2018年 07月 18日
12歳誕生祝いは日本語授業、入門講座は母君の依頼
と、学校でばったり出会った同僚が、わたしに言ったのは、約半年前のことでした。そのときは、「学校の勉強もあるし、日本語の前に、まずはドイツ語をきちんと勉強してからじゃないとだめよと、息子に言ってあるのよ。」と、ドイツ語を教えるドイツ人の同僚は言っていました。お母さんがドイツ人でドイツ語の先生でも、お父さんがイタリア人で、家族がイタリアに暮らし、家庭での会話がイタリア語なので、お母さんである同僚が、ドイツ国籍も持つ息子に、まずはドイツ語をしっかり勉強してもらいたいと思うのはもっともだと、そのときわたしも思いました。念のためにと、個人授業の授業料を聞かれたので返事をし、独学で勉強するなら、こういういい教科書があるという話もしておきました。
ドイツはヨーロッパの国であり、息子さんにはイタリア国籍もあるので、あまり心配はないと思いますが、わたしがペルージャ外国人大学で専攻した、外国人へのイタリア語・イタリア文化教育課程には、異文化間教育(pedagogia interculturale)の授業があり、母や父の言語・文化が、暮らしている国や地域の言語・文化と一致しない場合には、アイデンティティの葛藤や危機が起こる可能性があり、祖国の言語や文化を学ぶことが、アイデンティティを確立し、住んでいる国で自信を持って生きていく助けになると学んだからです。
閑話休題。そういう話を聞いたことを、すっかり忘れていた先週月曜日に、急にそのドイツ語を教える同僚から連絡があり、「息子の誕生日に、日本語の授業を贈りたいの。明日が誕生日当日なので、もし1時間、日本語の授業をしてもらえるようなら、本当に助かるんだけど。」とのことです。先週月曜日は、週末の旅行から帰って、西日本の豪雨・洪水の被害を知った日曜の晩の翌日です。月曜の朝は、かつて教えた学校の生徒たちが暮らしていた地域の被害の大きさから、被災地や被害の状況が心にかかり、イタリアのニュースでは状況がさっぱりつかめないので、インターネットで日本のニュースを追っていました。片をつけなければいけない仕事はあったのですが、とても集中して、その仕事に取り組めるような心境ではありませんでした。同僚からの連絡を受けて、ずっと日本語を勉強したいと言っていた息子さんの望みにも、その息子さんに日本語の授業を贈りたいという同僚の希望にも、ぜひ応えたいと思うと同時に、明日という急な締め切りがあり、これまでわたしが外国語としての日本語を教えたことがない、12歳の中学生が対象で、誕生日祝いであるということもあって、あれこれ授業を準備していたら、それに没頭して、日本の被災地のことをただただ気に病んで1日を終えずに済むのもありがたいと思い、喜んで引き受けました。そうして、少年は日本のどういうところに興味があるのかを聞きました。
先週火曜日は、入念に準備したかいがあって、息子さんにも、同伴して授業を参観した同僚にも、喜んでもらえてうれしかったです。息子さんが好きだというアニメを、あらかじめ教えてもらったので、日本語には、ひらがな・カタカナ・漢字という三つの文字体系があり、縦書きの場合もあることを、少年が好きだというアニメの原作であるライトノベルの冒頭のページを例に、説明したりもしました。
先週は、主なあいさつを一通り勉強し、ひらがなの「あいうえお」の5文字と、カタカナの自分の名前が、読めて書けるように練習していました。昨日、2度目の授業では、最初に先週の学習内容が定着しているかどうかを、確認しました。さて、大学や学校、社会人向けの講座では、最初、あるいは二つ目の授業の際に、「はじめまして。わたしはリータです。」と始まる、初めて出会う場面の会話を、教えることがよくあります。準備の段階で、この少年の授業でも、すぐにそうしようかと思ったのですが、いきなりすべての会話を一通り学んでから、「N1はN2です。」という文型を学ぶことにすると、前回の復習も含めて1時間の授業では時間が足りず、また12歳の少年には、1時間に学ぶことが多すぎて、消化不良になりそうです。1時間の授業で、毎回五つは仮名も教えたいので、そのための時間も必要です。
そこで、考えた末に、初めての出会いの会話では、「はじめまして」、「どうぞよろしく」という決まり文句は別として、結局、大切なのは、「わたしはリータです。」、「わたしはイタリア人です。」など、「わたしは…です。」と、自分自身について、名前や国籍・職業などの名詞を使って言えることが、まず大切で、それが核となるのだという結論に至りました。また、これまで大学や学校、社会人向け講座や個人授業で使ってきた教科書は、大学生や社会人が対象だったこともあり、すべて、「わたしは…です。」という自己紹介をしているので、もっぱら教科書の会話例や例文を使って、教えてきたのですが、12歳の男子中学生が、初めて出会う人にする自己紹介では、「わたし」ではおかしく、「ぼく」を使うべきでしょう。けれども、よく使われ、将来的にも一番よく耳にするはずの「わたし」も、もちろん教える必要があり、また、12歳の少年に、「一人称単数代名詞が一つしかないイタリア語や英語、ドイツ語と違って、日本語には、さまざまな一人称単数代名詞が数多く存在して、使う人の性別や年齢、話す場所や話し相手などによって、違ってきます。たとえば、…」などと、「わたし」と「ぼく」をどう使い分けるかを、小難しい言葉で説明するわけにもいけません。
