イタリア写真草子 ペルージャ在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

愛いっぱい 映画『ル・アーヴルの靴みがき』

 2年前のノルマンディー旅行で、わたしたちがル・アーヴルに泊まることにしたのは、エトルタとオンフラールにそれぞれ1泊するよりも、エトルタ行き、オンフラール行きのバスが出るル・アーヴルに2泊した方が、旅がしやすいと考えたからでした。美しいルーアンからル・アーヴルに電車で到着し、予約していたホテルまでバスで移動したのですが、バスの窓から見える町の様子に、夫は泊まる町を間違えたと、最初はひどくがっかりしていました。

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Le Havre, Normandie, France 17/6/2016

 ところが、観光案内所や教会を訪ね、海辺や町を歩いてみると、海がきれいで、サイクリングロードがきちんと整備され、

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バラ園や趣向を凝らしたすてきな庭園まであったので、夫は逆にすっかりル・アーヴルが気に入ってしまい、翌日は二人でエトルタを訪ねたのですが、その次の日は、わたしは予定どおりオンフラールに行ったのに、夫は一人でル・アーヴルに残ったほどです。

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20/6/2016

 モネが《印象、日の出》を描いた港は、訪ねた時に雨が降っていました。また、時間がなくて、美術館も行きそびれてしまったので、いつか再訪できればと考えています。

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 ル・アーヴル駅を出発するとき、《印象、日の出》を車体に描いた電車が、私たちが乗り込んだ電車の窓から見えて、うれしかったです。

 宿で勧めてくれたとおり、魚料理がおいしい店もあり、懐かしい思い出があるそのル・アーヴルを舞台とする映画が、今晩イタリアのテレビで放映されました。とてもいい映画で、温かいうれしい気持ちになることができました。フランス映画で、原題は『Le Havre』、イタリア語の題名は『Miracolo a Le Havre』、邦題は『ル・アーヴルの靴みがき』です。

 妻を愛する主人公、マルセルは靴磨きとして働き、慎ましい暮らしを送っているのですが、ある日、逃走した不法移民として警察から追われる少年と出会い、少年を何とかロンドンにいる母の元に行かせてやろうと、手を尽くします。そのマルセルも妻も、その隣人も友人も、皆貧しくとも愛と優しさにあふれる人たちで、窮状にあるマルセルや少年を助けるためにできるだけのことをしようと、当たり前のように優しく手を差し伸べる様子がすてきだなと思いました。



 ちなみに、今晩イタリアではRai 5で放映されました。



 この記事を書くにあたって、原語のフランス語版と日本語版の予告編を見たのですが、そうすると、イタリア語に吹き替えられた映画を見ていては分からないことに気づきました。舞台がフランスであるのに、「靴磨きはこれで十分だ、もういい。」と言うために、客である紳士は、イタリア語で「Basta.」と言っているのです。イタリア人、あるいはイタリア系アメリカのマフィアだということなのでしょうか。わたしが現代のテレビニュースやドラマのモンタルバーノを通して思い描くマフィアのイメージよりは、むしろ昔のアメリカを舞台にした『ゴッドファーザー』の雰囲気に近いように思うのではありますが。

 機会があれば、ぜひご覧ください。若く裕福で美しい男女の恋物語よりも、もっと奥の深い、心に迫る、すてきな愛の物語だと、わたしは感じました。

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Belli la città e il giardino di Le Havre,
il film, "Miracolo a Le Havre"
di Aki Kaurismäki.
L'amore abbonda nel suo quartiere non agiato.
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LINK
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Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by mahoroba-diary at 2018-12-19 10:05
なおこさん、こんにちは。
ル・アーヴル、まだ観ていませんでした。
なおこさんの文章を読んで、ぜひ観たいと思いました。
現在観たいものが山積みなのですが、メモして必ずいつか鑑賞しますね。ご紹介くださってありがとうございます。
私もノルマンディーに行ったことがあります。主人がダンケルクに行きたいというので、ベルギーから南下してあの辺り一帯を車で走り回りましたョ。漁師がやっているビストロで食べたムール貝の一品が忘れられません。鄙びていましたが味わい深く、人間味があって心に残っています。フランスはパリだけでは絶対にわかりませんね。歴史的にも文化的にも非常に多様性を抱えた国だと思います。この作品、必ず観たいと思います。
Commented by milletti_naoko at 2018-12-19 20:31
まほろばさん、こんにちは。心に響くいい映画だと思いますので、ぜひ。わたしもまほろばさんの記事を読んで、買ったのに読んでいない塩野七生さんの本を、ぜひ読もうと思いました。そういう本や借りている本があれこれあるのですが、できるだけ早いうちに。

車でノルマンディーに行かれたことがおありなんですね! 漁師のビストロなんて、おいしそうですね。地方の方が、これはフランスに限りませんが、自然が美しいのはもちろん、人が優しく人間味がある人に出会えることが多いように、わたしも思います。
Commented by ayayay0003 at 2018-12-19 20:31
なおこさん、ルア―ブルに泊まられたノルマンディー旅、ほんと素敵でしたね~(^_-)-☆
モネの絵に出て来る港が雨とは残念ですが、旅の短い滞在だと仕方ないです(-_-;)
私は、オンフラ―ルには行きましたが、ルアーブル、エトルタは訪ねてなくてなおこさんのお写真拝見すると旅情がそそられます~♡
そういう意味でも、この映画を見る機会があれば是非見てみたいものだと感じています(^^♪
Commented by milletti_naoko at 2018-12-20 00:13
アリスさんもオンフラールに行かれたんですね!
ルアーブルには2泊したのですが、中2日とも別の町に
出かけたので、いつかまたゆっくり訪ねられたらと考えています。
エトルタもとてもよかったです! 旅の途中や帰宅後は慌ただしくて、
記事を書いていない町も多いので、またこんなふうに折りを見て、
記事にできたらと思います。ウィンドウズ用外付けハードディスクに
保存した旅行写真がマックからは読み込めなくなってしまったので、
グーグルフォトにアップロードした写真をダウンロードして使っている
のですが、マックブックの場合、ダウンロードすると、どういうわけか
サイズが小さくなり解像度も荒くなるのが困りものではあるのですが。
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by milletti_naoko | 2018-12-18 23:57 | Film, Libri & Musica | Comments(4)