^^♪
Commented by milletti_naoko at 2017-03-21 22:11
アリスさん、今個人授業で教えている生徒さんも、かつて大学で教えた日本語を選んだ学生たちも、日本のアニメが大好きという人が多かったんですよ。今教えている学校も、生徒さんの年齢層が若いときは昔好きだったアニメの話で盛り上がったことがありました。理学療法士さんも北斗の拳の大ファンだそうですし。ありがとうございます。生徒さんが後で息子さんに見せるんだと、スマホで写真まで撮ってくださって、何だかうれしかったです。そうと知っていれば、もっとていねいに描いたのですが、そこまでお子さんがお好きとは、描いたときは知りませんでした。
Commented by coimbra2017 at 2017-03-21 23:45
なおこさん、こんばんは。記事を読んで昨年のイギリス旅行を思い出しました。北部へ向かう電車の中で小学生くらいの男の子と話したら日本の漫画の大ファンとのこと。漫画の題名が次から次とでてきます。(私には内容がわからなかったのですが)その男の子のお母さんから、この子の夢は日本へ行くことなんですよ!と聞きました。日本の漫画、アニメの影響は世界中に広まっていて既に日本の文化なんですよね。
私はなんだかとても嬉しかったのでした。それにしてもなおこさんのドラえもんお上手だと思います。。
Commented by mitsugu-ts at 2017-03-22 15:19
おはようございます!ドラえもん、「げんき」の第二巻にも登場しています。人気なのは良いのですが、生徒に「なぜ『ドラ』はカタカタで『えもん』はひらがななのか?」と聞かれて、答えられなかった思い出があります。笑。
Commented by milletti_naoko at 2017-03-22 23:33
coimbra2017さん、メディアが伝える日本の情報に偏見が混じりがちな中、アメリカの一般家庭が日本文化に興味を持ち、日本に好意を持ち始めた背景には、アニメや漫画などのサブカルチャーの影響と力が大きいという研究論文も、ずいぶん以前に読んだことがあります。ちょうどアメリカ映画やドラマを通じて、わたしたちがアメリカという国を知り、興味を持つのと同じ現象が、アニメや漫画を通して、異文化の中で起こっているのでしょうね。

わたしが個人授業で教える学生さんの一人も、学習のもともとの動機はアニメや漫画が好きだということだったようです。ありがとうございます♪ 日本の高校で教えていた頃から、生徒が楽しく分かりやすく学べるようにと、よく黒板に絵を描いていました。
Commented by milletti_naoko at 2017-03-22 23:36
みつぐさん、なんと『げんき』にも! いろんなところに登場していますね。それほど外国の方の間でも知られ、人気があるのでしょう。そう言えば、以前教材を探していたとき、ドラえもんを主として利用した日本語学習書もアマゾンかなにかで見つかったような記憶があります。

わたしも黒板に書きながら、「ドラ」はひらがなだったか、それともカタカナだったかと迷いました。どら焼きの「どら」かと思ったら、「ドラ猫」の「ドラ」なのでしょうか。どうしてカタカナなのでしょうね。
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by milletti_naoko | 2017-03-20 22:15 | Giappone - Italia | Comments(6)