イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

日本語能力試験 みんな合格おめでとう、JLPT N2・N3・N4

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 個人授業で日本語を教えてきた生徒たちが、昨年12月1日土曜日に、ローマに行って受験した日本語能力試験、JLPT(Japanese-Language Proficiency Test)の、その待ちに待った結果は、

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Dal sito https://www.jlpt.jp

日本時間で今日、1月23日水曜日の午前10時から、自分の試験結果をJLPTのウェブサイトで確認することができると、以前からサイトに案内がありました。

 わたしがいっしょに受験対策に取り組んだ教え子3人は、今回の試験で、N2・N3・N4の再受験に挑戦しました。N4を受験した学生は、本来は、昨年から合格できる力が十分にあったはずなので、大学の先生方と話して、おそらくは緊張したか、マークミスがあったのではないかと考えていました。試験の前月に、イタリア語を教える教育実習のために、日本に行っていたこともあり、日本にはいても、忙しくて日本語を勉強する余裕がなかったためでもあるかとも思います。今年は独学、あるいは勉強仲間と共に、試験勉強をしていました。受かるだけの力は、今年ももちろん十分にあったものの、試験は、特にマーク式の試験では何が起こるか分かりませんので、今日は合格報告を聞いて、本当にうれしかったです。

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Perugia 14/1/2019

 一方、N2を受験した若者は、4年前からわたしの授業に来るようになり、1年目にN4、2年目にN3に合格したのですが、3年目であった昨年受験したN2は、1点が足りずに、合格を逃しました。この年は若者が、職場実習や卒業論文に忙しくて、日本語の勉強ができなかった時期もありましたし、イタリアに住んで仕事をしながら日本語を勉強するのに、N1の受験には十分な準備が必要なので、わたしとしては、不合格は残念でしたが、N2に余裕を持って合格できるだけの力をさらに1年間しっかり勉強して身につけた方が、後にN1に取り組む際の基盤ができるので、かえってよかったのではないかと考えました。

 日本人学生との交流や、アニメの視聴を通して、聴解力は十分にあり、漢字もわたしが教え始めた4年前から、自分で参考書や問題集、漢字練習帳を購入し、何度も書いて練習していました。ほぼ独学で学習してきていたために、不得意だったのは、きちんとした文章を書いたり、改まった場で話したり、文章を読んだりすることで、そのために、さまざまな文章を読みながら、文法や漢字・語彙を学んでいくことを主軸として、試験対策問題集も使いながら、教えてきました。

 昨年1点の差に泣き、あれだけ悔しい思いをし、仕事の傍ら、この1年間真剣に勉強してきたからでしょう。今日、合格を知らせる電話をかけてきてくれたこの若者は、昨晩試験結果が気になって眠れず、結局、イタリアで試験結果が分かるようになった今日の午前2時に、サイトで確認して合格を知り、喜びのあまり大声で叫んで、親に何事かと驚かれたそうです。受かるだろうとは思っていても、何があるか分からない試験です。わたしも合格を知って、とてもうれしいです。これからさっそく、N1対策のよさそうな参考書や問題集を、いろいろと調べてみたいと思います。

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 N3を受験したのは、昨年N3に不合格だったために、今年こそはN3かN2に合格をと、昨年から授業に来るようになった学生です。入門・初級レベルは、ペルージャ外国人大学で勉強し、その後、日本に留学した経験もあるものの、外国語を感覚的に学習するタイプの若者で、そのままでは困るのだということを分かってもらうまでに、時間がかかりました。外国語の習得においては、特に現地に飛び込んで生活しながら学ぶ場合には、入門・初級の段階では、まずは意思の疎通を図ることが大切なので、文法はおざなりになり、意味や内容に注意が向きがちです。ただ、中級以後は、何かを伝えることだけではなく、その伝える際に用いる言葉や文法が適切かどうかという語彙や文法に対しても、大いに注意を払っていくようにしていくことが大切です。それが、自然に外国語を習得する場合に、学習者が注意を向ける点の変化でもあり、外国語学習や外国語教育において、目指していかなければいけないことでもあります。

