イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

入ってもいいですか、イタリアで日本語教育

 昨日の授業では、「…てもいいですか。」と、許可を求める表現を学習しました。教科書『まるごと』に、「はい、どうぞ。…てください。」と答える会話もあり、生徒さんが、「あける・しめる・つける・けす」などの語句を覚えるのに苦労していました。

 また、Hが表記されていても発音されないイタリア語を母語とするイタリア人学習者には、ただでさえハ行で始まる言葉が聞き取りにくく、記憶もしづらいというのに、『まるごと 初級1 A2』のとある会話文では、「この会社でどのぐらいはたらいていますか。」という問いに対して、「10年間はたらいています。」と答える代わりに、「会社に入って、10年になります。」という、かなりひねた答え方をしています。

 おととい、わたしが正午から授業を交代したとき、上の会話を新しい同僚から学んだ生徒さんは、この会話のややねじれた応答のためもあって、「はたらいています」と「はいります」の意味やテ形・マス形を、すっかり混同してしまっていました。

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 そのため、ホワイトボードに、記憶に苦労している動詞を、よくいっしょに使われる目的語や、その絵を添えて記し、生徒自身に、辞書形(終止形)やテ形を考えて答えさせてから、わたしが記し、まずはそうした言葉を使って、いろいろな表現を作文してもらいました。

 それから、教室の外に出てもらって、「ドアを開けてもいいですか。」、「入ってもいいですか。」、「電気をつけてもいいですか。」などと、教科書や宿題にしていた学習プリントに出てきた動詞を使って、許可を尋ねる表現を練習してもらい、わたしの方も、「どうぞ入ってください。」などと、答えて、実際に体を動かして、動作をしながらの、実践練習をしました。

 休み時間になって、外に出ようとする生徒さんに、「(外に出るために)窓を開けてもいいですか。」と、日本語で言ってから出るように指示すると、しばらく答えるまでに時間がかかったので、すでに日当たりのいいテラスに出ていた、ロシア語やポーランド語の生徒さんたちが、興味深げに、その窓のすぐ向こうで、こちらを見つめています。

 大変ではあるのですが、単に言葉を練習するだけではなく、実際に動作と共に使い、またその言葉を発することで結果が得られることを通して、しっかり学んでもらおうと、休み時間が終わって、生徒がテラスから窓を開けて教室に入ろうとしたときにも、やはり、入っていいかどうか日本語で許可を求めるように言いました。「中に入ってもいいですか。」という言葉を、午後の明るい暖かい太陽の下ですっかりくつろいだあとにひねり出すのは、「入ります」と「働きます」の混同がある上に、「入って」というテ形を導くのが難しいので、大変そうです。それでも、たぶん教室に入る前に、言わなければいけないと予想していたのでしょう、ロシア語やポーランド語の生徒さんが、がんばれと励ますように、ほほえみながら、傍らで、何とか日本語で言うことができて、入れるまで、温かく見守っていました。

 そんなふうに、「入ってもいいですか。」、「開けてもいいですか。」を、さまざまな形で練習したあとだっただけに、昨日の記事に書いた、おもむろに窓を開けようとしたミミを、かわいらしいと思うと同時に、ミミなりに全身で、「入ってもいいですか。」、「開けてもいいですか。」と表現しているのだろうと、ほほえましく思ったのでありました。

 生徒さんも大変ですが、わたしも大変で、今日も授業が終わって帰宅してから、すぐに明日の授業の準備を始めたのですが、テレビで『ドン・マッテーオ11』を見ていたら、授業の準備が終わったのが午前1時過ぎになりました。と言うわけで、今、イタリア時間ではもう真夜中を過ぎているのですが、書き始めたのは昨日ということで、世界のどこかのまだ1月25日が来ていない国の日付と時刻で投稿いたします。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by ayayay0003 at 2018-01-26 10:27
なおこさん、「は行」のお勉強お疲れ様でした。
生徒さんにとって大変なお勉強は、教える側の先生も大変なのですね~
実際に行動を伴いながらの会話は、身体で覚えるようで微笑ましく感じましたよ~
ミミちゃんも、そういえば、入る時の表情が「入ってもいいですか(・・?」という表情で可愛いかったですね♡
Commented by milletti_naoko at 2018-01-26 20:53
アリスさん、ありがとうございます。今朝は、「入っています」はしっかり覚えていたのですが、「入っていいですか」と許可を求めるつもりで、「入ってください」と言っていたので、まだまだ訓練が必要なようです。でも、少しずつ少しずつ言葉や表現が身についてきていて、頼もしいです。

勉強が単なる机上の勉強ではなく、実際に用を足すものになると、身につくのも早いからと、わたし自身も、新しい外国語を勉強して数字に行き当たると、少なくとも30までは、歩きながら一歩ずつ1から30まで数えてみたり、階段を上るときにも一歩一歩その外国語で数を数えながら上ったりしるんですよ。

ミミも猫なりの表情と動作で、そう表現していたようで、かわいらしかったです♪
Commented by milletti_naoko at 2018-01-26 20:58
nonさん、生徒さんが聞いて理解できて、また習得を助けるようにということになると、「はたらいていますか。」という質問に対して、「はたらいています。」という答えの方が、むしろ2度耳にすることで、聞き取りもしやすく、理解や記憶もしやすくなるんです。「10年です」でもいいのですが、動詞なのに「入り・です」などど、ごくまれにですが、動詞に誤って「です」をつけてしまうこともあるので、こういう複雑な構文のときは、むしろ繰り返した方が学習を助けやすいかと、わたしは考えています。でも、「どこにありますか。」、「駅の前です。」というふうに、「です」で動詞句を受ける表現も、ちゃんと出てくるんですよ。「です」を言わずに答えるとどうなるかをしっかり押さえた上で、状況に応じて「です」でさっと応えられるように、ゆくゆくなってもらえたらと思っています。
Commented by nonkonogoro at 2018-01-26 22:45
そうなんですか。
繰り返すことに深い意味があるのですね。
不躾にも 教材を批判などしてしまって
申し訳ありません。(・_・ゞ-☆
できましたら 私の先のコメントを削除して頂けると
うれしいのですが。

Commented by ムームー at 2018-01-28 06:55 x
なおこさん
おはようございます
こちらあたり一面雪景色ですの
なおこさんの優しい字にほっこりしています
体を使っての教えはよくわかりますね
夕陽の美しい湖に見とれました
そして、可愛いにゃんちゃんも♪
Commented by milletti_naoko at 2018-01-28 23:30
ムームーさん、こんにちは。京都にも、そんなに雪が降ったんですね。きれいでしょうが、大変でもあるかと思います。温かいお言葉をありがとうございます。背が低いので、高いところは椅子の上に上がって、上からホワイトボード全体が使えるように気をつけています。

夕焼けや湖、動物をムームーさんも京都の空の下で愛でられているのだなと思うと、うれしいです♪
by milletti_naoko | 2018-01-25 23:56 | Insegnare Giapponese | Comments(6)