なおこのイタリア写真草子 Fotoblog da Perugia ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

夫は友といわくつきの山を歩き一泊、わたしは家でお留守番

 今夜夫は、友人たちとラーマの森(Foresta della Lama)に向かって、アッペンニーニ山脈を、トスカーナからエミリア・ロマーニャへと歩き、空きがあれば、その山小屋で一泊し、すでに宿泊客でいっぱいであれば、どこか別に宿を見つけて、一晩泊まり、朝5時半頃に登る朝日を友人たちといっしょに迎えたあと、明日午前中に、ペルージャのうちに戻る予定です。夫は、今朝10時頃にうちを出発しました。

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Sentiero CAI 227 dal Passo Fangacci verso la Lama 2/4/2018

 わたしも何度か訪ねたことのある国立自然公園の美しい森なのですが、この冬は、積雪も多く、気温が氷点下に下がる日が数日続いたあとに、急に気温が上がったため、今年4月2日、復活祭翌日のイタリア国民の休日だった日に歩いてみると、この写真に見えるように、大小いくつもの木が倒れてしまっていました。そのため、この日は、何度も倒れた木々の幹の上によじ登って、トレッキングコースを進んだり、倒木を迂回して歩いたりしなければいけませんでした。

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 標高約千メートルの山道には、まだ雪が残り、右手が急斜面になっているため、足が滑らないようにと、夫たちは雪の上を避けて、溶けた雪にぬかるむ泥の上を歩いていましたが、高所恐怖症のわたしは、雪の上を歩きました。

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 雪解け水がほとばしり流れる小川や滝が、ところどころにあり、渡るのは大変でしたが、音が耳に心地よく、透きとおった水が、木々や苔むす岩の間を勢いよく流れる様子が、とてもきれいです。

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 この滝も、散る水しぶきも、そのしずくが日の光にきらめく様子も美しく、自然が創り上げたみごとな噴水のようでした。

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 ところが、そうして雪や泥に足を取られ、また、木々をよじ登ったり、迂回したりしながら、苦労して、向こう岸に渡るための唯一の木の橋にたどり着いてみると、橋は崩れ落ち、その下を、激しい勢いで、川が流れています。

 それでも何とか、橋は人の重みに耐え得るようで、二人と一匹が、この橋を渡って、こちらにやって来るのを、わたしたちは目撃しました。ただ、ご覧のように、橋を問題なく渡れたとしても、向こう岸の斜面は、急である上に雪が積もり、トレッキングコースを倒れた木が遮断しています。

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 夫たちは、橋以外に川を渡れるところはないかと検討していましたが、何とか渡れても、向こう岸でかなり急なぬかるみの斜面を登らなければいけません。

 友人はできれば向こう岸に渡ってラーマの森まで行きたいけれども、自分一人では行かないと言い、わたしは、自分は橋を渡るつもりはないけれども、二人が行きたいのであれば、先に山を下って、町で皆の帰りを待つと言いました。結局夫の決断で、この日は全員が、ここで出発地点に引き返すことになりました。そうして、来た道を帰るのだから、あとは多少歩きにくくとも大丈夫というとき、事故が起こったのです。

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 友人は、時には他の友人たちともいっしょに、泊まりこみでの山でのサバイバル講習に、何度か参加していました。あまり物を携帯せずに、自分たちで食べ物を山で調達したり、石と山で見つけた枯れ木などから火を起こしたりと、いろいろなことを学んだようなのですが、その講習で、この木に育っているようなキノコは、起こした火を長持ちさせる貴重なキノコだと学んだそうなのです。

 この日は思いがけず早めに山歩きを切り上げて引き返したこともあり、時間もあったからでしょう、友人は一番大きなキノコにねらいを定めて、左手で木の幹を押さえ、右手に持ったスイス・アーミー・ナイフで、このキノコを木から外そうと試みました。ところが、大きいキノコは、しっかり木に密着していて、なかなか取れる気配がありません。いくつもの木が倒れた崖の上に立つ木に、友人が全身をもたせかけるようにして、キノコを取ろうとやっきになっていたので、わたしは心配して、もっと小さいキノコなら楽に取れるはずだと言うのですが、聞く耳を持ちません。なかなか幹から離れないキノコに、友人が入れる力はますます強くなり、右手を振り上げる高さがますます高くなり、キノコが固いために、気づいたときには、ナイフの刃が内側に向いてしまい、そのまま振り下ろされたナイフで、友人は、自分の左手の親指つけ根にある腱を、切ってしまいました。血はそれほど出なかったのですが、痛みをまったく感じないから、きっと腱を切ってしまったのだと思うと、その瞬間に、驚くほど冷静な顔で、友人は言い、皆が持ち合わせていた物を使って、応急処置をし、急ぎ足で山を下りました。その後、結局は友人が予想していたとおり、腱が切れていたことが判明し、救急病院で手術を受けて、縫合することになりました。友人は今も、その指を使うのに苦労しています。