 わたしは、シエナ外国人大学で、外国語としてのイタリア語教授法を専攻して、大学院を卒業したのですが、この大学院課程で、シエナ外国人大学が主催するイタリア語検定CILS(Certificazione di italiano come lingua straniera)の問題作成や採点を担当するセンターでの実習を、25時間経験しました。実習の半分は、実際のCILSの試験答案の採点演習にあてられ、採点のための留意点を学んでから、作文など、採点者によって点数が分かれやすいものについて、学生皆が同じ作文を採点し、それぞれがどんなふうに評価をしたかを発表し合い、最後に、実際にCILSの試験の採点に当たっている先生方から、採点がどうなされるべきで、それはなぜかという説明がありました。CILSの採点基準・方法でおもしろいなと思ったのは、入門レベルのA2では、言いたいことが伝わっているかどうかの配点が高く、文法や語彙についての配点は低い上に、「間違っている表現や文法事項があれば、多いほど点を引いていく」のではなく、「このレベルでは語彙や文法を間違えるのは当然で、言いたいことがどれだけ表現できているか、伝えられるかが大切なので、それがどれだけできているかを見て、評価する」ことです。逆に、C1・C2など上級レベルになってくると、言わんとすることを言えるのは当然で、それをどれだけ適切な語彙と表現を用いて、自然な文章で伝えられるかが問われるため、語彙や文法の配点がぐっと高くなり、間違いは減点対象となります。外国語学習における「伝えんとすること」から「文法」への学習者のあるべき注意の転換が、学習者の能力をできるだけ適切に図るための目安として、語学検定の配点基準や採点・評価に、反映されているのです。

 閑話休題。日本語能力試験が選択式、マーク方式なので、「漢字は正しいものを選べばいい」、「語彙もなんとなく意味が分かればいい」という勉強の仕方をしていた若者に、それではいけないと説き、N2ではなくN3を、基盤をもっとしっかりていねいに固めながら勉強していくことを勧め、N3を受けようと決めた若者に、読解を主軸に、苦手な漢字や語彙・文法の強化を図って、試験対策をしてきました。学習態度がまだまだ大ざっぱではありますが、つめが甘いものの、漢字や語彙の知識量があることもあり、試験勉強も功を奏して、「N3に今年は合格できました。先生のおかげです。ありがとうございます。」と、成績の詳細を添付して、メールを送ってくれました。昨年よりもずっといい点数で、特に、読解が高得点で合格できたと知り、わたしもとてもうれしいです。

 最近は、日本語教育以外の仕事で、いろいろと問題があり、困惑していたので、この全員の合格の知らせで、心が晴れるように思いました。

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Banzai! Tutti e tre i miei allievi hanno superato l'esame di lingua giapponese! I livelli N2, N3, N4 (due livelli intermedi e un livello elementare) di JLPT, Japanese-Language Proficiency Test.

Hanno sostenuto l'esame il 1 dicembre 2018 e i risultati sono consultabili online dalle 10 di ieri in ora giapponese, dalle 2 a.m. in ora italiana. Un allievo non poteva dormire, ha visto il risultato alle due di notte, gridato di gioia e ha svegliato e preoccupato i suoi. Quanto lo capisco.
Ora iniziano a studiare per gli esami di livelli più alti :-)
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Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by nonkonogoro at 2019-01-24 08:37
なおこさんの教え子さんが
全員合格されて 本当に良かったですね。

外国の言語を習得するのは
本当に難しいですね。

全て規則どおりではないし
その国の暮らしや歴史も反映しているので
大変だと思います。

私は今 日本語を教える方の勉強をしていますが
自分が話せるようになったのは 幼い頃から
自然と覚えてきたものなので それをきちんと
形式化して捉えるのは 難しいです。

今は
姪や甥たちが 言葉を覚えていく様子を
間近に見られるので いつも興味深く観察しています。
でも彼らは 一度で ちゃんと覚えてしまいます~
あの頃の記憶力よ もう一度~~~(★^▽^)V



