イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

里帰り ベファーナの町、ウルバーニア

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 新年を迎えたリミニからの帰りに、雪降るウルビーノを散歩したわたしたちは、ペルージャに戻る前に、ウルビーノから約20km、車で約30分のウルバーニア(Urbania)に立ち寄りました。

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Urbania (PU) 2/1/2019

 町の劇場前にある喫茶店、Caffè del Teatroの洋菓子がとてもおいしいので、昼食後のコーヒーは、ウルビーノではなくウルバーニアのこのバールで、おいしいお菓子といっしょに飲もうと、わたしが提案したのです。ウルビーノ・ペルージャ間は、ウルバーニアを通るのが近道ですし、ウルバーニアは、わたしが2002年4月にイタリアで暮らし始めたとき、最初の半年間を語学留学生として過ごした思い出の町でもあります。

 町ではベファーナ祭り開催中とあって、喫茶店前のベンチにも、ベファーナおばあさん(Befana)が座っていました。

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 劇場前には、ベファーナおばあさんの小屋と思われる、かわいらしい木の家も建っていました。壁も窓も扉も、まっすぐではなく微妙に斜めになっていて、ところどころに、きれいなパステルカラーで塗られた板があります。

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 町役場の前にも、ベファーナおばあさんが立っています。

 イタリアのクリスマスの祝いは、1月6日の主顕節(Epifania)、東方の三博士(i tre Re Magi)が、長い旅の末に、生まれてまもない幼子イエスを訪ね、贈り物を献上したとされる日まで続きます。この主顕節は、イタリアでは国民の休日であり、このEpifaniaと語源を同じくする名のおばあさん、ベファーナが、主顕節の前夜に、子供たちの家を訪ね歩き、いい子の靴下にはお菓子を、悪い子の靴下には木炭を入れて行くと言われています。では、なぜベファーナおばあさんは、1月6日に子供たちに贈り物をすることになったのでしょうか。諸説ある中、最も有力な説をもとに、夫が2010年末に、『ほんとうのベファーナものがたり』という劇の台本を書きました。2011年1月に友人の子供たちのために、友人たちと劇を上演するためだったのですが、その物語がとてもよくできていたので、わたしも日本語に訳して、夫が書いたイタリア語の原文とは別に、記事としてご紹介しています。興味のある方は、記事末のリンクからご覧ください。

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 ベファーナおばあさんと言えば靴下というわけで、町の通りは、色とりどりの靴下で飾られていました。

 かつて、ウルバーニアの友人たちをクリスマス休みに訪ねたことがあるのですが、その際に見たベファーナ祭りでは、ヘリコプターから何人ものベファーナたちがパラシュートと共に降りてきたり、町の広場には、ベファーナおばあさんに会える木の小屋が並んでいたり、ベファーナおばあさんたちといっしょに踊れるダンス会場があったりして、大人も子供もとても楽しそうでした。

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 イタリアのクリスマス飾りと言えば、イエス・キリスト生誕場面を再現したプレゼーペ(presepe)で、ウルバーニアの町でも、あちこちでプレゼーペを見かけました。建物などを、ワインの栓のコルク(sughero)を、うまく再利用して作っていて、いいなと思ったのが、こちらのプレゼーペです。ガラス窓に、町の柱廊(portico)が映っています。

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 わたしは夫を、お城や川の眺めがきれいなとっておきの場所に連れて行きたかったのですが、町役場の周囲の建物の柱廊が、歴史ある古いものであることに気づいた夫は、「みごとですばらしい。」と、うれしそうに柱廊の下を歩いて行きます。

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 夕日が傾きつつあり、写真をうまく撮るのが難しかったのですが、紅葉はオレンジ色を浴びて、きれいに写っています。

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 メタウロ川の上にそびえる古城や町並みは、沈みゆく夕日が、かろうじてその一部を照らしています。

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 レンガ造りの町並みを巧みに再現した、すばらしいプレゼーペもありました。朝から夜、そして再び朝へと、照明が変わっていくのですが、この写真は、夜の様子を撮影したものです。

