イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

近づく日本語能力試験、小1で学ぶN2・N3レベルの漢字

 今日、日本語の授業でうちにやって来た若者からは、今年12月に受験する日本語能力試験で、N2とN3のどちらを受験しようか決めかねているので、授業中に相談したいというメールを、あらかじめ受け取っていました。N2とN3は、それぞれ、中級日本語コースを修了したレベル、中級日本語コース前半を修了したレベルです。

 読解力・聴解力・会話力は十分にあるけれども、試験の過去問題をいっしょに見ていくと、漢字の力不足がひしひしと感じられる若者なので、先週の授業時にはN2受験を希望していましたが、わたしとしては、まずはN3の試験勉強をしながら、漢字と語彙の力をしっかりとつけて、読み書き話す力との大きな隔たりをなくしていき、12月にはN3を受けて合格し、まずは合格を手堅く押さえた方がいいのではないかと感じていました。

 一方、今のところわたしが最も長く教えている個人授業の別の若者は、3年前から教え始めて、初年にN4、翌年N3に順調に合格したものの、昨年はインターンや卒業論文の準備などで忙しく、日本語能力試験ばかりには集中できなかったこともあり、総合得点では合格基準点を2点上回るものの、言語知識(文字・語彙・文法)の分野の合格基準点に1点足りず、残念ながら不合格でした。おそらく単語や漢字、文法は、勉強するのが手っ取り早く、自分で力の把握がしやすく、覚えているという手応えがあるからでしょうか、この若者は、わたしが教え始める前から、そして今でも、自分で積極的に漢字・単語・文法の参考書や問題集を買っては、時間を見つけて勉強していました。逆に、まとまりのある文章を書いたり、読んで理解したりする力が不足していたので、昨年末までの授業では、専ら読解演習や作文を中心に教えて、その読解問題に出てくる文法や単語、漢字を、文脈に関連づけて定着できるように、授業やプリント作りを工夫していました。もともと強みだった聴解に加えて、読解も合格基準点に達したことについては、読解に力を入れてきてよかったと考えていたのですが、今年は、単語・漢字の力が欠けていると若者が痛切に感じていることもあり、やはり読解を中心にしながらも、単語と漢字学習に置く比重を多くしています。

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 この八つの漢字は、日本の小学生が1年生で学ぶとされている漢字でありながら、日本語能力試験では、N2またはN3、中級レベルに該当するとされている漢字です。

 N2とN3のどちらを受験するか迷っている新しい生徒に、それぞれのレベルの漢字の練習問題をいくつか解かせて、自分の力を確認させようと、このところ、ずっと考えていました。問題は、2010年から新しくなった日本語能力試験では、かつてのようにはっきりとした出題基準がなく、各レベル対応の漢字や語彙が明示されていないことです。名目上は出題基準がないことになっているものの、問題作成にあたっての何らかの基準はあるでしょうし、出題基準が分からないと、漢字や語彙、文法などの学習が難しいため、各出版社から出ている参考書や問題集、オンライン情報を参考にするのですが、こうした一連の参考資料自体が参照しているのは、やはりかつての改訂版の出題基準なのです。問題集やオンライン情報をあてにするより、自分でこのかつての出題基準を購入しようと考えたこともあるのですが、海外からの手数料・発送料を除いても、古本で八千円近くもするので、購入を断念しました。

 幸い、インターネット上に、かつての出題基準をもとに、N2からN4までの漢字をレベルごとにまとめて記載したページがいくつか見つかったため、漢字を教える際の参考にしようと、最近は、時間を見つけては、こんな一覧表を作っていました。

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 小学校の各学年で学ぶ漢字を、一つひとつ、外国人学習者が受験する日本語能力試験のどのレベルに該当するかを調べて、表に振り分けてみようと考えたのです。新しく作られた中間級であるN3には、出題基準の漢字一覧表がないものの、N2の出題基準のうち半分、より易しい漢字やよく使われる漢字半分が、N3レベルと考えられます。N2レベルの漢字を小学校の学習年度ごとに振り分ければ、どの漢字がN2相当で、どの漢字がN3相当かの目安になると考えたために、こんな表を作ることを考えたのです。日本の小学生を対象とした教育・学習サイトの方が、外国人向けの日本語学習サイトよりも、漢字の練習や演習問題などの教材が豊富なので、日本語能力試験の漢字教育に際して、こうした小学生向けの教育サイトを利用しやすくするためでもあります。

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 最近は、義父母を迎えにアドリア海岸まで遠出したり、結婚式や披露宴があったり、そして、昨日はトーディの義弟宅に昼食に皆で招かれたりと、外出することが多く、この作業がすっかり滞っていました。

 最終的には、N2までに学習すべき約1000の漢字について表を作るという意気込みだったのに、小学1年生で学ぶ80の漢字を、日本語能力試験の該当レベルに振り分けるだけで、数日に分けて数時間かかってしまったので、現在は今後も作業を続けていくかどうか検討中です。こんなに時間がかかったのは、小学生の各学年で学ぶ漢字は、読みの五十音に並んでいるのに、日本語能力試験の各レベルの漢字は、部首ごとに配置されているようで、該当する漢字を探すのにひどく苦労するからです。

 それはさておき、表を作る前は、小学1年生で学ぶ漢字は、大半がN5(初級日本語コース前半を修了したレベル)該当で、中に少し、N4(初級日本語コースを修了したレベル)該当のものがあるだろうと予想していたのに、予想に反して、N4の漢字が多い上に、さらに、N2・N3レベルの漢字が八つもあるので、驚きました。