Commented by ayayay0003 at 2019-01-24 12:28
なおこさん、教え子さんたちの合格おめでとうございます(^_-)-☆
語学の学習は、難しいですが、皆さん、なおこさんの教えで、まじめに取り組んだ結果、合格出来たと思います。
語学学習に近道はなく、語彙や文法をコツコツ覚えていくのが王道なのでしょうね!
いろいろ大変なことがあってもこうした朗報が届くと、なおこさん報われますね(*^_^*)
日本でも今受験シーズン、今年は甥っこ2人が大学受験なのでちょっとハラハラドキドキしています~(>_<)
Commented by milletti_naoko at 2019-01-24 17:08
nonさん、ありがとうございます。
土地や言語の歴史や文化の反映が、外国語学習では大変であると同時におもしろいところだと思います。すでにN2レベルから、「ず」「まじき」など、文語助動詞を含む言い回しが頻出していて、改まった表現や敬語など、若者が友人との会話やアニメの視聴では出会わなかった表現が多いので、昔の日本語ではと説明も加えながら、教えてきました。

母語では、脳や思考能力の発達とともに言語も習得し、長い時間をかけて、親が子供に分かりやすく、何度も繰り返し語りかけて、言い直すことから入って、自分でも言ってみて反応を見てと学習を蓄積していくのに対し、外国語では、発音や認識能力についても、すでに母語それが発達してしまったあとに、母語の枠組みを通して、新たな言語を学ぶことになることが多いためもあって、習得も教えるのも難しくなります。

姪御さんや甥御さんに会われる機会が多いんですね。イタリア語教育分野の言語学者の中には、自分の小さい子供の言語の発達を記録して、それを外国人学習者が自然に習得する順序と比較したりする人も、研究書や論文を見ると、少なくないんですよ。
Commented by milletti_naoko at 2019-01-24 17:15
アリスさん、ありがとうございます。3人とも本業が忙しい中、
本当によく頑張りました♪
語学学習は、たくさん読んで書いて聞いて話していくことと、
並行して語彙や文法も、できれば文脈の中で覚えていくことが大切だと考えています。
欧米でも、「文法・語彙・訳・作文」中心の外国語教育と、会話中心の外国語教育と、歴史的に、この両者の間を行ったり来たりしている傾向があるのですが、実際には、両方ともとても大事なのに、ついどちらかに偏りがちなのです。語彙や文法は食材、アウトプット・インプット(読む・聞く・話す・書く)は料理の仕方で、いくらいい素材を使っても、料理の仕方が分からなければ、おいしい料理にはならないことに通じるものがあると思います。外国教育研究では、よくこの二つが、車の両輪にたとえられています。

甥っ子さんが二人も大学を受験されるんですね! どうか甥御さんたちが望む大学に合格できますように。高校で教えていた頃は、3学期は皆、今日はどこの試験、今日はだれの合格発表と、そわそわはらはらしていたのを、懐かしく思い出しました。
Commented by tawrajyennu at 2019-01-26 10:39
こちらからもこんにちは♪

教え子さんたち、皆さん合格なさったのですね。
おめでとうございます。
一生懸命に教えて、それが実を結ぶというのは、嬉しいですね。
私も、ボランティアで教えていますが、きちんと日本語指導の勉強をしたわけではないので、
自分自身も勉強しながらという感じです。
以前教えていた時は、けっこう能力試験を受ける方が多かったのですが
今のところは、生活のための日本語を覚えたいという方がほとんどで
能力試験の指導はほとんどしていません。
自分がわかっていても、それを形式立てて教えるというのは、
本当に難しいと思います。
学習者は、つい母語と比較して聞いてくるので、
日本語にない表現を聞かれると、説明に困ってしまうことが多々あります。
Commented by milletti_naoko at 2019-01-27 04:48
タワラジェンヌさん、外国に暮らしながら日本語を勉強していて、
いつかその力を、日本やイタリアでの仕事に役立てたい若者たちには、
日本語能力試験の合格が大切になってくるんです。もともと純粋に
日本や日本文化が好きで勉強したい場合、入門や初級の段階では、
試験にこだわる人が少ないし、こちらも偏らない勉強をしてほしいので、
あまり言及しないのですが、レベルが上がってくると、目標を持つためにも、
試験に受かりたいというゴールを持つことが役に立つのではないかと思います。
教え子さんたち、熱心なタワラジェンヌさんに教えていただいて、喜ばれている
ことでしょう。日本の高校でもイタリアでも、わたしも授業をしながら、生徒や
学生を教えながら、学んでいくことがたくさんあります。
by milletti_naoko | 2019-01-23 23:49 | Insegnare Giapponese | Comments(6)