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 日中となって、全体が明るく照らされたときに、プレゼーペの左側を撮影したのが、この写真です。一昨日ご紹介したウルビーノ(Urbino)の町が広がり、中央上部に、ドゥカーレ宮殿(Palazzo Ducale)が、みごとに再現されています。

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 右側には、メタウロ川にかかる橋や古城、柱廊のある建物など、ウルバーニアの町並みが、やはりうまく再現されています。

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 中央下の洞窟の中では、幼子イエスを、聖母マリアと聖ヨセフが、温かく見守っています。プレゼーペは、凝る人は、12月25日午前零時を過ぎて初めてイエスの像を置き、東方の三博士の像は、1月6日になってから置くのですが、このプレゼーペでは、東方の三博士が、すでに幼子イエスの近くまでやって来ていました。

 ウルビーノやウルバーニアに寄ることは、おとといの朝、リミニの友人宅を出発した直後に急に思いついたため、今もウルバーニアに住む友人や知人に、急に連絡を取るのは難しかったのですが、陶器や置物、調理道具や照明など、家庭で使えるすてきなものを扱う店を営む友人夫妻がウルバーニアに住んでいて、店が中心街にあったので、夫と訪ねました。

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 突然の訪問だったのですが、二人とも喜んでくれて、そして、久しぶりに会えていろいろな話ができて、うれしかったです。クリスマスの飾りや贈り物にできそうな商品など、店内には気になる品が多かったのですが、夫が特に気に入った装飾の美しい赤いランプの前で、二人と記念撮影をしました。

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 店はこちら、Casa Bellahomeです。他の店では見つからない、ちょっとおしゃれなかわいらしいものがあるので、以前は、今もお気に入りのハートのキッチンタイマーなどを、一度にたくさん買い込んでしまったこともあります。

 ウルバーニアは、甘いものにもうるさい夫も感嘆した、ババロアなど洋菓子のおいしい上述の喫茶店がある他、伝統ある陶器づくりの町なので、陶器の店も多く、古城は主に古くからの陶器を展示する博物館となってもいます。町並みや川、古城の眺めも美しく、人も優しいすてきな町なので、機会があれば、ぜひ訪ねてみてください。Casa Bellahomeでは、1月6日を過ぎても、クリスマス飾りなどをしばらくずっと置いておいて、セール商品として売る予定だそうです。興味のある方は、ぜひ店にも足を運んでみてください。埋葬された死体の近くにあった不思議なキノコのために、ミイラ化した死体が展示された教会もあり、どんな人にも、何かしら楽しめることが見つかる町ではないかと思います。

Casabella Home
Viale Raffaello Sanzio, 19 - 61049 Urbania (PU)
Tel. : 0722 317479
FB : Facebook - Casabella Home Urbania

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Bello rivedere amici dopo tanto tempo a Casabella Home
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passeggiare a Urbania, nella città della Befana
con castello, antichi portici e bei presepi. 2/1/2019
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関連記事へのリンク / Link agli articoli correlati
ベファーナ / Befana
- "LA VERA STORIA DELLA BEFANA"
- 『ベファーナ物語 前編』
- 『ベファーナ物語 後編』
ウルビーノ / Urbino
- 霧と猫 大聖堂にぼたん雪、ウルビーノ / Bella la città di Urbino con neve e nebbia (2/1/2019)

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by ayayay0003 at 2019-01-05 17:14
なおこさん、ウルバー二アは、かつてなおこさんが暮らした街なんですね~
美味しいお菓子屋さんもだからご存知なんですね~(*^_^*)
素敵な歴史的な街でもあり、回廊がイイですね~♡
プレゼ―ペも素敵です~
ご友人のお店、陶器や家庭用品のお店、沢山お買いものしたくなりますね~(*^_^*)
楽しいご訪問になり何よりでした(^_-)-☆
また機会があれば街中ご紹介くださいませね♡
Commented by Bolognamica2 at 2019-01-05 21:57
なおこさん、こんにちは。
ウルバーニアの街はこんなに素敵なのですね!
ポルティコもあって、少し雰囲気がボローニャに似ているのかな?なんて思いながら拝見しました。

プレゼーペ、こんな立派なものは見た事ありませんよ〜素晴らしいですね!
靴下が飾られた街の通りも、靴下がまた色とりどりでカラフルで、とても可愛らしくて素敵です〜!

