イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

日本語の形容詞実は難しい、ただいま授業の準備中

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 日本語と中国語は、言語類型的に、イタリア語から最も隔たった言語である。

 イタリア語教育研究の論文や本では、こうした記述にしばしば出くわします。そうして、こうした記述の後には、ほぼ間違いなく、「そうした言語類型、語彙や文法体系、音韻体系などの大きな違いのために、日本人と中国人の学習者にとっては、イタリア語学習が他言語の母語話者に比べて難しい。」という考察が続きます。

 これは裏を返せば、イタリア語を母語とする学習者にとっても、日本語学習が、他の言語を母語とする人に比べて、難しいということです。日本語とイタリア語は、音節構造こそ、大半の音節が「子音+母音」であるという点で似ているものの、文法にとっては、しくみが大いに違う点が多くあるからです。

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 一文に述語形容詞・述語形容動詞が二つ以上並ぶ場合に、日本語ではどんなふうに表現するかは、今日すでに同僚の新しい先生が、授業で説明されているはずです。明日の学校の授業では、わたしはそのあとを受けて、実例に触れながら、用法を説明し、練習を重ねていくつもりでいます。そのため、現在授業を準備している途中です。

 日本語とイタリア語で、しくみが甚だしく異なる文法事項の一つが、この形容詞です。

 イタリア語の形容詞は、形容する名詞(代名詞)が、男性名詞か女性名詞か、さらに単数か複数かによって、形が変わってきます。たとえば、日本では、すばらしい演奏やコンサートに対して、演奏者が男性か女性かに関わらず、またその人数に関わらず、「ブラボー!」という傾向があると思います。

 これはもともと、イタリア語のbravo(あえてカタカナ書きすると発音は「ブラーヴォ」)、「優れた、卓越した」という形容詞からきた外来語なのですが、イタリア語では、形容詞は、形容する名詞によって、形が変わりますから、イタリアでは、対象が男性1人であれば、男性単数形のBravo!、女性1人であれば、女性単数形のBrava!、女性のみで複数であれば、女性複数形のBrave! 、2人以上で中に1人でも男性がいれば男性複数形のBravi!という形を使って、賛意を表します。

 それに対して日本語の形容詞は、そもそも名詞に性がないので、名詞の性によって変わることがない上に、形容する対象が単数であろうと複数であろうと、数によって形が変わることがありません。

 一方、述語形容詞を二つ以上続けたり、述語形容詞を過去形にしたり、否定形にしたりすることは、イタリア語では簡単ですが、日本語ではひどく難しいのです。

 Questo ristorante è buono ed economico. このレストランは、おいしくて安い。/安いです。

 述語形容詞をいくつ並べても、イタリア語では、形容詞の形が変わりませんが、日本語では、一つ目の形容詞、「おいしい」を「おいしくて」に、変化させなければいけません。

 Questo ristorante era buono ed economico. このレストランは、おいしくて安かった。/安かったです。

 過去形は、イタリア語では述語動詞を過去形に変えればいいだけで、形容詞の形は現在形のときと変わりません。ところが日本語では、最後に来る形容詞だけが、「安い」から「安かった」へと変化します。

 Questo ristorante non è buono. このレストランはおいしくない。/おいしくありません。
Questo ristorante non era buono. このレストランはおいしくなかった。/おいしくありませんでした。

 また、イタリア語では、否定文を作るときには、動詞が現在形であろうと過去形であろうと、動詞の前に否定を表す副詞のnonをつければいいだけで、形容詞の形はまったく変化しません。一方、日本語の場合は、「おいしい」が、否定文になると、過去形か否かによって、「おいしくなかった/おいしくありませんでした」、「おいしくない/おいしくありません」と、「おいしい」の形が大きな変化を遂げます。