そこで、さっと分かりやすく、覚えやすいように、こんな表を作ってみました。
名前として「アリー」を使おうと思った理由は二つあります。まずは、先週カタカナで書く練習をした少年の名前の中に、「リー」があり、また、外国に関するものや外国の地名、人の名前にはカタカナを用いる例として、イタリアはItaliaのことで、発音はこうなのだけれどもと説明してあったからです。その際に、では、この四つの文字はそれぞれどう発音すると思うと問いかけて、読みを確認していたので、「イ・タ・リ・ア」の4文字と少年の名前に使われるカタカナだけを用いて書く名前にしようと考えていたからです。ちなみに、わたしが自分で作って、十数年の間、授業で使っている「はじめまして」で始まる会話には、「リータさん」と「あいさん」が登場するのですが、それも、ひらがなの「あいうえお」とカタカナで表記するイタリアという国名は、最初の授業で仮名を紹介する段階で、教えてあるために、生徒たちに認識しやすく、覚えやすいためです。
閑話休題。では、二つ目の理由は何か。アリーは、英語圏での女性名であると同時に、ムスリムの男性名でもあるからです。大人の女性と女の子は「わたし」、男の子は「ぼく」を使い、大人の男性は、時と場合によって、「わたし」と「ぼく」を使い分けることが、一目で分かる表を作るために、男性名でもあり女性名である名前が最適だと考えたからです。
見て分かりやすく覚えやすいように、絵を添えようと考えたのですが、せっかく買ったペンタブレットは、今のところお蔵入りのままです。そこで、
学校のホワイトボードに授業中に描いた絵で、自分でもうまく描けたなとうものは、休み時間に写真を撮っていたので、
そういう写真の中から、使えそうな絵や文字を探し出し、コピーしてプリントに貼りつけてみました。
そんなふうに説明したあとで、たとえばわたしなら、「わたしはなおこです。」と自己紹介をするし、ピノキオなら、「ぼくは…」と切り出すのだけれど、そうすると、
この二つの構文はどういう意味でしょうと問いかけて、「Io sono....」という答えを引き出し、プリントにそれを書き込ませ、では、自己紹介で、あなたの名前を言うには、日本語ではどう表現しますかと尋ねると、ちゃんと正解が出て、そのあと、すでに授業の最初に復習で書いていた自分の名前を使って、自己紹介の文を書いてもらいました。
決まりを自分で発見した方が記憶に残りやすいので、そんなふうに、例から法則を導き、自分の名前をどう言うかを、自ら考えさせるという方法を取っています。まだ時間が余っていたので、わたしやお母さんになったつもりで、「わたしは」と名前を紹介させたり、「イタリアじん」という言葉を教えて、「わたしはイタリアじんです。」と言ったり書いたりする練習もしました。わたしが「わたしは日本人です。」と言い、お母さんである同僚が、この子はドイツ人でもあるのよと一言添えてくれたので、「ドイツ」という国名と「ドイツじん」という言葉も教えました。昨日の授業では、カタカナの「アイウエオ」も一字ずつていねいに練習したのですが、その際に、アとイは、「イタリア」にも「イタリアじん」にも使われていて、あなたの国や国籍を言うのに必要な大切な文字だから、しっかり覚えましょうと言っておきました。
そんなふうにして、一応、授業の中では、「わたし」と「ぼく」の使い分けと使い方を教えて、あなたは今は「ぼく」を使った方がいいと説明したのですが、その導入として、日本語には一人称単数代名詞がたくさんあることを説明した際に、例として、この少年が好きなアニメの主人公は、自分のことを「おれ」と言っていると、言及しました。すると、きっと少年は、その主人公が大好きなのでしょう。「じゃあ、ぼくもオレを使う。」と言うので、大人に対して、そして、改まった場面で「おれ」を使っては失礼だから、「ぼく」を使うことにしましょうと返事をし、ドラえもんでも、のび太やスネ夫、ドラえもんは自分のことを「ぼく」と言い、「おれ」と言うのはジャイアンだけだとも付け加えたのですが、さて、来週は、どんなふうに自己紹介をするのでしょうか。
今夜も月がきれいです。今晩は、うちの窓から撮影しました。
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Un mio nuovo allievo di giapponese ha 12 anni.
Mi sento onorata a fare lezione al ragazzo,