 この日わたしたちが目指していたラーマの森にあり、今晩夫たちが宿泊しようとしている山小屋を、昨年の秋だったか、夫がこの友人も含む3人で訪ねたとき、たまたま小屋が満員で泊まることができず、3人は別の屋根つきの家畜小屋らしき場所を見つけて、糞などを掃除し、そこに寝袋を広げて宿泊しました。その後、友人二人は何ともなかったらしいのですが、夫一人は何十箇所もノミに刺されてしまい、1、2週間は、脚を中心にひどくかゆく、つらい思いをしたようです。

 今晩もし宿が見つからなかったときのために、テントも持って来ればいいと、友人は言ったようですが、自分のテントは7.5キロもあって、歩くことを楽しめなくなるから持って行かないと、夫は電話で、そう答えていました。

 わたしは、まだ左肩の凍結肩が治りきっていないため、固い床の上に薄い寝袋マットを敷いただけでは、肩が痛んで眠ることができません。2週間前にこの山を歩いた友人によると、まだ橋は壊れたままで、木々も倒れたまま放置されているそうで、そういう状況では、木々をよじ登り、橋を渡るために、両手を使わなければいけないのですが、それでは、両手で体を支えるうちに、左手の指のやけどの水ぶくれが破れてしまう恐れがあります。それに、わたしが参考にした二つの天気予報のうち、一つは、ちょうど今日夫たちが歩く森に、雷を伴う激しい雨が降るという予報を出していました。いっしょに山歩きや夜明けの山の眺めを楽しみたい気持ちもありますが、そういう事情もあり、また、うちの夫は、気分や体調を天気に左右されやすく、最近はミジャーナの改築などに際して、問題もいろいろあるため、ストレスが多く、むやみに機嫌が悪いことがあるため、友人たちと楽しくたくさん歩いて、ストレスを解消して帰って来てくれればという思いもあり、今日は、夫をうちからは一人で、けれども山では3人の友といっしょの山歩きに、送り出しました。

 雨に降られることなく、無事に山小屋に宿が見つかり、明日の朝、元気で戻って来てくれますように。

*追記(6月11日)
 翌日、夫は昼食前に無事ペルージャの我が家に戻りました。4月には倒木や壊れた橋に困った同じトレッキングコースを歩くと、森の中にはまだ倒れた木があるものの、コース上の倒木はすべて取り除かれていて、また、川を安全に渡れるように、橋も直してあったそうです。幸い天気には恵まれて雨は降らず、山小屋には他にだれもいなかったのですが、屋内でサルシッチャを焼くなどして、夕食を食べたあとは、石の床より地面の方が柔らかいからか、それとも星空の下、大自然の中で眠りたいからか、地面に大きなビニールシートを広げ、皆がその上に、ヨガマットや登山マットを敷き、寝袋で眠ったそうです。外で眠るとは思っておらず、夏用の寝袋を持って行った夫には、野外は寒かったので、ジャケットなどを着たまま眠ったそうです。それでもまだ寒さを感じ、同行の3人が皆いびきをかいたためもあって、あまり眠れなかった上、翌朝は一人で急ぎ足で山を下りて疲れたと、夫は言います。それでも、登山を楽しんでくれたようで、ほっとしています。話を聞いて、わたしはやっぱり行かなくてよかったと、思いました。眠っている間、鹿がすぐ近くに来たりもしたそうです。狼は人間を恐れて避けるとは聞くものの、最近ではアッペンニーニ山脈やアッシジのあるスバージオ山、テッツィオ山でさえ狼が見かけられるようになっているので、皆が無事でほっとしています。

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Trekking tra neve, torrenti e alberi

sul sentiero verso la Lama 2/4/2018
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Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by ayayay0003 at 2018-06-10 15:10
なおこさん、4月の山歩きの写真を拝見して、凄い場所を通るのだと驚きました!
山は、確かに自然がいっぱいなので倒木や残雪とかなりな困難が待ち受けているものなのですね!
この時は、無理されずに引き返されたのは正解でしたね!
でもナイフでの事故は、悲しい出来ごとでした!
ご主人様の山歩き、今回は無事楽しく行くことができますように・・・(^-^)
お仕事や改築のストレスを解消出来ると良いですね♪
日本は、もう台風5号が小笠原の方へ向けて進行中でこの週末は梅雨とも重なり全国的に雨デス(@_@;)
Commented by milletti_naoko at 2018-06-10 16:25
アリスさん、自然国立公園は、手入れが行き届いていて、倒れた木などは、
きちんと邪魔にならない場所に移動してあったり、取り除いてあったりする
場合も多いのですが、このときは道路に雪もあり、取り除く作業も難しかったため、
仕方ないところもあるかと思います。ただ、2週間前にも倒木はそのままと
友人が言うので、登山者の安全のためにも、きちんと整備してほしいものです。
4月初めには、雪や泥がなく歩きやすい、花いっぱいの山もあったのです。

ナイフの事故はあまりにも突然で、わたしたちも防げなかったのがつらかったのですが、
無事治ってきているようで、ほっとしています。山歩きを楽しんで無事帰ってくれますように! 
6月に台風が来て、梅雨と重なるなんて! せっかくの週末、残念ですね。
by milletti_naoko | 2018-06-09 17:04 | Viaggi | Trackback | Comments(2)