2018年 10月 22日
国語辞典・漢和辞典を買いました
日本の高校で国語を教えていた頃は、現代文や漢文の授業を準備するため、自分が文章を書くため、他の先生方や生徒たちの文章を校正するために、毎日何度も辞書を引いていました。わたしは三つの愛媛県立高校で、12年間国語を教えたのですが、どの学校でもどの学年でも、学校が指定していた辞典が、旺文社の国語辞典・古語辞典と大修館書店の漢語林で、個人的に他の辞書も数冊持っていたものの、生徒たちが持っている辞書なので、もっぱらこの3冊を使っていました。長年使ううちに、使い慣れたこともあるのでしょうが、生徒に教えるにも、自分が参考にするにも、この辞書が一番使いやすいと感じるようになったので、今回、辞典を購入しようと考えたときは、迷わずこの2冊を選びました。
同様に愛用していた古語辞典と類語国語辞典も、いっしょに取り寄せようかと思ったのですが、辞書を4冊買うとなると、出費も重さもかなりのものになるので、今回はまず、日本語を教えるため、そして、自分が日々参考にするために、最も役立つであろう国語辞典と漢和辞典の2冊を買うことにしました。
つい最近の日本語の授業で、教え子から「固い・硬い・堅い」の使い分けを質問されて、オンライン国語辞典の「かたい」の項を見せながら説明しました。「かたい」の漢字については、わたし自身が、ブログの記事に書こうとして、どの漢字にするべきか迷うときもあり、オンライン辞書を参考にしていました。用例として一つひとつ覚えるのではなく、こういうふうな使い方の違いがあるという、もっと分かりやすい目安があればと考えていたわたしは、旺文社の『国語辞典』では、「固い・硬い・堅い」について、それぞれの本質的な意味と用法が書かれていて、わたしにとっても分かりやすく、教え子にとっても分かりやすそうなので、これはいいなと思いました。こんなふうに、この国語辞典には、言葉を使う人、学ぶ人の視点に立って、さまざまな工夫が施されています。次回のこの生徒の授業では、この辞書の説明を使って、再度、「かたい」の三つの漢字を整理したいと考えています。
英語やイタリア語など、日本人のわたしたちが外国語学習をする際にも、中級以上になってくると、英英辞典や伊伊辞典が、語彙力を向上させ、表現の仕方を学ぶのに、大いに役に立ちます。これからは、国語辞典の語義も、日本語の授業で積極的に取り入れていきたいなと思いました。言葉の説明をするのに、イタリア語や英語で対応する訳語で済ませてしまうと、おかしな使い方をしてしまう場合もあるからです。
漢字については、日本語を学習するイタリア人生徒たちが苦手とする漢字を、できるだけ文脈の中でとらえ、漢字の成り立ちを説明し、その漢字を用いるさまざまな語彙も合わせて説明するようにしています。『新漢語林』には、一つひとつの漢字について、筆順や小学校で習う漢字なら習得する学年、常用漢字か否かが記され、成り立ちも詳しく書かれているので、中級や上級を目指す生徒たちも教えるようになった今、授業を教える役に大いに立ちそうです。漢字を見て思いつく語彙の例が、わたしの場合はつい日本の高校の教材や模試でよく出てきた語彙になりがちである可能性が大いにあります。そのため、普段から、N3やN2対策の漢字や語彙の参考書を参照してはいるのですが、新漢語林には、それぞれの漢字について、その漢字が熟語の初めに来る言葉と共に、最後に来る言葉も列挙してあるので、取りこぼすことなく、並ぶ語彙の中から、より重要度の高い言葉を選んで、教えることもできます。
国語辞典も新漢語林も、前書きには、新しい時代に登場した言葉で習得が必要な言葉もあるけれども、伝統的な語彙も大切にしなければいけないと書かれていて、編集した方の熱意が感じられ、すばらしいと思いました。
国語辞典で、最近気になっている言葉をあれこれ調べてみて、わたしが社会人になってから耳にするようになった「イタめし」や、イタリアに暮らし始めてから、同僚の日本語の先生に教えていただいて初めて知った「イケメン」といった言葉が、辞書に載っていることに、時の流れを感じると共に、「俗語」とされていることに、ほっとしました。職業柄もあるでしょうし、もう16年半もイタリアに住んでいることもあって、そういう言葉を生きた文脈で見聞きする機会が少ないからでもあるのでしょう、かっこ書きなしで、こうした言葉を使うことには抵抗があります。
大野晋氏がずっと以前に、「ら抜き言葉も、今は誤用とされていても、使う人が多くなれば、文法が変わってくるだろう」と書かれていました。国語辞典の国文法要覧の助動詞活用表の接続について書かれたところを見て、今のところは、まだ上一段活用動詞・下一段動詞については、まだ助動詞として「られる」を使うのが正しいとされていること、つまり、「見られる」・「起きられる」・「食べられる」・「受けられる」が正しいとされていて、こうした動詞に助動詞「〜れる」を使う用法は間違いとされていることに、ほっとしました。
国語辞典の見出し語には、ヴェネツィアではなくて、「ベネチア」があり、語義の説明の中にある別の呼称が、「ベニス」だけであることにも、ほっとしました。すでに「ベニス」、「ベネチア」が日本にも語彙として定着していた上に、「ヴェ」も「ツィ」も日本語には従来存在しない音で、字面が美しくない上に、標準イタリア語の発音をあえてカタカナで表記すると、「ヴェネッツィア」となるはずだからです。ちなみに、つい最近たまたま出会ったベネチアの人によると、ベネチアの人が話す地方イタリア語では、Veneziaを「ヴェネースィア」と発音しがちだそうです。
紙の辞書なら、何かの言葉を調べたときに、近くに興味のある言葉を見つけて読むことができるし、調べた言葉に、印をつけておくと、再びその言葉を調べたときに、その言葉や漢字が、学習や教育において大切なものだ、以前にも調べたものだと確認することができます。
文字や漢字、文章を手書きにせず、パソコンに書くことの方が多くなりがちな時世であるからこそ、よりいっそう紙の辞書に親しんで、教えるためばかりではなく、自分自身が日本語をよく学び、きちんと使うことができるためにも、辞書を大いに使っていきたいと考えています。
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Due dizionari della lingua giapponese, uno giapponese-giapponese, l'altro dei caratteri cinesi utilizzati in giapponese, entrambi per studenti e adulti giapponesi.
