イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

映画 『A casa tutti bene』、家族の愛憎と美しい島

 今日は映画館で、映画、『A casa tutti bene』を見ました。金婚式を迎える夫婦が、子供たちやその家族、親戚を招き、ナポリ湾に浮かぶ美しい島、イスキア島で祝います。皆が笑顔で、老夫婦を祝福するのですが、その日から数日海が荒れ、日帰りで島からフェリーで戻るはずだった皆がイスキアに残ると、装っていた笑顔や幸せな家庭像の裏に潜む愛憎や確執が、明るみになっていきます。




 ですから、「うちでは皆が元気だ、心身ともに健康だ、調子がよい」という題名は、最初のうち、皆が金婚式のために島を訪ね、一同で祝うその家族の表面的な笑顔や、演ずる幸せな家族像を言うのであり、嵐で皆が島での滞在を余儀なくされて初めて、露呈されていく家族の奥底に潜むさまざまな問題や愛憎を思えば、題名は真実からかけ離れたものです。けれども、その怒涛の数日のあと、悲しい決別があると同時に、恋の始まりや愛の深まりもあり、見てよかったと思いました。

 同じガブリエーレ・ムッチーニ監督の『L'ultimo bacio』やその続編を見たのは、もうかなり前のことでうろ覚えなのですが、やはりこういう男女のすれ違いや愛憎が描かれていたように覚えていますし、一見幸せそうに、円満に見える人間関係の奥に潜む問題が表面化するという点では、やはり近年上映されたイタリア映画、『Perfetti sconosciuti』やフランス映画、『Cena tra amici』(フランス語原題は『Le prénom』に通じるものがあるように思います。

映画 『A casa tutti bene』、家族の愛憎と美しい島_f0234936_6485961.jpg
Isola d'Elba 5/2010

 最近は、せっかく映画館に行くのであれば、明るい気分になれるものが見たいと思うようになったのですが、夫に誘われたあと、予告編を見て、イスキア島の青い海や緑と町並み、そして、壁を覆う花や陶器のタイルが張りつめられた床、窓から見える海の眺めが美しい家の映像に魅かれ、いっしょに見に行くことにしました。映画の随所に見られる島の風景が、とても美しかったのも印象に残っています。

 イスキア島には、わたしも夫と、2007年2月に数日滞在したことがあるのですが、寒いさかりであった上に、ちょうどその頃はカメラを持っていなかったため、写真がありません。そこで、今日映画を見て思い出した、トスカーナのエルバ島を2010年5月に訪ねたときの写真を、この記事に添えておきます。

映画 『A casa tutti bene』、家族の愛憎と美しい島_f0234936_656492.jpg

 島に住む友人から、エルバを訪ねるなら5月が一番美しいと聞いて、その年は5月に島に行きました。色とりどりの野の花が島を彩り、島全体が花開いたようで、緑の山を登れば、青い海も視界に入り、緑と花と山歩きを存分に楽しむことができました。

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Foto: Isola d'Elba, mare & fiori di cisto e lavanda selvatica 5/2010
Ieri abbiamo visto il film, "A casa tutti bene"
e i bellissimi paesaggi di Ischia mi ha ricordato l'Isola d'Elba a maggio. Sembrava fiorita l'intera isola.
Nel film il mare tempestoso impedisce ai familiari invitati la partenza dall'Isola d'Ischia il loro soggiorno diventa molto più lungo del previsto. La felicità recitata si sgretola a mano mano e vengono a galla i problemi celati sotto l'apparente felicità. La bellezza dell'isola, quindi, è prima in sintonia ma dopo in contrasto con l'atmosfera del film e lo salva quando essa diventa pesante e drammatica.
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- 春のエルバ島を訪ねて / Isola d'Elba in primavera (28/5/2010)


Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by nonkonogoro at 2018-02-24 08:22
『A casa tutti bene』
この映画のタイトルのイタリア語
どれもわかったので うれしいです~(^^)/

tutti は 楽譜の表示語で 楽器のソロの後で
皆一緒に演奏に加わるときに書かれています。

ミステリー小説だと
孤島で皆が集まると
必ず起きるのが 殺人事件ですが(笑)
この映画では 家族間のトラブルなのですね。

確かに 大家族が
一緒に暮らすと それも困難な状況の中だと
色々な問題が起きると思います。
そういう意味で 奥の深い映画なのでしょうね。



Commented by paradiso-norina at 2018-02-24 12:19
この映画面白そうですね。島の風景も素晴らしそうで札幌にきたら絶対見に行こうと思います。
最近は映画も暗かったり、重いテーマのものとか、まして戦争や殺人など人と人が殺めあうものは見るのを避ける傾向にあります。
軽くても明るくハッピーになれるのがいいですね。

イタリアの周辺の島はサルデニア島、シチリア島はじめ行きたい所がたくさん!!
や、イタリアならどこでも今は行きたいです。

いつも素敵な映画の紹介ありがとうございまーす(°▽°)!
Commented by milletti_naoko at 2018-02-24 17:35
nonさん、なるほどtuttiも楽譜に出てくるんですね! ミステリー小説をよく読まれるんですね。孤島で皆が集まると殺人事件というパターンがあるとは、驚きました。

そう言えば、記事で紹介している他のイタリア映画とフランス映画も、それぞれ舞台が固定されていて、後者に至っては、終始同じ家の中で同じメンバーが話をしたり、もめたりしています。『A casa tutti bene』も、そういう意味では、島という場所に皆がいっしょに長居せざるを得なくなったという状況が、作品展開の鍵になっています。
Commented by milletti_naoko at 2018-02-24 17:39
のりーなさん、明るく幸せな場面で始まり、重苦しい場面も数多くあるのですが、風景や家、花の美しさと、垣間見える希望に救われました。

わたしたちはイスキアで主な観光地をめぐったのですが、レモンの木や陶器が美しい、温泉のある島と覚えています。喜んでくださったと知って、わたしこそうれしいです。ありがとうございます。
by milletti_naoko | 2018-02-23 23:04 | Film, Libri & Musica | Comments(4)