figlio di una mia collega della scuola delle lingue estere.
Il corso è un regalo per il compleanno del ragazzino
che ha voglia di studiare il giapponese da molto tempo.
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Nella lingua giapponese esistono molte parole che fungono dai pronomi della prima persona singolare, ma di solito per non confondere i discenti troppo all'inizio del corso, si insegna solo uno di questi, WATASHI e la maggior parte dei manuali per i principianti utilizza solamente WATASHI, pronome versatile che può essere utilizzato sia dai maschi sia dalle femmine, sia nella situazione informale sia nel contesto formale. Tuttavia, WATASHI stona se viene usato dai bambini di 12 anni a cui è più naturale utilizzare il pronome, BOKU adatto ai bambini maschi e anche ai maschi di ogni età nella situazione informale. Però nello stesso tempo, il ragazzo deve conoscere anche il pronome WATASHI per capire quello che dicono gli altri e per il futuro. Come spiegare queste cose così coplicate al bambino di 12 anni insieme alla struttura della frase totalmente diversa e insieme alle nuove lettere dei due sistemi alfabetici diversi? Così ho fatto questa tabella con i disegni. Come nome ho scelto アリー (Ally/Ali) perché viene usato sia come nome femminile (Ally) che come nome maschile (Ali), e anche perché アリー contiene le lettere ア e リ che vengono usate per scrivere イタリア(Italia)per cui il ragazzo le aveva già imparate e poi リー fa parte anche del nome del ragazzino, quindi lui lo aveva già scritto qualche volta.
Comunque, ora il ragazzo riesce a dire e scrivere il suo nome e la sua nazionalità in giapponese dopo due lezioni. Sembrano contenti il ragazzino e la sua mamma e così sono contenta anch'io.
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今日は日本語を外国の少年に一から教えるに当って色々と工夫されておられる過程を詳しく書き下ろして頂きとても興味深く読ませて頂きました。
人に教えるという事は如何に大変な事かも分かりましたが、授業を受ける立場の人間の将来のことも考え、且つ覚え易い手法はどうすべきかも親身になって考えられるその姿勢に感銘を受けました!
これからの成長振りが楽しみですね♪ 又経過なども時折UPして下さいね。
日本のかアニメの人気は日本語の普及にも貢献しているのですね。
イタリアに少年達に人気があるのはどんなアニメなのでしょう?
ドラえもん以外では 宮崎アニメとか?
私は今 スイスのグリンデルワルトに来ています。
お天気続きで日射しは強いですが
日本の猛暑から少しの間逃れられています。
でも、好きこそで、ご本人に興味があるので、上達は早いのではないでしょうか?