Sono gli stessi dizionari che utilizzavo per insegnare il giapponese nelle scuole superiori in Giappone ma sono delle ultime edizioni. Ora li ho acquistati perché i miei allievi italiani hanno raggiunto il livello intermedio, uno inizia pure a puntare al livello avanzato e mi servono per insegnare meglio a questi ragazzi bravi e diligenti.
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読ませていただいてふっと思いました。
最近は紙の辞書より電子辞書が多いです。
高校でも国語辞典、漢和辞典、古語辞典、英和辞典、和英辞典などすべての辞書が
一つの電子辞書に入っており、値段も手頃、持ち運びも軽くて便利、しかも英語の発音
も聞くことができるというものです。
私が最近買ったのはちょっと値段が高かったですが、例えば国語系は国語辞典が4つ、漢語辞典、
日本語発音アクセント辞典、日本語シソーラス、角川新類語辞典、類語例解辞典、
三省堂反対語便覧、コロケーション辞典、カタカナ辞典、こごじてん、ことわざ成句使い方辞典、
四字熟語辞典などが入っています。
英語系はもっとたくさん入っていて英和が7冊、英英が4冊、活用辞典類語辞典、連語辞典、
英英活用辞典等。そのほかにも便利な辞典類が驚くほど数多く入っていますし、
発音やアクセントも聞くことができ、メモ、チェックもいれれます。
驚くほどの進化です。
入力も簡単で一つの単語を入力するだけでいろんな辞書の説明を比較できます。
言ってられる紙の辞書の利点もわかりますし私もそういう点が好きですが、
なんだか電子辞書が手放せなくなりました。
便利さには敵わないです。
それと手軽で軽い。値段もこの辞書を全部買ったとしたら比べられないくらい安いです。
カシオEX-word DATAPLUS10です。
紙と違って、電子情報だけで済むからでしょうが、確かにそれだけ入ってこの値段とは安いですよね。買った辞書をさて、どこに入れようかと考えあぐねているところで、場所も取りませんし。
これだけなるほどと思うような電子辞書の利点を列挙していただいても、やっぱりわたしは紙の辞書が好きで、手放せないと、いただいたコメントのおかげで、自分にとっていかに紙の辞書が大切かを、再確認させていただきました。どこでもドアですぐに行きたい場所に到達できるように、目的の言葉がすぐに見つかる電子辞書に比べて、辞書を引き出して、ページをめくる動作は時間も手間もかかりますが、その手間が、より調べる言葉を記憶に残してくれる上に、そのページに至るまでに目に入る言葉やその語彙の前後の語彙が目に入る紙の辞書には、ちょうどゆっくり歩いて周囲の風景も楽しむトレッキングのようなところがあり、わたしはそれが好きなのかもしれません。
わたしの仕事や勉強を支えてくれて、共に歩んできてくれた、歩んでくれる大切な仲間、そういう絆を辞書に感じているのかもしれません。類語辞典や英語の辞典にも好みがあり、自分が好きな出版社の好きな辞書を選べるという利点が紙にはありますし、目の疲れを感じやすいわたしには、少しでも電子画面から目を離せることもありがたく、辞書になんとなく目を通すのも好きなのです。漢語林の漢字のなりたちの象形文字は、さすがに電子情報には落としにくいのではという疑問を持ちつつ、そして、電子辞書の利点を十分に認めつつ、改めてわたし自身が、時代遅れかもしれませんが、いかに紙の辞書を愛しているかに気づかせてくださったことに感謝しています。
いわゆる辞書を読むということだと。私も好きでしたし、今も好きです。
新聞も同じかと思っています。
PCで読むデジタル新聞より紙の新聞の方が読みたい記事から
目があちこちに転じて思っても見なかった記事を見つけ読むこと
があります。辞書も同じことでしょう。
私のコメントで紙の辞書ががnaokoさんにとっていかに大切なもの
であるかということを確信されたとのこと、嬉しく思っています。
こう行くことって大事だなぁと思いました。
ただ私が電子辞書を使い出したのは、ペーパーバックを読みたかったのと、
