イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

牛が草食むカトリア山、母馬探す置き去り仔馬

 先週の土曜日は、マルケとウンブリアの州境にそびえるカトリア山(Monte Catria) に登りました。カトリア山は標高1701mで、山頂はマルケ州にあります。フォンテ・アヴェッラーナ修道院の上から山頂を目指すと、見晴らしがすばらしいと、先日ペルージャに来たマルケ在住のいとこから聞いて、夫はそのトレッキング・コース、Sentiero dei Carbonaiを歩こうと考えていたのですが、標高差が登り680m、下り740mとかなりある上、地図を見ると、登り道の傾斜がかなり急です。ペルージャ及びイタリア中部に雨が降って、気温が下がったのは、この翌日の月曜日のことで、この日はまだかなり暑かったため、そんなにも急な登り道が立て続けに続く道は厳しいと、わたしが提案して、

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Panorama dalla cima del Monte Catria (1701m) 22/7/2017

 代わりに、上の写真で、夫が頂上に立つカトリア山の下方に白く見える三つの道路が交わるところにあるMadonna degli Scout (1370m)に車を置き、そこからなだらかな傾斜が多い道を登って、山頂を目指しました。夫が眺める前方、写真では左手にそびえる山は、アクート山(Monte Acuto)で、標高は1668mです。アクート山のリフト乗り場にある山小屋で、地図とパニーノを買ったのですが、サラミやプロッシュットの量も少なく、サラミの皮さえ取り除いていないのに、一つ4ユーロと値段がひどく高かったので、ふもとの町で買うべきだったと後悔しました。

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 カトリア山の頂には、この大きな十字架が建っています。山頂からは、晴れた日には、アドリア海どころか、バチカンのサン・ピエートロ大聖堂のクーポラさえ見えると主張する人もいるそうなのですが(詳しくはこちら)、この日は雲や霞のために、それほど遠くないはずの海も見えませんでした。

 けれども、青空の下に広がる山や畑、平野の眺めを楽しむことができました。山頂付近は、暴風とも言えるほどの激しい風が吹いていたため、トレッキング・コースではなく、風があまり当たらない斜面を選んで、山を下り、昼食にパニーノを食べました。

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 わたしたちが山頂から少し下って、パニーノが食べられる見晴らしのいい場所を探していたとき、右手遠くに牛と馬の群れがいたのですが、ちょうどその頃に、馬たちが移動して、わたしたちの下方にある道を通って、左手へと向かいました。

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 問題は、そのとき、視力のいい夫が気づいたのですが、一頭の仔馬が、皆が移動するのを知らずにぐっすり眠ってしまっていたのに、他の馬たちが、それに気づかなかったのか、そのまま置き去りにして、行ってしまったことです。しばらくして目覚めた仔馬が、親馬たちがどこにも見当たらず、周囲には牛しかいないので不安になって、周囲を駆け回ったり、いなないたりしたのですが、親馬たちには聞こえないようです。

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 そのうち私たちの左手に見える高みに、先ほど出発した馬たちが登っているのが見えたのですが、置き去りにされた仔馬は、まだ親馬たちを探して歩き回っています。そこで、パニーノを食べ終えた夫が、仔馬の近くまで行って、仔馬を仲間の馬たちがいる方へと移動させようとしました。けれども、夫に警戒したからか、仔馬は反対方向に行こうとします。

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 それで夫もあきらめて、わたしたちが再び山を下ろうと、リュックを背負った頃、ようやく母馬が仔馬がいないのに気づいたらしく、元の道へと引き返しつついななきました。そのうち、そのいななきが仔馬の耳にも入り、仔馬も、母馬や同様に引き返してくる他の馬たちに気づいて、そちらの方へと駆けて行きました。。

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 ようやく仔馬が母馬と再会し、続いて他の馬たちがやって来たときには、ほっとしました。ただ、この後も、夫はやはり置き去りにされた子牛たち2頭が鳴いているのを見たそうで、親たちがうっかりと、子供を忘れて自分たちだけで遠ざかってしまうことが、たまにあるようです。夫が心配したのは、仔馬一頭だけでは、狼にねらわれやすいためで、ですから、他の馬たちと合流できたのを見届けて、わたしも安心しました。

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 登り道でも、帰りの下り道でも、トレッキング・コースのこの位置から、急な斜面のはるか下方に、フォンテ・アヴェッラーナ修道院(Abbazia di Fonte Avellana)が小さく見えました。修道院までの傾斜を見て、別のコースを登ってよかったと、つくづく思いました。