なおこさんは、流石にプロ中のプロの日本語教師、日本でも国語の先生ですから、丁寧に絵が描いてあるのが分かりやすくて覚え安いのでは?と思いました!
アニメから外国語に入るというパターンもあるのですね(@_@)
お子さんに日本語の授業をプレゼントなんてとっても素敵な試みですね(*^▽^*)♪
日本のアニメの人気の高さも伺われますが
そんなところから日本語に興味を持つというアニメや漫画の影響力の大きさを痛感させられました!!
こうしてみると私たちが何気に使っている日本語と言うのは
教えたり覚えたりは説明の難しいことがたくさんあるんですね〜(・_・;
なおこさんの説明は苦心の甲斐あってとてもわかりやすいと思いま〜す♪
特に最後のアニメ、ドラエモンでの例えは私自身にとっても
「おれ」と言うのはジャイアンだけ、とか
そう言えばって改めて認識されたりしてとっても楽しい授業でした(^-^*)v!!
イタリアでは、仕事で中学生の女の子に英語を教えたり、
小学生の頃に一時期だけ日本語に関心を示した姪にひらがなを
教えたりしたことはあったのですが、「将来はぜひ日本に住みたい」と、今から強く
志している少年に、楽しんで根気強く学んでもらえるようにと、
自分なりに工夫してみました。日本語は、中国語と並んで、言語類型的にイタリア語から
最も隔たる言語であると考えられていて、そのため、日本人にとってはイタリア語、
イタリア人にとっては日本語の学習が、文法や語彙、文字や理屈が異なるためにひどく
難しいのです。そのため、社会人の生徒も学習にはとても苦労するので、授業はやはり
できるだけ分かりやすく、そして興味を持ってもらえるように工夫しなければいけません。
ただ、相手が12歳となると、これまでの授業の在り方とは、いろんな意味で大幅に変えていく
必要があり、そういう意味では、おもしろい挑戦だなとも考えています。
眠る前に記事を書くと、頭が冴えず、要約できずに、ついつらつらと書き連ねてしまうので、
後から反省したのですが、タッドさんが、そんなふうに感じながら読んでくださったと知って、
ありがたいです。
ライトノベル、オンライン小説だったようなのですが、どうやら
ゲームや漫画、アニメもあり、ただ、少年が好きなのはアニメである
ようです。
スイスにいらっしゃるんですね。スイスも日差しが強いんですか。
どうかよい旅を!
あるのですが、英語と違って、日本語は、語彙も文法体系も、場による使い分けも
イタリア語と天と地ほどの差がある言語なので、どう教えれば、一番分かりやすく
学習効率がいいかを、いろいろ考えてみたいと思います。
アニメや漫画から日本語に入るパターンは、実はとても多くて、わたしがペルージャ外国人大学
で教えた学生たちも、社会人向けの講座で教えた生徒さんも、個人授業で教えている若者たちも
大半は、アニメや漫画から日本に興味を持って、選択科目の中から日本語を選んだり、
自ら進んで授業を受けようと考えたりしているんですよ。
12歳の男の子への誕生日プレゼントが、日本語の授業だなんて、
語学の先生らしいし、そういうお母さんだからこそ、日本語を勉強したいと、
少年も学習意欲に燃えているのかもしれません。誕生日プレゼントに、
何よりも日本語を勉強したい男の子がいるとは! 期待に添えられるように
頑張りたいと思います。
ずいぶん前に読んだアメリカの研究論文にも、アメリカのメディアは、どちらかと
言うと日本については偏見を持ったうがった報道をする傾向があるのに、
これだけアメリカで日本文化の人気が高まったのは、アニメや漫画などの
サブカルチャーによるものが大きいと書かれていました。
イタリア語や英語、ドイツ語ではすべてio、I 、ichで済んでしまうのに、
日本語には一人称単数代名詞がたくさんあって、おもしろいですよね。
逆に、名詞には女性・中性・男性の性や単数・複数がなく、定冠詞もないと言ったら、
少年もお母さんも、それはよかったとほっとしていました。
大学や学校などの授業なら、少なくとも1時間半は続けて授業が
できるのですが、入門期の60分内に、仮名も教えて、飽きないように
あいさつや文法も少しずつ導入して、そうして、今回は12歳の男の子で
ということで、いろいろ教え方を模索しているのですが、準備も楽しいです。
なんとモンゴルの方に日本語を教えられたことがおありなんですね!
