2018年 09月 26日
秋の夜のペルージャ、日本語学習と映画 『万引き家族』
北風と寒さに負けず、ペルージャ中心街に出かけたのは、是枝裕和監督の映画、『万引き家族』の上映最終日が、今日だったからです。
映画は、先週から上映されていたのですが、先週は木曜までは旅行に出かけていた上、金・土に準備をして、週末に友人たちを迎えることになっていたため、今週見に行くことにしていたのです。月曜は、中秋の名月を見にトラジメーノ湖に行き、昨日、火曜日は午後5時半から7時半まで日本語の授業があったので行くのが難しく、今日、夕方に授業が終わったあと、早めに夕食を済ませて、午後7時15分からの上映を見に行きました。
駐車場で車を降りたとき、ちょうど夕日が山の向こうに沈もうとするところで、ペルージャ中心街に向かう道中も、中世の町並みが、夕日の光にオレンジ色がかって見えて、きれいでした。
家族とは、愛とは、絆とは。
映画で描かれた男女、大人と子供の間にある愛や絆、互いを思い合う家族像は、世間がかくあるべきものと思い描く像や、法律が枠に当てはめるものからは、大きくかけ離れているけれど、それでいて、そこにこそある家族愛や絆というものを、温かく優しく、巧みに描き出していて、「本当の家族とは、愛とは、絆とはどういうものか」という問いを、世に、わたしたちの心に問いかけて、ゆさぶりをかけてくれる、いい映画だなと思いました。
昨日と今日、授業で教えた日本語の生徒は、どちらも中級レベルの若者なので、世界で評価の高いこの映画を見たかどうか尋ねて、見ていなければ見るようにと、授業中に言うつもりだったのに、授業中は、授業に夢中になって、すっかり言うのを忘れてしまいました。勧めようと考えたのは、イタリアでの外国語映画上映には珍しく、原語である日本語音声・イタリア語字幕による上映だったからでもあります。
ただ、会話の多くが親しい家族の間で交わされる上、男性も少年も学校に行っていないこともあってか、最初のうち慣れるまでは、日本人のわたしでも、ついイタリア語字幕の方に頼って見てしまうほど、日本語が聞き取りづらかったため、若者たちも仕事や試験勉強で忙しいときなので、あえて映画を見るように勧めなくて、よかったかなとも思いました。内容的には重いし、どうかなと思っていたのですが、夫もいい映画で見てよかったと言ってくれたので、うれしかったです。
映画館では、同僚の日本語の先生にも、ばったり出会って、ひさしぶりにしばらく話をしました。
昨日も今日も、授業内容は日本語能力試験対策でした。昨日の授業で、『どんな時どう使う日本語表現文型500 日本語能力試験N1〜N3の重要表現を網羅 』を使って、文法事項の弱点補強をしていたら、例文に、「外国語は深く勉強するほど難しくなる。」とあって、生徒もそのとおりだと言っていました。どんな言語でも、言うことが伝わればいいという段階から、伝えたいことを、場面に応じた言葉を使い、文法的に正しい表現を用いて、発音やイントネーションにも留意して話そう・書こうという段階に移ると、そのために学ばなければいけないことや注意しなければいけないことが格段に増えるために、また、サバイバル会話や親しい人との日常会話から、公の場面での発言や手紙や文書、文学作品へと、言語を使用する場面や理解したい話し言葉や書き言葉の種類や幅が広がって行くために、学べば学ぶほど、難しさを感じるわけです。
「イタリア語の上達につれて、イタリア人の考え方がわかってきた。」という例文もあって、若者は、楽しそうに読んでいました。言語を学ぶことは、その国の文化や人々をよりよく知るための扉を開いて、その世界に少しずつ飛び込んで行くようなものだと、わたしも常々感じています。
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Bella Perugia di notte 26/9/2018
Quella sera abbiamo visto il film giapponese, "Affare di famiglia".
Parla dei seri problemi sociali del Giappone.
Film impegnato, non per tutti ma l'ho trovato bello.
Fino al 3 ottobre al Cinema Postmodernissimo.
In lingua giapponese con sottotitolo italiano.
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私は、5月に見たと思うのですが、その頃、この映画に登場する幼い女の子くらいの少女が、継父に虐待の末殺されるという現実の事件が起こり、登場人物の幼い女の子に現実の少女が合わさり、感慨深い映画鑑賞となったことを思い出します。
家族とは?ほんとに考えさせられる映画でした♪
重い内容ですが、この映画を評価いただいたご主人さまにも嬉しい気持ちでいっぱいです。
一枚目の写真で 春の旅を思い出しました
ありがとうございます
「万引き家族」は今の日本を明確に映し出していて
直視を避けたい厳しい現実も是枝氏は見逃しませんね
この数年、日本に度々行く事があり 子供の貧困など
まさかの急速な社会の変化に胸が痛みます。。。
公開されていたようです。大きな映画館では上映されませんでしたが、ペルージャにも上映する映画館が
あって、よかったです。子供の虐待をはじめ、日本社会の
さまざまな問題も浮き彫りになっていて、問題提起も
する名画だと思います。
貧困や企業の利益ばかりを追求して、働く人の
人生が、労働時間過多や環境、解雇、労働時間に
対する世界的に見て低い報酬など、ないがしろに
されがちであることも、大きな問題で、そういう貧困の増加に拍車をかけていて、映画では随所で取り上げられ
ていたように思います。
パチンコや風俗産業に人が流れるのも社会の
ひずみ、ゆがみでしょう。さまざまな問題が
語られていて、わたしも改めて考えさせられました。