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 このカトリア山を歩いている間には、放牧された牛の群れにしばしば出会いました。初夏にマッジョ山を登ったとき、気づいたら雄牛たちがわたしたちを追ってきて、すぐ後ろにいて恐い思いをしたことがあるので、わたしはできるだけ牛の群れを避けて歩こうとしたのですが、今回は雄牛がいないようで、後をついてくる牛もなく、ゆっくり山歩きを楽しむことができました。

 今年の6月以降、イタリア中部ではひどく暑い日が多いため、最近は週末の山登りには、かなり標高が高いところまで車で登れる山を選んでいました。ただ、そういう山は、スキー場がある場合が多く、アミアータ山では、頂上付近にあまりにも車が多くて、駐車場が見つからないので、山の中腹を歩きました。また、カルペンニャ山では、最初は頂上までの道のりが、歩くには長すぎる場所に行ってしまい、その後、頂上まで行けるリフトの乗り場を見つけたものの、料金がひどく高く時間が遅かったため、結局、車で周囲を回っただけで、少ししか歩けませんでした。今回は久しぶりに山を歩くことができて、うれしかったです。

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Panorama dalla cima del Monte Catria (1701m) 22/7/2017

Tanti cavalli e mucche li abbiamo visti mentre camminavamo sul monte. Un cavallino si addormentava ed è rimastoera solo, quando altri cavalli sono andati in un'altra parte; svegliato, il cavallino era agitato, cercava gli altri ma non li vedeva. Mio marito tentava di farlo andare nel posto dove stavano gli altri cavalli, ma il piccolino si spaventava e scappava. Dopo un po' la cavalla mamma si è accorta finalmente dell'assenza del suo piccolo, tornava indietro nitrendo. Il cavallino ha sentito i suoi nitriti, corre. Corre anche la cavalla mamma e finalmente di nuovo insieme con il suo piccolo. Meno male.
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Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by ayayay0003 at 2017-07-28 10:23
なおこさん、はぐれ子馬のお話、ちょっと感動しました~☆
やはり、人間の力ではどうにも出来ないんだなあ~と。
母馬が迎えに来てほっとしましたよ~(^_-)-☆
ヨ―ロッパのお山には、まだ狼が存在しているのですネ!
あまり考えたことはなかったのですが、昼間は曹禺することはないのでしょうか?

今年のイタリアの夏もかなり暑い日が続いているようで、山歩きも大変ですね~
標高の高い所は、そういう事情があるとは驚きました!
久しぶりの山歩き、ほのぼのとした楽しい雰囲気が伝わるお写真ありがとうございます♫
Commented by paradiso-norina at 2017-07-28 16:55
なおこさん、お馬の親子の絵本を読んでいるようです。

素晴らしい眺めの山なのに結構上まで車で行けて頂上までなだらかな斜面をトレッキングできるなんて羨ましい~!
今の私は急斜面は膝に負担がかかるのでなんとか緩やかな山を探しているんですがなかなか北海道にはないんですよ~

放牧された牛さんも白くてきれいですね。
置き去り仔馬の顛末をはらはらしながら見守っている気持ち分かります~
それにしても仔馬を親の方へなんとか行かそうと奮闘したご主人の姿も目に浮かびそうですよ^^
母馬がきてよかったですね。
そのままだったら帰ってからもしばらく気になって気になって仕方がないですものね。

先日うちのバードハウスが木から落ちてそのまま放置。
1週間ほどたってからヒナが3羽いるのに気付いた私たちは大慌て。
元気がないヒナにどうにかして水を与えたりご飯をすりつぶして粟をまぜたのを与えたり四苦八苦しましたがやっぱり人間の手で餌を与えるより親鳥が見つけてくれた方がいいと結論を出して、元気のないままで心配だけれど元の場所に戻してあげました。
すると次の日ちゃんとヒナがさえずり、親らしい鳥がまた元のバードハウスに来ているようです。
小さな命ですけれど強い親子愛を感じました。

仔馬を忘れた親馬は戻れる距離で気づくといいけど放置されてしまう仔馬ちゃんもいるのでしょうか?
日本ではまず見ることができない馬の移動なので(長距離なんでしょうか、、)本当に異国の物語を見ているようで興味のわく記事でした。

