イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia 日本語教師・通訳・翻訳家。元高校国語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより

ヴァッザーリと言われても、イタリアで日本語

 数の表現は、日本語よりも英語やイタリア語の方が、習得がずっと楽です。

There are two students. / I bought two books. / My dad gave me two pens.
Ci sono due studenti. / Ho comprato due libri. / Mio padre mi ha dato due penne.
学生が二人います。 / わたしは本を2冊買いました。 / 父がわたしにペンを2本くれました。

 英語でもイタリア語でも、数が「2」であれば、それが学生でも本でもペンでも、だれであろうとなんであろうと、数を表すには、その前に数字の「2」を意味する数詞をつければいいだけなのですが、日本語の場合は、人であれば「ふたり」、本であれば「2さつ」、ペンであれば「2ほん」と、用いる助数詞が違ってくるからです。

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 昨日は、それまでの学習内容が習得できているかどうかを確認するために、ホワイトボードに地図を書いて、「はなのまちには何がありますか。」、「ほんやはどこにありますか。」などと質問したあと、助数詞についても理解度を確認しました。

 「いっぽん、にほん、さんぼん…」と、「本」については不規則な言い方も多いため、再度説明していたら、柔道のたしなみのある生徒さんから質問がありました。 「柔道のIpponは、この1本から来ているんですか。」という問いに答えると、さらに続いて、「じゃあ、柔道のヴァッザーリもですか。」と尋ねられて、わたしは思いきり首をかしげました。

 そもそも「ヴァ行の音そのものが、従来日本語には存在しない音だったので、それは日本語ではないのではないかと思う。」と言うと、生徒さんは、絶対日本語のはずですと言います。「IpponやYuko(有効)と共にヴァッザーリもあって……」という柔道の競技や得点の規則の説明を聞いていて、やっと何のことか分かりました。

 「技あり」のことだったのです。

 ローマ字書きの「waza ari」を、「ヴァッザーリ」と言う柔道家が北イタリアには少なくないのでしょう。「わざ」はtecnicaのことで、昔の日本語では、「あります」という代わりに「あり」と言っていたのですよと説明し、ひらがなでは「わざあり」と書くのですと言ったら、生徒さんが、「今度柔道の先生や仲間に会ったら、日本語ではこう発音するんですよ、と教えます。」と答えたので、「でも、皆がそう聞き慣れて、言い慣れているのだったら、ワザアリと日本語では正しく発音しても、練習や試合のときに、何を言いたいかが分かってもらえないかもしれませんね。」と、言いました。

 標準イタリア語では、文字Zは、母音にはさまれるときは一つしかなくても二重子音として発音されるために、「ヴァザーリ」ではなく「ヴァッザーリ」と発音されるのでしょう。

 個人授業の生徒さんたちから、クリスマスの前に授業を受けたいというメールがあり、日本語能力試験の結果が気になっています。

 日本語を教えながら、わたしも学ぶことが多く、楽しく刺激の多い毎日です。

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VAZZARI?

Un mio allievo mi ha chiesto di una parola usata nella gara di judo. ???
Poi ho capito che parlava di WAZA ARI: W va pronunciata in giapponese come W di Washington.
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Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by nonkonogoro at 2017-12-14 09:25
技あり が ヴァッザーリ (^^)/
なんだか 楽しいですね。

日本人も これまで外国の言葉を
取り込む際 ずいぶん勝手に換えてますよね~

音楽用語は ほとんどイタリア語ですが
アンダンテ クレッシェンド ダカーポ
 ダルセーニョ フェルマータ 
などは 我々の発音でも イタリアで
通じるのでしょうか?


ホワイトシャツ → ワイシャツ
その他ほとんどの カタカナ語は
その言語の母国では 通じませんよね~

ガラス・ジュース・ビール・サラダ・タイヤ。。。
Commented by ayayay0003 at 2017-12-14 10:17
今日のなおこさんの記事のお台を見て、フィレンツエのヴァサ―リの回廊のお話かと思いました(笑)
柔道の「わざあり」とは大笑いです~(^。^)
発音の違いで、ヴァッサ―リとは、日本人のなおこさんでもなかなか解らなかったのは当然です!
後でわかれば笑い話ですが、生徒さんは真剣にお話されてるわけですから・・・
日本語というのは、ほんと難しいと思いました!
Commented by milletti_naoko at 2017-12-15 20:42
nonkonogoroさん、英語の言葉も、日本語やイタリア語に外来語として取り入られると、受け入れる側の言語が持つ音韻や音節の規則に従った形で、発音が変わることがあって、おもしろいです。イタリアの日本語の授業では、生徒さんたちが「サヨナーラ」「オザーカ」(大阪のことです)のイタリア風の発音が実は実際の日本語の発音と異なるのに驚くと共に、televisionがテレビになったり、thrillerが「スリラー」となったりと、英語の音からのあまりの変化を、むしろ楽しんでいることもあります。まあ、イタリア語でもsは後ろにmやnが来ると、発音が/s/ではなく/z/になるので、イタリアの人はsmallやsmog、slipのsを/z/と発音しがちなので、聞いていて、何のことか分かるのに少し時間がかかることもあります。

音楽用語のうち、「アンダンテ」と「ダ・カーポ」はイタリアの人が聞いても分かる可能性が高いのですが、crescendoやfermataは、それぞれ語頭のcや語中のrの後に、イタリア語には存在しない母音が入る上に、日本語のラ行の子音はイタリア語のRと異なり、かつ日本語のファはイタリア語のfaとは子音が異なるために、どちらも、特にフェルマータの方は分かるまでに時間がかかる、あるいは見当がつかないのではないかと思います。日本人のイタリア語の発音に慣れていて、推測ができる人は別として……

ワイシャツの説明をしたら、皆楽しそうです。外来語って、おもしろいですね。
Commented by milletti_naoko at 2017-12-16 03:36
アリスさん、おっしゃるとおり、芸術家の名前にも何だか似ていますよね。柔道に関係があって日本語のはずと言われて、そのときは思いつかなかったのですが、後からそう思いました。

外国語の入門者の発音を評価する段階には、「その外国語の教員なら聞いて理解できる」というレベルもあり、「言い換えをして、言わんとすることを伝えることができる」というレベルもあるのですが、こんなふうに外来語として発音されるのだと、改めてびっくりしました。
by milletti_naoko | 2017-12-13 22:19 | Insegnare Giapponese | Trackback | Comments(4)