丁寧なコメントをどうもありがとうございました。
イイネだけ差し上げるつもりでしたが
アイデア満載の手作り教材に感動して、つい…
イタリア語とドイツ語は、たとえばフランス語よりも距離があって大変そうですが
より奥行きの深い学習ができそうですね。
日本語の縦書きには驚かれたことでしょう(フランスのブロ友に業平の和歌を見せたときは、ここが一番の驚きのようでした)。
デンマークに留学中のイタリア人学生が
イタリア語版ドラえもんの話をしてくれたことを思い出しました。
のび太はグリエルモというイタリア名になるのだとか。
ジャイアンだけが「オレ」というのはなるほどですね!
ドイツ語もフランス語も、別の意味で英語と共通する部分が多く、
この少年、学校で英語とフランス語を習っているようなので、
お母さんの言語ということもあり、ドイツ語はやる気になったら、
他の言語との相乗効果もあって、ぐんぐん伸びるのではないかと思います。
わたしが教える人は、国籍を問わず、日本に興味のある人が多いからか、
縦書きにもするということは、意外と知っている人が多いんですよ。
ドラえもんは、わたしは一度こちらで映画を見たことがあるのですが、
そのときは「のーびた」、「しーずか」と名前を呼んでいたように思います。
ジャイアンはどう呼ばれているのか知らないけれどと言ったら、
少年がイタリア語でも同じだと教えてくれました。
訳し方にも変遷があるのかもしれませんね。
私は大学で英語の教員免許を取ったものの、教育関連の職には就かないまま月日が過ぎ、ご縁があって現在、児童養護施設に住む子どもの英語のチューター・ボランティアをしています。どうわかりやすく教えればよいのか試行錯誤を繰り返しているので、なおこさんの経験談からヒントをいただいています。「決まりを自分で発見した方が記憶に残りやすいので、そんなふうに、例から法則を導き、自分の名前をどう言うかを、自ら考えさせるという方法を取っています」と読んで、なるほど!と思いました。なんでも一方的に説明しがちなのですが、確かに、自分が教わる立場で考えてみるとおっしゃるとおりですね。参考にさせていただきます、ありがとうございます!
教え方を模索する熱心な先生に担当してもらえて、生徒さんたちも
喜ばれていることでしょう。すてきなボランティアですね。
仮説発見型学習というのは、理科などで実験検証という授業は、わたし自身が
高校生のときにも、化学の先生がよく実践されていましたが、
国語やイタリア語教育でそれを応用する在り方は、愛媛県の教科教育指導についての
新採・初任研・30歳研修などの手厚い研修・指導や勤務先でのすばらしい先輩の国語の
先生方、そして、ペルージャ外国人大学の教授法などの授業を通して、
それをできるだけ授業に取り込んでいくことの大切さと手法を、教えていただけて
感謝しています。
竹取物語の冒頭の「昔竹取の翁とふものありけり。竹を取りてよろづのことに使ひけり。…」
の部分も、最初から「過去の伝聞を表す助動詞けり」をこちらが教えるのではなく、
文末に必ず登場するこの「けり」はどういう働きをしているか、今ならどんな言葉を使うかと、
「昔」という冒頭の語もヒントに、生徒自身に考えさせるようにしていました。そうすれば、
「けり」の定着も早く、生徒自身がクイズや挑戦のように主体的に楽しく取り組め、また、
自分の頭で類推する習慣がついていくだろうと考えていたからです。この「けり」の例は
古典的で多くの先生が利用されている手法だとは思うのですけれども。
12歳の少年に教えることになったとだけ書くつもりが、寝る前で、頭が整理できずに、つい
つらつらと長い文になってしまったと反省していたので、読んでそんなふうに感じてくださった
と知って、わたしこそうれしいです。ありがとうございます。