 形容動詞は、外国語として日本語を教える際には、ナ形容詞として扱うので、日本語でも形容詞と呼ぶイ形容詞との見分け方や活用の違いを学習するのも大変です。

 どうすれば、この難関を、難しすぎると感じることなく、切り抜けてもらえるだろうと考えながら、明日の授業を準備している最中です。『まるごと』の練習問題は、表面的にさらりと流してしまうきらいがあるため、Hoepliの教科書や『みんなの日本語』の文法説明や練習問題をいろいろ活用するつもりなのですが、文や文章、会話の形で提示されるそういう問題は著作権に関わりますので、わたしが作った簡単な活用練習表の一部だけ、記事に載せておきます。変化させなさいという問題形式は、Hoepliから借りましたが、問題に採用した形容詞そのものは、Hoepliのものとは大幅に異なり、採用している教科書の学習中の課に登場する形容詞の中から選んでいます。

*追記
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 さらに授業の準備を続けていたら、以前ペルージャ外国人大学で日本語・日本文学の授業を担当していたときに作ったプリントがでてきました。必修科目の中に言語学の授業の多い課程だったので、日本語の形容詞が、イタリア語の形容詞とどんなふうに異なるかを、まず学生たち自身に考えさせようと思って、変化のしくみが比較しやすいように、作った表です。せっかくですから、その一部をここに載せておきます。

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Dicono che il giapponese e il cinese sono le due lingue tipologicamente più distanti dalla lingua italiana. Attenzione, tra le due lingue orientali non esiste nessuna parentela e il giapponese e il cinese hanno i sistemi grammaticali, fonetici e lessicali totalmente diversi,
anche se nel V secolo il Giappone che all'epoca aveva solo la lingua parlata adottò le lettere cinesi per scrivere la lingua giapponese e poi circa cinque secoli dopo creò altri due sistemi alfabetici; gli alfabeti hiragana nacquero dalle forme corsive dei caratteri cinesi, mentre ogni alfabeto di katakana deriva da una parte di un carattere cinese. Ad esempio, katakana リderiva dal carattere cinese, 利.
Poiché il giapponese è tipologicamente molto distante dall'italiano, la grammatica dell'italiano è particolarmente difficile per gli apprendenti giapponesi, ma anche i discenti italiani incontrano molte difficoltà nelll'apprendimento del giapponese.
Per esempio, l'aggettivo dell'italiano si trasforma a seconda del numero e del genere del nome che esso qualifica, mentre in giapponese non esistono le categorie grammaticali come numero e genere. Dunque, è più facile apprendere gli aggettivi giapponesi? NO.
Invece, in lingua giapponese gli aggettivi si trasformano a seconda della loro funzione grammaticale e/o dalla loro posizione nella frase, mentre in italiano gli aggettivi non si trasformano per tali motivi.

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Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by nonkonogoro at 2018-01-10 09:06
定型の文章では
知らず知らずのうちに覚えてしまっているのがありますよね。

アモーレ アモーレ アモーレ ミオ
フランス語では
ケセラセラ~
ジュテーム
映画や歌の歌詞やタイトルだと覚えやすいですね。
でも こんなやり方ばっかりではダメで
やはり基礎の文法は習得しないと
先に進めないのでしょうね。

私も今日は英会話レッスンです。
ちっとも上達しないから もうやめようかな~と
思い続けていますが。。。 どうなりますことやら。

Commented by milletti_naoko at 2018-01-11 00:59
nonさん、まずはこういう愛の歌から好奇心を駆り立てられ、サビの言葉だけでも覚えるということも、外国語学習の原動力としても大切だと思います。ああ、わたしもフランス語の好きな歌があるのですが、その歌からまた勉強し直そうかと思う今日この頃です。授業の準備で寝るのが午前2時過ぎになる状況では、時間を取るのがまず難しいのではありますが。それは歯医者に時間を取られたからでもありますし。4時の予約で帰宅したら6時でした。

英会話、通うこと、お金を払って他の学習仲間と交流することも、学習動機を維持するいいきっかけではあるかと思います。会話が多い、家族中心の2か国語音声で放映する英語のテレビなども、いい教材になるかと思いますよ。
by milletti_naoko | 2018-01-09 23:58 | Insegnare Giapponese | Trackback | Comments(2)