タイム記事を読むクラスに入った時からです。
あまりにも知らない単語が多すぎて早く引きたかったからです。
持ち運びもすごく便利でした。ジャンプ機能があるので英英から英和、
さらには和英や国語辞典にまでとべるのでおもしろかったです。
それとよく“日本製品のガラパゴス化”と言われるように、この電子辞書も
ガラパゴス化しているかもしれないです。
植物図鑑やブリタニカ(日本語版と英語版)、簡単な会話集(6ヶ国語)等々
他にも驚くほどたくさんのものが入っています。
ちょっと調べるのには大変便利なものだなぁと思っています。
漢和辞典もnaokoさんと同じ新漢語林が入っています。
言われている象形文字も載っていました。
これからもよろしくお願いします。
勉強も読書も辞書も、人によって好みがあるのだなと、改めて感じました。英語でもイタリア語でもフランス語でも、わたしは学習を始めてある程度してから、原書を読み始めたのですが、英語の場合は最初は日本語との対訳のある短編小説から始めて、日本語ですでに読んで話を知っている赤毛のアンシリーズなどに移行し、語彙力を始め英語の力がつくに従って、読む本の幅も増えていき(夢中で読み返したのがGone with the wind、夢中で寝ずに3日ほどで読み終えたのが続編のScarlett、読んだ中で語彙などが一番難しかったと感じたのはTo kill a mockingbirdだったかと思います)、イタリア語は語注つきのピランデッロ短編小説がひどく難しいので、ハリーポッターのイタリア語版から始めて、アレッサンドロ・バリッコなど読みやすい本から読むようにし、フランス語は学習者用に易しく書きかえた名作を読もうと思って、好奇心から『80日間世界一周』の原書を手に取ったら、読むにはイタリア語と英語を知っているおかげで、ほぼ問題がなく楽しみながら読むことができました。共通しているのは、わたしは原則的にはその時々で自分のレベルで、辞書を引かずに読める本を選び、少しずつ難しい本へと挑戦しているということだと思います。確か読む文章の語彙の7割が分からなければ、その文は学習効率が悪い、難しすぎて学んだことが定着しないと、外国語教育に関する何かの本で読んだように思いますし、そもそもわたし自身が、いくつか分からない言葉があっても文脈から見当をつけて、楽しんで読める本を好んで読むからだと思います。
植物図鑑まで入っているなんて、便利ですね。象形文字まで入っているとは驚きました。こちらこそ、これからもよろしくお願い申し上げます。
びっくりしました~(^^)/
昔ネットを始めた頃は
掲示板を通じて
かなり濃いやり取りも見受けられましたsが
ブログが誕生して 同じページ内にコメント欄が出来てからは 割と あっさり短文のコメントに変化していったと思います。
ところで 辞書ですが たしかに電子辞書は便利ですね。
私も 英語とドイツ語も入っているのを愛用しています。
でも ネットでだと もっと簡単に例文が見つかるようになってきましたね。
長年 英和の翻訳を学んで来ましたが そのツールの推移に
ただ驚くばかりです。
数年前 翻訳の通信教育をストップしました。
ようやく自分の英語力の無さを思い知ったからです。
それで 長年勉強に当ててきた時間が空いてしまい
なんとなく 手持ち無沙汰な日々を送っていましたが~
今日 新しい勉強の通信講座を申し込みました。
日本語教師養成講座なんです。
以前から 興味があったので なおこさんのブログにも
関わるようになったのですが~
資格を目指すのではなく ゆったりと この世界を覗いてみたい~勉強してみたいと思ったのです。
なおこさんとの出会いに 本当に感謝しています。
さきほど ネットで申し込んだので
そのうち教材が届く予定です。
60代半ばにもなって 新しいことにチャレンジするとは 思ってもいませんでした。
ずっと晴天のさわやかな秋日和が続いているせいかも
しれません。
とりあえず ご報告まで~
ということで 長文コメント仲間になりました(笑)
絵を描かれたり、楽器を演奏されたり、いろいろな趣味をお持ちで、すばらしいですね。
わたしのブログを訪問されたきっかけが、日本語教師養成講座だったとは、驚きました。言葉を学ぶこと、教えるために学ぶことは、心や文化への大きな窓を開けることのように感じています。わたしもnonさんとブログを通じてお知り合いになれて、うれしいです。
いつまでもいつまでも何かを学んでいこうという気持ち、すばらしいですね。わたしもそうありたいです♪