 冒頭に写真も添えたこの八つの漢字を見ると、日本の小学生が、身近な生活の中で、言葉を学ぶと共に、学んでいく漢字でありながら、確かに、日本語を学習する外国の人にとっては、それほど重要性がないものが多い気がします。冒頭の表は、せっかく作った表が、だれかの役に立つように、けれども作るのにあまり時間がかかりすぎないようにと、小学1年生配当でありながら、N2・N3レベルの漢字八つについて、読みとイタリア語での意味、漢字が指すものを写した写真を載せたものです。どなたかのイタリア語や漢字の学習のお役に立てば、幸いです。

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 手元にある旺文社の『JLPT 日本語能力試験ターゲット1000 N2漢字 改訂版』を見ると、「石」は、N2で784番目に試験に出やすい漢字として掲載されていますが、用例としては「石(いし)」のほかに、「石油」や「宝石」も挙がっていて、こういう用例を読むと、なるほどN2レベルとされているのは、「石」がこういう熟語の中で、日常生活やニュースなどで使われるからなのだろうなと思いました。

 結局、今日の授業までには、表の作成は間に合わなかったのですが、午後の授業で、やって来た生徒から、すでにN3を受験することにして、受験票を郵送したと聞いたので、かなり拍子抜けしました。N3を受験しようと考えてくれる方向に持って行こうと、漢字や語彙の練習問題を準備した上で、そのあとの授業のために、N2とN3の問題例の両方を準備していたのですが、練習問題とN3の問題は結局授業で使いましたし、よかったということにしておきましょう。

 冒頭の表作成にあたっては、それぞれの漢字に該当する写真を探すのに、マックブックの写真アプリとグーグルフォトの検索機能が役に立ちました。これまでたくさん撮った写真の中には、たいていの写真はあるだろうと思っていたものの、「王」と「玉」、「糸」については見つける自信がありませんでした。

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Panorama visto dal Palazzo Farnese, Caprarola (VT) 7/3/2015

 「玉」では、マックブックの写真でもグーグルフォトの検索でも、検索結果は「ありません」だったのですが、「球」で検索すると、グーグルフォトで、こちらのカプラローラのファルネーセ宮殿に用いられている「玉」、「球」の画像が見つかりました。

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Tutti i presepi del Mondo, Porziuncola, Assisi (PG) 6/1/2013

 「王」も、「王」や「王様」で検索しても見つからず、「king」や「re」では、王ではなく、古城の写真が並んだりしたのですが、思いついて、「東方の三博士」を意味する「re magi」で検索すると、ずらりと並んだプレゼーペの東方の三博士の写真の中に、このアッシジのプレゼーペの、いかにも王様らしい博士が見つかりました。

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Corso di Eco-printing "Florario d'Abruzzo", Navelli (AQ) 13/8/2014

 糸については、草花を使って布を染める講習に参加したときに、染液につける前に、缶に巻きつけた布を固定するために、ぐるぐる巻くのに使った糸の写真が見つかりました。

 漢字対照表の作成を、果たして続けるか否かはまだ分かりませんが、とりあえず、かつて毎日こつこつ続けるつもりだったブログのランキングバナーリンクの張り替えは、ずいぶん前に頓挫してしまい、最近では、投稿しようとする記事に、過去記事へのリンクを添える場合に、その過去記事内のリンクを張り替える程度になってしまっていることを、告白しておきます。

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In giapponese si usano anche i caratteri cinesi, chiamati 'kanji' oltre ai due sistemi alfabetici autoctoni, hiragana e katakana.
A livello intermedio viene richiesta la conoscenza di circa 1000 kanji, mentre a livello superiore circa 2000.
In questi giorni sto creando una tabella di confronto dei caratteri cinesi per i miei allievi e c'è stata una scoperta interessante.
In Giappone gli allievi di prima elementare devono imparare 80 caratteri cinesi e la maggior parte di essi è considerata di livello elementare anche per gli apprendenti stranieri, ma i rimanenti otto sono classificati come kanji di livello intermedio! Nella prima immagine di questo articolo si indicano tali otto caratteri cinesi e ciascun carattere è accompagnato dalla sua lettura in hiragana, il suo significato in italiano e la fotografia che lo illustra. Ieri ho impiegato non poco tempo per cercare tali fotografie. Mi hanno aiutato le finestre di ricerca di Google Foto e di Foto sul Macbook.
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Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by ayayay0003 at 2018-09-11 15:58
なおこさん、外国人の方が漢字を習得する難しさを感じます!
先日の北海道の地震や関空の台風による閉鎖では、駅や空港に張り出された漢字が
外国人には、解らないため、困ったそうです!
旅行するために、漢字を勉強する人は、少ないですからね!
災害時の交通手段などは、日本人でもなかなか情報が入って来ず困ります(^。^;)
関空は、未だに、国際線が機能せず大変なことになっていますm(_ _)m
Commented by milletti_naoko at 2018-09-12 17:15
アリスさん、ひらがな、カタカナに漢字。アルファベット二十数字で読み
柿ができてしまう国に生まれ育った学習者にとっては、文字体系が三つもあり、
しかも漢字までたくさんある日本語の学習は、文字の学習が大変です。
情報が外国の方にも分かるように、日本でも英語ややさしい日本語の併記を
工夫する必要がある世の中になってきましたね。
台風の被害の大きさはイタリアのニュースでも少し伝えられたものの、
詳しい情報が分からず、しばらく日本のインターネットで状況を追いました。
大きな被害をもたらす災害は、夏と共に終わってしまってくれていますように。
by milletti_naoko | 2018-09-10 23:45 | Insegnare Giapponese | Comments(2)