Commented by milletti_naoko at 2017-07-29 00:41
アリスさん、ありがとうございます。個人的に心に残ったことの一つだったので、記録しておく意味でこうして記事にしたので、共感してくださったと知って、うれしいです。ようやくカメラで撮った写真を載せられるからと、山頂などの写真を1枚だけ載せるつもりが、思い出して、仔馬のことを書き出し、写真を選んでいたら、記事が長くなってしまいました。マックブックではまだ写真の編集方法が分からず、光の加減で、実際に記憶にある風景より暗くなったり、色が違ったままになったりしてしまうこと、あるいは、仔馬や夫が見えるように写真の一部を取り出したいのに、方法が分からなずにいることが残念です。

イタリア中部では、こうして山に放牧されている動物たちや、住家の近くに飼われている家畜たちが、狼や熊の被害に遭うことが、まれにあるようです。日中でもあり、また見晴らしもよく、あちこちに放牧されていたということは、この山ではそういう危険が、少なくとも日中はないのではないかと思うのですが。アブルッツォでは、熊を見ただけで、危害を直接加えられてはいないのに、多くの羊がそのまま亡くなったという話も、6月の旅行中に聞きました。

仔馬が無事に親馬たちに出会えたのを見て、ほっとしました♪
Commented by milletti_naoko at 2017-07-29 00:57
norinaさん、車でかなり高いところまで登れる山が、イタリア中部にはいくつかあります。どこもうちからは車でかなり距離がありはするのですが、下界が日中36度などというとき、山の高みは涼しいのでありがたいです。最近では地震後久しぶりに訪ねたカステッルッチョでも長く歩きました。ただ、山を登るのではなく、標高約1400mの高原を日中歩くと、多くの道には影もなく、炎天下では高原でも34度で大変でした。他にもシビッリーニ山脈に美しい山で車で高くまで登り、そこから歩けるところが多いのに、最近は地震の被害のために、まだ訪問できないため、あちこちの別の高い山を試しに訪ねています。スキー場が頂上付近にあり、車が多いと風情には欠けますが、少し下ると山や森もあり、1500m近くまで車で登ると、空気がひんやりしてくるので、ありがたいです。北海道に、そういうとっつきやすい山がなかなかないとは驚きました。

仔馬が親馬に出会えたのを見て、ほっとしました。それにしても、親馬も親牛ものんびりしたもので、ふだん自分たちが移動する範囲だから大丈夫と、あまり注意しないからか、あまりにもうっかりと子供たちを置き去りにしがちである気がします。

norinaさんたちが世話された小鳥たち、ちゃんと親鳥が戻ってくれて、本当によかったですね。野外で生きていくには、やっぱり親に見てもらうのが一番ですもの。カトリア山の頂上付近は、なだらかな起伏があるものの、同じくらいの高さに長く伸びていて、仔馬がいるところはわたしたちの右手、親馬たちは左手に見えていましたので、親馬たちが低めのところを歩いているときには、わたしたちからも見えなかったのですが、互いの距離はそれほど離れていはいなかったかと思います。ただ、風が強いこともあって、うろたえた仔馬がその場でいなないても、他の馬たちの耳にはまったく届いていないようでした。

個人的に覚えておこうと書いた記事なので、norinaさんも興味を持って、読んだくださったと知って、わたしこそうれしいです。ありがとうございます。
Commented by ムームー at 2017-07-29 05:30 x
なおこさん
おはようございます。
素晴らしい眺めですね、十字架があるのも素敵。
仔馬さんがはぐれるってどきどきしますね。
ご主人様良くなさいますね、見届けられて
安心しますね、子猫がはぐれても知らん顔
していた親猫にはらはらしたことを
思い出しました、素敵な山並みに修道院が見えて
気持ちも新たになりますね。
いつもありがとうございます。
Commented by milletti_naoko at 2017-07-29 06:16
ムームーさん、標高が高いので、眺めがすばらしかったです。十字架が山頂にたつ山がイタリアには多い気がします。仔馬が親馬と会えたのを見て、ほっとしました。猫が子猫に知らんぷりということも、残念ながらたまにありますよね。この場合は、親馬が気づいてすぐにかなりうろたえて、すぐに駆け戻っていて、よかったのですが、最初からもっと注意をしていてほしいものです。

こちらこそ、いつもありがとうございます♪
by milletti_naoko | 2017-07-27 23:59 | Marche | Comments(6)