旦那さんがこうしてお散歩好きで羨ましいです。うちは寒いのが苦手だから、なかなかこんな風に街歩きとか、付き合ってもらえませんから〜苦笑

赤いコートのなおこさん、すっごく素敵です💖
Commented by milletti_naoko at 2019-01-06 18:49
アリスさん、期待に外れず、イチゴのババロアがとてもおいしくて、新年からイチゴが食べられてうれしかったです♪

大聖堂の周囲は、第二次世界大戦の際の爆撃で、新たに建て直された場所も多いのですが、夫がみごとだと喜んでいた場所は、確かに古い柱廊や建物が残り、その風雪に耐えた力強さと美しさが感じられました。
この機会にとほしいものもいろいろあったのですが、また一人で訪ねたときにでも、ゆっくり買い物も楽しめたらと思っています。一風変わったかわいらしい、
おしゃれなものがあって、見ていて楽しいんです。いつかまたウルバーニアの町もご紹介できたらと考えています♪
Commented by milletti_naoko at 2019-01-06 18:53
みかさん、こんにちは。ポルティコは、ボローニャやパドヴァなど、北東の町ではよく見かけても、マルケなど中部ウンブリアの町では、珍しいですよね。プレゼーペも、色とりどりの靴下を使った独創的な飾りも、すてきだなと思いました。共感してくださったと知って、うれしいです♪

実はうちは、わたしが寒いのが苦手で出不精なので、夫に引っ張り出されておいおいと思うことも少なくないのですが、おかげであちこちを訪ねられることに感謝しなければいけませんね。、

ありがとうございます。このコート、確か29歳のときに、高校教師らしい落ち着いた色のコートを買おうと考えていたのに、デパートで見て一目惚れしてすぐに買った思い出の品です。その年の忘年会の幹事が進路課に当たっていて、先輩の商業の先生から、「お、サンタのコートじゃないか。いっしょにくじ引きの当選発表をしよう。」と誘われたようなことを今も覚えています。
Commented by snowdrop-uta at 2019-01-07 07:04
クリスマス最後の日のお喜びを申し上げます(まだ1月6日ですね?それに、この日のご挨拶には他に決まった言い方があるのでしょうか)

ベファーナおばあさんの心あたたまる物語をありがとうございます。
なおこさんの語りが聞こえてくるような日本語訳から拝読しました。
オリジナルのイタリア語もがんばって読みました!
ご夫婦の手づくりの物語、本当に素晴らしいです。

ジオラマのようなプレゼーペ、
ナターレのお人形さんのように愛らしいなおこさんも
うれしく拝見しました。

前の記事に、雪のなかご夫婦ではしゃぐ場面がありました。
私はヴィスコンティの映画「白夜」のワンシーンを思い出しました。
恋人たちが「雪だ(Nevica)!」と喜ぶ美しいシーン。
原作はロシアのドストエフスキーですが
映画にはイタリア人監督の美意識が満ちています。
雪はイタリアの人にとっても、関西のsnowdropにとっても
あこがれと喜びの対象なんですね。

ふりしきる雪のように嬉しいことが沢山ありますように。
Commented by milletti_naoko at 2019-01-07 18:02
snowdrop-utaさん、こんにちは。Buona Epifaniaとか
Buona Befanaとあいさつする人もいますが、単に
Auguriと祝う場合が多いように、わたしが見聞きした範囲では
思います。1月5日にアッシジ近くのバールで、バールの人が
知人らしき客に、「女性客にBuona Befanaとあいさつしたら、
腹を立てられたけれど、個人的な意味はなかったのに。」と
言っていました。

イタリア語の原文も訳も読んでくださったんですね。ありがとうございます♪
ヴィスコンティの映画に、そういう場面があるんですね! 機会があれば、
ぜひ見てみたいと思います。ロシアの作家の作品に基づいた映画も
作っているんですね! 

ありがとうございます。snowdrop-utaさんにとっても、うれしいことの多い
年となりますように♪
by milletti_naoko | 2019-01-04 23:57 | Marche | Comments(6)